経営トップらの関与などに基づき、不適切な会計処理が多くの部門で行われたと明記し、経営体質そのものを厳しく批判しました。
川崎の工場群の夜景を楽しむクルージング。
屋根のないオープンバスで都内の名所を巡る東京ドライブ。
気軽には立ち入る事ができない横須賀の軍港巡り。
都内最大のバスツアー会社その旅の数々。
お手頃な価格でふだん味わえない非日常の世界を楽しめるとあって年間100万人が利用する。
豊富な旅のメニューの中でもヒット企画を連発する男がいる。
業界の常識を覆す発想で新たな観光ツアーを生み出す旅行プランナー。
江沢は言う。
「くじけず仕事を全うするのがサラリーマン」。
(主題歌)うわ楽しい。
自然のものっていいもんですね。
江沢が企画チームのリーダーとなったのは6年前。
部下と共に200を超える企画を立ち上げ利用客をおよそ3割も増やした。
若き日の突然の人事異動。
夢中でやっていた企画の仕事から外された。
秋のツアー企画。
会社から厳しい売り上げノルマが課せられた。
だが思わぬ壁が江沢の前に立ちはだかった。
都会に新たな名所をつくるサラリーマンの闘いに密着!朝8時過ぎ。
その一日は会社までの3キロのウォーキングで始まる。
駅から会社まで走るシャトルバスの誘惑に駆られるが健康が第一。
体にいいと言われれば試さずにはいられない。
すすめられるととにかく断れないのが江沢。
自分に厳しくおすすめに弱い47歳サラリーマン。
江沢の仕事は首都圏のバスツアーの企画。
3人の部下と共に観光地との交渉やパンフレットの製作まで行う。
この会社が実施するツアーの数は年間300。
江沢たちはそのうち1/3をリニューアルし更に60件近く全く新しいツアーを生み出す。
江沢のもとにはバスツアーに盛り込んでもらえないかとさまざまな業界から相談が相次ぐ。
相撲部屋と関係のある会社役員の提案は魅力的なものだった。
だが江沢は持ち込まれた提案をそのまま商品化する事はない。
江沢の企画に対する貫きたい考えがある。
「客の期待を超えるワクワクを生んでこそ企画」と言う江沢。
その代表作が…江沢はこの企画を立てる際工場への接近ルートを徹底的に吟味。
客の想像を超える迫力ある夜景を実現した。
今や定番となった屋根のないオープンバス。
しかし寒い冬場は客足が遠のいてしまう弱点があった。
そこで江沢は若いカップルをターゲットにしたツアーを企画。
その名も「恋するラブバス」。
「寒さに肩寄せ合う恋人たち」というストーリーが客の心をつかみヒット商品となった。
相撲部屋見学という企画をいかに「企て」に変えるか。
江沢が切り出した。
力士と一日過ごせるパックツアーなど聞いた事はない。
これなら客の期待を十分超えられるはず。
「企て」がまた一つ動きだした。
日本でバスツアーが始まって既に90年。
新たに魅力的な観光スポットを開拓するのは容易ではない。
この日江沢は横浜のある施設にツアー企画の相談を持ち込んだ。
開館から30年。
世界各国の人形を展示する博物館に今注目していた。
ヒット企画を連発する江沢。
その発想の源となる流儀がある。
担当者を前に江沢は突拍子もない事を切り出した。
知り合いから聞いた都市伝説。
この施設の人形が夜中動くといううわさだ。
施設側にとって決して好ましくないこのうわさを江沢はあえて逆手にとって話題集めにしようというのだ。
思いも寄らない江沢の提案に先方は戸惑いを隠せない。
8日後。
企画を再検討するため江沢のもとを訪れた担当者たち。
(笑い声)江沢は閉館後の薄暗い館内をライトを持って見て回るという企画を固めていた。
熱のこもった江沢のプレゼンに担当者たちの表情が真剣味を帯びてきた。
(笑い声)ありがとうございました。
この夏新しい観光ツアーが誕生する予定だ。
バス旅行プランナー江沢伸一さん。
ヒット企画を生むためにこだわっている事がある。
いらっしゃいませ。
この日江沢さんが訪れたのは都内のすし屋さん。
新たなグルメツアーに組み込んでみたいと思っている店だ。
江沢さんはご主人の人柄店の雰囲気などツアー客の目線で現場を見渡す。
(笑い声)「現場こそ全て」。
そう信じる江沢さんは年に100日は会社を飛び出し現場を見て回る。
そしてそんな江沢さんの真骨頂はここから。
雑談から現場周辺の情報をどんどん集める。
人にすすめられたらとにかく何でもやってみる。
いただきます。
すごいですね。
ツアーのお土産一つ一つもこうして街角で見つけられていく。
江沢はある場所を訪れた。
今や東京観光の代名詞ともなったスカイツリーだ。
スカイツリーを訪れるツアーは数多くあるが江沢はこの夏新たに3つの企画を立ち上げたいと打診した。
どんなにいい企画でもルートや場所を確保できなければ絵に描いた餅だ。
しかし…。
夏休みの時期は特に混雑するためこれ以上の受け入れは難しいという返事だった。
(舌打ち)まだ諦めきれない江沢がいた。
江沢は断られたツアーのスケジュールを洗い直した。
断る相手側の事情はよく分かる。
だが本当に可能性はゼロなのか。
交渉の余地は全くないのか。
スカイツリーと再度交渉する。
3つの企画のうち2つを断られてしまった江沢。
最後の1つ。
江沢が食い下がり始めた。
うん18時…そうそうそうそうそう。
20分後。
あぁ〜。
(取材者)どうでしたか?1つの企画だけはなんとか受け入れてもらった。
トライし壁にぶつかりまたトライする。
サラリーマン江沢の日々はこうして続く。
この日は送別会。
他の部署へ異動する部下に江沢さんはこう語りかけた。
サラリーマンとしてどう生きるべきか。
江沢さんはずっと考えてきた。
江沢さんの旅行業界との出会いはちょっと不純な動機からだった。
ただで旅行に行けると大学1年の時バス添乗員のアルバイトを始めた。
楽しくてのめり込み気が付けば今の会社に就職した。
間もなく東北のツアーの企画を任された江沢さん。
チャンスをつかんだのは入社4年目の事だった。
当時まだあまり知られていなかった秋田の乳頭温泉のツアーを企画した。
これが秘湯ブームに乗り大ヒット。
企画という仕事の醍醐味を味わった江沢さん。
この仕事は天職だと思った。
ところが3年後の事だった。
唐突に社員全員が会議室に集められると社長から言われた。
長引く景気の低迷で本社が事業の統廃合に踏み切ったのだという。
江沢さんは旅行パンフレットを製作する会社へ出向となった。
これまでの企画の仕事とは全く畑違いの部署だった。
「今までの頑張りは何も評価されていなかったのか」。
その夜仲間と飲んだ江沢さんは荒れた。
仕事へのやる気はすっかりうせていた。
定時に出勤し定時に退社。
毎日をただ無難に過ごした。
その2年後の事だった。
本社から新しい社長が来た。
篠原瑛さん。
本社で出世街道を歩んでいた篠原さんはいよいよ役員に就任というやさきに出向を命じられた。
望まぬ人事異動でやって来た篠原さん。
ところが仕事に対する姿勢は江沢さんと180度違っていた。
部下たちに語りかけた。
「結果を残そう」。
篠原さんは決して腐る事なく江沢さんたちを鼓舞し自ら仕事を取ろうと営業に回った。
その姿に江沢さんは自分の甘さを思い知らされた。
仕事をえり好みするようでは本物のサラリーマンじゃない。
江沢さんはどんな仕事もベストを尽くしてみようと心に決めた。
バスのおもちゃを販売する新たな事業。
苦しんだ資金調達も打開策をひねり出し軌道に乗せた。
旅行パンフレットを製作する仕事。
1つでも多く契約を取ろうと企画で培ったプレゼン力を生かし営業をかけた。
あの出向から12年。
41歳の時江沢さんは企画の仕事に復帰した。
ヒット企画を打てるプランナーになれたのもあの異動のおかげだと今思う。
どんな時でもどんな場所でも与えられた仕事をやり遂げる。
それがサラリーマンの本分。
江沢さんはそう信じている。
5月下旬。
またこの時期が巡ってきたと旅行プランナー江沢は構える。
秋の新ツアーの検討だ。
行楽の秋は観光会社にとってまさに書き入れ時。
いかに他社を出し抜き魅力的なツアーを投入できるか。
その成否が会社の営業成績を左右する。
江沢の秋に向けた闘いが早くも始まった。
5日後。
江沢は東京・足立区のある公園施設に向かっていた。
「農業公園」という施設から入場者を増やすためバスツアーを組んでほしいという相談が舞い込んでいた。
この公園では農業体験はもちろん収穫物をその場で調理し食べる事もできるという。
だがそれはバスツアーとしてはさほど目新しいものではない。
江沢の表情が次第に輝きだした。
さつまいも掘りならさつまいも掘りだけですよね。
荒川沿いにある公園を実際に歩いてみると発見の連続だった。
春がチューリップ秋がコスモス。
更に温室にはバナナや熱帯植物が植わっていた。
レストランでは取れたての野菜を使った定食も楽しめる。
江沢はこの農業公園がある荒川沿いを舞台に新しいツアーができると踏んだ。
それから1週間。
ツアーの全体像が見えてきた。
まず東京駅を出発し大正時代に造られた水門を見学。
そして農業公園で収穫体験と食事。
ここからバスで日本橋へ移動し小型船に乗り換え水路を行く。
最後に通過するのは「船のエレベーター」とも呼ばれる荒川ロックゲート。
水面の高さが違う2つの川を渡るその仕組みを体感する。
仮のタイトルは「荒川
(江戸タイムトリップ)」。
荒川の歴史と今の姿を学ぶ知的観光の旅だ。
翌日。
今回のツアーを実現するには河川を管理している国土交通省の協力が欠かせなかった。
担当者に企画意図を説明した。
国としても地元にある施設を有効活用したいと感触は上々だった。
ところが船での川下りに話が及んだ時だった。
バスの停車場所について思わぬ答えが返ってきた。
船の出発点と考えていた周辺は通路が狭く大型バスは入れないという。
せめてゴール地点はどうかと現場に向かった江沢。
道幅はあるが通行車両を考えれば客が安全に乗り降りできるほどのスペースはない。
バスの停車場所を他に探す手もあるが客を長く歩かせるわけにもいかない。
どうする。
バスを止められる新たなルートが考えられないか。
テーマを「荒川」からもっと広げスカイツリー周辺の施設などにも目を向ける事にした。
しかしこれではせっかく荒川にこだわった企画がぼやけてしまう。
それから6日後の事だった。
ありがとうございます。
どうも。
懸案だったバスの停車場所は意外な形で決着がついた。
国土交通省から一般車両の通行を認めていない別ルートを使い船着き場まで大型バスを進入させてよいとメールが来た。
はとバスの江沢ですがお世話になります。
江沢の企画は地域振興につながると国も動いた。
だが江沢にはもう一つ超えなければならないハードルがあった。
2日後。
江沢は国土交通省がパトロールや災害対策に使用する船に同乗させてもらった。
観光スポットとしてまだあまり注目されていない荒川。
今回の企画は本当に客をワクワクさせるものなのか。
この目で確かめる。
旅のゴール荒川ロックゲート。
90分の川下りは暮らしを守る治水を学び知的好奇心をくすぐる非日常の船旅だった。
秋の目玉ツアー。
この荒川で勝負すると江沢は決めた。
(主題歌)はぁっ。
その日の夜江沢は資料を広げていた。
これから更に時間をかけ客の期待の先をいくツアーに仕上げる。
まあ低い壁よりもねあえて高い壁をぶつかり合ってそれを乗り越えようとして成果を上げ続けられる人かなと思います。
そうやってやる事によって1つずつ石段を駆け上がって登っていけるかなと思います。
2015/07/20(月) 22:00〜22:50
NHK総合1・神戸
プロフェッショナル 仕事の流儀「バス旅行プランナー 江沢伸一」[解][字]
工場夜景を見るツアー。屋根無しのバスで恋人たちが肩寄せ合うツアー。驚きの発想で日帰りバスツアーのヒット企画を次々生み出す江沢。秋の新企画に挑む格闘の日々に密着!
詳細情報
番組内容
工場夜景を見るツアー。屋根無しのバスで恋人たちが肩寄せ合うツアー。近年日帰りバスツアーのヒット企画を次々生んでいる男、江沢伸一。観光スポットが発掘し尽くされている今、簡単には驚きの新ツアーは生まれない。だが「企画とは企(くわだ)て」と語る江沢は年100日現場を歩き、既存の観光資源に光を当て直し組み合わせに工夫を凝らし、期待以上の“企て”を講じる。秋に向け新企画に挑む江沢。そこで待ち受けていたのは!
出演者
【語り】橋本さとし,貫地谷しほり
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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日本語(解説)
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