(テーマ音楽)木や森移ろう季節など何気ない日常の世界を言葉にした詩人長田弘さん。
その詩は人々の内に眠る風景の記憶を呼び覚ましさまざまな世代から愛されました。
うんと簡単に言うと…そういうふうにいつも考えたいんですね。
長田さんは昭和14年福島県福島市に生まれます。
戦争中は疎開先の山あいの村で木々に親しみ木の記憶とともに育ちました。
「子どものころ山裾の古い神社の森に入り込んで大きな洞のある木を見つけて一人でなんどもその洞のある木の許に行った。
森はいつも生き生きとして湿った匂いがしたが洞のなかは遠い時間の乾いた匂いがした。
木の洞のなかの静まりかえった時の痕跡がじぶんの胸の洞のなかに音のしない音のように残っている」。
昭和34年早稲田大学へ進学。
安保闘争のさなかに詩を書き始めます。
「詩は書かれざる哲学を書く事心の目印になるもの」という思いがありました。
昭和40年詩集「われら新鮮な旅人」でデビュー。
長田さんは詩人として活躍します。
世界各国を旅する中「人は皆風景の中で育てられ生きてゆく」という思いを強くしました。
東日本大震災の年に詩集「奇跡」を出版します。
ふるさとを襲った大震災。
その直後病に倒れた長田さんは日常を改めて見つめました。
「奇跡ミラクル。
庭の小さな白梅のつぼみがゆっくりと静かにふくらむと日の光が春の影をやどしはじめる。
冬のあいだじゅうずっと緑濃い葉のあいだに鮮やかにぼつぼつと咲きついできたのは真っ白なカンツバキだったが不意に終日春一番がカンツバキの花弁をぜんぶきれいに吹き散らしていった。
翌朝にはこんどはボケの赤い花々が点々と細い枝々の先の先まで撒いたようにひろがっていた。
朝起きて空を見上げて空が天の湖水に思えるような薄青く晴れた朝がきていたらもうすぐ春彼岸だ。
心に親しい死者たちが足音も立てずに帰ってくる。
ハクモクレンの大きな花びらが頭上の途方もない青空にむかって握り拳をパッとほどいたようにいっせいに咲いている。
ただにここに在るだけでじぶんのすべてを損なうことなく誇ることなくみずからみごとに生きられるということのなんという花の木たちの奇跡。
きみはまず風景を慈しめよ。
すべてはそれからだ」。
ありがとうございました。
平和な日常と感じる力。
その大切さを言葉にし続けた詩人長田弘さん。
その深い思いは先に逝った最愛の妻への詩に表れています。
「春の日あなたに会いにゆく。
あなたはなくなった人である。
どこにもいない人である。
どこにもいない人に会いにゆく。
きれいな水ときれいな花を手に持って。
どこにもいない?違うとなくなった人は言う。
いつもここにいる。
死ではなくその人がじぶんのなかにのこしていったたしかな記憶をわたしは信じる。
ことばって何だと思う?けっしてことばにできない思いがここにあると指さすのがことばだ。
春の日あなたに会いにゆく。
きれいな水ときれいな花を手に持って」。
2015/07/18(土) 05:40〜05:50
NHK総合1・神戸
NHK映像ファイル あの人に会いたい「長田弘(詩人)」[字]
詩人、長田弘。75歳で亡くなるまで、樹や森・移ろう季節など日常の何気ない風景から人間の心を解き明かした詩やエッセーを著し続けた。詩人長田弘の世界観が語られる。
詳細情報
番組内容
詩人、長田弘。75歳で亡くなるまで、樹や森・移ろう季節など日常の何気ない風景から人間の心を解き明かした詩やエッセーを著し続けた。昭和40年に詩集『われら新鮮な旅人』でデビューし、その後、詩人として第一線で活躍し続けた。晩年は妻の突然の病、看病、そして死別を経験し、「命」と「失うこと」について思索をめぐらす。詩人長田弘の世界観が語られる。
出演者
【出演】詩人…長田弘,【語り】鈴木奈穂子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – インタビュー・討論
情報/ワイドショー – 芸能・ワイドショー
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