三菱マテリアル:強制労働の元米国人捕虜に謝罪 大企業初

毎日新聞 2015年07月20日 20時01分(最終更新 07月21日 01時14分)

握手をする(左から)三菱マテリアル社外取締役の岡本行夫氏、同社の木村光常務執行役員、元捕虜のジェームズ・マーフィー氏=米ロサンゼルスで2015年7月19日、長野宏美撮影
握手をする(左から)三菱マテリアル社外取締役の岡本行夫氏、同社の木村光常務執行役員、元捕虜のジェームズ・マーフィー氏=米ロサンゼルスで2015年7月19日、長野宏美撮影

 ◇米ロサンゼルスで「おわびは、よりよい未来に向けて…」

 【ロサンゼルス長野宏美】三菱マテリアルは19日、前身である三菱鉱業が第二次大戦中に旧日本軍の捕虜になった米国人に強制労働をさせたとして、米ロサンゼルスで元捕虜と遺族らに謝罪した。日本政府は2009年と10年に公式に謝罪しているが、謝罪を仲介した団体によると、日本の大企業が公式に謝罪するのは初めて。

 人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」の施設で、非公開で行われた。同社の木村光常務執行役員が、元捕虜のジェームズ・マーフィーさん(94)や遺族に「このような不幸な出来事を二度と起こさない」と伝えたという。

 木村常務は面会後の式典で、三菱鉱業の国内4カ所の鉱山で約900人の元米国人捕虜を働かせたことを認め、「道義的責任を痛感している。おわびは過去の不幸な出来事を反省し、よりよい未来に向けて一層の努力を重ねる決意を示すものだ」と語った。マーフィーさんは「歴史的だ。私たちは70年間これを望んでいた」と謝罪を受け入れ、「他の日本企業にも広がってほしい」と期待した。マーフィーさんはフィリピンで捕虜になり、連行中に多数が死亡した「バターン死の行進」を経て、秋田の鉱山に送られたという。

 元捕虜と日本側関係者の対話を後押しする米国の団体「捕虜 日米の対話」が数年前から、元捕虜を働かせた日本企業に謝罪を呼びかけていた。三菱マテリアルは昨年7月に受け取った謝罪呼びかけの手紙を契機に、「元捕虜が高齢なので、できるだけ早く謝罪したい」と判断したという。

 米国では元捕虜が日本企業に賠償や謝罪を求める提訴が相次いだが、00年代初頭に、個人の賠償請求権放棄を定めたサンフランシスコ平和条約を理由に退けられている。

 韓国では三菱重工業などを相手取った元徴用工の訴訟が相次ぎ、中国では三菱マテリアルなどを相手取った訴訟が昨年3月に受理されている。木村常務は中韓への謝罪を問われたが、「係争中の案件のコメントは控えたい」と述べるにとどめた。

最新写真特集