「きょうの健康」です。
今日は「全身が痛い!線維筋痛症」です。
お話し下さいますのはご紹介します国際医療福祉大学教授の村上正人さんでいらっしゃいます。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
村上さんは心療内科でリウマチの専門医でもいらっしゃいます。
まずこの線維筋痛症あまりなじみがないんですがどんな病気なんでしょう?はいまず全身に激しい痛みが出るというのが特徴です。
特に女性に多い病気でございまして30歳から50歳代の女性に多くてそして多くの場合急に痛みが出てきてそれが2年も3年も続くという慢性化した状態になります。
そして多くの原因がはっきりしないんですけれどもストレスが大きく関係しているという事がいわれています。
それぞれ詳しいお話なんですけどまずはですねどんな患者さんがいらっしゃるか実例からお願い致します。
はいそれでは一つ実例をお挙げ致します。
50代の女性のAさんでございますけれども介護で非常に疲れきった状態が続いていました。
そして心身の疲労が非常に蓄積していましてかなりのストレスを感じていたところでしかも夫は仕事が忙しくて協力をしてくれない。
そして親族の方もねぎらいもしてくれないという形で苦労されておられました。
そのような時に買い物に行かれた時に自転車で転びましてろっ骨にひびが入ってしまったというけがをされました。
普通ならば1週間から2週間で大体治るんですけれどもしばらくしてから全身が激しく痛みだしました。
そして普通ならばやはり鎮痛薬が効くんですけども通常の鎮痛薬なかなか効かないという事でだんだん長引いていきます。
そしてそのうちにだんだん服が触れても痛いとか寝返りしても痛いというような状況になってきました。
そしていろいろな病院を受けた訳ですけどもある病院で線維筋痛症という病名を伝えられました。
服が触れても痛いって大変だと思うんですけれどもその痛みですねどんな痛みなんでしょうか?非常に特徴的な痛みがありまして飛び上がるほど痛いこれジャンピングペインというんですがあと筋肉がひきつれるような痛み。
それから電気がびりびり走るような痛み。
そして骨が裂けるような痛みといった特徴的な痛みがあります。
その痛む場所ですけれども筋肉だとか腱それから関節といっても関節周辺の筋肉の痛みそして内臓特に胃だとか女性であれば子宮周辺のおなかの痛み。
そういった事がよく起こってまいります。
そしてこの痛みがまた天候とか季節体調によって非常に痛みが変わってくるという事も特徴です。
そして非常に多彩な症状があって患者さんは更に苦しみに襲われます。
特に激しい疲労感だとかあるいは朝起きた時のこわばりだとか不快感そして体中がしびれたりこわばったりするというような症状ですね。
それからあと精神的に非常に抑うつに陥ってしまったりなかなかよい睡眠が得られないという事があります。
本当幅広い症状ですけれども痛みですよね痛みはでもどうしてそれほどの痛さになるんでしょうか?そうですねなかなか痛みの原因ははっきりされない事が多くてまずは考えられていますのは痛みを感じる脳の部位の不調が考えられています。
脳ですか。
脳の方は普通は痛みが脳で感じる訳ですが脳の方から痛みを逆に抑えるセロトニンノルアドレナリンドパミンといったような物質が関係しているといわれています。
健康な方はこういう形で痛みを抑える事ができるんですが線維筋痛症の方ではこのシステムが異常を来しておりましてこの脳から脊髄の方に向かって痛みを抑えるシステムがうまく働かないという事によりまして痛みがより強くなるという事が起こります。
そして大切な事は痛みが何回も何回も繰り返されているうちに脳の方で過敏性が起こってくる。
脳の痛みに対する感受性が非常に鋭くなりまして普通なら耐えられるような痛みが激しく痛むというふうに感じられるようになってしまいます。
なるほど。
その痛みを抑える仕組みそれがうまくいかなくなると。
それが一つの理由とおっしゃいましたがそれはどういう事?多くの場合心身のストレスが背景にあるといわれています。
特にこの身体的なストレスですね特にけがだとか病気さまざまな事故過労手術・出産といったような肉体に大きな負担がかかってきた時に発症するケースが多いようです。
ただその背景にありますのがやはりこの心理社会的ストレスといったものです。
これは多くの場合人間関係のトラブルや仕事上あるいは家族問題それから生活上例えば経済的な問題とかお仕事などの生活環境の問題とかそういった事が背景にあってこの身体的ストレスと一緒になって病気が発症するというケースが多いようです。
でもどうなんでしょうか患者さんっていうのはどのぐらいいらっしゃるものなんですか?10年前の調査では潜在患者数は大体200万人ぐらいいるというふうに調査の結果出ました。
実際はなかなか病院に来られる患者さんは少のうございまして年間1万人前後という事がいわれています。
その原因なんですけれどもいい患者さんも悪い患者さんもたくさんいらっしゃるという事で非常に重たい患者さんが病院にやって来られるという事が一つあります。
もう一つはなかなか診断・治療がうまく進まなくてそしていわゆる潜在的にたくさんの患者さんたちが適正な治療を受けずにそのままいるという事もたくさんあると思います。
大体平均すると4つぐらいの医療機関を経てようやく診断がつくという事があるようです。
今おっしゃったように開きがあるのはそういう理由な訳なんですよね?それにしても本当に3つも4つも病院を回ってなかなか分からないと非常にやっぱり不安ですしね苦しみも大きいと思うんですけどどうなんでしょうかこれは線維筋痛症だと病名の診断の決め手ですねそれはどういう事になりますか?大切な事はまず体の損傷とか炎症といった病変がなかなかないのに痛むという事が特徴です。
そして診断するためには1990年にアメリカのリウマチ学会が決めた基準なんですが全身に18か所以上の圧痛点があるという事。
圧痛点って何ですか?圧痛点と申しますと強く押しますと激しく痛むという事ですね。
そして全身の痛みが3か月以上続いてその背景に体の異常が見当たらないという事が重要な診断基準になります。
そしてこの痛みですね押したあとの痛みも押したあとすごく長く痛みが続くとかそのために寝込んでしまうというような事があるくらいに圧痛点も強いのが特徴です。
なるほど。
そしてそれが18か所のうち11か所以上あるというのが一つの診断基準になります。
ほかの検査はあるんですか?ほかの病気さまざま関節リウマチとかいろんな膠原病あと整形外科的な病気がありますのでその鑑別のために血液検査だとかレントゲンCT検査といった画像検査を行います。
そこで異常がないかどうかの鑑別を致します。
なるほど。
それでその診断をされたとしますよね。
今度は治療法というのはどんなふうに?大きく分けてお薬の治療とそれ以外の治療に分かれます。
なかなか原因がはっきりしないためにお薬の治療も症状をしっかりコントロールするというところに主眼が置かれます。
お薬の種類ですが一つはこの神経性疼痛緩和薬と申しまして神経性の痛みを緩和する特にプレガバリンというお薬がよく使われます。
あと抗うつ薬は先ほど申しましたセロトニンとかノルアドレナリンといった神経伝達物質を調節する働きがあります。
こういったお薬特にデュロキセチンなどに代表されるような抗うつ薬が使われます。
抗けいれん薬もありますよね。
あと抗けいれん薬これは筋肉の激しい緊張とか血液の循環をよくするために抗けいれん薬が使われたりします。
それから先ほど申しましたように通常の鎮痛薬がなかなか効かないために今特別な鎮痛薬が使われるようになりましたし新しい鎮痛薬も今開発されています。
漢方薬って書いてありますね。
これは女性に多い病気ですので体のリズムだとかあるいはホルモンの不調状態を改善させるために使われます。
薬をのむ場合の注意点って何かございますか?副作用がある事もありますので特に眠気とかふらつきそのような症状がある時には薬を減量するとかほかの薬に変更するという事が必要になってまいります。
車の運転などにも気を付けた方がいいという事ですか?はい。
それでお薬によって大体苦痛の6割ぐらいまではよくなる事が多いんですけどもなかなかあとの3割4割が埋められません。
そのためには大切な事はその方が持ってる受けているストレスの状態ですねこれをいかにコントロールするかという事が重要になってまいります。
薬で6割の痛みは軽減されると。
ところが残りの3割4割はそれこそ痛みが残るのでほかの治療法といいましょうかそういうものでという事になりますね。
特に薬以外の治療法と致しましては一番重要な事は本人が受けてるストレスをいかに緩和させるかという事ですね。
特に仕事とか家事で非常に無理をしてる方は早めに切り上げて十分な休息をとるとかあるいはいろんな家事だとかいろんな作業で筋肉の負担がかかりがちですのでそういった負担を避けていくという事が重要になっていきます。
しかしずっと安静にしていればいいという訳ではございませんでやはり体の筋肉をしっかり使って柔軟にする必要があります。
血液の流れをよくするために有酸素運動特に私がお勧めしているのはウォーキングだとか水中運動とかいったものです。
特に私が最近お勧めしているのはラジオ体操ですね。
これは非常に有酸素運動の代表的なものとして患者さんによくお勧めしてる運動のしかたです。
一日1回でもあるいは2回ぐらいすればどうなんでしょうかしらね?そうですね決まった時間にある程度長くですね根気よく続けていく事が必要になってくると思います。
それからもう一つ大切な事は日常生活の中に習慣的になってる行動パターンを見直す必要があります。
特に線維筋痛症の患者さんは何事も完璧にやらなければ気が済まないとか一つの事をやりだすとそこに集中してしまうという事があります。
そのために筋肉が痛んだり疲れがたまったりしますので行動パターンを見直す必要があります。
例えば行動パターンってどういう…。
よくあるのは患者さんたちは草むしりを一日中してるとかですねあるいはお裁縫を始めると一日中裁縫をしてるとかという患者さんが結構おられますのでそのように一日中同じ事をずっと集中してしまうというような行動パターンをお持ちの方が多いですのでそういった行動パターンを見直してしっかり休息をとる筋肉の負担を避けるという事が必要になってまいります。
それからもう一つありますね。
理学的治療ですか。
どうしても体が硬くなったりあるいはそのために循環が悪くなったりしていますので体を温めたり筋肉をほぐしたりというような理学的な治療法も非常に重要になってまいります。
いろいろお話を伺ってもしかしたら線維筋痛症かもしれない思い当たるなとそういうふうに思った場合どこをどんなふうに受診したらいいんでしょうか?なかなかお医者さんを探すのは大変かもしれませんので日本線維筋痛症学会が診療ネットワークを提供していますのでここで的確な治療システムを見つけていくという事が重要になってくると思います。
それからなかなか的確な診療科を見つけるのは難しいんですけれども最近はやはりリウマチを専門にする先生だとか心療内科整形外科ペインクリニックといった先生の方々の中に線維筋痛症をしっかり診断されて治療に結び付けている方が先生方が増えてまいりました。
それからもう一つ線維筋痛症友の会がございましてそちらでこういう情報提供したりあるいはお互いのサポートをするという形で大変患者さんたちがそれを利用されているケースが多いと思います。
そこでいろんな事を話すという事も非常に気持ちも楽になったりするでしょうし。
そうなんですね。
患者さんたちは痛みの激しさのために非常に絶望的になってしまったり非常に悲観的になったりそして否定的な感情に陥ったりというような事があります。
否定的な感情というのは怒りだとか絶望感とかそういったものですね。
そういったものが痛みを悪化させる事がありますので前向きに生活に取り組んで頂く。
そしてこの痛みのために命を落としたりあるいは体のいろいろな異常が起こってくるという事はあまりありませんのでしっかり痛みがあってもできる事はやっていく。
そして前向きに取り組んでいくという姿勢が必要になってくると思います。
絶望的にならずに…痛みを軽減させる事はできるという事になってきますね。
それからもう一つ大切な事は周辺の方々がご家族とかご友人とかがこの痛みをよく理解されてそしてその患者さんの苦悩を理解してしっかりサポートしていくシステムが必要になってくると思います。
ありがとうございました。
今日は「線維筋痛症」につきまして村上先生にお話を伺いました。
どうもありがとうございました。
どうもありがとうございました。
2015/07/21(火) 20:30〜20:45
NHKEテレ1大阪
きょうの健康「全身が痛い!線維筋痛症」[解][字]
全身が激しく痛む線維筋痛症。30〜50代の女性に多い。薬で痛みの6割はよくなるが、ストレスも影響するため、休養、筋肉の負担を避ける、完ぺき主義の見直しが大切。
詳細情報
番組内容
全身に激しい痛みが起こる線維筋痛症。女性に多く30〜50代が中心。痛みを抑える脳の働きの不調や脳の過敏が関係するとみられる。薬で痛みの6割程度はよくなるが、ストレスも影響するため、十分な休養、筋肉の負担を避ける、完ぺき主義や集中しすぎる行動パターンを見直すなどが大切。有酸素運動も効果的。関節リウマチや整形外科の病気に間違われやすいので、日本線維筋痛症学会のホームページなどで受診先を探すとよい。
出演者
【講師】国際医療福祉大学教授…村上正人,【キャスター】桜井洋子
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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