(又吉直樹)いや〜
作家らしくその瞬間をホテルのバーで待っていた
明らかに居心地が悪そうだ
人を笑わすことを生業としている
担当はボケ
ごめんね遅くなっちゃって道が混んでたからさ…待った?ああずっと待ってたよ2日も前からね気持ち悪ぃよ
お笑いコンビ「ピース」の結成から12年
生活が安定したのはここ数年のこと
そうなんですね密着で?
(スタッフ)はいさすがですあっこっちですか?
社交的な相方・綾部に対し又吉は…
最近は趣味の読書もままならない
景色が一変したのは今年の1月
芸人として初の純文学デビュー
小説「火花」は瞬く間に彼を文壇のスターへと引き上げた
すいません又吉です
今年の上半期最も売れた小説の作者
オファーは絶えない
そんな中当の本人は…
はぁ〜…みたいな楽しい…忘れられるみたいなねそういう憂鬱な感じを
憂鬱の原因に考え過ぎという性格があるのかもしれない
例えばこんな質問をしてみる
僕でいうと…もしかしたら僕が…一発ギャグ難しいですよね一発ギャグは…ここにこうやって寝てこう寝て…聞くっていう
頭の中に渦巻く膨大なイメージを吐かずにはいられない
6月初旬
この日又吉は漫才の舞台に立つはずだったのだが…
一向にやって来ない
先生は…はい多分次回作を…
姿を現したのは出番20分前
いつもならよくあることと流してもらえるが…
最近は作家としての評判をいじられてしまう
この時はまだ芥川賞候補の発表はされていなかった
おはようございます師匠
(中田)お〜久しぶりやな
軸足はあくまでも芸人
テレビの仕事が増えた今も月数回客の前で漫才を披露している
客席の反応を見てやるネタは直前に2人で決める
子供の頃赤ちゃんの時っていうのは喋ってないわけですから必ず最初に喋った言葉第一声っていうのがあるんですねなるほど僕母親によく「まんままんま」って声かけられたんで最初に喋った言葉第一声「まんま」だったんですよねあっ最初は大体みんな一緒なんですねあっお前もそう?僕も最初に喋った言葉がね「すいませんお米を少し分けてください」めちゃくちゃ貧乏だなお前ん家
空いた時間を利用しよく散歩する
3時半までに戻ればいいんですよここ喫茶店みたいな感じなんですけど
(スタッフ)行ってみますか?
そして一人で考え事
又吉が思案していたのは大先輩のこのギャグだった
やあ!君たちあ君たちがいてあ僕がいる
(笑い)はっ!とする言葉なんですけど
(スタッフ)おはようございますおはようございます
笑いの質を高めるため大切にしているライフワークがあるという
この日はその打ち合わせ
自ら主催する「実験の夜」
思いついた笑いをためらいなくやるためのライブだ
じゃんけんほい!
「あっち向いてホイ」だけでどこまで笑わせられるか
あっち向いて…ホイ最初はグーじゃんけん…あっち向いてホイ
本番の日
おはようございますおはようございます
又吉の呼びかけで後輩の芸人たちが集まった
即興性を重視するためリハーサルは行わない
客はおよそ300人のコアな又吉ファン
限定あっち向いてホイ!
だが実験ゆえにだだスベりすることもあるという
この条件の下あっち向いてホイをやってもらいますこちら!高速さあ始め!
(ゴング)あぁ〜…早い!早い早い早いよ早い早い見えなかったこちら!反抗期始め!
(ゴング)始めダメダメダメダメ!小学校の時は楽しそうにやってたろうお前ら違うよ!
月に1度どんなに忙しくても新しい笑いを考え披露する
ただ…
それだけ笑いにストイックになっても今や作家としての評判が芸人のそれを上回る
その現実を本人はどう受け止めているのだろうか
全然ちゃうって言われるかもしれないですけど僕割と小説書くのは芸人の職業にめちゃめちゃ近いと思うんですよね小説って結局頭の中にあること書くことなのでネタとか作るのと一緒で…もともと考えるの好きっていう…変なこととか…でいうとめっちゃ近いねんけどなっていうよう同じ人たちがやってるなっていうぐらい違うじゃないですかでいうと…
自宅とは別に執筆用の部屋を借りている
(スタッフ)お邪魔します
1K風呂なし4万円
下積み時代とほぼ同じ造りだという
あの「火花」もここで生まれた
机のとこにものがあると気になって片づけるまで作業できないんですこれここにあったらもうダメなんですこれはもうここで
(スタッフ)寝泊まりもするんですか?最初しないはずやったんですけど…
「火花」は売れない2人の若手芸人を描いた物語
非凡なセンスを持つ先輩芸人とその彼を師と仰ぐ後輩芸人は生きづらさや迷いを抱えながらも笑いとは何かを苦しいほど模索する
根っこは結局やっぱり感情…「悲しいなぁ」が多いですけど何か悲しいなぁっていうガリガリに痩せろやとか思うんですけど
本にまつわる仕事も激増している
この日は雑誌の取材
行きつけの本屋を訪ねると無類の読書家はつい面白い本を薦めたくなるようだ
これお薦めです僕持ってるけど焦るというか…読んでて劇団がものすごいスピードで公演を打ちまくってて志が高くてめちゃめちゃ次元の高いことで役者と演出がやり取りしてるのでまず…面白いと思いますね
純文学からノンフィクション詩集まで
購入した本は全部で20冊にも上った
すいません
(樹木)主賓だから
そのあとに待っていたのは女優・樹木希林との対談
テレビで共演した仲だという
いや〜うれしいですね吉本入った時に最初に若手芸人で世に出るためには清潔で明るくて分かりやすくないとあかんって言われてお前にはその全てがないって言われたんですねうんそうですよねでももうそこの努力は無理でしたねやり方変えたつもりは全くないんですけどっていうことは逆に…それはありますねそれが一番大事ですよね
大阪の生まれ
少年時代からアドリブより練り込んだ笑いを好んだ
高校卒業と同時に上京し吉本のお笑い養成所へ
だが最初のコンビは3年で解消
バイトの面接にすらことごとく落ちた貧乏時代
「ピース」を結成したのは23歳の頃
ネタをひたすら書いても生活は変わらなかった
その頃のネタ帳を見せてくれた
「もてる男、もてない男」「お前ちゃんとフェロモン出してる?」「俺は常にフェロモン3本立ってるからな」…っていうフェロモンを携帯の電波みたいにいうっていうのでなかったんでしょうねそれしか
その頃の思いを記すかのように「火花」にこんな一節が…
ネタできるしライブできるし本書けるし…それなりにやり甲斐あったから10年ぐらいやってたわけですよねその10年のゴミみたいな扱いされてた時期が長すぎて…やっぱりもう浮かれないです僕らは
世の中の関心がいつまでも続かないことを知っている
だから好きなことをやるだけだ
敬愛する太宰治の命日には毎年「太宰ナイト」と銘打ったイベントを開催している
くしくもこの日又吉の芥川賞ノミネートが発表された
どんどん関係なくなっちゃってる
喜んでいるのかいないのか
コントの題材に選んだのは「きりぎりす」
名声を得ることでつまらない人間になってしまった画家の夫を妻が批判する物語
その夫婦関係を又吉は元ロックスターとファンだったライターという設定に置き換えた
アイドルばかりがランクインする日本のヒットチャートについてどうお考えですか?私は松井珠理奈ちゃんが好きだじゃあ今後の夢は?家賃収入で暮らすことですミュージシャンじゃなかったらどんな職業になりたかった?副担任です何でだよ!どういうことだよ!担任は責任が大きいんですよふざけんなよ!父兄からの苦情が…続けるな続けるな!
暗い印象が付きまとう太宰作品
笑いに変えるのはさぞや難しいと思ったが又吉に言わせればそうでもないらしい
例えば僕が中学2年の時に好きな子ができて何か知らんけどクリスマスに一緒に飯食えるようになってでその日に…それって告白していいんやって僕は思ってたから別れ際で告白しようと思ってたらその子が…それって面白く書こうと思ったら面白く書けるけど絶望的に書こうと思ったら絶望的に書けますよね太宰の話ってそれに通じる部分があってすごく滑稽でおもろくて何て言うんですかね…ダサい部分があるから一緒やと思えてこっちは救われるというかうれしいんですけど
その太宰ですら受賞がかなわなかった芥川賞
表情からは何も読めない
受賞の連絡は又吉の携帯に入ることになっていた
ただ落選の連絡も同様だ
(着信音)出てみますもしもし…はいはい…はいあっ本当ですかありがとうございますお〜!すごい!
(マネージャー)いや〜すごいな〜え〜!?いや僕もびっくりしたありがとうございます
担当編集者たちと記者会見場へ急ぐ
分かりましたはいいや〜みんなやっぱすごい反響がでかいです
マネージャーの携帯も鳴りやまない
おめでとうございますありがとうございます
史上初となる芸人芥川賞作家
うれしくなかったはずはない
でもやっぱり浮かれることもない
又吉さん本当におめでとうございますおめでとうございますおめでとうございます
憂鬱な男は表現への欲が深いのだ
ホントうれしいですね
(スタッフ)芸人・又吉的には変わらずですか?2015/07/19(日) 23:25〜23:55
MBS毎日放送
情熱大陸[字]【又吉直樹/芥川賞受賞の瞬間に密着!根暗芸人の創作の裏側】
芸人/又吉直樹▽デビュー作「火花」が今年上半期本ランキング・小説部門で売り上げ1位を獲得!出版業界で期待される芸人の、単行本刊行から芥川賞選考会当日までを密着!
詳細情報
番組内容
作家として世間の注目度が高まるにつれ“先生”扱いされるようになった又吉は、今や出版業界では期待の大型新人だ。だが、そんな周囲の評価とは裏腹に、又吉は「自分にとって、小説を書く事は芸人の仕事にめっちゃ近いんです。」と、芸人としての自分を変えようとはしない。世間の風潮を計算して立ち回れるほど器用ではない又吉。受賞の瞬間とそこへ向かう日々に何を思ったのか?芸人としてのジレンマは?又吉の胸中に迫る。
プロフィール
又吉直樹
芸人。1980年大阪府生まれ。
高校卒業後、芸人を目指し上京しNSC(吉本総合芸能学院)入学。2003年、同期の綾部祐二と共にお笑いコンビ「ピース」結成。2010年キングオブコントで準優勝、M−1グランプリでも4位に輝く。芸人活動と平行しエッセイや俳句など文筆活動も行なう。今年1月文芸誌「文學界」で「火花」を発表、純文学デビューを果たし、今月16日に同作品が第153回芥川賞を受賞した。
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