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【社説】

辺野古検証報告 手続きの誤りを認めよ

 沖縄県による名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認に「法律的瑕疵(かし)」があったとする検証結果を、県の第三者委員会が報告した。重い指摘だ。政府は辺野古での米軍基地新設を強行してはならない。

 辺野古沿岸部の埋め立ては、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の返還に向け、代替の米軍施設を建設するためのものである。

 仲井真弘多前知事が二〇一三年末に承認したが、辺野古移設反対を掲げる翁長雄志氏が昨年十一月の県知事選で当選後、第三者委員会を設置し、埋め立て承認に法的な瑕疵=欠陥がなかったか否かを検証していた。

 報告書は「埋め立ての必要性に合理的な疑いがある」「環境保全措置が適正に講じられているとは言い難い」などと指摘し、「公有水面埋立法の要件を充足していない」として、承認手続きに法律的瑕疵が認められると断じた。

 国の埋め立て申請自体に不備があり、県の審査も不十分と指摘する内容だ。翁長氏は「最大限尊重し、判断を下す」と記者団に述べた。八月にも承認取り消しに踏み切る公算が大きい、という。

 辺野古移設を「唯一の解決策」とする政府は、たとえ知事が埋め立て承認を取り消しても、法的な対抗策を取りつつ、移設作業を続けるだろう。

 しかし、弁護士ら六人の有識者が半年間、辺野古移設への賛否を抜きに検証した結果だ。政府は、仲井真氏の承認で「既に行政の判断は示されている」(菅義偉官房長官)と突っぱねるのではなく、重く受け止めるべきではないか。

 沖縄では昨年、名護市長選や沖縄県知事選、衆院選で辺野古移設反対派が相次いで当選した。

 今年六月の沖縄全戦没者追悼式で、翁長氏はあいさつの約半分を米軍基地問題に費やした。

 今月に入り、沖縄県議会では、県外から搬入する埋め立て用土砂を規制する条例が成立した。

 沖縄での一連の動きは、辺野古移設を強行しようとする政府への異議申し立てにほかならない。

 その上、法的正当性に疑いがある埋め立て工事を強行しようとするのなら在日米軍基地の74%が集中する重い負担に苦しみ、新基地建設に反対する多くの県民の怒りを増幅させるだけである。

 安倍政権は現在行っている海底掘削調査を直ちに中止すべきだ。新国立競技場の建設計画を、国民の批判を理由に白紙に戻せるのなら、辺野古移設も県民の反対を理由に白紙に戻せぬはずがない。

 

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