【自衛隊イラク派遣報告書】「純然たる軍事作戦」 首相官邸、情報統制
| 陸上自衛隊が08年5月にまとめたイラク復興支援活動行動史の一部。「純然たる軍事作戦であった」と記されている |
任務拡大に伴う隊員リスクの増大などに焦点が当たっている安全保障関連法案の参院審議に影響を与える可能性がある。
報告書は陸自が08年5月にまとめた「イラク復興支援活動行動史」。計約430ページで2冊に分かれ、関係者は「部内の研究・教育資料」としている。 「法案審議に不可欠だ」とする野党要求を踏まえ、衆院特別委員会の野党理事に提出された。
04年10月にロケット弾が宿営地内に撃ち込まれ、鉄製の荷物用コンテナを貫通して宿営地外に抜けた事案については「一つ間違えば甚大な被害に結びついた可能性もあった」と振り返っている。
派遣直後のサマワの状況について、治安維持を担うオランダ軍兵士が死亡する事件や、警察署への襲撃など「油断できない状況が継続した」と説明。05年6月に陸自車両の爆発事案があったことにも触れ、「敵対勢力が存在した」と明記した。
報告書によると、派遣前の準備では至近距離の射撃や制圧射撃訓練が重視された。「最初の武器使用が、精神的にハードルが高いとの危惧」があるとして「危ないと思ったら撃て」と指導した指揮官が多かった一方、武器使用によりイラク側との信頼関係が崩れると懸念する指揮官もいた。
不測事態が発生した際には、官邸への報告が最重視された。報道対応については「政治判断によるところが大きい」と言及している。報告書は「報道対応の迅速性と家族への通知の確実性」を両立すべきだと提言した。
航空自衛隊もクウェートを拠点に多国籍軍の兵士や物資をイラクに運ぶ活動を行った報告書をまとめた。「脅威下の運航にもかかわらず、同じ曜日、時間、飛行場への定期運航を行っていた」と指摘。運航を不定期化して、攻撃されるリスクを減らす必要性を訴えた。
(共同通信)
▽精神ケアの重要性浮き彫り 安保審議で検討不可欠
陸上自衛隊イラク派遣の報告書は「戦地」での活動に従事した隊員への精神的ケアの重要性を訴えている。政府は安全保障関連法案の審議で任務が拡大する隊員のリスク増大を否定しているが、過酷な現場の実態を踏まえた 真摯 (しんし) な議論が欠かせないことがあらためて浮き彫りになった。
2005年12月、イラクで活動中の陸自の車両がデモ隊から投石され、車両のミラーが壊された。報告書には「群衆の中に銃を所持している者を発見。特に注意を払うなど現場の状況を把握しながら冷静に行動した。(部隊に銃口を向けることがなかったため、弾薬は 装てんしなかった)」と緊迫した様子が記された。
陸自が撤収した前後の06年7~8月に実施した精神状態の調査では「全般的に約2割の隊員にストレス傾向が見られた」と報告。今後の海外派遣でも「精神面のフォローが必要だ」と強調した。
さらに、戦場に準じた地域で銃の携行が義務付けられる活動や、砲弾攻撃を受ける可能性が高い地域での活動、多数の遺体と接する活動に従事した場合は、気持ちを整理するための時間や場所を設けることを提言した。
衆院での安保法案審議で中谷元・防衛相は、隊員のリスク増を否定する一方で、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症する可能性があると認めた。参院審議では、イラクなど過去の海外派遣の実態を国民に隠さず示し、正面から向き合った議論が求められる。
(共同通信)