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闇サイト殺人、死刑執行 女性拉致の神田死刑囚

神田司死刑囚

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 法務省は二十五日、名古屋市で二〇〇七年、会社員磯谷利恵さん=当時(31)=が三人の男に拉致、殺害された「闇サイト殺人事件」で死刑が確定した神田司死刑囚(44)=名古屋拘置所=の刑を同日午前に執行したと公表した。昨年八月二十九日以来の執行で、一二年十二月の第二次安倍政権発足後では十二人目。第三次安倍政権では初めて上川陽子法相が命令した。

 確定判決によると、神田死刑囚は、インターネットの闇サイト「闇の職業安定所」で知り合った男二人と共謀。〇七年八月二十四日夜、名古屋市千種区の路上で、帰宅途中の磯谷さんを拉致して車に監禁。現金やキャッシュカードなどを奪った上、翌二十五日にロープで首を絞めるなどして殺害し、遺体を岐阜県瑞浪市の山中に遺棄した。

 神田死刑囚は〇九年三月に名古屋地裁で死刑判決を言い渡され、いったん控訴したが、翌月に自ら控訴を取り下げ、強盗殺人罪などで刑が確定していた。

 共犯の二人のうち、川岸健治受刑者(48)は一、二審で無期懲役判決を受け、刑が確定した。堀慶末(よしとも)被告(40)は一審では死刑判決を受けたが、二審で無期懲役となり確定。その後、別の強盗殺人事件への関与が発覚し、強盗殺人容疑で逮捕、起訴されている。

 この日の刑執行で、未執行の確定死刑囚は、昨年三月に静岡地裁の再審開始決定で刑の執行が停止された袴田巌さん(79)を除くと、百二十九人となった。

 執行後の記者会見で上川法相は「誠に身勝手な理由から尊い人命を奪った極めて残忍で、被害者や遺族には無念この上ない事件」と指摘。「死刑は、裁判所が慎重な審理を尽くした上で言い渡すもの。慎重にも慎重な検討を経た上で執行命令を出した」と話した。

 第一次安倍政権では、〇六年十二月〜〇七年八月に十人の死刑が執行された。

◆共犯2人は無期懲役に

 闇サイト殺人事件の公判では神田死刑囚は控訴を取り下げたが、一審で死刑判決を受けた共犯の被告が高裁で無期懲役になるなど、近年の刑事裁判の厳罰化の流れに一石を投じた。

 当時、世論には一九九五年の地下鉄サリン事件をはじめとしたオウム事件や光市母子殺害事件(九九年)など、悪質性の高い事件に厳罰を求める流れがあった。

 名古屋高裁の堀被告、川岸受刑者の公判では、被害者が一人の事件で死刑を選択するかが最大の焦点になった。名古屋高裁は「社会的影響も大きいが死刑選択がやむを得ないほど悪質とは言えない」として、一審判決を破棄し、堀被告と川岸受刑者をともに無期懲役とする判断を示した。

 一九八三年に最高裁が示した「永山基準」で考慮すべき要素として「被害者の数」が盛り込まれて以降、死刑判決の多くは被害者が複数の場合に出されており、名古屋高裁の判決は、そうした永山基準を踏襲した形となった。

◆「区切りだが、娘は帰ってこない」

 <磯谷利恵さんの母富美子さんの話>娘を殺害した死刑囚が生きていると思うだけで、事件のことばかり考えてしまっていた。一つの区切りになった。でも娘は帰ってきませんから。遅すぎたくらい。

 <闇サイト殺人事件>犯罪の共犯者を募るインターネット掲示板「闇の職業安定所」で知り合った堀慶末被告と神田司死刑囚、川岸健治受刑者の3人が2007年8月、名古屋市千種区で磯谷利恵さんを拉致し、現金などを奪い殺害。遺体を岐阜県瑞浪市に遺棄した。川岸受刑者の自首により同月26日に逮捕。名古屋地裁は09年、神田、堀両被告に死刑、川岸被告に無期懲役を言い渡した。神田死刑囚は控訴を取り下げ確定。堀被告は11年の名古屋高裁判決で無期懲役に減刑された。堀被告は判決後、1998年にも愛知県碧南市で別の強盗殺人事件を起こしていたことなどが発覚したとして逮捕、起訴されている。

 

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