セレクション 2015.07.20


南太平洋に浮かぶ島…うっそうとした森には世にも奇妙な鳥たちが暮らしています。
少し小さめな翼。
まるまるとした体つき。
世界で唯一の飛べないオウムです。
森を行進しているのは…なんとペンギン。
一体どこへ向かっているのでしょうか。
まるでハリネズミのような姿。
やはり飛べない鳥のキーウィです。
ミステリーに包まれた飛べない鳥たちの王国。
その謎に迫ります。

(波の音)四方を海に囲まれたニュージーランド。
一番近い大陸オーストラリアからでも1,500キロもあります。
大きさは日本の面積の1/4ほど。
今も手付かずの原生林が残っています。
コケで覆われた木々が大古の面影を今に伝えています。
森には実に奇妙な生き物たちが暮らしています。
全長およそ50センチ…2億年前の恐竜時代からほとんど姿を変えていないという生きた化石です。
主食は昆虫。
大木の根元にある穴の中。
新しい命が誕生していました。
子どもには奇妙な特徴があります。
頭に第三の目があるのです。
網膜やレンズを備え光を感じ取る事ができると考えられています。
第三の目を外見から確認できるのは子どもの時だけです。
寿命は長く100年以上生きるといわれています。
こちらはコウモリ。
島で唯一の固有の哺乳類です。
ニュージーランドではコウモリ以外かつて哺乳類がいた形跡は見つかっていません。
なめているのは花の蜜。
地面をはい回って地表に咲いた花を探します。
生活の大部分を地上で過ごす世界でも珍しいコウモリです。
風変わりな生き物たちが暮らすニュージーランド。
森に暮らす鳥たちもまた独特です。
森の色に溶け込んだぽっちゃりとした姿。
カカポです。
カカポはオウムの仲間。
体長60センチ体重は3キロにもなります。
羽は小さすぎて重い体を宙に浮かす事はできません。
世界に300種類以上いるオウムの中で唯一の飛べないオウムです。
強力な足で体を支え高い木に登ります。
好物は木の実や葉など。
随分とおっとりとした性格の持ち主のようです。
夜の世界に生きる変わった鳥もいます。
地面をつつきながら歩くのはキーウィです。
大きさはニワトリほど。
キーウィもまた飛ぶ事ができません。
鳥というよりもまるで哺乳類のようです。
夜行性で日中は森の巣穴に潜み日が暮れると獲物を探し回ります。
好物はミミズや虫など落ち葉の下にいる小さな生き物たちです。
クチバシを使い地中のかすかな震動を感じ取ります。
ふだんは縄張りを持って単独で暮らしています。
縄張りを侵した侵入者は許しません。
キーウィやカカポをはじめ飛べない鳥たちが多いのはなぜでしょうか。
理由の一つは天敵の肉食哺乳類がいない事。
鳥たちは地上の敵から逃げる必要がなく飛ぶ能力を失ったというのです。
ではなぜ島には哺乳類がいなかったのでしょうか。
その秘密は島の誕生の歴史に隠されています。
今から2億年前ゴンドワナと呼ばれる巨大な大陸が存在していました。
やがてゴンドワナはいくつかの陸地に分裂します。
そしておよそ8,300万年前インドくらいの大きさの陸地が分かれ移動し始めます。
ニュージーランドはその一部でした。
そして当時陸地には哺乳類がいた可能性が考えられます。
ではなぜニュージーランドから哺乳類がいなくなったのでしょうか。
その謎に迫るある説が注目されています。
奇妙な岩のアーチ。
石灰岩で出来ています。
中からは海洋生物の化石がたくさん出てきます。
実はこうした地層が島全体を広く覆っています。
この事から地殻変動によりニュージーランドの大部分はかつて海に沈んでいた。
そしてその時哺乳類などの陸上の動物がほぼ一掃されたというのです。
大陸は数百万年もの間海中にあったといいます。
そして今から2,400万年ほど前再び大規模な地殻変動が起きます。
その結果海底にあった大陸の一部が隆起。
姿を現したのが現在のニュージーランドだと考えられているのです。
この説が正しいとしたら生き物たちは一体どうやって島にやって来たのでしょうか。
考えられる方法は3つあります。
まず風に乗るという方法。
植物なら種が風に乗って島に運ばれてくる事が可能です。
2つ目は漂流という方法。
ムカシトカゲのような小さな生き物なら流木などに乗ってたどりつく事ができるかもしれません。
そして最後が空を飛んでやって来るという方法。
鳥ならばそれほど難しい事ではないはずです。
天敵の哺乳類がいなかったニュージーランド。
中には次第に飛ぶ能力を失っていったものもいたはずです。
最近の遺伝子の研究などからキーウィもそうした鳥の一つと考えられています。
鳥たちが島にやって来て新しい行動を身につけていく。
そんな進化の様子をうかがい知る事ができる場所があります。
ここはスネアーズ諸島。
ニュージーランドの南に浮かぶ小さな島々です。
夜明け前地面にある巣穴から次々と現れたのは…鳥たちが隊列を組んで森を歩く。
なんとも奇妙な光景です。
たどりついたのは断崖絶壁の縁。
次々と飛び立っていきます。
飛び立つには平らで長い助走距離が必要です。
島の中にはそうした場所がないためわざわざ歩いて崖までやって来たのです。
鳥たちの目当ては魚やオキアミなど豊富な海の幸。
潜って獲物を捕らえます。
細い翼は折り畳むと水の抵抗が少なく水中の狩りに適しています。
この海の豊かな恵みを利用するため究極の進化を遂げた鳥もいます。
ペンギンといえば氷の世界を連想しがちですがここのペンギンは随分雰囲気が違います。
歩いているのは森の中です。
1月。
ペンギンたちは子育ての真っ最中。
実は森で子育てをしているんです。
親はヒナのために毎日海へ食べ物を取りに行かなければなりません。
しかし繁殖地から海岸までは片道4時間もかかります。
よちよち歩きで障害物を乗り越えひたすら前へ進みます。
ようやく森を抜けても次の難関が待っています。
海まで高さ90メートルもの急斜面を下りなければなりません。
決して器用とはいえない歩き方。
転んで致命傷を負うものも少なくないといいます。
まさに命懸けです。
ようやく水際にたどりつきました。
次々と海に飛び込みます。
陸上とは見違えるような動き。
翼はヒレのような形に変化し強力な推進力を生み出します。
海の中は陸では得られないほどの豊かな食べ物であふれています。
ペンギンの祖先もまたかつては空を飛んでいたと考えられています。
おなかを満たしたあとは崖登り。
首を長くして帰りを待つヒナたちのもとへ向かいます。
ペンギンは海の恵みを求めて空を飛ぶのではなく水中を泳ぐ方向へと進化した鳥なのです。
南側の島には氷河を頂く高山がそびえます。
ニュージーランドにはほかにも驚くような場所に暮らす鳥がいます。
ケアです。
カカポと同じオウムの仲間ですがこちらは飛ぶ能力を備えています。
気温が低く食べ物の少ない環境を生き抜くため独特の能力を身につけてきました。
飽くなき好奇心と知恵です。
山にある宿泊施設にやって来ました。
何の躊躇もなく室内へ入ると登山者の靴をつつき始めました。
食べ物がないか探しているのです。
こちらはごみ箱。
ふたが開かないよう重い石が置いてあります。
しかしケアには効果がなかったようです。
ケアは世界一賢い鳥ともいわれています。
知恵を武器に貪欲に何でも食べる事で厳しい環境を生き延びてきたのです。
真夜中にせわしなく動き回っているのはカカポです。
カカポは夜行性で昼間よりも活発に行動します。
でも今夜はいつもと様子が違います。
(カカポの鳴き声)まるでカエルのような奇妙な声。
ブーミングと呼ばれるメスへのラブコールです。
音は数キロ以上先まで届き遠くのメスにもアピールできます。
メスが近づいてきました。
するとオスが鳴き声を変えました。
(カカポの鳴き声)メスへとアタック!残念ながら振られたようです。
数年に一度しか繁殖しないカカポ。
数か月にわたって鳴き続けるオスもいます。
夜の森に響き渡るのはカカポの声だけではありません。
(鳴き声)声の主はオスのキーウィ。
やはり繁殖の時を迎えているようです。
メスがオスに羽繕いをしています。
キーウィは一度夫婦になると一生を共にするといいます。
月日がたちメスは産卵を間近に控えていました。
キーウィの卵の大きさはおよそ12センチ。
自分の体重の3/3近くにもなります。
体に対する大きさでは鳥の中で最大です。
数日後茂みの奥に産み落とされた卵がありました。
卵の数は1個。
卵を抱くのは専らオスの役割です。
ふ化までの日数はなんと80日。
鳥としては最も長い部類の一つです。
それにしても天敵の哺乳類がいなかったにもかかわらずカカポやキーウィが行動するのはほとんど夜。
一体なぜなのでしょうか。
その答えを導く手がかりが意外な場所から見つかりました。
ニュージーランド南部にある洞窟。
ここで巨大な動物の骨が発見されたのです。
ほんの数百年前まで生きていた鳥モアです。
大きいものは頭の高さおよそ3メートル。
体重は200キロ。
史上最大の鳥の一つです。
そしてモアの骨と絡むように別の鳥の骨が残されていました。
翼を広げると3メートルにもなる史上最大のワシです。
巨大なワシは島に住む生き物たちの大きな脅威でした。
巨鳥モアでさえも獲物としていたのです。
この時に襲ったモアはあまりにも大きかったため持ち上げられずに一緒に洞窟に落ちてしまったと考えられています。
カカポやキーウィたちが夜行性となった理由。
それは昼間活動する最強の猛きん類から逃れるためだったと考えられているのです。
しかし話はそれで終わりではありませんでした。
今から700年ほど前。
鳥たちの王国を新たな脅威が襲います。
人間が島にやって来たのです。
モアは人に狩り尽くされた事が原因で絶滅したと考えられています。
そしてモアという獲物を失ったハーストイーグルもまた姿を消しました。
しかしキーウィやカカポにはワシから身を隠し夜に行動するという習性がいまだに残ったままなのです。
夜。
新たに生まれようとする命がありました。
オスのキーウィが80日もの間温め続けた卵から音が聞こえています。
ついにヒナがふ化の時を迎えたのです。
(ヒナの鳴き声)ヒナは生まれつき強じんな足で殻を蹴り破ります。
羽毛に覆われかなり成長した姿で生まれてきます。
おなかには栄養が詰まった袋がありしばらくは何も食べなくても平気です。
そして生後1週間ほどで自分で食べ物を探し始めます。
キーウィが巨大な卵を産む理由。
それはヒナが親を頼る事なく素早く自立するためだったのです。
数奇な運命をたどってきた南太平洋の島ニュージーランド。
そこには数々の試練をくぐり抜け独自の進化を遂げた鳥たちの王国がありました。
2015/07/20(月) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
ホットスポット・セレクション「絶海の島 珍鳥たちの王国〜ニュージーランド〜」[SS][字]

南太平洋に浮かぶニュージーランドは飛べないオウム・カカポや夜行性のキーウィ、森で子育てするペンギンなど珍鳥たちの宝庫。島と鳥たちがたどった驚きの進化の謎に迫る。

詳細情報
番組内容
南太平洋に浮かぶニュージーランドは世界でも類をみないユニークな鳥たちの楽園。飛べないオウム・カカポや夜行性のキーウィ、森で子育てするペンギンなど共通の特徴が「飛ばないこと」。天敵である肉食の哺乳類がいなかったことがあげられるが、その原因として、島の誕生をめぐるある仮説が注目を集めている。島がかつてほぼ水没した可能性があり、哺乳類が一掃されたというのだ。島と鳥たちがたどった驚きの進化の謎に迫る。
出演者
【語り】渡邉佐和子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
バラエティ – 旅バラエティ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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サンプリングレート : 48kHz

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