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■2015/7/1 “帝王”ジャック・ニクラウス 著 蟹瀬誠一副議長 読む
“帝王”ジャック・ニクラウス
ゴルフ好きなら誰でも一度は会ってみたいプロ選手がいるでしょう。私の場合は“帝王”ジャック・ニクラウスでした。数年前、幸運にもそのチャンスが突然やってきました。ある雑誌からジャックがゴルフ場設計のために来日するので英語でインタビューをして欲しいという依頼が舞い込んだのです。
ジャックは幼少の頃から父親にゴルフを習い、10歳からはレッスンプロの指導を受けて1962年にプロ入りしています。その後、2005年に65歳で引退するまでにメジャー18勝という前人未到の偉業を成し遂げたことは皆さんもご存じでしょう。そのレジェンドに会えるのです。私は有頂天で都内のホテルに出かけました。インタビュー早々、「あなたにとってゴルフは人生そのものでしょうね」と尋ねたら以外な答えが返ってきました。「いや、それは違う。ゴルフはただのゲームだ。人生は家族です。家族がうまくいっていないときは、仕事もうまくいきません」。さすが人格者である。
話のついでに「私のような練習嫌いが手っ取り早く上達する方法はありますか」とも訊いてみた。いま振り返ればなんとも無礼な質問だが、ジャックは笑みを浮かべて「セイイチさん、ゴルフの上達に必要なものはふたつしかありません。ひとつは良いスィング、もうひとつは良い人格です」との返事。まさに脱帽でした。
もうお分かりのように、ジャック・ニクラウスはゴルフだけでなく人格も大変高く評価されているプレーヤーです。その証拠に、引退試合となった2005年全英オープンに合わせてスコットランド銀行が彼のために似顔絵イラスト入りの記念5ポンド紙幣を発行したくらいです。私の知る限り、あの頑固なスコットランド人が普段見下げているアメリカ人の為に紙幣を発行することなど今まで聞いたことがありません。それだけ彼が全人格的に高く評価されているということです。プロスポーツ選手はすべからくそうありたいものです。
先週、そのジャックと久々に再会しました。いよいよ来年春の彼が設計した「東京クラシック」が千葉県にオープンするからです。じつは私も9人の創設メンバーのひとりなのです。日本初の本格的家族型クラブライフと乗馬まで楽しめるゴルフクラブが誕生します。再会したジャックは75歳という思えぬエネルギーに溢れていて、相変わらず見習うべきところの多い紳士のままでした。ゴルフがうまいだけでは決して一流のプロとはいえないのだ、と改めて感じた瞬間でした。(終)
蟹瀬誠一 |
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