(新番組)相棒Eleven 2015.07.21


(甲斐享)なんなんすか!何見てんですか小松さん。
(大木長十郎)大木。
(小松真琴)小松。
あ…すいません間違えました。
杉下さん。
杉下さん杉下さん!
(杉下右京)どうしました?俺ここに来てからなんにもしてないんですけど。
やはり若いと暇を持て余しますか。
いや若いとか関係ないですから。
なんか仕事とか…なんかないんですか?あっそうでした。
ぜひ君にお願いしたい事がひとつ。
なんすか?特命係の名刺お二人分です。
これの事かよ。
「人材の墓場」って入ってないんですけど。
えっ?甲斐享初めてのおつかいから無事帰還致しました。
ちょうど今戻りましたので代わります。
君の元上司の方からです。
え?もしもし。
あっ堀江係長。
えっ来い?腕を落とした?
(堀江邦之)って言っても石膏の作り物なんだけどな。
なんか高価なものらしくてさ。
(堀江)坂巻さんあとはこの特命係の甲斐享が承りますんで。
任せたから。
頼んだよ。
ちょっと…!なんで俺なんですか。
特命係って要するになんでも屋なんだろ?よろしく。
え〜…。
(坂巻百合子)よろしくお願いします。
わたくし坂巻と申します。
あ…はい。
ホワイトグラブズってオークションハウスの…?よーくご存じで。
実はなくしたのは次回のオークションにかける予定の『エド・クレメンスの腕』なんです。
エド・クレメンス?70年代のアメリカのジャズ界を席巻したピアニストでわずか30歳で亡くなったんですがその天才的な技法は「奇跡の指」と呼ばれまして…。
生前彼が自ら腕を型取りしたものに現代美術家のホセ・バローロが彩色を施したこの世に二つとない宝です。
そんな大事なものどこでなくされたんです?今朝自宅から会社へ向かおうとタクシーに乗ったのですがうっかりと置き忘れてしまって…。
でしたらタクシー会社に連絡しないと。
個人タクシーでしたしレシートはもらえませんでした。
タクシーセンターにも連絡したんですがいまだに届け出はないと。
でしたら拾い主が現れるのを待つしかありませんね。
ですが5日後のオークションの目玉の商品なんです。
なんとか見つけ出してもらえないでしょうか?うーん…。
マスコミに声をかけてみたらどうでしょう?拾った人が有名なものだって知ったらすぐに届け出るかもしれません。

(ピアノ)」
(盛谷弘光)「エド・クレメンスはねまさに不世出のピアニストです」「その彼の腕を型取ったオブジェ」「これはまさに世紀の至宝と言っても過言じゃありませんな」「美術品としてもかなりの価値らしいですね」「落札価格も当初は1000万円の予想だったのが紛失事件のおかげで3000万円に急騰したと言われているそうです」騒動のおかげで値が3倍につり上がるとは大した宣伝効果ですねぇ。
出てこないんじゃ意味ないですけどね。
(電話)はい特命係。
今からですか?
(中園照生)甲斐享を特命係に異動させたのは杉下お前の差し金だそうだな。
どうしてそんな真似をした?特にこれといって申し上げる理由はないのですがねぇ。
(内村完爾)お前の魂胆はわかっている。
警察庁次長の息子を人質にしておけばお前がまた何かしでかしても特命係の処分は甘くせざるを得ないという姑息な計算だろう。
そのような事は露ほどにも考えていなかったのですが言われてみれば確かに。
なるほど…なるほど。
あっ…!ちょっと待て。
あの人なんで俺の事指名したんだと思います?
(角田六郎)そりゃあ名前のせいだろ。
名前?うん。
お前のひとり前が神戸尊。
なっ?はい。
でその前が亀山薫。
でお前が…。
(2人)甲斐享。
ほら!みんなお前…「か」から始まって「る」で終わってるだろ?この法則俺が見つけたんだよ。
馬鹿馬鹿しい。
(電話)ちょっ…。
はい特命。
え?腕が見つかった?富塚さんお願い。
(富塚修一郎)間違いありません。
傷もないようです。
ああ…!本当によかった…。
あちらの方が先ほど届け出てくださって…。
ちょっと失礼します。
えー…相沢良明さんね。
どちらで拾われたんですか?
(相沢良明)あんたは?ああ…。
こういう者です。
「特命係」?そうですが質問に答えてください。
だから3日前に六本木でタクシーに乗って降りようとしたら足元に置いてあったから…。
なんでその時運転手に渡さなかったんです?そりゃあ万一金目のものなら降りたあとで交番に届けりゃ落とし主から謝礼をもらえると思っただけだよ。
だったらどうしてすぐに届けなかったんですかね?ただのガラクタみたいだったし日雇いの仕事が急に入ったんだよ。
届けたんだからいいだろ?俺だって謝礼さえもらえれば文句はないんだから。
本当にありがとうございました。
正式なお礼は後日改めまして。
とりあえず今日のところはこれで…。
おお…いいんすか?ならありがたく。
それで君はのこのこ帰ってきたわけですか?やけに引っかかる言い方ですけど何か?確かにその拾い主の相沢という人がその腕をタクシー運転手に渡さなかった理由は筋が通っていますねぇ。
見るからに金に困ってたみたいですから。
ですが遺失物は駅構内や店舗内で拾った場合24時間以内に係員に提出しない限り報労金の受け取りまた落とし主が判明しなかった際に遺失物自体を引き取る権利を失う。
これ警察学校で習ったはずですがねぇ。
わかりましたよ!だったらこの相沢って奴に金を返すように言えばいいんですよね?一応そうしておきましょう。
はいはい。
「この番号は現在使われておりません…」あれ?おかしいな。
どうしました?いやかかんないんです。
ちょっと失礼。
おや。
僕の記憶では台東区清川は2丁目までのはずですが…。
電話も住所もデタラメっすか…。
妙ですね。

(米沢守)被害者は相沢良明。
住所不定。
この先の簡易宿泊所で寝泊まりしていたようです。
(米沢)これ鍵です。
(伊丹憲一)後頭部に傷があるな。
致命傷か?
(米沢)詳しくは解剖を待たねばですが恐らく撲殺でしょう。
死亡推定時刻は昨夜の10時から11時の間かと。
(三浦信輔)凶器はこれか?
(米沢)被害者の毛髪と血痕が付着してました。
(芹沢慶二)ここにあったやつを使ったみたいですね。
それから上着のポケットから面妖なものが…。
(伊丹)面妖ってなんだよ?もったいぶらずに出せ。
ん?あれが甲斐享か。
なめた格好しやがって。
でどうします?おい警察庁次長っていったら警察組織のナンバー2だぞ。
その息子の機嫌下手に損ねたら…。
いやこういうのは最初が肝心だ。
ガツンとやってやる。
おい!甲斐享だな?ちょっと話を聞かせてもらおうか。
あっ!赤バッジ。
一課の方ですか?俺いつかは一課にって思ってて。
だから何かあったらぜひ声かけてください。
おう。
なんでもしますから。
おおなかなかいい心がけだな。
ガツンとやられてますね。
一課の皆さんがカイトくんに何かご用でしょうか?カイトくん?ええ。
へえ…。
おたくこれに見覚えは?俺の…あれ?でも誰にもまだ渡し…あっ!あの相沢って奴の…。
相沢さんがどうかしましたか?ええ南千住の廃工場で死体で見つかりました。
(三浦)どういう関係か教えてもらえますか?いやどういう関係って…。
最近話題の『エド・クレメンスの腕』ご存じでしょうか?
(享の声)その件で昨日中根署で相沢と会って名刺はその時に。
確か落とし主の坂巻社長はその場で相沢さんに現金の謝礼を渡したんでしたねぇ。
ええ50万円くらいでしたね。
ああそういえば被害者は殺される前近くのキャバクラでかなり豪遊してたって…。
(伊丹)って事は店で機嫌よく札びら切って飲んでたのをたちの悪い客に見られたあげく待ち伏せされて現場に引きずり込まれた。
その店でもう一度聞き込みだ。
どうも。
どうも。
どうも。
(せき払い)一課の芹沢です。
何かあったら自分のところに遠慮なく来ていいから。
俺あの2人ほど怖くないんで。

(米沢)どうも杉下警部。
どうも。
こちらが巷で噂の…?特命係新人の甲斐享です。
やはり私の予測が当たりました。
実は特命係に来る人間の名前にはある隠れた法則がありましてですね…。
それもう聞きましたから。
えっ?無闇に手を触れないでください!まだ鑑識中ですよ。
何かめぼしい手がかりは?凶器からは工事関係者以外の指紋は見つかりませんでした。
犯人が拭き取った痕跡もなく恐らく手袋などをしていたんでしょう。
それよりちょっと気になる痕跡がありましてですね。
こちらですな。
ここなんですけども…。
四角い箱状のものが置かれていたようですねぇ。
(米沢)形状からみてジュラルミンケースの底の突起だと思われるのですが興味深いのはですねこの辺りです。
ひょっとして蓋ですか?恐らくこのサイズのケースが蓋を開けた状態でこういうふうに置かれていたはずです。
その証拠にこの一角だけ血痕が見つかっていません。
それからですねポケットの奥からタクシーの領収書が。
9月18日。
腕が拾われた日です。
この方なんですが…。
(中村)ああこの人ね。
覚えてるよ。
4日前この女性を乗せたのもここだったんですね?そうだよ。
何台かタクシーがいたんだけどこのお客さんがね…。
(百合子)お先どうぞ。
あなたもどうぞ。
ありがとうございます。
六本木のホワイトグラブズまでお願い。
はい。
(中村の声)でホワイトグラブズの前につけようとしたら…。
ここでいいわ。
(中村)はい。
お釣りは結構です。
あっ…わかりました。
お気をつけてどうも。
(中村の声)降ろしてすぐの客だったんでついてるなーと思って。
正直忘れ物があったって全然気づかなかったよ。
うーん…。
まさか…。
ええ相沢さんがこのタクシーを拾ったのは偶然ではなかったようですねぇ。
ホワイトグラブズ実は一度行ってみたかったんです。
どんなに気取ってもしょせんは金持ちの道楽ですよ。
おやオークションの世界に詳しいようですねぇ。
いえ身近にあそこの常連がいるだけです。
なるほど。
すっげえな…。
(川南夏彦)お待たせしました。
骨董担当のスペシャリストで川南と申します。
どうぞこちらへ。
いやあそれにしても見事なコレクションですねぇ。
全て彼の目にかなったものばかりです。
富塚はロンドンの有名なオークションハウスにおりましたのよ。
ああそれは素晴らしい。
私などは富塚に憧れてこの世界に入ったようなものですから。
で今日はどのようなご用で?実は『エド・クレメンスの腕』を拾われた相沢良明さんが今朝遺体で発見されました。
その件についていくつかお話を伺いたいと思いまして。
俺からいいっすか?どうぞ。
どうも。
どうしてタクシーだったんです?なんの事でしょう?いや…。
オークションに出品予定の高価な品を運ぶには会社の車かせめてハイヤーでしょう。
それにどうして正面じゃなく裏の路地でタクシーを降りたんです?その答えは降りた直後のタクシーに他の誰でもなく相沢を乗せるため。
『エド・クレメンスの腕』はうっかり置き忘れたんじゃなく最初から相沢に拾わせるつもりだった。
マスコミを利用して価格をつり上げるために。
違いますか?
(2人の笑い声)あの日タクシーを利用したのは急いでいたから。
それ以上の理由はございません。
ちなみに弊社は社用車を持っておりませんしハイヤーの契約もしておりません。
でも現に降りたのは…。
正面を使わなかったのは通用口の方が数分ですが時間が稼げるから。
とにかくあの日はとても急いでおりましたから。
これでもまだ妙な言いがかりをつけられます?不躾な質問を失礼致しました。
わかってくだされば結構ですわ。
それにしても偶然とはいえ不運でしたねぇ。
は?だってそうじゃありませんか。
急いでいたにもかかわらず親切心からかタクシー乗り場で先をお譲りになり…。
あなたもどうぞ。
そのせいでたまたま車載カメラのないタクシーに乗る事になりその結果大切なものを車内に忘れてしまっても誰が持っていったのかもわからなくなってしまった。
これ不運としか言いようがありません。
あっそうそう。
忘れ物といえば数年前ロンドンで世界的ミュージシャンの蝋人形の首を出品者が電車の中に忘れてしまいそれによって価格が数倍に高騰したという出来事がありましたねぇ。
ご職業柄このお話はお耳にした事があるんじゃありませんか?そのような質問にお答えする義務はございません。
わたくしまだ仕事が残っておりますのでこれで失礼します。
杉下さんは坂巻社長が怪しいって踏んでるんですよね?その可能性は否定出来ませんねぇ。
でしょ?だってヤラセが事実なら坂巻社長は相沢良明に弱みを握られていた事になるわけだし。
その場合相沢良明が坂巻社長に高額の口止め料を要求していたと考える事も出来ますねぇ。
つまり坂巻社長は相沢殺害の動機がある。
とまあ誰もが安易に考えるでしょうねぇ。
(ため息)乗らないんですか?ちょっと用があるのでここで失礼します。
そうですか。
これが相沢さんの泊まっていた部屋ですか。
ええ。
所持品を調べましたが最小限の着替えと身の回りのもの以外はありませんでした。
それからその他にはこのようなものが…。
(米沢)これガーゼか何かのようですな。
被害者の経歴に関しては何か?相沢良明は5年前まで相沢不動産開発という会社を経営していたようですが不景気で潰れてしまったようです。
こちらは映画のチラシのようですねぇ。
(米沢)『劇場版時効間近』何を隠そう3回見ました。
おや。
2005年。
7年前の映画ですねぇ。
もうそんなになりますか。
なぜこんなに古いチラシを?パソコンをお借り出来ますか?ああどうぞ。
出ました。
(米沢)「『時効間近』フィルムパートナーズ」制作は7年前。
坂巻社長と相沢さんが共同出資で名を連ねていますね。
何俺ムキになってんだ…。
(ため息)
(盛谷)ああ私だ。
今外に着いた。
すぐ出てきてくれ。
あ?ああわかった。
「型取ったオブジェ。
これはまさに…」
(扉の開閉音)
(川南)すいませんすいません…。
(盛谷)えっ?
(店員)失礼致します。
ですからいきなり会社にまで来られてもどうしようもないんです。
オークションより前にあの腕を買い取ってくれ。
(盛谷)最初にそう言ったのは君の方じゃないか。
なあ5000万までなんとか用意出来る。
坂巻社長に今すぐ私に売るようにかけ合ってくれ!腕が戻ってきてしまった以上もう手遅れなんです!
(盛谷)君はなんにもわかっとらんな!いいか?あの腕はなまさに奇跡なんだよ。
実物に私はこの手で触れてその思いは確信に変わった。
他の人間には間違っても渡しちゃいかんのだよ。
無理です。
あの腕はオークションの目玉ですから。
じゃあいいのか?坂巻社長と死んだ相沢が組んでいた事をマスコミに流してもいいんだな?朝まで時間をやる。
連絡してくれ。
(ため息)
(川南)あっ…。
ちょっとお話聞かせてもらえますよね?
(伊丹)おうこれはこれは特命係のお坊ちゃま。
何かあったら遠慮なく来いって言ってましたよね?何かあったの?ええ。
ホワイトグラブズの坂巻社長は殺された相沢と組んでわざと『エド・クレメンスの腕』を落としたふりをしてマスコミを利用して価格のつり上げを謀ったんです。
それってヤラセって事かよ!?ところがそのヤラセ計画を坂巻社長の部下の川南という男がジャズ評論家の盛谷弘光にリークしていたんです。
盛谷って確かテレビで例の腕の事喋ってた…?リークってなんのために?相沢が預かっていた腕を警察に届け出る前に密かに盛谷に買い取らせるためです。
そのために川南は盛谷に相沢の居場所を教え盛谷は言われたとおり相沢に接触した。
ところが…。
じゃあ相沢は腕を売らなかったんですね?3000万円で自分に売るように持ちかけたけど断られたと盛谷さんは言ってました。
待てよ…。
聞き込みで上がってきてただろ。
ほら殺される前日宿泊所に被害者を訪ねてきた男がいたって。
はいはいはい…背の高い50がらみでサングラスの男。
盛谷っていう評論家の人相と一致しますよ。
(伊丹)なるほど読めてきたぞ。
だとすると…。
果たしてそうでしょうかねぇ。
警部殿…。
皆さんは盛谷弘光氏が相沢さんを殺害したと思い至ったようですがその場合の動機はなんでしょう?俺が思うに盛谷は『エド・クレメンスの腕』をなんとしても欲しがっていました。
つまり腕を奪うために殺害した。
ええ。
しかし相沢さんが殺害されたのは彼が腕を中根署に届けたその日の夜ですよ。
おおー…。
ええ。
妙だと思いませんか?はい!お説ごもっとも。
ありがたく拝聴しましたのであとはこちらにお任せください。
よし宿泊所で裏取って盛谷のとこ行くぞ。
(三浦・芹沢)どうも。
どうも。
(伊丹)昨日の夜相沢良明さんが殺された午後10時から11時の間どちらにいらっしゃいました?まさか私を疑ってるんじゃないでしょうね!?まあしかしこれほど熱狂的なコレクターならこの世に二つとない『エド・クレメンスの腕』をのどから手が出るほど欲しいはずですよね。
ましてやそれを自分に売らなかったとしたら殺したいほど腹が立ってもおかしくはない。
確かに私はあの腕の魅力にとりつかれている。
だから…だからこそ明日のオークションには全身全霊を傾けたいんだ!ですから今日のところはどうかお引き取りください。
奥村土牛ですか。
(甲斐峯秋)僕はこの『輪島の夕照』という絵…あの何度も何度も塗り重ねたあの暖かい色が好きでね。
こちらにはよく…?せっかく君と会うんだからねどこか落ち着けるところはと考えてここを選んだんだ。
ご子息の近況など少しお話しした方がよろしいでしょうか?いやいやそれには及ばんよ。
僕が君と会うのを楽しみにしてるのは杉下右京というひとりの人間に興味があるからなんだ。
恐縮です。
ただ気にならなくはない。
なぜ君があんなせがれを特命係に招いたのかその理由がね。
そちらの言葉に倣うなら甲斐享というひとりの人間に興味があるから…。
そう申し上げるべきでしょうか。
なるほど。
で頼み事とはなんだね?次長はホワイトグラブズの会員でいらっしゃいますね?ほう…なぜそれを?
(拍手)「ただ今より本日のオークションを開始致します」「まずはロット番号1番」「モダンジャズ初期のオリジナル盤から名盤中の名盤です」「テンションノートレコーズよりザマスターズサウンドプリンテッドのアナログ盤です」「10万円から始めたいと…」助かったな。
招待状なしじゃ入れないからな。
(笛吹悦子)先輩CAに会員の人紹介してもらって苦労したわよ。
サンキュー。
いた…。
「おめでとうございます!」「20世紀初頭レイアドバンス号で使われた円筒型蓄音機は大陸からいらした大人に740万円で落札です」
(拍手)「いよいよ本日最後のロットです」「ロット番号28番」「奇跡のピアニストエド・クレメンスの腕!」「
(ピアノ)」「ご心配をおかけしましたが無事に戻って参りました」「
(ピアノ)」「さてファーストビッドは1000万円から」「どうぞ!」「では1200万では?」「奥のご夫人1200万」「次は1300万」「さらに1400万では?」「次は1500万」「それでは2000万円でいかがでしょう?」2500万。
いきなり!?ただのマニアだから欲しがってるんじゃない。
実物に私はこの手で触れてその思いは確信に変わった。
あの腕は盛谷自身がそれを手にした証拠が必ず残ってるはずだ。
だから他の人間には絶対に渡せないんだ。
「では次は2700万」「会場の外から声がかかりました」「電話ビッドで2700万」「ならば次は2900万」3000万。
「素晴らしい!」他の客の戦意を喪失させるつもりかよ…。
「次は3200万」「お得意様はなんと?」「3200万」「場内にはいらっしゃいませんか?」「まだチャンスはございますよ」「そちらの若き勇者からのビッドです」「3200万でよろしいですか?」いえ…。
3500万で。
何考えてるの!?盛谷があの腕を手にしたら元も子もないだろ!「いかがです?3500万の次は3700万」「3700万」「次は3900万」「さあ若き勇者は受けて立たれますか?」「次はジャスト4000万」そんなお金ないでしょ?マンション売ればなんとかなるだろ。
えっ?私の!?ちょっと冗談じゃない…!必ず返すから!最後は退職金から何からかき集めて絶対払う!え〜…?「お受けになりますか?」もちろんだ!「4000万」「次は4100万ですが…」5000万までなんとか用意出来る。
5000万で。
(会員たちのざわめき)「5000万の次は5100万」「どうされます?」「いかがでしょう?」…受けよう。
「5100万」「次は5200万。
いかがでしょう?」「他にどなたもいらっしゃらなければ奇跡の腕は5100万円での落札となります」ビッディング6000万円。
(会員たちのどよめき)杉下さん!?なんで!?「窓際の英国風紳士から6000万のビッドです」「次は6100万になります」「どうされます?」受けよう。
「6100万!」「次は6200万ですが…」そうですかわかりました。
(ため息)「他にどなたもいらっしゃらなければこちらの紳士が6100万円で落札です」
(拍手)
(伊丹)はーい静かに!静かにして!失礼しますよ。
(百合子)なんなんですか!?あなたたちは!
(富塚)ここをどこだと思ってるんだ!?警視庁捜査一課です。
(伊丹)こちらの腕渡してもらえますか。
おい!どういう事だ!?やれやれでしたねぇ。
令状がギリギリ間に合いました。
えっ?まさか令状が発行されるまでの時間を稼ぐために値段をつり上げたんですか?おや…。
君も同じ事を考えていると思ったのですが…?いや…。
っていう事は俺がにらんだとおりあの腕は盛谷が犯人だっていう証拠だったんですよね?君は肝心な事を勘違いしているようですねぇ。
えっ…?説明次第ではただでは済みませんわよ。
これでも配慮したつもりなんですがねぇ。
何しろ事はこのオークションハウスの名誉に関わる事ですから…。
なんのお話かしら?捜査の結果相沢良明氏殺害時にこの腕が犯行現場にあった事が明らかになりました。
犯行現場に残されたジュラルミンケースの痕跡と被害者の血痕からケースの蓋が開いていた事も明らかです。
その中にあったこの腕に被害者の血液が付着している可能性が極めて高い。
そう判断して令状の請求をお願いしました。
証拠って血痕だったんですか。
えっ?だけど…。
さあ米沢さんお願いします。
(米沢)了解しました。
(試薬を吹きつける音)
(川南)やめてください!
(盛谷)おっおい!貴様気は確かか!?『エド・クレメンスの腕』だぞ!ご安心ください。
なるほど…。
これではっきりしました。
今この腕に試薬を吹きかけようとしました。
しかしそちらのお二人は止めようとなさいませんでしたね。
オークションで6000万もの値がついた腕ですよ。
普通ならばあちらのお二人のように止めてしかるべきだと思うのですがなぜ止めなかったのでしょう?理由はひとつ。
この腕が本物の『エド・クレメンスの腕』ではない事を知っていたからです。
『エド・クレメンスの腕』じゃない!?オークションの目玉である『エド・クレメンスの腕』を紛失したと偽り価格を高騰させる。
その計画にあなたはかつて映画の共同出資で知り合った相沢良明氏を巻き込みました。
六本木のホワイトグラブズまでお願い。
はい。
そして周到な打ち合わせをして腕の受け渡しを行った。
(ノック)あっどうぞ。
しかし狡猾さでは相沢良明氏の方が一枚も二枚も上でした。
被害者の部屋にありました。
本来はギプスなどを作るためのものですが石膏で型を取る時にも使うそうです。
お二人が共同出資した映画の関係者をあたりようやく小道具製作の美術工房にたどり着けました。
(三浦)そこの社長から相沢良明に頼まれて偽物の腕を作るのに協力したという供述も得ています。
相沢良明氏が届け出たこの腕が真っ赤な偽物だと優秀なスペシャリストならば当然すぐに気づいたはずです。
どうして相沢良明氏がそのような事をしたのか。
その理由をお聞かせ願えませんか?偽物を持ち帰ったあとすぐに相沢と連絡を取りました。
そしたらあの男…。
どういうつもりよ!?早く本物を返してちょうだいよ!オークションが終われば返しますよ。
ただし落札価格と同額の現金と引き換えにね。
お話し中すいませんね。
で誰が相沢をやったんですか?苦労して令状取ってきたんですから早く教えてくださいよ。
被害者の相沢良明がもし本物の腕を持っていたのだとすれば犯行は当然行きずりの強盗などではなく本物を奪うためだったと考えるべきでしょう。
私がやったとでも言うのか!?本物を持ってたらこんな偽物落札してないだろ!凶器は現場にあった鉄パイプ。
…だとすれば犯行は計画的ではなく偶発的だったはずです。
ところが凶器の鉄パイプには犯人の指紋はおろか拭き取った痕跡もなかった。
手袋をしていたのならば最初から用意していた事になる。
それって矛盾してませんか?いえ矛盾していませんよ。
えっ?犯人が常に手袋を持ち歩いている人物ならば犯行は可能です。
例えばいつどこで掘り出し物を見つけてもいいように常に手袋を備えていてなおかつ相沢良明が本物の腕を持っていると知っていた人物…。
(富塚)私じゃない!話を聞かせてもらいましょうか。
(伊丹)署までご同行願えますか。
米沢さんこの腕を持ち帰って鑑定してください。
いくら偽物とはいえ殺人の動機となった重要な証拠ですから。
真っ赤な偽物だったわけですから今度こそ容赦なく調べさせて頂きます。
徹底的にお願いします。
わかりました。
(笑い声)こんな偽物に6100万も払う馬鹿がいたなんてな…。
クソー…!ちょっ…!
(米沢)何する気…!?何が奇跡の腕だ…!
(川南)やめろ!やめてくれ!お願いだ!お願いだ!やめてくれ!お願いだ…!カイトくん腕を。
やはり川南さんは全てをご存じのようですねぇ。
皆さんこの腕こそが本物の『エド・クレメンスの腕』です。
(百合子)えっ!?
(盛谷)えっ…!?だってたった今これが偽物だって…。
相沢良明が偽物の腕を作り本物を隠し持っていた事は事実でしょう。
犯人はそれを奪おうとして相沢良明殺害に至ってしまったわけですから。
今川南さんはなぜ感情的になった盛谷さんをそこまでして必死で止めたのでしょう?考えられる答えは2つです。
1つ目は?川南さんは何も知らずにこの腕が本物だと信じていたから。
2つ目は?オークションが始まる直前に坂巻社長と富塚さんに気づかれないように犯人が偽物を本物の腕とすり替えた事を知っていたから。
あっ!ええ。
川南さん…。
犯人はあなたですね?家宅捜索の手間を省かせてください。
それが相沢良明が作った偽物ですね?すいません。
どうして彼が偽物を本物にすり替えたって言い切れるんです?だって本物が殺人の証拠なら隠しておいた方がずっと安全じゃないですか。
それこそがあなたの動機だった…。
僕にはそう思えてなりません。
わかって頂けましたか。
(川南の声)ヤラセの計画を聞いた私は盛谷さんを訪ねて…。
この男から腕を買い取ってください。
わかった。
なあ頼む!譲ってくれ!話になんねえ。
お願いだ!頼む!なんねえって言ってんだろ!
(川南)ですが盛谷さんは買い取りに失敗して相沢は腕を警察に届けてきました。
ところがそれは真っ赤な偽物で…。
(富塚)この偽物をオークションに出すつもりですか?
(百合子)本物を取り返してから渡せば済む事じゃない。
(相沢)傷ひとつ付けてねえからなぁ。
で金はどこにあるんだよ?お金はありません。
はあ!?ですが私が社長を説得してなんとかします!どうかこのとおり…!そんな事信じられるかよ。
ふざけんな!ですがこの…これがないとあの偽物がオークションに…!俺の知った事じゃねえよ!帰って坂巻社長に言いな。
落札額にさらに口止め料で1000万プラスだってな。
フッ…。

(相沢)うっ…!こんな偽物を出品するなんて絶対に許せなかった!オークションに偽物を出品する。
スペシャリストとしてそれだけは阻止したかった。
それがあなたが相沢良明を殺した動機ですね?しかし川南さん…。
人を殺していい理由などこの世にはありませんよ。

(伊丹)おい立てオラッ!話聞かせてもらうぞオラッ!それにしても君は無茶をしますねぇ。
えっ?オークションでもし盛谷氏が降りていたら君は5000万円を払わなければならなかったんですよ。
その時は優しい上司に貸してもらおうと思ってました。
はい?おやおや…。
いや〜盛谷さんが本物の腕を壊そうとした時には正直肝が冷えました。
あれは計算違いでした。
僕もいささか無理をしてしまったようです。
案外杉下警部と彼には似たところがあるのかもしれませんな。
さあどうでしょう?彼もいつまで続くやら…。
(車のクラクション)
(伊丹)米沢早くしろ!どうも。
どうも。
はいはい!はい…!行きますよ。
はい。
そんなに急ぐ用事ないでしょ。
2015/07/21(火) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
[新]相棒Eleven[再][解][字]

「オークション」

詳細情報
◇番組内容
杉下右京(水谷豊)の相棒(?)として甲斐享(成宮寛貴)が特命係に飛ばされてきた!父親は警察庁次長(石坂浩二)、恋人は客室乗務員(真飛聖)。
右京と享の新特命係のコンビが新たな謎に挑む…。
◇出演者
水谷豊、成宮寛貴 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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