プロ野球はきょうから後半戦。
1試合が雨の影響で中止になり、デーゲーム1試合とナイトゲーム4試合です。
(永島)石川県能登町に来てます。
山と海に囲まれた風がとても気持ちいい町です。
案内人の永島敏行です。
私たちはこうした道具を使いながら昔から生きてきました。
このクワは刃先を打ち直し打ち直しもう40年も使われてるそうです。
ものが簡単に捨てられてしまう時代に…肉体を駆使し大事に使われてきた道具。
こうした道具を見てると私たちは何か大事なものを失ってしまったんではないかと思います。
こうした道具を修理してるのが鍛冶屋さんです。
町の人々との日々を見つめました。
(干場)これも研げますよ。
ここガバガバになってしまってたので使わんと置いてあったやつやからまだ使えるようならこれきれいにしてもらって。
これお父さん作ったクワけ?うん。
昼下がりの集落で人々の歓迎を受ける青年がいます。
干場健太朗さん35歳。
新米の鍛冶職人です。
持ち込まれているのは切れなくなった包丁。
そしてカマやクワです。
すぐ傷むと思ってやっぱり持ってきたんや。
これも。
これもはい研ぎます。
すみませんお願いします。
はい!干場さんは集落を回り道具の修理を請け負っています。
お名前が奧野さん。
はい奧野です。
分かりました。
海と山に囲まれた石川県能登町。
人口は1万9,000。
(セリの声)町の暮らしは刃物とともにあります。
家で魚を丸ごとさばくのは当たり前。
料理によって包丁を使い分けます。
うん切れますね。
スッといきますわ。
畑が多い山あいではクワが欠かせません。
この町を4月から走り始めたのが移動鍛冶屋です。
電話頂きました?ええ。
193の集落を回って修理を受け付けたり品物を届けたりしています。
こんなんは駄目かね?これステンや。
大丈夫ですよ。
ほうけ?ステンも大丈夫ですし。
移動鍛冶屋は過疎が進み交通が不便な地域で喜ばれています。
あっ大丈夫ですね。
これいい包丁なんで。
よろしくね。
来週また持ってきます。
お願いしますね。
はいありがとうございます。
ああすいません。
かつては集落ごとに鍛冶屋がありましたが後継者不足などでほとんど姿を消しました。
おはようございま〜す。
あ〜ら本当や!ハハハハッ。
これでまた切れますんで。
捨ててあったカマやけどヘヘヘッ…よみがえりましたね。
うわ〜!うれしいですね。
あの仕上がり具合を見た瞬間の「あ!」っていうのが。
そこでこっちもテンション上がりますね。
干場さんが働く店は町でただ一軒の鍛冶屋さんです。
創業107年。
ひいおじいさんの代から続いています。
扱う道具は山や海の仕事で使うものおよそ100種類です。
山の方ではやっぱりクワですね。
こちら能登の方は高齢の方も多いのでできるだけ軽く大きなものを作ってます。
使う人に合わせた手作りの道具などが並びます。
こうした道具の製造や修理を一手に引き受けるのが父の勝治さん69歳です。
鍛冶職人として50年間人々の暮らしを支えてきました。
干場さんは3か月前に鍛冶職人になったばかり。
まだまだ鉄は触らせてもらえません。
こう縦にして。
こっちのばすとここ薄くなるさけよ。
これ頭になるさけよ。
毎日が勉強です。
のばすと同時にこうして均等にすりゃええんやな。
干場さんが今与えられている仕事は包丁研ぎです。
値段は1本500円から。
最近ようやく一人で任されるようになりました。
干場さんは大学卒業後12年間町役場で働いてきました。
特産品の売り込みに取り組むなど充実した日々でした。
転機が訪れたのは去年の5月。
店を切り盛りしていた母絹子さんが亡くなり店番やお金の管理が難しくなったのです。
あっ宮下さん。
出来てますね。
干場さんは仕事が休みの日に店の手伝いをするようになりました。
くさびも2つ入れてしっかりしてますので。
お客さんと接するうちに鍛冶屋が必要とされている事を実感した干場さん。
役場をやめ妻の由佳さんと共に店に入りました。
安定した職業から替わった訳で不安は確かにあります。
でもやっぱり地域でここ一つしかないものですし需要としても皆さんから求められている業種ではあるのでこの鍛冶屋の家業は代わりは自分しかいないなというふうに感じたので。
この決断に父の勝治さんは驚きましたが今では頼もしく思っています。
簡単なものから始めてどこまでやってくれるかという事になりますけどね。
後を継いでもらえるという事は地域の人もいいし私らも喜んでもらえるという事でいいんじゃないかなというような思いでおりますね。
実は干場さんひそかに温めていたアイデアがありました。
移動鍛冶屋です。
中古のトラックを購入しクワやカマハサミなどを描きました。
今店で最も多いのが修理の仕事です。
集落を回る事で更に注文を増やそうと考えました。
(「村の鍛冶屋」)お客さんに気付いてもらうために音楽を流して出発です。
こんにちは。
(由佳)よろしくお願いします。
研いで。
できる限り使えるようにしますね。
すいません。
うわ〜スパスパだ。
これすごいな。
ありがとうございます。
これよう切れるわ。
切れる。
何がいいですか?これ。
(笑い声)移動鍛冶屋の評判を聞きつけて諦めていた道具を直そうと重い腰を上げた人がいます。
何回か耕しとる間にガクガクって。
うんなりますね。
なるもんで。
持ち込まれた古いクワ。
刃はさび付き柄が取れかかっていました。
柄自体新しくした方がいいかもしれないですね。
母親からもらったクワでした。
与野井さんは10年前仕事を辞めて能登町に戻ってきました。
母の和美さんは畑仕事を始めた与野井さんに愛用のクワをプレゼントしてくれました。
与野井さんは大事なクワの手入れを怠り7年間もさび付かせている事を母に言えずにいます。
さびてひどい事になっとって。
それを鍛冶屋さんに持っていくのも恥ずかしいなと思う気持ちもあってなかなか鍛冶屋さんまで行かれんかったりして。
まだ母は生きてますので形見とは言わんけども母ちゃんの分身みたいに思って…。
干場さんが持ち帰った与野井さんのクワ。
意外な事が分かりました。
うん。
大体何年ぐらい?25年。
20年以上…25年ぐらいたつんじゃないか。
25年前に父の勝治さんが作ったクワでした。
古くなった刃先を新しいものに取り替えます。
この日干場さんはこのあとの作業を自分にやらせてほしいと申し出ました。
新しい柄を付け替える作業です。
ところが…。
削りすぎた…。
黙って手本を示す勝治さん。
再び作業を任せます。
しかしなかなかうまくいきません。
ここでも手本を示します。
ちょっと浮かしてかって…。
仕上げのくさび打ち。
均等やな。
なんとか仕上げる事ができました。
鍛冶職人になって3か月。
初めて父と2人で直したクワでした。
僕が1本入れるのに父親が3本4本入れられるぐらい時間3倍も4倍もかかっとるんでまた入れる修業をずっと続けていきたいと思います。
早速与野井さんにクワを届けます。
音楽に気付いた与野井さんが出てきました。
こんにちは。
こういう状態で先の方を欠けている所を切って新しいものをつけました。
先がけですね。
すごいやん。
結構パスパスなんやね。
そうですね。
ここも刃をこうつけてますんで。
あら〜すごい生まれ変わった。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
またよろしくお願いします。
新しくなったクワで畑仕事。
あ〜かわいい。
今年初めてのジャガイモの収穫です。
ああ気持ちいい。
サクサクや。
どうですか?クワ違います?すごい全然違いますね先が。
先がすごい。
そしてクワをプレゼントしてくれた母親のもとへ。
母ちゃん!母ちゃ〜ん!はいお待たせしました。
きれいなジャガイモや。
助かったわ。
ちょうどなかってん。
母と娘の心を1本のクワがつなぎます。
いつか自分一人で修理をしたい。
あんまりやり過ぎてもあれやしね。
地域の頼られる鍛冶屋になりたいなと思いますね。
刃もつけて。
はい。
あら本当だ。
よいなった。
ええこれで。
よいがにしてもろてありがとうございます。
長年使われます。
託された道具への思い。
これは40年ぐらいたつ。
その一つ一つに寄り添う日々が続きます。
2015/07/20(月) 18:10〜18:35
NHK総合1・神戸
にっぽん紀行「心に火灯(とも)す“里の鍛冶屋”〜石川 能登町〜」[字]
石川県能登町で唯一の鍛冶屋「ふくべ鍛冶」。店を継いだ長男が始めた「移動鍛冶屋」に注文が殺到している。道具を通して地域の暮らしを守りたいと奮闘する若き職人の日々。
詳細情報
番組内容
石川県能登町。豊かな海と山に囲まれた小さな町だ。人びとの暮らしを支えてきたのが町の「鍛冶屋」。いま営業を続けるのは創業107年の「ふくべ鍛冶」一軒のみ。4月、35歳の長男が店を継ぐことを決意。鍛冶職人の世界に飛び込み、“移動鍛冶屋”を始めた。すると、道具を修理してほしいという依頼が殺到。道具を直すことで地域の暮らしを守りたいと奮闘する健太朗さんと、古い道具を大切に使い続ける人たちのふれあいを描く。
出演者
【リポーター】永島敏行
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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