(律)どうして真也さんと一柳先生が?
(恭子)あの人があなたと路加君の本当のお父さんよ。
(隆)もしかしてお母さんに会いに行ったのか?
(真也)あの人の中じゃ路加も私もとっくの昔にいないことになってんのよ。
(律)信じたい自分がいるんだ。
僕と路加の父親がホントはいい人なんだって。
(律)先生。
(律)一つだけお聞きしたいことがあるんです。
(志穂)突然お邪魔してすみません。
一柳の妻です。
・
(路加)ママ。
お姉ちゃん誰?
(真也)あっ。
路加。
ちょっとお留守番しててくれない?ママお姉さんとお話ししてくるから。
(路加)うん。
(真也)話があるなら店でしましょう。
すぐそこだから。
母から聞きました。
先生が僕の…。
僕の血縁上の父親だって。
(隆)すまない。
だますつもりじゃなかったんだ。
だまされたとかは思ってないんです。
ただ僕のことよりも路加のことをどう思ってるのか聞きたくて。
何から話せばいいのか…。
真也の存在に初めて気付いたのは俺が中3あいつが中2のころだ。
廊下で擦れ違って。
正直暗い女だなって思った。
髪の毛で顔を隠すようにして誰からも距離を置いていて。
ただ何となく気になって目で追ってたら見えたんだ。
髪の毛の下に殴られたようなあざがあるのが。
あいつはずっと母親に虐待されてた。
それを誰にも相談できなくて。
俺は何とかできないのかって思った。
まだ若かったんだな。
駆け落ちして一生守ってやろうと思った。
でも…。
僕ができたんですね?あいつの母親は許さなかった。
俺たちは連れ戻されて中学卒業と同時に会うこともなくなった。
真也さんのこと心配じゃなかったんですか?ひどい話だけど…。
俺は全てを忘れようとしたんだ。
えっ?自分の小ささを思い知らされたんだ。
何の力もない人間に誰かを守ることなんてできない。
だから俺は力が欲しかった。
それが金なのか名声なのか。
とにかくいっぱしの人間になれば自分のふがいなさから逃れられると思ったんだ。
だけど…。
忘れることなんてできなかった。
駅であいつに似た人を見掛けるたんびに真也なんじゃないか…。
小さな子供を見るたびにもしかしたら俺たちの子なんじゃないかって。
そんなときに真也と再会したんだ。
あいつは相変わらず一人で頑張ってた。
その姿を見てどうしようもなく自分が惨めに思えて。
何とか真也の力になりたい。
何とか真也のためにすることはできないかって思った。
それで…。
それで路加が?そのとき志穂さんと結婚してたんじゃないんですか?すまない。
でも路加のことは俺ができることは全部…。
いまさら何言ってるんですか!?何で責任取れないようなことするんですか?本当にすまない。
今日は帰ります。
僕はやっぱりあなたのことが許せません。
律。
こんなことお願いできたような立場じゃないんだが志穂には何も言わずにいてやってくれ。
悪いのは俺なんだ。
志穂は何も悪く…。
当たり前じゃないですか!これ。
志穂さんに渡しておいてください。
・
(ドアの開閉音)
(真也)あなたって結構非常識なのね。
突然押し掛けてくるなんて。
(真也)そんなににらまないで。
非常識はこっちだって言いたいんでしょう?けど隆と別れろっていうなら筋違いもいいところよ。
あの人とはもう何の関係もないの。
むしろ付きまとわれて迷惑してるのはこっちなのよ。
(真也)何なら隆も呼んできて話す?その方が話早いかもね。
(志穂)あの子が隆の子なんですね?何のこと?ごまかさなくて大丈夫です。
もう知ってますから。
あのころあの人あんまり帰ってこなくて。
それで興信所を使って調べたことがあったんです。
(志穂)律君のことも知ってます。
っていうか昨日主人のデスクにガサ入れしてて気付いちゃったんですけど。
(真也)意外と行動派だったのね。
甘く見てたわ。
律には私から言っとくわ。
バイトは辞めるようにって。
そういうことを言いに来たんじゃないんです。
あの人が律君のこと気になるのは分かるんです。
だから私はこのまま律君にうちに通ってもらおうと思ってます。
あなた…。
(志穂)お子さんカワイイですね。
名前は?
(真也)路加よ。
(志穂)そう。
路加君。
いい名前。
私も生まれてたら2文字の名前にしようと思ってたの。
リンとかカイとか。
隆からお聞きになってますか?私が流産した話。
(志穂)たった4カ月だったけどおなかの中に新しい命を感じられた。
あの4カ月は私にとって宝物なんです。
もしあなたが隆とやり直したいのなら…。
私は身を引きます。
子供の幸せが一番だから。
さっき路加君に会ってそう思えたの。
ただ一つだけお願いがあるんです。
買いたいものを押してね。
お煎餅5円。
・
(ドアの開く音)
(路加)あっ。
ママだ。
(真也)路加。
お姉さんが一緒に遊びたいって。
(志穂)初めまして。
路加君。
志穂って呼んでね。
(路加)志穂お姉ちゃん?
(志穂)うん。
お姉ちゃんね路加君とずっと遊びたいと思ってたの。
いいよ。
一緒に遊んであげる。
ありがとう。
(路加)こっち来て。
お姉ちゃんのこと描いてあげるから。
(志穂)ホント?うれしい。
どんなふうに描いてくれるのかな?待ってて。
すぐ描くから。
(志穂)うん。
お姉ちゃん。
どこか痛いの?
(志穂)ううん。
ちょっと目にごみが入っちゃって。
はい。
もう大丈夫。
(路加)うん。
(志穂)お絵描き好きなの?
(路加)うん。
(志穂)そっか。
思わず声をあらげてしまった
どうしても納得できなかったからだ
でも…
《自分の小ささを思い知らされたんだ》《何の力もない人間に誰かを守ることなんてできない》
あの人と僕は同じだ
僕一人の力じゃ路加のことを守れない
・
(志穂)ただいま。
(隆)おかえり。
(志穂)ただいま。
(志穂)あら。
早川君は?
(隆)ああ。
今日はそんなにやることもなかったから早めに上がってもらったんだ。
(志穂)そう。
あっ。
そうだ。
これ早川君から志穂に渡しといてくれって。
(志穂)ああ。
約束忘れないでいてくれたのね。
(隆)でもこれでホントにニンジンが食べれるのかな?じゃあ早速今晩作ってみるわね。
でもちょっと怖いな。
・
(調)ああ。
腹減った。
飯まだ?げっ。
ピーマン?
(恭子)ごめんね。
安かったからつい買い過ぎちゃって。
(奏)しー兄ぃ。
もうピーマン克服したんじゃないの?
(調)いや。
まあ食えるっちゃ食えるけどあえて食いたいもんじゃないっつうかさ。
(奏)そんなこと言ってるからいつまでたっても背が伸びないんだよ。
(調)チッ。
うるせえな。
今日も苦味取りしてあるから安心して。
(調)別に食えないわけじゃないからいいんだけどさ。
そういえば母ちゃん。
あした定期検診だよな?
(恭子)うん。
仕事もあるし午後にしてもらったけど。
じゃああしたは晩飯俺が作ってやるよ。
(恭子)えっ?
(調)だって検査って色々あって結構大変だろ?だからあしたの晩飯は俺に任しといて。
ああ。
つってもカレーやハンバーグくらいしかできないけどな。
(奏)とか何とか言ってホントは買っちゃったピーマン何とか使いたくないだけでしょ?
(調)はあ?違えよ。
俺はただ母ちゃんの心配をしてだな。
(恭子)ありがとう。
調。
じゃあ期待してるね。
(調)おう。
(奏)ピーマンも使ってね。
しつこいな。
分かってるよ。
(奏)フフフ。
(調)何個?何個使おうかな?3つかな。
(奏)全部全部。
(調)全部は無理だよ。
だってさ…。
7個入り?1・2・3・4…。
(奏)そう。
7個入り。
(真也)どういうこと?給料先月よりだいぶ減ってるんだけど。
(徹平)当たり前だろ。
勤務時間が減ったんだ。
給料も減るに決まってる。
文句があるんだったらオーナーと直でやってくれ。
(徹平)なあ。
親はなくとも子は育つっていうぜ。
前みたいに深夜まで働いた方がいいんじゃないのか?ほっといてよ。
《あなたが隆とやり直したいのなら…》《私は身を引きます。
子供の幸せが一番だから》律。
大丈夫?えっ?一柳さんのところで何かあったんじゃないの?話したくないなら話さなくてもいいわ。
でも口に出すだけでもすっきりすることってあるわよ。
許せないって言っちゃったんだ。
えっ?あの人…。
真也さんと出会ってからのこと少し話してくれたんだ。
お母さんのことで悩んでた真也さんを支えたかったって。
大人になって再会したときも同じ気持ちだったって。
でもどう聞いても身勝手にしか思えなくて。
僕のときは仕方なかったとしても路加のことを捨てたのは事実だから。
律が一柳さんのことを身勝手だって思うならそれでいいんじゃない?えっ?いくら親子だからって絶対許さなきゃいけないことなんてないのよ。
許せないなら許せない思いをちゃんとぶつければいいと思う。
お母さんは律のおかげでおばあちゃんとちゃんとぶつかり合えた。
幸いおばあちゃんとは仲直りできたけどたとえ仲直りできなかったとしてもお母さんきっと後悔してなかったと思う。
律の思いをちゃんとぶつけたんだから偉いわよ。
後は一柳さんがどう返してくれるのかだけ。
あなたは間違ってないわ。
だから…。
笑顔。
えっ?済んだことはくよくよしないの。
笑顔でいればきっとうまくいくものよ。
フフフ。
ありがとね。
少しすっきりした。
ごめんね。
暗い顔してて。
ううん。
今の気持ちを話してくれただけで十分よ。
(調)あれ?母ちゃんもう行ったのかよ?うん。
これ調にって。
「調へ。
晩ご飯楽しみにしてるナリよ」「ナリよ」って。
母ちゃんふざけ過ぎナリ。
僕も楽しみにしてるナリよ。
おう。
・
(奏)おはよう。
(調)カナ。
お前すっげえ寝癖だぞ。
(奏)えっ?嘘!ああ…。
あれヤバいナリね。
ヤバいナリな。
調。
今日は大丈夫ナリ。
(調)いや。
今日…。
大丈夫ナリ?意外と。
(調)セーフナリ?セーフナリ。
昨日はすみませんでした。
これからもバイト続けさせてください。
(隆)いや。
こっちこそ。
あのう。
ひとついいですか?真也さんから1年以上前に別れたって聞きました。
なのにどうして今ごろまた真也さんのところに来たんですか?それは真也の母親のことが心配でな。
えっ?知らされてないのか?・
(ドアの開閉音)
(真也)おなか痛いの?
(路加)うん。
(真也)もう。
冷たいもの飲むからよ。
我慢できる?
(路加)うん…。
(真也)じゃあママ出掛けるから。
夕飯冷蔵庫に入れてあるわ。
何かあったら電話すんのよ。
(路加)うん。
いってらっしゃい。
・
(ドアの開閉音)
(路加)うっ。
ううっ…。
・
(ドアの開く音)
(徹平)何だ。
またお前さんか。
すみません。
あのう。
真也さんは?
(徹平)ああ。
あいつなら転職活動中だよ。
えっ?これが僕のおばあさんなんですね?
(徹平)あいつには頼る人間がいないんだよ。
(徹平)だから一人で何とかしないといけないんだ。
(真也)何の用?ここはあなたの来るところじゃないって何度も言ってるはずよ。
真也さん。
真也さんのお母さんのことなんですけど。
私に親はいないわ。
えっ?
(真也)いたとしても死んだと思ってるの。
あなたは首突っ込まないで。
口調とは裏腹に寂しそうな顔の真也さんに僕は何も言えなかった
そして運命はさらに真也さんを追い詰めていったんだ
(路加)おなか痛い。
でも我慢しなきゃ。
(苦しむ声)2015/07/20(月) 13:25〜13:55
関西テレビ1
明日もきっと、おいしいご飯 〜銀のスプーン〜 #36[字][デ]
律(高杉真宙)は隆(和田聰宏)から、真也(河井青葉)との出会いと別れ、そして律と路加(山口祐輝)の誕生について全てを聞かされる。律に怒りと悲しみが押し寄せて…。
詳細情報
番組内容
「ひとつだけ、お聞きしたいことがあるんです」律(高杉真宙)の問いに、隆(和田聰宏)は真也(河井青葉)との出会いと別れ、そして律と路加(山口祐輝)の誕生について、全てを語る。真実を知った律には、怒りと悲しみがないまぜになって押し寄せてきて…。
その頃、隆の妻・志穂(小野真弓)は真也を訪ねていた。路加の姿を見てしまう志穂。それに気付いた真也は、あわててドアを閉め、話なら店でしようと言うが…。
番組内容2
隆への複雑な感情に苦しむ律。怒りを感じながらも、自分も同じだと感じる。何も出来ない自分が歯がゆい律。その夜、早川家の夕食は豚肉のピーマン炒めだった。調(前田旺志郎)がなかなか克服出来ないピーマン嫌いの話で、食卓は賑やかに。その中で一人、笑顔になりきれない律に気付いた恭子(富田靖子)は、洗い物をしながら律の心のドアを優しくノックする。
出演者
早川 律:高杉真宙
早川恭子:富田靖子
花山大輔:山田純大
雨宮真也:河井青葉
鈴井 環:岩田さゆり
茂木和彦:木本武宏
・
早川 調:前田旺志郎
早川 奏:田附未衣愛
雨宮路加:山口祐輝
・
一柳 隆:和田聰宏
鈴井みつ子:芳本美代子
小川絹江:藤田弓子 ほか
スタッフ
【原作】
『銀のスプーン』小沢真理(講談社「Kiss」連載中)
【脚本】
藤本明里
【演出】
木村政和
【プロデュース】
松本圭右(東海テレビ)
西 麻美(松竹)
原 克子(松竹)
竹内絵唱(松竹)
【音楽】
市川 淳
【主題歌】
高橋 優「おかえり」(ワーナーミュージック・ジャパン)
【制作著作】
松竹株式会社
【制作】
東海テレビ
ご案内
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ドラマ – 国内ドラマ
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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