ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか【魔を滅する転生窟】   作:月乃杜
<< 前の話 次の話 >>

2 / 5
 意外に早くリリの噺が書けたので投稿。

 尚、やり過ぎた部位が在ったので該当している部分を修正しました。





第1章:ファミリア
第1話:竈の処女神との出会いは間違っているだろうか


.
「はぁ、ひもじい生活が続くな〜。今日もジャガ丸君だけかぁ」

 長い黒髪をツインテールに結わい付けた、ターコイズブルーな瞳で背が小さく幼い顔立ちだけど反比例する様にきょぬーを揺らす、所謂【ロリ巨乳】な少女がちょっと恥ずかしい露出の白いワンピースを着て溜息混じりに愚痴を呟いた。

 廃教会の地下を住居とする少女が自らの家に入り、すぐに警戒心も露わにして一点を見つめる。

 否、睨んでいると言った方が適切かも知れない。

 ベッドとソファーとテーブルと、大した物を置いている部屋ではないのだか、その中でもベッドだ。

 ベッドが何故か盛り上がっている。

 つまり、誰かが布団に潜んでいるという事。

 少女はコソコソと足音を忍ばせてベッドに近付く。

「何処のどいつだい!」

 バサリッ!

 灯りを点けて布団を剥ぎ取ると……

「ヒッ!」

 少女は息を呑んだ。

 青年が寝ているのはまだ許容範囲だが、その青年は素っ裸で眠っている上に、覚醒直前なのか下半身には反り返る青年の分身。

「太くて長くて逞しい……パオンパオ〜ン」

 少女は混乱している。

「ハッ! ボクは何を言っているんだ!? ク〜ッ、処女神(おとめ)に何てモノを見せ付けるんだい!」

 勝手に視て憤慨するが、どちらかと云えば悪いのは他人の家に入り込んだ方、少女の怒りはベクトルこそおかしいが正当なのだ。

「おい、こら起き給え!」

 眠りこける青年を少女が揺すると、屹立したモノがフリフリと動く。

 なるべく視ないで揺すってはいるものの、少女とて異性に全く興味の無い百合ではないが故にか、チラホラと視線がモノに向かい、その度にブルブルと首を横に振っていた。

「起きるんだ侵入者君!」

「ん、うん……」

 ガバッ!

「ふえっ!?」

 突然の事だったからか、反応が出来ずにいた。

 腕を行き成り引っ張られたかと思うと、ベッドへと引き摺り込まれてしまった少女は、形としては青年にのし掛かられている状態、誰がどう見ても襲われているロリ巨乳の図。

「あ、あわわ!」

 行き成り引っ張り込まれてしまった少女は狼狽しながらも動けず、青年にされるが侭とまではいかない迄も弄られてしまう。

 一時間か? それとも僅か数分なのか? 時間的な事は判らないものの、少なくとも守るべき某かは守り切ったと思うが……

 少女にとっては初めての感覚に戸惑って、今この時ばかりは青年を起こさない様に声を無理矢理にでも押し殺し、漸く刺激が薄れていくとグッタリして肢体を青年の身体の上へと投げ出してしまった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「君は何者なんだい?」

 自分は怒っています!

 そう言わんばかりに頬を膨らませ、柳眉をしかつめらしく寄せて腕組みをしながら詰問をしている。

 さて、問題は彼女からの質問にどう答えるかだが、現状で青年が解っている事と云えば、まず何故だか素っ裸で普段は少女が寝る筈のベッドを占拠して眠り込んでいたらしい事と、その所為で不法侵入をしていた青年を叩き起こすべく掛け布団を剥いだ少女は、ユートの裸をパオン込みで視てしまった事、この場が少女の家であるらしい事、どうやら地球ではなさそうな事と変な──青年にとっては嗅ぎ慣れた愛液の──臭いが漂う辺り、何かしら寝ている際に仕出かしたらしい事であろうか?

 解っている事は基本的に殆んど無かった。

 少女はあの後、少しだけ気だるい肢体に鞭を打ち、何とか青年を叩き起こす事に成功して今に至ったが、未だに先程の感覚の酩酊が残っており、少しばかりだがフラフラしている。

 青年は布団で裸を隠し、少女から尋問されていた。

「名前は【緒方優斗】でも【ユート・オガタ・ド・オルニエール】でも【ユート・スプリングフィールド】でも【柾木優斗】でも好きに呼べば良いよ。多分だけど異世界人だ」

「は?」

 青年──ユートの科白に間抜けな声を返す。

 だがすぐに気を取り直して瞑目すると、腕組みをしながら黙考に入り込む。

 ややあって目を開けて、少女は困った表情になる。

「君の名前、全てが偽名ではないとボクには解るよ。そして異世界人……少なくとも君が、ユート君がそう思っているのは間違いないと理解した。兎に角、ボクは今絶賛混乱中さ」

「そうか。君は人間の嘘を見抜けるのか?」

「解るのさ、ボク達には……神にはね」

「神……ね……」

「ボクの自己紹介がまだだったね、ボクの名前は──ヘスティア。この迷宮都市オラリオに住まう神の一柱という訳さ」

 きょぬーを張ってエヘンと咳払いをした。

 皮肉な話であり、ユートは嘗てまだ【スプリングフィールド】であった頃に、神殺しとなっている。

 転生をしても得た特質は継承されるが故に、ユートは今でも神殺し──謂わばカンピオーネなのだ。

 碌な力を感じないとは云っても神と神殺しの談笑、あの世界の人間が見たなら冗談にしか思えまい。

「(ヘスティア、ギリシア神話に於ける竈の女神で、三柱が存在する処女神……その一柱か。地球ではないと思ったのに、神が地球の神々と同じ名前とはね……或いは此処も遠い平行世界の地球だったり?)」

 まさかね……と心の内側で苦笑いをした。

 聞いた限りではヘファイストスやタケミカヅチと、よく知る神の名前が普通に挙がっていたし、嘗て別の世界では【神殺剣(ゴッド・スレイヤー)】を造る為に殺そうとしたロキの名前まで在った程だ。

 因みに、タケミカヅチは未だしもヘファイストスとロキは女神らしい。

 ユートの知っている彼の神は男神、特にヘファイストスはヘパイトスとも呼ばれており、選りにも選って処女神である女神アテナに懸想をして襲い掛かって、処女を奪えなかったばかりか肌に分身が擦れ射精するとか、ちょっとばかり情けない結果を残したある意味で英雄だったり。

 此方のヘファイストスはヘスティアにとって神友だと言うが、暫く前に天界から降臨した際に寄生をし、呆れ果てられたのだとか。

 それでも、この廃教会の一室を用意してくれた辺りを鑑みれば、ヘファイストスの情は深かった。

 問題はこの地は地球ではないと考えると、ゲートも存在はしないであろうし、仮に存在しても座標が全く以て解らないでは意味など無かったし、困った事に帰る手段が思い付かない上、現状にて閃姫を喚ぶに為はコストが足りない状態だ。

 情報が無ければ閃姫を喚ぶコストも無く、(あまつさ)えこの地で暮らしていく為の先立つモノである資金すら無いという具合、無い無い尽くしだった。

 この世界も恐らくユートが識らないだけで、大元の世界に於いてはラノベだかアニメだかゲームとして、何らかのメディアで知られた物語の筈だが、識らないなら全く意味が無い。

 お金の単位もヴァリスと聞き覚えが無かった。

 此処がよく知る平行世界の地球であれば、質屋にでも行って貴金属や宝飾品など資金に替えるという手段を使えたし、その資金でホテルに泊まる事も可能だったが、全く識らない世界でその手は使い難い。

「取り敢えず、着替えても構わないかな?」

「ん? まあ、確かにいつまでもその格好は目に毒でしかないしね。手早く着替えてくれ給え」

「了解了解〜」

 ユートは右人差し指を立てると、真っ直ぐに振り下ろしてステータス・ウィンドウを起動させ、アイテムストレージを呼び出して、パンツと服とズボンを選んで出した。

「へ?」

 少女は行き成り服などが顕れて吃驚するが、それは取り敢えず放っておいて着替えに没頭する。

 数分後、着替え終わったユートは少女と話し合う。

 取り敢えず暮らしていく手段は必要なのだろうが、知識に無い作品というより世界観すら解らないのではどうにもならない、だけどこのオラリオでは極々普通に人間と神々が千年以上まえから交流を持っており、冒険者や、薬師やら鍛治師などに自らの神の恩恵──ファルナを与えているのだとか。

 それは神様が天界から降りてきた際、封じた神の力──アルカナム──を無しでも使えるモノで、自らの霊血(イコル)を用いて人間の背中に神聖文字(ヒエログリフ)を書く。

 それによって人間や亜人は怪物にも対抗が出来る力を獲て、ダンジョンを攻略しながらモンスターの魔石やドロップアイテムを獲る事で糧とするらしい。

 成程、よく出来ている。

 神々は人間に恩恵を与えて信徒を増やし、地上での雑事をやらせて自分は好きに生きている。

 まあ、組織(ファミリア)の運営もしているみたいではあるが、中には運営自体を人間に任せて自由気侭、怠惰に暮らす者も居たりするらしいけど。

 例えばフレイヤ。

 彼女は基本的にヘスティアやヘファイストス達みたいな働き方はしておらず、迷宮の上に建てられているバベルと呼ばれる建造物、其処で優雅に暮らしているとか何とか。

 ファミリアもダンジョン探索するタイプも在れば、ヘファイストス・ファミリアみたいな鎧兜や武器を造って売るタイプも在るし、デメテル・ファミリアなど農業に従事するタイプなんかも存在している様だ。

 まない……もとい、ロキ・ファミリアは可成り大手のダンジョン探索タイプのファミリアらしく、人数も普通に百人越えをしている様で、既に何度も遠征を行って稼いでいるとか。

「やっぱりやるなら探索型が一番だろうか?」

 などと呟くと、何故だかヘスティアのターコイズブルーな瞳がキラキラと輝き始めた。

 神の恩恵(ファルナ)というのは、基本的にどの神様に与えられても変わらないらしいから、ヘスティアだろうがロキだろうが良いと云えば良い。

 ダンジョンは【ギルド】が管理運営をしているらしいから、モグリでは稼ぐのも面倒臭そうだったし恩恵は必須な訳で……

 遂には右人差し指で自身を指し始めたヘスティア、ファミリアのメンバーが零な彼女としては、無所属なユートを取り込みたいといった処なのだろう。

 半ば襲われたに等しいというのにいじましいというべきか、或いはユートの事を女神の懐の深さから赦してくれたのか、いずれにしても先輩が居ない訳だし、柵も少ないのはメリットと云えるかも知れない。

 デメリットはヘスティアがアルバイトで糊口を凌いでいる辺り、貧乏感が半端無いファミリア──眷属が居ないからそう呼ぶというのも烏滸がましいのだが──だという事。

 これでは武具は元より、迷宮探索に使う道具や糧食すら用意が出来ない。

「別にヘスティアのファミリアでも構わないんだが、先立つモノくらいは準備をしてくれるんだよね?」

 ピシッ!

 空気が凍り付く。

 ソッと目を逸らしてくれるヘスティアを見遣って、思っていた通りだったのだと頭を抱えた。

「確か、イシュタル・ファミリアってのは娼館だって話だよね?」

 力の強いファミリアに関してはレクチャーを受け、【アポロン・ファミリア】や【イシュタル・ファミリア】や【ロキ・ファミリア】や【ヘファイストス・ファミリア】などはユートも既に知識を持っている。

「よし、だったらヘスティアは其処に売り付けて準備金にしよう!」

「ま、待った待ったぁっ! あのさ、ボクはこう見えて処女神だから不特定多数とそういうのはちょ〜っとアレなんだよ!」

「……けど準備金すら無いってのはね〜」

「うう、ギルドから武器と防具は借りれるから少しずつ稼げば……」

「面倒。僕は一ヶ月くらいダンジョンに篭って一気に稼ぎたいんだ」

「いや、無理! 初心者は一階層で半日も篭れたなら良いくらいなんだぜ?」

 娼館に売られかねないと知り、ヘスティアは身振り手振りで説明と説得をしているが芳しくない。

「だいたい、ギルドからの貸し出しってどんなの? 僕としては、【檜の棒】と【旅人の服】と【棍棒】に五十ヴァリスとか勘弁して欲しいんだけどな」

「それはどんな虐めだい! 得意武器と簡単な防具って処だよ」

 きっと【銅の剣】と【革の鎧】くらいだろうなと、ユートは予測をしていた。

「僕的には、長期の遠征にも耐え得る質の良い防具が欲しいんだ。上に羽織る為の戦装束や武器は有るんだけどね……」

 鎧となると聖衣か二天龍の禁手くらい。

 それは流石に派手過ぎ、ちょっと遠慮したかった。

 況してや、聖衣は小宇宙が使えないであろう現状、形ばかりは鎧の単なる重石に過ぎない。

 ヘスティアからの話の通りなら、此処はドラクエの世界観みたいなファンタジーワールドな訳だろうし、聖衣や禁手はそぐわない。

「仕方無い、こうなったら最後の手段だな。ヘスティアには借金を負って貰う」

「いや、普通に少しずつの攻略で稼ごうよ……ね?」

 勿論、ヘスティアの言葉は却下された。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「帰れ! そして二度と私の前に顔を出すな!」

 赤毛で右目に眼帯をした女性はヘスティアを、いっそ汚らわしいモノでも視る様な冷たい視線で射抜き、すぐに顔を背けるとシッシと手を振った。

 神友とは思えない対応の冷たさだが、ヘスティアは彼女の優しさに甘えまくって天界から降りた直後は、正しく寄生をしていたのだから当然の結果だろう。

 それでも最後の恩情としてあの住処を世話してくれただけ有り難く、今現在のヘスティアは彼女の優しさすら食い物にしたみたいなものだった。

「聞いておくれヘファイストス! ボクの事なら幾ら(なじ)っても構わない。けど借金だけは認めて欲しいんだ! ボクの初めてのファミリアに、それなりの装備を与えたいから!」

「ファミリア? そういえば見た事の無い顔がある。坊やの名前は?」

「柾木優斗。まだ契約はしてないけど、一応は彼女のファミリアに入る心算だ。装備品に関しては相談に乗って貰えると助かるな」

「ほう? ウチの装備品は可成り高額な物ばかりだ。勿論、質も保証はしよう。だけど駆け出しの冒険者の卵に手が出せる物は置いていないんだがね」

 実はそこそこに稼げれば手に入る武具も有るけど、それは下級鍛冶師が造った作品であり、性能も値段に相応それなりでしかない。

「問題は無い。ヘスティアが借金の申し込みをした訳だけど、実際に担保を用意しているのは僕だしね」

「──何?」

 ユートの堂々とした宣言を受けて、ヘファイストスは驚愕するしかなかった。


.



 次回は数多のヒロインを差し置き、ヴェルフが登場すると云う……

 その頃の柾木家な噺を書いたら投稿予定です。