刑事野呂盆六〜スワンの涙〜 2015.07.21


(女性)ありがとうございます。
ありがとうございます。
野呂盆六です。
先生一つ…「野呂盆六」でお願いします。
(楢生鴻介)のろぼんろくさん。
あっそうだ。
文庫本も先生の初期のがあったんだった。
あ…。
こうですか?はい?ドンピシャだ…。
さっすが先生名推理っていうか。
今までこれ一発で当てたのは先生が初めてですね。
よかった。
近頃妙に勘が冴えてましてね。
あっどうもすいません。
先生握手お願いしていいですか?うわぁもうこれ仲間に自慢出来ます。
先生の作品初期の頃からずーっと拝見してまして特に前作のトリックにはもうおったまげましたね。
ハハハ…。
それはどうも。
あの…伏線といいどんでんの見事さといいもう…。
殊にヒロインの心理描写といい…。
(白鳥和沙)すいません。
失礼ですがセールスの方でしょうか。
は?あっごめんなさい。
てっきり接着剤のセールスさんかと。
あ…いやーこれは失礼しました。
あのー…。
ちょっとよろしいですか。
こちらへ。
あっお荷物。
あっ…すいません。
はい。
あの…先生も大変お忙しいお体なので…。
ありがとうございました。
あいやいや失礼しました。
あの…サイン会の関係者の人?はい。
あの人誰?ああ白鳥和沙さん。
通称スワンさん。
有名な編集者ですよ。
もう20年も楢生先生担当のジユウ文芸社の大ベテランです。
スワンさん僕らにとっても憧れの人なんですよ。
ハハ…あぁ。
(カメラのシャッター音)おはようございます。
おはよう。
スワンさんお疲れ様でした。
ありがとう。
サイン会無事終了いたしました。
(浦上信也)はーいお疲れ様でした。
売り上げどう?371人売り上げは386冊でした。
あぁ…また落ちたね。
さすがの楢生鴻介も神通力失せましたか。
お言葉ですが編集長。
読者の活字離れは先生の責任ではありません。
ご批判は内容本位でお願いいたします。
失礼いたします。
あぁーそうだスワン君。
帰ってきた早々で申し訳ないんだがね今楢生先生からお電話があってね帰りがけにでもお宅へ寄ってほしいという事なんだよ。
えっ?先生とはたった今お別れしたばかりなのに?うん…なんか言いにくい話でもあるのかな。
私たちもすぐ後から行くから。
「私たち」?
(早川小鈴)あっスワン先輩!ん?どうも長い間お疲れ様でしたー。
なーに?長い間なんて…。
あぁ編集長!
(小鈴)デザイン画!デザイン画出来ました。
(小鈴)ねぇねぇこれ可愛くないですかー?これイチ押しなんですよー。
(浦上)君の発想ユニークだからなぁ。
(小鈴)絶対可愛いってー。
(浦上)それがいいんだけどさ。
(浦上)万人ウケしなきゃダメだからね。
(浦上)それよりもこっちの方がいいと思うんだがなぁ。
(小鈴)地味ですぅ。
ただいま。
(テレビの音)
(テレビの音)おキクさん。
おキクさん!
(田中キク江)はっ!あ…お帰りなさいスワンさん。
ただいま。
いやーな天気になりそうね。
ねぇ。
あこれおみやげ。
好物の佃煮。
いやーいっつもすいません。
先生は上?はい。
あずっとお待ちですよ。
まだかまだかって。
ハハッけどおかしいですよね。
サイン会で今朝までご一緒やったのに。
そうなの。
こんな事初めて。
フフフ…。
(雷鳴)
(雨の音)
(プッシュ音)先生白鳥です。
(ノック)失礼いたします。
あの…ご用でしょうか?よく降るねぇ。
はぁ…。
スワン君。
実はお疲れのところわざわざ来てもらったのは話があっての事なんだがね…。
はい。
あ…いかんな。
どうも口下手でこういう話は苦手なんだが…。
はい。
白鳥君君が私の担当としてこの家に来るようになってからもう20年にもなる。
君には本当によくしてもらった。
特に母が倒れてからというもの君にはスケジュールの調整やら他社の仕切りまで任せっきりでまるで自分の秘書のように働かせてきた。
いつも心苦しく実は感謝していた。
いえそんな事…。
考えてみれば私はこれまで母の事で手一杯でろくにお礼も言えなかったがその母も去年ついに旅立った。
それで君にはこの辺で楽をしてもらいたいと思う。
楽を!?うん。
実は編集長とも相談したんだがねこの大変な仕事はもうそろそろ後進の若手とバトンタッチしてはどうかとね。
(雷鳴)それは…先生の担当を外れろという事でしょうか。
いやそう言っちゃあ身も蓋もないが…。
とにかく君にはもう楽をしてもらいたいんだ。
そこでこれはこれまでの私の気持ちといってはなんだがいや柄にもない事をすると笑わないでくれ。
母のお古で申し訳ないんだが貧しかった頃親父に買ってもらった物だそうだ。
これをぜひ君に受け取ってもらいたいんだ。
ありがとうございます。
頂戴いたします。
受け取ってくれるかね。
よかった。
ありがとう。
(小鈴)先生ー。
お疲れ様でーす。
(浦上)ハッハッハいや先生すごい降りですねぇこれ。
車から玄関まででグッショリですよハッハッハ…。
あ…そうだ先生。
えっとスワン君にはもう…?うん。
今快く承諾してもらってね。
あっそうですか。
そりゃよかった…いやいやそういう訳なんだよ。
ハハ…先生のたってのご希望でね君にはもう楽をさせてあげたいとおっしゃるから。
後任にはねこの早川小鈴君があたる。
君にはね週刊誌の家庭科学欄にでも回ってもらうつもりだ。
これからはさゆっくりと気楽にやってくれればいいから。
フッフッフ…。
ありがとうございます。
後の事は心配しないでください。
スワン先輩。
長い間どうもお疲れ様でした。
よろしくね小鈴さん。
はい。
では先生早速荷物をまとめますので。
実はね小鈴君まだ残務処理が残ってんだよ。
月末までに引き継ぎが終わればいいんだ。
それまではさ今まで通り頼む。
(小鈴)でも先輩。
今日だけはちょっと先生お借りしますね。
え?楢生先生新担任としての初仕事だ。
新刊についてね小鈴君がラジオのインタビューとってきたんだよ。
うん。
はーい先生。
行きましょう行きましょう。
おでかけおでかけー。
じゃあ後頼むね。
(浦上)小鈴君コートコート。
ああそっか。
じゃあスワン先輩行ってまいりまーす。
(浦上)ほら小鈴君何やってんの。
(小鈴)あーちょっと待ってー。
(小鈴)あ先生気をつけてくださいね。
許さない。
スワンさんが外された?それが後任はあの早川小鈴なんだとさ。
まさか!あの堅物先生が?やっぱりかわい子ちゃんのがよくなったのかしら。
しっ!編集長大変です。
なんだよ。
奥様が急にこちらへ。
えっ!?おはようございます。
(鷹ノ森克代)おはよう。
(一同)おはようございます。
(克代)おはよう。
白鳥さん今そこで小耳に挟んだのだけれどあなた楢生鴻介先生の担当外されたんですって?はい社長。
申し訳ありません。
実は最近少々過労気味でして勝手を言って私の方からそうさせて頂きました。
そう。
ならいいんだけど。
(電話)
(影山)男は毎週木曜と土曜に女を訪ねてるようですが人目を避けていっつも地下玄関から。
9時過ぎに現れた男はインターホンで女にオートロックを開けさせ約2時間後帰りはきっちり11時半。
(影山)これは婿養子の悲しさでオーナー社長の女房から門限は午前0時厳守。
これ破ったら即離縁。
会社はクビだと言い渡されてるんだそうですな。
これは?
(影山)ハハハ…それ。
それは今流行りの指紋認証ですわ。
登録された人の指を当てるとロックを解除する仕組みですわ。
ご苦労様でした。
これはお礼です。
領収証にはただ「上様」と。
用意してきてます。
おわかりでしょうけどくれぐれも先生のお名前だけは出さないように。
事務引き継ぎというほどの事はないんだけれど差し当たって大事な事だけお伝えするわね。
はい。
優しい先輩でとっても助かります!フフ…ありがと。
まずここがね締め切りの日には各社の記者さんたちの待合室になるお部屋。
はぁ…。
いいんですか?入っちゃっても。
先生はいつも明け方までお仕事なさってるからお目覚めはお昼なの。
あっ隠し金庫!鍵はこれ。
暗証番号はこれよ。
これからはあなたが扱う事になるのよ。
開けてみて。
いいんですか?右が4…。
来月からはあなたの部屋よ。
おぉー!スプリング。
フフフ…。
(携帯電話)ちょっとすいません。
もしもし編集長。
はい。
そうそう今ね先輩からいろいろ…。
(小鈴)今夜?アハハ…はい。
先生のお車よ。
これがキー。
出版社やご出張への送り迎えはあなたがする事になります。
私が運転していいんですか?ハハッやったー。
(ロック解除音)おぉー!すごーい。
勝手に開いた。
おぉー…ゴージャス。
うわぁ…。
この門は普段あまり使わないんだけどあなたはこっちから帰った方が早いだろうから。
(鍵を開ける音)うわーホントだー。
家が見えるんだー。
いいマンションよね。
歩いてほんの5分。
便利だわ。
小鈴さんあなたがあそこへ引っ越してきたのはついひと月前だけどもしかして今度の事はその頃からもうわかってたの?まーさかー。
単なる偶然ですよ先輩。
まぁいいわ。
偶然も実力のうちって言うものね。
じゃ私の引き継ぎはもう終わりよ。
ありがとうございました。
あっ丁度行かなきゃいけない時間。
失礼します。
あっ小鈴さん。
忘れ物。
いっけね。
先生。
(楢生)ん?さっき小鈴さんから先生への原稿の依頼を預かってるんですが。
小鈴君から?どんな?彼女今までいた週刊誌への置きみやげのような企画が通ったらしいんです。
グラビア企画ものでタイトルは『遺書』というんですが。
『遺書』?ハハハ…。
言うなればよくある最後の晩餐のバリエーションなんですがもし自殺するとしたら何を理由にでどんな方法でで最後に何を食べて死ぬかなど400字ほどにまとめて頂いて写真と一緒に掲載したいって言うんです。
有名作家7人の連載シリーズで先生はその第1回目だと。
うーん…そりゃ構わないんだけどねぇ。
はい。
5社の締め切りが重なっている事はもちろん承知しております。
それで大変差し出がましい事なんですが先生が以前ご冗談でお話しになっていた事を思い出して私が草稿のようなものをご用意してみたんですが。
どれ…。
うん…なるほど。
ハハ…さすがスワン君だ。
私のクセをよく掴んでるね。
ハハッおまけにオチまでついてるじゃないか。
ハハ…ありがとうございます。
あっそれから小鈴さんが申しますには原稿はそのまま写真に撮って載せますのでご面倒でも清書の形でいただきたいと。
よしわかった。
やってみよう。
あ…お願いいたします。
ところでスワン君この間のラジオだけど…。
それは小鈴さんの担当ですから私は…。
失礼いたします。
あいや…。

(電話)はい。
(楢生)「さっきの原稿書いてみたんだがね」これでいいかな?あぁ完璧です。
お忙しいところありがとうございました。
では早速小鈴さんに。
(楢生の声)「遺書」「あの世へ旅立つ手段として私は拳銃を選んだ」「何より潔い。
そして仕損じがない」「死を前にして私は極上のキャビアと極上のワインで最後の幸せに浸る」「拳銃はネットの裏ルートで手に入れたものだ」
(楢生の声)「拳銃の密売人などこの世から抹殺した方がいい」「もしも彼らの1人がどこかで死んでいたらそれは私がやった事かもしれない」ご指示通りに来たぜ。
待って!これどうやって撃つの?女かよ。
ハッ。
(銃声)
(パトカーのサイレン)あっちょっと!ストップ!
(シャッター音)悪かったねありがと。
擦ってるね〜。
(山波)ええ。
(藤堂)あんた誰!?いいからいいから…。
いいからいいからってよちょっとあんたね!ちょっとっとっと…。
イテテテテ…!
(阿武隈寅三)おいおいおいおい!いいんだよ!いいんだよ!こちら東京の警視庁からおいでになった野呂警部補だ。
あ野呂盆六です。
いやこのホトケさんうちで手配中だったもんだから。
あっ山波です!藤堂です!あ山波にとんどちゃん盆六です。
この塗料…黒い車でねぇ。
(3人)ほう。
あんた誰?えっあっ…。
私あの警部の阿武隈寅三です。
あー…。
似てないねー。
似てない?いやーアブにも熊にも虎にも象にも…。
これ急ブレーキかけてないねぇ。
(3人)ほう!そんでもってこれあっちさ行ってるよねぇ?あー…。
あちょっとちょっとおまわりさん!はい?ちょっと悪いけんどもこれ貸してくれる?すまねえなはいはいどうもどうも。
どっどちらへ!?盆六さん!?あ!あるねぇ。
あそこ!あっまたあったねここにも!あっはい。
すまないけどもあの殺害現場のとここの2か所3つのビデオのテープ借りておいてちょうだい。
はい!あっ!カメラ!
(テレビの音声)「今日未明ここ左京区にある下鴨のよつりつ倉庫で27歳の男性が血を流して倒れているのが従業員によって発見されました」まあ…。
「通報を受け警察が駆けつけた時には男はすでに死亡しており…」
(藤堂)殺害現場の様子が防犯カメラに残っていました。
お願いします。
(阿武隈)ああ!?これじゃ犯人全然わかんねーな。
次は逃走経路の防犯カメラの映像です。
あっ!今んとこ戻して。
はい。
あーっ止めて!はい。
ここもっと大きくして。
もっとでっかくあのーきれいに見えるようにしてちょ。
顔がわからんなー。
ただ男だって事しか…。
いやこれは女だね。
男物の帽子とコートでうまーく化けちょるばってん…。
これは女ですたい。
女?もう1つのテープは?ああっそこ!今ナンバー見えたよね?クソッこれもダメか!あの…これ科研に持ち帰ってあの…デジタル解析すればもうちっとよく見えるようになるよね?時間はかかりますがなんとか。
あっほんじゃ出来たら起こしてちょ。
盆六さん!盆六さん!はい?おはようございます。
何?どしたの?出来ました。
ありゃーこの下2桁わかんねぇの?ちょうど影になっていてどうやって見てもこれ以上は…。
だが…盆六さん!ここまでわかれば該当車両は多くてもたった100台だ。
みんなで1台ずつ潰していけば挙げられます。
すぐにリストを作ります!擦った跡ありませんね。
ないねー。
ああ車母ちゃんが乗って行ってしまいましたわ。
どちらへ?ああ今日は母ちゃん…これですねん。
ハハハ。
ああ…。
山ちゃん!あれだべさ!あっ…!出ちゃうよ!ちょっとすみませーん!ああっ!ちょっとすみませーん!その車待ってください!ちょっとすみませんちょっと!
(キク江)はーいお待ちどおさま。
おお出ましたおキクさんの手料理!いつもいつもどうもすみませんねぇ。
みなさん今日は長丁場になりそうだからしっかり腹ごしらえしといてくださいね。
はい。
いただこういただこう!
(口笛)「こすず」っと。
(チャイム)
(小鈴)はーい!あっ僕。
(ロック解除音)う〜んもう!お待たせー。
待った待ったぁ。
うう〜ん。
(笑い声)はぁー…おキクさん。
あとは上でやってくるわ。
先生への最後のプレゼント今日中に編んでしまわないと…。
おキクさんはこれが見たいんでしょ?いや〜よろしいんですか?ゆっくり楽しんでね。
すんませんフフフ。
はぁ…。
疲れたねぇ山ちゃんあと何台?1台です。
次で終わりですよ。
えーっと「楢生鴻介北区上鴨」…えーっと…。
ちょっちょっと…!え…。
山ちゃん!これ…あのほら!作家の楢生鴻介だよね!?さあ…。
行こ行こ!早く行こ!ズルすんなよー。
君からな!はい。

(小鈴)じゃあね。
(浦上)じゃあね!
(テレビの音)山ちゃんやっぱりそう!作家の楢生鴻介のおうち!間違いないよ。
ああそうなんですか。
山ちゃん…あった!あれですね。
…えっ?
(電話)はい。
お仕事中にすみません。
あのー例の遺書につけるグラビアの件なんですが。
ああここで自殺写真撮るって話ね。
急な話で申し訳ないんですがカメラマンの都合で先生さえおよろしければ10分で済ませるのでこれからお邪魔したいと…。
(楢生)「うんまあ10分ならいいよ」「ちょうど息抜きしようとしてたところだ」申し訳ありません。
(山波)ちょっと…!山ちゃん!これ…擦ってるよねぇ?ええ確かに…!最後の最後でビンゴだね。
(山波)はい!しかし今のモデルガンよく出来てるね。
まるで本物だ。
どう?スワン君。
こんな感じかな?いいえ銃口をもっとこう…。
ところでスワン君例のラジオのテープは…。
君…。
なぜゴム手袋なんか…。
はい指紋がつかないためですわ。
先生。
(銃声)盆六さん?どうしたんですか?今なんか…パーンって音しなかった?
(テレビの音)おキクさん見て!やっと編みあがったの。
ハッ…!
(テレビを止める)スワンさん…どうしはったんですか?今聞こえなかった?上でパーンっていう音が…。
あ…私今テレビ見てたから。
(物音)あれはなんの音?お勝手口です!誰か出て行ったわ!おキクさん表は私が見てくるから先生を!はい…!壊れちゃってるねこれ。
(山波)ええ。
ごめんください。
(キク江の悲鳴)おキクさんどうしたの!?先生が…!先生がどうしたの?先生!大丈夫ですか!?先生…!入らないでください!誰か!警察を呼んでください。
あのー私警察ですけど…。
(サイレン)じゃ一度部屋の方に。
これキャビアか?おい!いくつある?えー…4300…。
そうすっと…。
スワンさんが来た時に?はいはい。
(レコーダーのスイッチを入れる音)あ…スワンさんがマフラーを見せに来はった時に上でバーンって音がして…。
「あの音は何!?」。
それから私…急いでテレビ切ってそしたらお勝手口がバターンって閉まって…!スワンさんがこのドア開けたら裏門がガチャーンって閉まったんですよ。
そいでスワンさんに「私はこっち見てくるからあなた先生見てきて」って言われて私はすぐに2階に。
そいでスワンさんは外に…。
ああこのドア…ひとりでに閉まるんだ。
門の方も見てみます?はい?や…スワンさん。
あれ?私の事お忘れですか?あの…東京のサイン会で。
(シャッター音)よく覚えてます。
野呂盆六さん。
ハハ。
そんなクセの方あんまりいらっしゃいませんもんね。
よかった…なんも言わねぇから忘れられたのかと思って…。
私あまり顔に出ないほうなんです。
あー…あっそれで?えっ!?いや…さっき家政婦さんが階段から転げ落ちた時も先生の死体見つけた時もまるで顔色変えなかったから…。
なして自分で見に行かなかったんだべか?えっ?いや…。
2階でパーンって音がした。
ドアがバタンと閉まった。
誰か出てった?そしたら裏門がガシャン!普通先生の身が心配で真っ先に2階に見に行くんでないべか?そうね…そうだったわ…。
私どうしてたのかしら?はぁ…。
あっこっちですか?あっ。
どう?拭き取られてるみたいですね。
来た時門は閉まってました?ええ。
あれはあの…先生の物ですか?あっはい。
コートとお帽子はあのようにしていつも後ろに乗せておくのが常でした。
あのマフラーと…サングラスに手袋は?先生の物に間違いありません。
普段この車どなたがお使いですか?ほとんどの場合先生をお乗せして私が運転しています。
先生ご自身が運転される事はめったに…。
おとといの晩はどなたが?おとといは…。
いえ誰も使っていません。
はっ!?だがこの傷…どったら事になるだべか?あっ…変ねぇ。
先週からこの車使っていませんけど。
いやいや!しかしあの…おとといの夜11時18分確かに走ってます。
これが先生だと…?まだわかんねっす。
ただこの男…ピストル買って人殺してます。
まぁ…。
それじゃあの事件の…。
はい。
あの事件の犯人です。
(山波)警部補!はい?ちょっと見てください!おい!写真…。
はい。
どこ!?あっこれ髪の毛ついてるねぇ!女の髪の毛だねぇこれ。
大丈夫。
初七日までおいといてあげるわ。
(藤堂)おはようございます。
お休みのところご苦労様です。
どうぞ。
盆六さん!スワンさんが。
あっスワンさん入ってちょうだい。
いやーこげな隠し金庫本当にあったんですなぁ。
初めて見ました。
あ座ってちょ。
このお宅は先生がご病気でお倒れになったお母様のためにお買いになったものなんです。
戦前からのお宅で…金庫はそれ以前から。
お母ちゃんのために…。
あっ。
先生のお母ちゃん長患いだったそうだなも。
20年前にお倒れになってしばらくは杖をついてらしたんですけどそのうち車椅子の生活になってしまって…。
その間スワンさんあなたがずーっとお世話を?いえ…それは先生が。
若い頃散々苦労をかけたからこれからはそのご恩返しだとおっしゃって…。
私たちには一切手出しをさせませんでした。
あー…だども…お母ちゃんのために手いっぱいだった先生の身の回りの事をしてたのはスワンさんあなただった。
あなた高校出たての18から先生の担当になって以来お手伝いさん代わりとして秘書代わりとして献身的に働いてきた。
この20年間は先生に捧げてたようなもんだったって。
いえ私は何も…。
いつもおキクさんがいてくれましたから。
いやいやそのおキクさんがそう言っとっただすけ。
いやー…生涯独り身だった先生は何もかもあなたに頼りっきりでいずれ二人は結婚しはるんやないかと…思ってたと。
盆六さん。
お話はなんでしょう?や…こりゃ失礼。
この金庫を開けられる人は?私と先生ですけど…それが何か?いやゆうべはこれがこげな風に開いとって…中が荒らされたようになっとったんで誰かが何か持ち出したんではねぇかと…。
狙われるような物はなかったと思いますけど…。
なして先生の担当外されたんでやんすか?あ…外されたのではなく私の希望です。
だども編集部の噂では先生が突然言い出してあなたの代わりにもっと若い人と代えてくれって…。
刑事さん何がおっしゃりたいんですか?それからその変な言葉遣いやめていただけませんか?なんだかバカにされているようで神経に障ります。
いや…こりゃ許してくだせえ。
実は…私父親が転勤の多い仕事でこーんなちっちぇえ頃からあちゃこちゃ引っ越しばかりしてその土地土地の言葉かちゃ混ぜになってしまって何がなんだかわかんなくなって…しまいまして。
本題に入ります。
トンちゃんあれを。
(藤堂)はい。
藤堂なんですけどねぇ…。
先生の遺書です。
原稿用紙に書かれてまし。
はい。
血が付いてまし。
どう思われますか?どうって…普通付くのでは?そうでねえです。
普通書いたらこう置きます。
ほんでもって…バン!血は上から飛び散ります。
ところがこれは上から飛び散った物ではねぐて飛び散った血の上に置かれたもんでし。
ああ…。
どういう事かしら?先生が死んだあとで誰かが置いたもんでし。
つまりこれは偽装自殺です。
偽装自殺!?じゃあなぜ遺書が?それはまだわかんねえっすが…。
あ…机の一番上の引き出しからこんな物が出てきますた。
調査費63万円。
影山コンサルタントの領収証でし。
なんだかわかりますか?いえわかりません。
あ…あっそれからもう一つ。
この部屋に落ちてたもんがありまし。
髪の毛でし。
人間はどんな人でも本人の気がつかねえうちに1日70〜80本の抜け毛が落ちるそうです。
いや〜ホントに気がつかねえんだわこれが。
あ…この髪の毛見たところ先生の帽子の裏さくっついていた女の人の髪の毛と似てたもんで調査してみたらDNAが一致しますた。
まあ…誰の物だったんですか?いや。
まんだわかんねえっす。
あ〜…。
あっそれからあの…手袋とマフラーですけんども手袋からは指紋は出なかったけんどもマフラーからは微量の口紅とファンデーションが検出されました。
どこのメーカーのもんだか目下成分を分析中です。
あ…どうもお手間取らせますた。
スワンさん…。
はい。
恐縮ですけんどもDNAのサンプルとしてあなたの髪の毛1本頂戴出来やすか?
(コルクを抜く音)
(ため息)ごめんくだせえ。
(戸が開く音)はーい!
(戸が閉まる音)あわざわざどうも。
よ…よろしいですか?「よろしいですか?」ってもう入ってるじゃありませんか。
いやあこりゃどうも。
あの〜いくつか新事実がわかったもんで…。
どうぞ。
あ…失礼します。
なんとまあはあ〜素ん晴らしいおうちですなあ…。
いや〜なんともはやは〜ははっ。
ありゃ〜昼間っから一杯ですか〜。
ええですな〜。
盆六さんもいかがですか?はい?いや〜あなたに勧められると断るわげにはいがねえなあ。
で新事実ってどんな事ですの?は?あ…。
あの領収証の中身です。
まあ…。
この影山っちゅう男叩けば埃の出るヤツでした。
ほいでちょっくらと脅してみたらアッサリ白状しました。
スワンさんあなたこの男会ってますね?あなた写真を確認して代金支払って領収証を受け取ってる。
ほいだどもスワンさん知らねえと言った。
すいません。
プライバシーには立ち入らない事にしてますので。
あなたこれが先生からの依頼である事は内緒にしてくれと口止めまでしてる。
プライバシー?先生の?小鈴さんの?両方です。
先生の秘書代わりを務めて20年。
学んだルールです。
すっと先生がこれを?先生なして早川小鈴の事を調べようとしたんですか?先生はとても倫理観の強いお方でしたからご自分の担当としてふさわしい人物かどうかお知りになりたかったのではないかしら。
先生これ見てなんて?さあ…。
私は封筒のままお渡ししただけですから。
あ…編集長の奥さんはジユウ文芸社のオーナー社長だそうでしゅね?この2人の関係を知ったとしたらどうなると思いましか?さあ…。
仮にもし社員との不倫がバレたらどうなりますか?会社の人にそれとなく訊いてみたらば即離婚…2人はクビだろうという答えでした。
まあ…。
つまり早川小鈴にとっても編集長にとってもこの写真の存在は身の破滅を意味する。
だから…金庫の中のこの写真を取りに行ったと考えられないですか。
まさか…そしたら偶然先生が目の前で自殺したと?ああ…。
ちょっくら…これ見てくだせえ。
スケジュール表に書かれてた謎の落書きですがこれなんでっしゃろ?これ先生が昔から使っているダ・ヴィンチと同じ鏡文字なんです。
鏡文字!ははは〜…。
あ…だからこうすると…。
「Kosuzuisyo400字」…。
すっとこれどういう事に?いやだわ。
これだと小鈴さんが先生に『遺書』という原稿を依頼した事に…。
あ〜…。
やっぱそげになりますか。
まあ。
わかってたの?あっ…。
過去のスケジュール表を調べてみたらば先生原稿の依頼があるたんびに「誰それテーマ何枚」とそれこそ几帳面に書き込んでおられる事がわかりました。
それじゃああの遺書は…。
でもまさか小鈴さんが…?スワンさんあなた彼女に…。
おキクさんの話によると担当の引き継ぎをしてますね?車のキー隠し金庫の合鍵と暗証番号。
それから裏門の合鍵。
全部彼女に渡してる。
けどもあなたその事を言わながった。
私関係ない事だと思いましたから…。
車隠し金庫裏門…。
今回の犯行にはすべて関係してます。
車は先生に化けてピストル買いに行ぐのに使った。
注文はネットカフェのパソコンからで…。
この店は早川小鈴がよく使っているもんでした。
つまり自殺と見せかけて先生さ殺して隠し金庫の中の写真さ奪って裏門から逃走した。
この裏門の出た突き当りが早川小鈴のマンションです。
あなたその事も言わながった。
ええ…。
だってまさか小鈴さんが…。
裏門からの通路にはなんか燃すたような跡がありました。
灰の成分を分析したらば写真を燃した跡だという事がわかりました。
でも盆六さん先生がお飲みのワインとおつまみのキャビア私が言われて用意したんですよ?はい…。
それだけが宿題でし。
ばってん動かぬ証拠が出たとですて。
え?では…。
DNAです。
書斎に落っこっとった髪の毛と早川小鈴のDNAが一致したとですたい。
待って。
小鈴さんは事務引き継ぎの時書斎に入ってるんです。
髪の毛はその時に落ちたんでは?はいはい。
それは私も考えました。
けども事件当日の土曜日の朝おキクさんが掃除機かけてます。
週に1回の掃除だもんでおキクさん念には念を入れてちり一つ残さぬように何度も何度も掃除機かけてます。
ですからあの髪の毛は事件当日の物と考えてまんず間違いねえだす。
フフッ。
フフフ…。
アーハハハハハハ…。
ワン…ツー…スリー…。
オーレッ!ハハハハハ…。
(小鈴)いきなりなんちゅー事言うんよ?私が編集長の女!?体使うてスワンさんの後釜に座った?一体誰が言うてんのそんな事!誰っちゅう事もねえでし。
まあもっぱらの噂で…。
だから誰が言うてんのよ!?いやだから…。
私はなこれでも自分の実力で…。
これでもまんだ否定しますか?こんなもんどこで手に入れたん?は?これが警察のやる事?人の秘密かぎまわって何が嬉しいんよ!?先生に遺書を書かせたのはあなたでしか?遺書!?私がなんでそんな事せなあかんのよ!?おとといの晩どこにいますた?うちにおりました。
それがどないしたん?そのアリバイ証明してくれる人はおりやすか?アリバイ?何?私疑われてんの?楢生先生…。
(シャッター音)あれ自殺ちゃうんかったん?よくご存じで…。
冗談やないわよ。
アリバイぐらいちゃんとあります。
証人やてちゃんと…。
(浦上)お待たせ〜。
地下玄関のこれ指紋認証の入館記録でし。
おとといの晩23時49分あんた外から帰って来てる事が記録されてまし。
それまでどこで何をしてらした?私…裏の神社まで…。
裏の神社?そったらとこで一体何しとったですか?これよ。
は?この写真とメモが私の車に挟まってあったの!でそのメモに「裏の神社まで来い」って書いてあってん。
せやから…。
その写真とメモどこにあります?知らんわよそんなもん!破って捨てました!そんなもん大事にとっとく人がどこにおんのよ!何やってんの?早う帰れや!早う!はいはいはい。
何よ!おっさん!
(シャッター音)アホ!!まあ小鈴さんが?あの人どうもカッとなりやすい人みたいで物投げつけるやら神経質なチワワみたいに騒ぎ立てるやね。
それで彼女アリバイの事は?いやあそれが…。
誰かに脅されて裏の神社さ呼び出されてたなんてまあどうもまるで話になんなかったです。
まあ…。
(小鈴)おりゃ〜!スワン!!あっちょっとちょっと…。
どけや!あんた私をはめよったな!?あんな写真で私誘い出して。
ほんでアリバイつぶしといてから先生の事…。
小鈴さん酔ってるの?とぼけんなや!私にはわかっとんねん。
あんた私に先生取られたもんやからその腹いせに先生殺してほんで私に罪なすりつけようとしたんやろ!?小鈴さんそんな事言わない方がいいわ。
自分がやった事を告白しているように聞こえるわよ。
なんやと〜!?この雌狐!!あ〜ちょっとちょっと!あばずれ!ズベタ!放せや!ちょっと誰か!山ちゃん!
(小鈴)行き遅れ!あ〜!ちょっと!放せ!
(小鈴)絶対許せへんからな!すいません。
サワちゃんもう1杯!
(店員)小鈴さんもう今日はそのくらいにした方が…。
何?黙って出したらええんちゅうに。
黙って出したらいいでしょ。
今日は飲みすぎですよ。
うるさいわ〜!わかりました…。
早う出せ!!あの子から絶対に目を離してはなんねえ。
盆六さんは彼女が犯人だと思ってるんですか?いやそりゃあねえでし。
飲んでないよね?もちろん。
早川小鈴の言うとる事はおそらく全部本当の事だで。
それじゃあなぜ彼女を?もしも君たちが本ボシだとしたらあの子どうしたいですか?そりゃ彼女は今状況的には真っ黒だから…。
出来ればこのまま死んでくれるのが…。
(小鈴の泣き声)はい。
もうこれで最後ですからね。
もう1杯〜!
(グラスの割れる音)何してはんの?あっ警部さん。
すいませんこれちょっとお願い出来ますか?ははい…。
(小鈴)スワンのアホ!絶対あいつが殺したんや!もう!ええ。
今寺町通りを四条に向かっています。
かなり酔っ払っててまるでおっさんみたいです。
おっ三さん。
あ今トイレに…。
え?大丈夫ですよ。
これ預かってますから。
預かってるって…。
(女性)人のバッグ持って何やってんのよ!もう!え…?あかん!やりよった!しもうた!三さん…何しとるんだ!すんません!
(阿武隈)「スワンが逃げた。
そっち行くかもしれん」「すぐに早川小鈴を保護するんだ」はいわかりました。
保護するぞ。
すいません。
ちょっとすいません。
(小鈴)邪魔や!うんもう!なんか燃えてんで!火事だ!山波さんバイク!バイクが燃えてます!おい!消火器借りて来い!皆さんさがってて!ほらさがってて!危ないから!
(小鈴)ああ〜!脱げる!もう!くっそ〜…。
おい!何やってんだよ!?女は!?あ…すいません!この騒ぎに気をとられて…。
バカタレが!バカタレが!すいません!捜せ!気持ちいい〜!スワンのバ〜カ!あ〜!よっ!
(小鈴)ジャバジャバジャバ〜…。
な〜んや。
誰もおれへんやんけ!
(クラクション)キャ〜!
(急ブレーキの音)
(鼻歌)おはようございます盆六さん。
ああスワンさん。
あっちょっとそのまんま…。
(シャッター音)ヘヘヘヘ…。
いや〜キレイなお花だなあもう。
このへんでパ〜ッと明るく気分を変えようと思って。
ゆうべも小鈴さんがあんな事になったでしょ?あ〜…。
まあ命だけは取り留めますたが…。
まだ意識が戻らないんですってね。
ニュースで見ました。
でも彼女なぜあんな事を…。
よくわがんねえっす。
何をしてらっしゃいますの?え?いや…これあのドアクローザーというそうで…。
開けたらば…閉まる。
ええ。
それで?事件の晩誰かが逃げてった。
バタン。
ほいでもおキクさんによく聞いてみっとこの音さ聞いただけだった。
バタン。
えぇ。
でも私たちすぐその後で裏の門が閉まる音も聞いてるんです。
はい。
確かに。
(キク江)「スワンさんがこのドア開けたら裏門がガチャーンって閉まったんですよ」スワンさんがこのドア開けたら裏門がガシャン。
どげなトリックさ使ったらそったら事なれるかと。
トリック?盆六さんそれ聞きようによっては私が疑われてるように聞こえますけど。
はい。
疑ってまっし。
ゆんべはあの後どこさ行ってますた?真っすぐうちに帰ってましたけど。
そんではなくて!あなたオートバイ燃して人の気そらした後早川小鈴の背中を後ろから突き飛ばした。
フフフ…面白い考え方ね。
証拠はあるの?ねえっす。
フフフ…。
お話にならないわね。
刑事さん。
失礼。
何探しとりやす?いや〜…つまらないものなんですけどね。
「立つ鳥跡を濁さず」。
私ねぇちっちゃな事でもキチンとしてないとイヤなんですよ。
ほいだて何を?たこ糸の残りが半束ぐらいとあと竹ぐしが何本か。
うなぎ用のやつなんですけどね。
あぁたこ糸竹ぐし…。
おキクさんここにもお花飾るわね。
あと1日で私たちも出て行くんだから。
これが最後のお屋敷奉公。
あぁ…そうや!スワンさんごめんなさい。
私あの日先生からお願いされたものバタバタ続きですっかり忘れてしもて。
無理もないわ。
私も半分死んだみたいだったもの。
で預かったものって何?これなんですけどねぇ。
スワンさんにぜひ聞いてもらいたいから私から渡してくれって先生が。
あの…あの日のラジオのインタビュー。
ありがと。
まぁ聞いておくわ。
あぁすいません。
(咳払い)わぁ…キレイな小菊。
ついこの間までつぼみだったんですよお母様。
へぇ…もうすっかり春だわね。
すみませーん!ボールとってくださーい!うおっ!え?
(子供たち)ありがとうございまーす!先生ー!ねぇスワンさん。
はい。
あなたがあの子のお嫁さんになってくださるといいのだけれど。
そんな…。
あの子あの通り口下手でうまく言えないんだけれど本当はあなたの事が大好きなんですよ。
でも年の差を気にして言い出せないんですよ。
お母様…。
私は先生のおそばにいるだけで幸せなんです。
今の話内緒よ。
すいませーん!おばさーん!ボール頼みまーす!ありがとう!
(子供たち)え?
(子供)なんで蹴るんですか!とってくださいよ!ケチ!ここは思い出の公園だそんですな。
先生はいつもお母さんと一緒にここを散歩しておられた。
いっつもあなたが一緒だった。
散歩から帰ってくるとあなたは毎日幸せそうな顔をしてたとおキクさんは言ってました。
その幸せを壊された。
20年間の幸せがおっかさんのお古の指輪になった。
それがあなたの動機です。
だからあなた先生を殺した。
あきれたわつけてきたのね。
そんな暇があったらドアのトリックでも解いていたら?はい解きますた。
あの夜あなたワインとキャビアまで用意して先生に拳銃を握らせた。
まぁ状況的に考えて例えば原稿の遺書に合わせたグラビア写真を取りに来るからとでも言ったんじゃないかと思います。
謎解きになると訛らないのね。
はい長年のクセでして。
あなたは先生にポーズをとらせモデルガンだと思わせて本物のピストルを握らせる。
そして…バーン。
そうしておいてあなた用意しておいた…。
遺書を机の上に置き領収証を引き出しの中に入れ…。
そして隠し金庫を…。
あトンちゃん。
荒らされたように見せかけておいて早川小鈴の髪の毛をじゅうたんの上に落としておいた。
ここからがドアのトリックです。
仕掛けはこの竹ぐし1本。
こうやっていくと閉まろうとするドアの力でたわんできます。
まぁ折れる時間は何本かテストしてみてあらかじめ計算してあった。
それからあなたキッチンへ向かいます。
そこで自分のアリバイ作りのためにおキクさんに対してたった今銃声を聞いたフリをした。
(キク江)「スワンさんがマフラーを見せに来はった時に上でバーンって音がして…」「あの音は何!?」「それから私急いでテレビ切って…」「急いでテレビを切って…」。
その時まではおキクさん西部劇を見てました。
つまり実際には聞いてない銃声なのにあなたにうまく暗示をかけられてしまったんです。
(キク江)「そしたらお勝手口がバターンって閉まって…」
(ドアの閉まる音)
(キク江)「あぁ…今誰か出てったわ」「スワンさんが…」「誰か出てったわ」。
ここでもあなたおキクさんに暗示をかけて飛び出します。
(キク江)「スワンさんがこのドア開けたら裏門がガチャーンって閉まったんですよ」ここであなた実にシンプルで子供騙しの手を使った。
いいですか?開けますよ。
山ちゃんいいかーい?
(山波)どうぞー!
(ドアの閉まる音)あっ!ど…どうやったんだね!盆六さん!山ちゃんいいかい?はーい!トンちゃんいくよ。
はい開けて!
(藤堂)開けます!あちっ!!そこであなた賊を追うフリをして…。
急いで裏門のところへ行ってたこ糸を回収してきてまた元の場所へ戻りあそこでこの竹ぐしを拾ってどっかに隠し持ち中へ入ったらちょうどおキクさんが階段から転がり落ちるとこだった。
アハハハハハ!アハハハハ…。
楢生鴻介先生の代筆でミステリーが書けそうねぇ。
フフフン。
なかなか面白い推理だわ。
でもそれだけの空想で私が犯人だという証拠になるの?ピストルから私の指紋でも出たの?私の指から硝煙反応でも出たの?いえ。
接射の場合爆発カスは皮膚の下に入りこんで手にはつきません。
ただし先生の車の手袋の右手からは明らかな硝煙反応が出ました。
密売人を殺した銃弾と先生を殺した銃弾は同じピストルから発射されたものである事もわかっています。
残念ながらどれも私が犯人だという証拠にはならないわね。
盆六さん…。
意識が戻るのを待ってもう一度早川小鈴を調べ直した方がいいんじゃないの?私はもうこの家には戻らないから。
あ…シャッターここっす。
(シャッター音)これでお別れね。
このヤマこれでもう打つ手なしですかねぇ。
くそぉ…敵さんの方が一枚上手か。
このままだと完全犯罪成立だぞ。
いいやまーんだあるはずでし。
お別れねさようなら。
あーそれ捨てねぇ方がいいと思いますけんど!あきれたわねお見送りのつもり?新しい証拠が出たもんで。
フフッ…また言葉が戻っちゃってんのね。
まんずこれピストルの密売人を殺した時に犯人がしてたマフラーですがこれについとった口紅とファンデーション…。
あなたが小鈴さんとわざと同じ化粧品を使ってつけておいたんじゃ…?フフ…強引なこじつけだわ。
私がそれを使っていたという証拠でもあるの?いい?あの日車は犯人が使ったのよ。
車には犯人しか乗っていなかったのよ。
はい。
車には犯人しか乗っていなかった。
ではもし仮にその車の中からあなたのものだという証拠が出たらスワンさん…あなた車に乗っていた事はお認めになりますね?あらまた訛らなくなった。
それじゃまるで私が乗ってたという証拠でも出たみたいね。
はい。
出ました。
はいストップ。
それがあなたのいつものクセです。
私もよくやりますそこで思い出したんです。
で調べ直してもらう事にしました。
もしやこの右手の手袋の中指にあなたの唾液がついてやいないかと。
出ました。
そしてそのDNAとあなたの髪の毛のサンプルが一致しました。
迂闊だったわ。
指紋はつかないように気をつけたのにね。
お見事よ盆六さん。
いつから私だってわかったの?やっぱりおキクさんを2階に見に行かせた事から?はい。
あなたのような優秀な編集者がする事ではないと…。
(車の音)スワンさん。
あなたこのテープ聞きませんでしたよね。
あなたが先生から指輪をもらった日…。
ラジオのインタビューに答えた先生のテープです。
放送は3日後でした。
あなたそれも聞かなかった。
忙しかったのよ事務引継ぎでね。
先生はぜひともあなたにこれを聞いてもらいたかった。
そうすれば先生の大事なメッセージを勘違いしてあんなバカな真似はしなかったと思います。
え?勘違い?インタビューが終わった後先生は突然ある文章を朗読したそうです。
これを聞けばそれが誰に当てたものであるかわかるはずです。

(楢生)「お古の指輪」「それは安物の指輪だった」「見栄えもよくない古びた母の指輪」「母はこの指輪を一番苦しい時に父からもらった」「父は母に散々苦労をかけっぱなしで死んだ」「それから母は女手ひとつで私を育てた」
(楢生)「心臓病をかかえた病弱な体で節くれだった母の指にその指輪はいつもはめられていた」「何十年もの苦労の象徴だねと私が言うといいえ希望の証しだったわと母は笑った」「だって苦しい時ほど希望がいっぱいだったんだもの」「母の形見は希望の指輪だった」「私はこのかけがえのない希望の指輪を私の生涯の伴侶に託すつもりだ」先生はあなたをクビにしたわけじゃなかった。
口下手だった先生はきっとこんな方法でしかあなたにプロポーズ出来なかったんですよ。
いやぁ…いかんなぁ。
どうも口下手でこういう話は苦手なんだが…。
スワン君ありがとう。
20年もの間よく耐えてくれた。
君にはもうこの辺で楽をしてもらいたいんだ。
そこでこれはこれまでの私の気持ちといってはなんだがいや…柄にもないことをすると笑わんでくれ。
受け取ってくれるかね。
よかった…ありがとう。
あらら?私おいていかれちゃった?あらら…どうして帰ったらいいのよ。
なんだ…。
あぁちょっ…。
ちょっ…ストップ!ちょっとあなたストッピー!!浜辺に月が銀貨をまき散らしたようだ…見えますか?2015/07/21(火) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
刑事野呂盆六〜スワンの涙〜[再][字]

新コロンボ登場!警視庁の天才刑事野呂盆六が美人編集者と対決!人生を賭けて仕掛ける悲しい完全犯罪。二重・三重に張り巡らせた鉄壁なアリバイをどう崩すのか!?

詳細情報
◇番組内容
人気作家・楢生(中村敦夫)の担当編集者・和沙(床嶋佳子)は20年公私とも人生を捧げてきたが、突然担当を外される。復讐を決意、完全犯罪を実行する和沙に天才刑事・盆六(橋爪功)が鉄壁のアリバイ崩しに挑む!?
◇出演者
橋爪功、床嶋佳子、中村敦夫、馬渕英俚可、佐戸井けん太、春やすこ、菅田俊、馬渕晴子、立石凉子 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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