NHK短歌 題「嘘(うそ)」 2015.07.21


「NHK短歌」司会の剣幸です。
今日もご一緒に短歌を楽しみましょう。
早速ご紹介致します。
今日のゲストは俳優の岡幸二郎さんです。
ようこそお越し下さいました。
よろしくお願い致します。
岡さんといえばミュージカルを中心に舞台で大活躍なさっておられますが短歌の方はいかがですか?って私が聞いちゃう。
実はですね剣さんと舞台ご一緒しました時に剣さんがこの番組の司会をなさるという事をお聞きしましてその次の日に私は一首詠んできたんですね。
それが始まりなんですよ。
第三週の選者の栗木京子さんです。
栗木さん私ねほんとひと言言っただけなのに次の日に一首作っていらっしゃって。
即断即決の方ですね。
頼もしいですね。
今日は初めてテレビで作った短歌をご披露して下さるという事なので楽しみに…。
お手柔らかによろしくお願い致します。
この週はですねゲストの方も一緒に短歌を楽しく学んでいこうという週なのでこんな感じでこんな試みしております。
えりちょす。
はいお願いします。
私岡さんのCDを聴かせて頂いて歌声が本当にすばらしくて感動してしまいました。
ありがとうございます。
よろしくお願いします。
お願い致します。
では早速お願いします。
これから栗木さんに選んで頂いた入選九首をご紹介するんですがその中で私とえりちょすと岡さんでこの歌が一席だ一番いいなと思う時にこの札を挙げて頂きたいと思います。
事前に九首見て頂いてると思うので私が読んだあとに挙げて頂ければと思います。
では今週の入選歌のご紹介です。
栗木さんに選んで頂いた入選歌はこちらです。
まず一首目です。
これね事件の取り調べでしょうかね直感を頼りにしながらも結句で「まずは記録す」というふうに客観性を大切にしておられるというねそういう姿勢が伝わってきます。
作者にしか詠めない大変独自性のある場面が描かれていますね。
では次です。
うわ〜分かる!分かるよね。
分かるよな〜でもこの「夏」っていう最後の言葉これ例えば違う季節だと駄目なんですかね?やっぱりこの歌ね「夏」がとても決まってると思うんですよね。
春だとちょっと前向きな気持ち優等生的になっちゃうかなと思うんですね。
夏だから身も心も裸になってっていうようなねそういう決意がねとっても爽やかに伝わってくるんじゃないかなと思います。
嘘に嘘を重ねるみたいな事ありますものね。
どこでやめていいのか分からない。
夏にやめましょうって思いましたね。
これから夏ですもんね。
では次です。
はい!若者だやっぱり〜。
ふだんはあんまり意識しないんですけどこの歌を読んで自分もやっぱり「うそーうそー」ってついつい言ってしまうなと思ってその言葉だけで会話が成り立ってしまうんですよ。
ほんとそうですよね。
「うそーうそーうそー?」いろんな「うそ」があってね。
「うそ」っていう方が「ほんと?」って言うよりも何か相手の言葉をちゃんと聞いて反応してるように思えるんです。
リズミカルに合いの手としてはノリがいいですよね。
我々の世代だと…栗木さんと私一緒なんですけど「うそ」っていうのは否定でしかなかったんですよ。
何か失礼みたいな気がしちゃうんですけどね。
それが今や「うそ」がほんとよりも肯定的な意味にとられてるからそれで会話が成り立つんだよね。
「うそ」すごいですもん。
そう「うそ」すごいですね。
極めて現代を写し取った歌ですよね。
えりちょすが一番に選ぶのも分かりますね。
では次です。
これも分かる!分かりますよ〜。
いつも嘘ついてるから。
人聞きの悪い!そういう意味ではないんですけど。
エープリルフールになると何か冗談で嘘をつこうと思うんですよね。
でもその時考えるのは去年何の嘘ついたっけ?その前は何の嘘ついたっけ?っていつもと違う嘘を今年はついてやろうとず〜っと考えてたらあ〜日付変わっちゃったみたいなまさにこれですよね。
今回ね「嘘」っていう題でねエープリルフールにこんな嘘ついたあんな嘘ついたっていう作品がいっぱい来たんですけどこの歌はね結局嘘つかなかったってところが面白いかなと思うんですね。
ですから嘘ってね意識してつこうと思うと意外に難しいんだなっていうのもね気付かせてもらうところがありました。
はいでは次です。
「むらぎもの」って私ちょっと意味が分からないんですけど…。
「むらぎもの」って漢字で書くと「群」という字に「肝」ですね。
内臓が群れているというかね古典和歌の時代からある言葉で心っていうのは昔内臓に宿るというふうに言われてたんですね。
ですから「心」に係る枕ことばとして一つのニュアンスを出す言葉として使われているわけです。
不思議な歌でね「嘘」っていうのは炭酸水みたいに暑いと上に上がってくるという暑さがらみのね…。
だからその軽妙な発想と「むらぎもの」っていうね古典的な技法との取り合わせがミスマッチでねなかなか面白い歌だなと思います。
では次です。
う〜んこれも分かる。
多分これは書く日記ちゃんとペンで書く日記なんでしょうけど最近いろんなツイッターだったりとかフェイスブックだったりブログだったり皆さんに見てもらう日記が多いじゃないですか。
そうするとやっぱりついついちょっと盛ってみたりとかするんですよね。
見栄張っちゃったりしますよね。
ほんとは日記は読んじゃいけないものなんですけれども相手もでも何かそれを予想しながら書いてて作者もそれを楽しんでいるという虚実の皮膜というんですかね心情の駆け引きが面白く表されてるなと思います。
では次です。
栗木先生ちょっと質問していいですか?今これ文字を見ていると牛のあとに句読点が入ってるんですが句読点というのは使っていいものなんですか?原則的には点とか丸ね句点とか読点は使わずに表しましょう。
一字空けとかそういうのもなるべくやめましょうという事なんですがただこの場合ね「牛豚を」って続けて書いちゃうとちょっと言葉が流れちゃうかな。
牛も豚もそれぞれに大事に飼っているというねそういう感じを出すにはこの点は必要かなと思います。
では次です。
はい。
岡さんの一席出ました。
子供のころって周りの大人とか例えば親だったり本当に夢のような嘘嫌な嘘じゃなくていっぱいつかれてどんどん自分が成長してきた時にいろんな経験を得た中でいろんなものがなくなっていくという感じが私は非常にロマンチックに思えたんですけど。
子供のころは嘘に憧れを託したりして罪のない嘘をつきましたけれどもだんだん年を重ねると飾らない言葉が一番尊いというふうに気付かれたんでしょうね。
栗木さんこの「あはれよ」というところは?ここが一番大事なところですよね。
「今はあはれよ」。
これは悲しいというよりは愛おしいというような感じじゃないですかね。
自分の人生も愛おしい言葉も愛おしいというふうな深い思いがあると思いますね。
なるほど。
では次です。
はい!これは同じ舞台人として歌舞伎の十八番だと思うんですけれども弁慶が義経のためにまっさらな何もない勧進帳をまっさらな嘘をついたって。
普通嘘は真っ赤な嘘って言いますよね。
それをまっさらな白だというところにちょっと感動しました。
また質問いいですか?一番最初に「まっさら」というのが出て最後にまた「まっさら」と同じ言葉が2つ出るというのはどうなんですか?質問がすごい的を射てますよね。
やっぱり短歌っていうのはできるだけ効率的に言葉を使った事がいいので繰り返しも無駄な繰り返しは避けた方がいいんですがこの場合の最初の「まっさら」というのは勧進帳が白紙だったという「まっさら」。
結句の「まっさら」というのは剣さんがおっしゃったように弁慶の汚れなき心の白というその「まっさら」で2つの表情の違う「まっさら」を組み合わせたところに良さがあるんですよね。
なかなかできないです。
以上入選歌でした。
では栗木さんが選んだ特選歌紹介します。
栗木さんまず三席は?増田和代さんです。
おお〜!出てしまいました。
では二席お願いします。
喜多功さんです。
これもとても好きでした私。
迷いました。
命を頂くという感覚がとってもよく出ているなと思いました。
それでは一席お願いします。
奥山和俊さんの歌です。
(拍手)すご〜い初!初めてですよね。
何か月もやってて誰も一席を当てられなかったんですけどこれは何か舞台つながりで選んでみたというだけなんですが一席のポイントは?やっぱりね「まっさらな白」というところに毅然とした感じが出てて一種の掟破りの歌なんですよね。
「まっさら」を2回繰り返すというふうなね。
それが逆転ホームランで成功したというところが大変個性豊かだと思います。
はいありがとうございました。
さて栗木さん今日もまた「嘘」でちょっと作ってみましたので添削をお願いしたいと思います。
こちらです。
本当に毎回恥ずかしいんです。
私ほんとに。
でもこれはまあ我々舞台人はみんなこうやって嘘をつきながらも真の人生を生きているという対比で作ってみたんですけど。
舞台上はね虚構の世界なのでねほんとによく分かりますね。
嘘をつきながらその人の人生を生きていく。
いかがでしょうか?栗木さん。
嘘と真の対比がくっきりとしていて起承転結がねドラマチックに決まった歌でメロディーをつけて剣さんに歌って頂いたらいいけど2人で歌って頂きたいような歌なんですよね。
いい歌なんですけれどもちょっと気になったのが「生きる」と「人生」って意味の重複があるんですよね。
そこだけちょっと直してみました。
…とこうなります。
「わたし」の方に…。
そうすると一人の女性としてのわたしは一本筋が通った真実なんだという感じで一層歌がくっと立ち上がるかなと思います。
言葉を選ぶのはなかなか難しいんですけど一生懸命考えて違うふうにいくというのが大事ですね。
ありがとうございました。
これからも頑張って作っていきたいと思いますのでよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
続いては「入選への道」。
投稿作品にこうすれば入選に近づくポイントを伺います。
今日の歌は…。
自分の心情をぐっと見つめて詠んだいい歌なんですけどちょっと惜しいなと思うのが「ウソついて」の「て」「はりついて」の「て」それから「忘れて」の「て」というふうに一首の中に3か所「て」が出てくるんですよね。
そうするとどうしても何かね理屈っぽいというか理詰めで説明してるような感じがしてしまうので「て」を少なくとも1つは取りたいなと思います。
それでこんなふうに直してみました。
まず「て」は最後の「忘れて」の「て」を取ってそれからね全体的に切れ目がない調べなのでちょっとたどたどしい感じが残るんですよね。
ですから四句目で「道化のようだ」というふうに1回切れ目を入れてみました。
最後「泣き方忘れ」というふうに言い添える形にすると調べにメリハリが出るかなと思います。
ありがとうございました。
短歌作りの参考になさって下さい。
ここで投稿のご案内です。
続いては選者のお話。
栗木さんのテーマ…時田則雄さんは北海道の帯広で大きな農場を経営しておられる方なんですよね。
これは娘さんがまだ小さかったころの歌でいかにも雪の多い地方ならではのかわいらしい嘘だなと思いますね。
「耳やはらかし」というところにお父さんの言葉を聞く子供の純真さが表れているんですがでも娘さんの方が一枚うわてでお父さんのそういう嘘を十分承知の上で恥かかせないように話を合わせてくれてるのかなという感じもしないでもないですよね。
愛情あふれる歌ですね。
ありがとうございました。
それでは次のコーナーにまいりましょう。
今日もえりちょすが短歌を作ってきてくれました。
はいお願いします。
これ実は実話で私1個下に弟がいるんですけどあんまりお金持ちの家じゃなかったのでいつも私のお下がりを使っている弟にこんな事言われたらあまりうるさく言えなくてその場面を短歌にしてみました。
ほのぼのしていい話ですね。
すてきな歌ですよね。
いじらしいですよね。
新しいの欲しいって弟さんも気ぃ遣って言わない。
お姉ちゃんも嘘ついちゃいけませんとも言わないっていう。
心の交流がいいですよね。
いい歌なんですけどね気になったのが動詞がちょっと多いかなと思うんですね。
「穴が空いた」の「空いた」それから「嘘をつく」の「つく」それから結句の「黙って見つめた」2つありますよね。
特に最後の「黙って見つめた」というのは「黙る」と「見つめる」という2つの動詞を「て」でつないでますよね。
こういうふうにするとどうしてもかさばる感じしちゃうんですよね。
日常的には割合よく使ってるんですけど走って逃げるとか買って帰るとか笑って語るとかね。
ただやっぱり短歌の中ではちょっと気をつけてなるべく避けるようにした方がいいかなと思います。
それ2つが1つだと思ってました。
よく使いますよね会話する時ね。
やっぱり2つとカウントするのでね。
どういうふうに直せばいいですか?「黙って」っていう動詞を削って「まっすぐに」というふうにしたらどうかなと思いますね。
「まっすぐ」っていう名詞と「に」というのは助詞ですから動詞が1つ減りますね。
それと「見つめた」というのも動詞としては強く目立つ動詞なので「見た」ぐらいでいいんじゃないかなと思うんですね。
あと「弟の顔を」というのも字余りになってるのでその「を」も削ってもいいかなと思います。
じゃあちょっと直してみます。
お願いします。
先ほどの「て」「黙って」とか「〜して」の「て」もあれですし今思ったんですけど自分で作った時に動詞の数をちょっと線を引いて数えてみてこんなにあると思えば違う言葉を探して持ってくるという。
それ大事だと思いますね。
法則があるわけじゃないのでいくつからは多すぎるという事はないんですけどやっぱり4つとか5つになるとちょっと気をつけようというふうに片隅で意識した方がいいかもしれないですね。
説明しようとするから動詞をいっぱい使いがちなんですけどはい気をつけます。
これから。
書けましたか?できました!お願いします。
どうですか?すっきりしてますね。
画が浮かぶというか。
「まっすぐ」っていいですね。
気持ちの方向性が出て愛情も出てきますよねそこにね。
短歌作りに今後も生かしていきたいと思います。
さてお待たせ致しました。
岡さんが短歌を紹介して…。
今回テーマが「嘘」という事なので「嘘」というテーマで作ってみましたがいかがでしょうか?どうでしょう?すごすぎる。
まずこの達筆を見て下さい。
自筆なんですよね?自分で書いたんですけど。
そのまま飾れますね。
例えば彼女と話していてもものすごく真剣にお前しか考えてないんだよって言いながらまた別の相手にメールで今日何食う?みたいな感じで…。
実生活で…?想像です。
想像でございます。
こういうのがあるんじゃないかななんて思いながら想像の世界で書いたわけですがいかがでしょうか?現代の光源氏様のような歌ですが「死ぬ時に」って深刻に入ってねどんな内容にいくかと思うと最後「絵文字の軽さ」というふうにね軽妙なところに抜けていくというその流れがとっても自然ですよね。
作り慣れてらっしゃるって感じがしますね。
頑張って詠んでますからね。
こういう歌はねさすが光源氏なのでねサラサラサラって言葉が出てくるんですよ。
今度葉書で応募しますんで。
お願いします。
内容が私ちょっとショックでした。
そうですよね。
ちょっとイメージが。
でもイメージわくでしょ?いや岡さんのイメージが…。
これ私じゃないですよ。
あくまでも成り代わって…。
私もね知り合いにこういうのがいる。
知り合いですか…。
すごいです。
ほんとにお会いした時にひと言あまりにも字がお上手だったので短歌は作らないの?って…。
ほんとにその言葉で始めたので。
その言葉がちょうどよかったんですね。
発奮させるような言い方だったんですね。
岡さんお歌もお上手だし何か一つ「僕できないって言うのが嫌なんです」って言って必ずできるっていうふうに自分で考えて感性がとっても豊かなので言葉も語彙も豊富だしいろんな事が出てくる。
今日またいろいろ勉強になりましたのでまたちょっと作ります。
とてもいい質問をパッと投げかけて下さって問題意識とっても持ってらっしゃるなと思って。
今日またうち帰ったら3つくらい詠んでみます。
こうやって嘘をつきながらほんとに真の事を…。
稽古場にいても岡さんのつく嘘ってほんとに楽しくて場が和んで…。
嘘ばっかですよね。
それが楽しいんです。
そうですか。
これからますます作って頂きたいと思います。
でもほんと先生難しいです。
ですから何かこう挨拶の代わりに歌を詠んで相手にちょっと「こんにちは」の代わりに一首差し上げるとかね。
私もね一番最初そこから入ったんですね。
例えば稽古場でお菓子を出したりする時にその挨拶代わりどうぞの代わりに一首詠んだりとかそこから始めたんです。
ありがとうございました。
今日はわざわざお越し頂きました。
これからもずっと続けてまたいらっしゃって下さい。
栗木さんまた次回お願い致します。
それではまた次回お目にかかります。
2015/07/21(火) 15:00〜15:25
NHKEテレ1大阪
NHK短歌 題「嘘(うそ)」[字]

選者は栗木京子さん。ゲストは岡幸二郎さん。今回のポイントは動詞。無自覚に沢山の動詞を使って歌を作る人がいる。一歌の中に動詞はいくつまで許されるのか?司会 剣幸

詳細情報
番組内容
選者は栗木京子さん。ゲストは岡幸二郎さん。今回のポイントは動詞。無自覚にたくさんの動詞を使って歌を作る人がいる。一歌の中に動詞はいくつまで許されるのか?【司会】剣幸
出演者
【ゲスト】岡幸二郎,【出演】栗木京子,【司会】剣幸

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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