イリノイ州シカゴ。
ワーナー・ハートマンは、オーディオショップを経営し、周囲からステレオキングと呼ばれる億万長者だった。
1978年 34歳で年収が億超えしたワーナーは、妻・ヴァインとの間に二人の子供をもうけた。
そしてシカゴ郊外の家で悠々自適な生活を送っていた。
ワーナーは巧みな話術で客に予算以上のものを購入させる接客スキルに長けていた。
しかし仕事に打ち込むあまり、家庭を省みず夫婦は離婚し、ヴァインは子供を連れて出て行った。
寂しさを感じたワーナーが飲みに出かけたら、酒場でデブラ・ストーヴァ(24)と出会う。
デブラは幼い頃に父親を亡くし、高校を中退してダンサーとして勤めていた。
ワーナーが億万長者だと知ったデブラは、VIPルームにワーナーを連れて行き、身体を摺り寄せてワーナーを誘惑した、
そしてわずか半年で二人は結婚する。
デブラは美人だが、ワーナーを完全に支配しているように見えた。
宝石やミンクのコートなどあらゆるものをねだり、購入してもらった。
結婚後すぐ、デブラは夜遊びを繰り返す。
ワーナーは「男か!」と詰め寄るが、「関係ないでしょ?あんまりしつこいと別れるわよ!」と言われると弱かった。
そしてデブラはワーナーの店に来ていたテニスコーチのジョンと恋仲になる。
密会を重ねる二人の不倫関係にワーナーは気付き、「若造と過ごしていたのか!」と朝帰りしたデブラを問いただしたら、その関係を見せ付けるように、コートを脱ぐと、その下は全裸だった。
「最高の夜だったわ!」
キレたワーナーは、逃げるデブラの背後から拳銃を乱射して追い出した。
デブラはジョンと暮らすが、テニスコーチの収入では今までのような生活は出来ない。
そこでワーナーに懇願し出戻りを果たした。
ある日、ワーナーは2Fで話していたデブラの電話の会話を聞いてしまう。
「始末した死体はどうする?」
自分が殺されるのではないか?と察したワーナーは、保険会社に電話し、保険の契約をデブラから二人の娘に名義変更してもらうよう、担当のハーベイに依頼した。
その保険金の額は80万ドル(2億円)。
そして離婚を切り出した。
このときワーナーは店の経営にも行き詰っており、元妻のヴァインに相談した。すると、会社の口座が空っぽになっていることが発覚した。
1982/6 デブラから電話があり、気が変わったので離婚に応じるという。ただ1つお願いがあり、前の家族と一緒に食事がしたいと言ってきた。
ヴァインと娘2人が店で待っていると、デブラは1人でやってきた。ワーナーは遅れるので、この後のディスコで合流するという。
デブラは食事後ディスコに誘い、「一生忘れない日にしてあげる」と妻と娘たちを大きく盛り上げた。しかしワーナーは来なかった。
AM2:00。ヴァインが二人の娘を連れて家に送ると、中からステレオの大音量が聞こえた。
子供たちが父親を探すと、血まみれで息絶えたワーナーの姿があった。
至近距離から14発撃たれており、誰かが侵入した形跡も盗まれたものもなかった。
ワーナーは、特殊な軍用マシンガンで撃たれていた(薬莢は残っていた)。
デブラはディスコにいたのでアリバイがあり、ジョンにもアリバイがあった。
そして家・ビジネス・保険金は、デブラが引き継いだ。保険金は名義変更手続きが遅れていて、まだ完了していなかったのだ。
事件はそのまま迷宮入りとなった。
6年後、とある密売人が逮捕され、押収された銃の中に、ワーナーの殺害に使われた特殊なマシンガンが見つかった。
この密売人はジョンのクラスメイトだった。
ワーナーの殺害はデブラが計画したもので、ジョンはデブラから「ジョンに何かあればいいのに」と言われたので、銃を調達した。
そして浴室から出てきたワーナーを撃った。
デブラはジョンだけでなく、保険会社のハーベイも手玉にとっていた。
デブラは、ワーナーが保険契約の名義変更をしようとしているのに気付き、ハーベイに接近して「頼みごとを聞いてくれたら、女は感謝するものなの。」と誘惑し、名義変更の手続きを遅らせていた。
その間に殺害計画を完遂させたのだ。
事件から7年後の1989、デブラは逮捕された。法廷にはミンクのコートで出廷した。
デブラ・ハートマンは懲役22年。ジョン・コラブックは懲役16年の判決を受けた。