とどろく稲妻。
弾丸の着弾。
人の目では捉えられない超高速の現象です。
こうした現象を見るための強力な武器。
それがハイスピードカメラです。
カメラが誕生して以来高速撮影も進化を続けてきました。
研究者たちは工夫と改良を重ね桁違いの速さを実現しています。
数百万分の1秒を見る事ができるカメラでは稲妻のような放電現象の際に網目状に広がる光が捉えられました。
更に1億分の1秒を見られるカメラでは血液中の全ての細胞を超高速で検出。
そして今ハイスピード撮影は1兆分の1秒の世界に。
光の速さの6分の1という超高速で伝わる熱の波を世界で初めて捉えたのです。
誰も見た事のない世界を見てみたい。
究極の速さに挑む研究の最前線に迫ります!今日のテーマはハイスピード撮影。
ハイスピード撮影って結構テレビでもよく見かけますよね。
ですよね。
最近市販のカメラでも撮影できるようになりましたし結構身近になってきましたよね。
今日は最新の映像をたくさんご紹介しますがまずはこのハイスピード撮影の歴史をひもといてみましょう。
突然ですがこの映像をご覧下さい。
馬が走ってる。
この馬が走ってる時に4本の脚が同時に宙に浮く瞬間があるかどうか見て分かりますか?いや〜分からないですねこれだけじゃ。
ですよね。
実は世界初のハイスピード撮影はこれを確かめるために1800年代後半アメリカで行われたんですよ。
へえ〜。
当時は馬が走る時に必ず1本は脚が地面に着いてると考えられていたんですね。
そして賭けが行われたんですよ。
はい。
じゃあ高速撮影して確かめようっていう事ですね。
ですね。
でも当時ってハイスピードカメラとかってないですよね。
どうやって撮影したんですか?その撮影のしかたを説明しましょうか。
これは馬が走るコースにまず12台のカメラを設置するんですね。
カメラには糸がくっついています。
そして馬が走ってきて糸がプツンと切れるとシャッターが切れるという仕組みなんですね。
馬が駆け抜ける…撮れた写真がこちらです。
あ〜こうして見ると動きがよく分かりますね。
あっ4本の脚とも地面に着いてない瞬間ありますね。
当時はこうやって…一瞬の姿を捉えようとしたんですよ。
いやでも今って1台のハイスピードカメラで撮影できますよね。
そうですね。
じゃあどうして1台のカメラで連続撮影ができるようになったんでしょうか。
美しい王冠のような…牛乳のように粘性がある液体を落下させる事で起きる現象です。
一昔前のフィルムカメラではこうした映像の撮影は困難でした。
理由の一つが…シャッターの開閉という動作が必要なため撮影速度に限界があったのです。
そんな世界を変えたのがデジタルカメラの登場です。
フィルムの代わりにセンサーを使うようになりシャッターは電子式に変わりました。
物理的なシャッターをなくす事で高速撮影は格段に進化します。
では電子式シャッターとは一体どんなものでしょうか?デジタルカメラの内部では被写体から来た光がセンサーに当たります。
この光を電子に変える事で画像を取り込む仕組みです。
ONは画像を取り込む状態。
OFFは画像を取り込まない状態です。
このONとOFFの切り替えがシャッターの開閉にあたります。
電子式シャッターによって撮影速度は飛躍的に向上しました。
世界初のデジタルハイスピードカメラが誕生。
毎秒4,500枚の撮影速度を達成します。
高速で走行する新幹線。
普通のカメラでは車内の様子は全く分かりません。
ハイスピードカメラではご覧のとおり。
乗客の顔までも鮮明に映し出しています。
こうして生まれたデジタルハイスピードカメラはさまざまな分野で役に立っています。
例えば宇宙開発。
宇宙空間を漂う微小なゴミデブリが問題になっています。
デブリは秒速10キロという超高速で移動するため人工衛星などに衝突すると大きな被害をもたらします。
そこで人工衛星に見立てた2枚の金属板の前に防御壁をセットしてデブリの衝突実験を行いました。
防御壁の角度を変え比較してみます。
321。
板を垂直にした場合は3枚とも貫通しています。
一方斜めにした場合には貫通しませんでした。
ハイスピードカメラで確認すると板を斜めにした場合衝突の衝撃が下方向に広く分散している事が分かりました。
衝撃の伝わり方を詳しく見る事で人工衛星の設計に生かす事ができるのです。
更に工業製品の世界でもハイスピード撮影は不可欠になっています。
パソコンはたわむ事によって衝撃を受け流しています。
落下に強いパソコンを作るためにはこうした検証は欠かせないものになっています。
私たちの身の回りで起きる一瞬の出来事。
そこでは一体何が起こっているのか。
ハイスピードカメラによってその秘密が解き明かされてきたのです。
うわ〜ハイスピードで見る映像面白いですね。
すごいですよね。
やっぱりこれフィルムからデジタルに変わってハイスピード撮影も進化しましたね。
うん。
さっき新幹線撮ってましたけど世界的に見て日本っていうのはハイスピード撮影の技術っていうのは進んでるんですか?世界でもトップクラスなんですよ。
という事で今日は長年ハイスピードカメラの開発に携わってこられたNHK放送技術研究所の大竹浩さんに来て頂きました。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
大竹さんそもそもハイスピードカメラって一体どんなカメラなんですか?その分割する枚数が多ければ多いほど撮影速度が速いというカメラなんです。
それで通常…実際にいろんなものを撮った映像があるので見てみましょうか。
まずは線香花火ですね。
これは普通のカメラで撮影したものだと…。
これ十分きれいですよね。
きれいですよね。
打ち上げ花火ですか?これがハイスピードですね。
うわ〜!真ん中の中央の玉の所をよ〜くご覧頂くとそこから打ち上げ花火のように飛び出していってそれが広がる。
うわ〜きれい。
何か神秘的ですね。
こんなになってるんですね。
これはやっぱりハイスピードじゃないと見えないですね。
続いてはこちらです。
うわっグラスが割れちゃった。
これは1秒間に2,000枚で撮影したものなんですけれども落ちた瞬間1コマでガラス全体にヒビが入ってますね。
確かにそうですね。
ただこれでは…1秒間に2,000枚でも無理なんですか?そうですねそれでもまだ撮影できてないです。
今日はハイスピードカメラ持ってきました。
このカメラは量産されてる売ってるカメラの中では非常に性能の高いもので1秒間に100万枚という速さで撮影する事ができます。
100万枚!どんな映像になるんでしょう。
今日は実際にこのカメラを使ってグラスが割れるところを実際にご覧頂きたいと思います。
先ほどの映像は毎秒2,000枚の速さで撮影したものだったんですけど今日はその15倍の…それでは落としますよ。
はい。
(2人)おお〜。
(竹内南沢)おお〜。
全然分かりませんでしたね。
分かんないですねヒビなんて。
じゃあ今のハイスピードカメラで撮った映像を実際にご覧頂きたいと思います。
はい。
うわっすごい!上の方が意外とスッといくんですねピッて感じでね。
ピピピッて広がっていきますね。
すごいこうなってるんだへえ〜。
毎秒2,000枚から3万枚に変わったら全然見える世界違いましたね。
でもこの映像を撮るまでには大変な苦労があったんですよ。
デジタルハイスピードカメラの弱点を克服しなければいけなかったんです。
弱点って何ですか?えっどういう事ですか?それは。
このハイスピードカメラにも使われていますセンサーがカギなんです。
デジタルカメラではレンズから光が入るとフィルムの役割を果たすこのセンサーに光が当たります。
この部分をちょっと拡大してみましょう。
光の情報はセンサーの中で電子に変換されてこの電子はメモリーと呼ばれる部分に送られてそこでこのように画像が記録されていくという訳なんです。
これがデジタルハイスピードカメラの弱点なんです。
送るのにはどれぐらい時間かかるんですか?100分の1秒っていうと1秒に100枚しか撮れないって事ですけどじゃあ何で100万枚撮れるんですかね?不思議ですよね。
はい。
デジタルハイスピードカメラの弱点をどのように克服するのか。
江藤剛治さん。
新幹線を撮影した世界初のデジタルハイスピードカメラの開発者です。
画像を転送するのに時間がかかるという問題に長年取り組んできました。
江藤さんが考えたのが画像の情報を1枚ずつメモリーに送るのではなく転送路に一時的にためておくというアイデアでした。
こうすれば100分の1秒の壁を超えて撮影する事が可能になります。
こうして最大で毎秒1,600万枚というハイスピードカメラを完成させました。
撮影に挑んだのは静電気など身の回りで起きる放電現象。
数センチほどの短い距離で起きるため放電の詳細な過程を捉える事ができませんでした。
ミクロの世界の電気の振る舞いはどうなっているのでしょう?撮影の結果がこちら。
まず強い放電が確認できます。
ところがよ〜く見るとその前に小さな網目状の放電が起きている事が分かりました。
大きな放電の前に小さな放電が起きる事が初めて撮影されたのです。
江藤さんの工夫を凝らしたハイスピードカメラが捉えた驚異の現象です。
すごい映像でしたね最後の。
ビックリしましたね。
ああやってセンサーに一時的にため込むってすごい発想ですよね。
アイデアがすごいですよね。
でもこうやってもっともっと追求していけばもっと撮影できる枚数が増えて今まで見えなかったものがもっと見えるようになりそうですね。
それねそう簡単でもないんですよ。
えっ。
実は先ほどは毎秒400万枚で網目状の放電が見えたんですね。
じゃあそれを倍のスピードにして毎秒800万枚だったらどう見えるか見てみましょうか。
見てみたい。
ん?あらっえ!?さっきの網目状のものが全く見えないですね。
そうなんですよ。
これはね…感度の問題。
はい。
枚数を上げたら単純にもっと細かく見えるもんだと思ってました。
そうはいかないんですね。
熱で撮ろうとするものがだんだん焼けてしまったりとかそういう問題が生じてしまうと。
撮影できる枚数がどんどん増えてってすごいなと思ったんですけどまだ課題はあるんですね。
そうですね。
ただやっぱりデジタルハイスピードカメラが出来てみんなが比較的簡単にこういうハイスピード映像が撮影できるというのは非常に世の中のためにもなってますしメリットじゃないかなと思います。
確かに私たちが普通に使える時代になりましたよね。
カメラ好きとしてはうれしい限りですよ。
そうですね。
大竹さん今日はどうもありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
さてここからはこれまでとは全く違ったやり方で感度と撮影速度の両立を目指す研究にスポットを当てます。
その撮影速度もなんと1秒間に1億枚という大台に乗りました。
え〜1億枚ですか!?新しい手法を開発したのが東京大学の合田圭介さんを中心とする研究チームです。
その名もSTEAM。
全くカメラらしくないんですが…。
このカメラ一体どうやって撮影をするんでしょうか。
実はこのカメラにはセンサーもフィルムも使われていません。
使うのは1億分の1秒ごとに発射されるレーザー光。
この光の粒が高速撮影のカギです。
まず光の粒を波長ごとに分散する装置に通し升目状に配置します。
これがいわばフィルムの代わりになります。
被写体に当たった光は被写体の形の情報を得て戻ってきます。
これがシャッターの役目を果たします。
光にシャッターとフィルムの両方の機能を持たせる事で毎秒1億枚の速度が達成されました。
もう一つの課題だった感度は特殊なファイバーによって解決しました。
グルグルと巻かれたファイバーの全長はなんと10キロ。
ここを通過する間に光を強める処理をしています。
この処理で…最後に強められた光を電子に変換。
画像が得られるという仕組みです。
従来のハイスピードカメラの数百倍という撮影速度を実現したこのカメラ。
同じ時間で数百倍多くのものを見る事ができるためさまざまな産業分野から注目を集めています。
その一つが医療の分野です。
合田さんと共同でSTEAMを医療現場で応用する研究を進めています。
注目しているのはガン患者に特有の血液中を流れるガン細胞です。
血液1ミリリットル中に10個ほど含まれています。
もし見つける事ができれば患者のガンの進行具合や転移の有無を診断する有力な手がかりになると期待されています。
しかし血液1ミリリットル中に含まれる細胞は60億個にも及びます。
通常のハイスピードカメラで撮影するとこのとおり。
細胞を判別する事は困難でした。
そこで目に留まったのが合田さんのカメラです。
では実際にどうやって血液中の細胞を撮影するのでしょうか。
まず検査したい血液を薄めて注射器に入れ装置にセットします。
この装置は血液を一定の速度で流し続ける事ができます。
細い管の先には幅100マイクロメートルの溝が刻まれた板がセットされています。
その溝にピントを合わせ血液を流し次々と撮影していくのです。
はっきりと細胞の形が分かります。
60億個の細胞を僅か10分で捉える事ができたのです。
いや〜細胞一個一個が結構はっきり見えてましたね。
原理は分かりにくいけどちゃんと映ってますよね。
ちょっと仕組みは難しかったです。
面白いですよね。
はい。
今日は開発者の合田圭介さんにお越し頂きました。
どうしてこういうカメラを作ろうと思われたんですか?そうですね。
これまでの撮影という分野はいかに小さくいかに速くという事にフォーカスされてたんです。
私は生命科学に興味があったので例えば細胞のダイナミクスを見たいといった要求があったんです。
今までのカメラでは生きたままの細胞が見れなかったって事ですか?そうですね。
つまり…じゃあ今まではそういった血液の中の生きたままの細胞を見るっていうのは考えられなかったんですか?非常に難しかったんですね。
例えば血液1ミリリットル中の細胞は約60億個なんですね。
それを一つ一つ人間の目で見るとなるとですね大体計算すると6年間かかるんです。
果てしないな。
その結果まあ6年間かかるという事で現実的にほぼ不可能であったと。
はい。
今1秒間に1億枚という事でしたけどもっともっと枚数上げる事ってできるんですか?できるんですね。
合田さんのチームはSTEAMを更に超える撮影速度を持つカメラを開発しています。
その速度は驚異の毎秒1兆枚以上。
STAMPと名付けられたこのカメラSTEAMと同じく光を分ける技術が使われています。
毎秒1兆枚を実現する秘密はまず光を出す時間の短さです。
およそ1兆分の1秒間レーザー光を出します。
更にその光を波長ごとに6つに分解します。
進行方向に6分割する事にもう一つの秘密があります。
6分割する事で一つの光で6枚連続した撮影ができるのです。
最後に6つの光をセンサーで受け画像を映し出します。
こうして撮影したのが…画面のサイズは僅か0.5ミリ。
注目は真横に伸びる線。
実はこれ熱が波となって伝わる様子です。
熱が伝わる速度は…光の速さの6分の1という超高速です。
1兆分の1秒という驚異的な撮影が世界で初めて捉えた現象でした。
1兆分の1秒ってもう想像できないです。
完全に想像を超えてますよね。
はい。
結晶っていうのは原子や分子が格子状に並んだものなんですけどもそこに非常に短いレーザーをポンと当てるとですねそれが刺激となってその結晶の中の原子や分子がこう振動して熱として伝わっていくと。
それが非常に速い現象なんですね。
じゃあ池で波紋が広がるみたいに熱が周囲に広がっていってる。
それを撮影したって事ですか?まさにそのとおりです。
でも一体これで何が見えるんですか?例えばですね…はあ〜化学反応か。
そういうものが見えてきたらまたすごい発展が期待できそうですね。
そうですね。
教科書とかでこの化学反応とか熱の伝わり方とか教わるんだけどじゃあ見た事があるかって言われたらない訳ですよ。
確かにないですね。
今まではビフォーアフターのしか見れない。
中間がどうなってるかってのがよく分からなかったんですね。
そこを明らかにするためにこういった高速撮影技術が必要になったと。
もうまさに究極のハイスピードカメラに近づきましたね。
そうですね。
ただ1つ弱点があるんですが何だと思いますか?先ほどのVTRにヒントがありました。
弱点…何でしょう?正解は撮影枚数なんです。
撮影枚数?VTRでは熱の伝播は画像の6枚に制限されていたんですけども…。
確かに6枚しか並んでなかった。
そうですね。
現在のタイプではそれ6枚が限界なんですが今開発中のは25枚まで撮れるようになります。
いずれは100枚まで連続撮影できるように現在開発中です。
へえ〜。
今日はどうでしたか?いや〜。
今まで見れると思ってなかったようなものがたくさん見れたのが結構衝撃でしたね。
今日は前半はそのハイスピードカメラという事で正常進化ですよね。
それに対して後半は何かね…カメラの革命?ぶっ飛んでいてちょっともう原理は理解できそうにないけど撮れてるっていう。
これ衝撃的でしたね。
ビックリしました。
合田さん今日はどうもありがとうございました。
ありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに。
2015/07/18(土) 12:30〜13:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「1兆分の1秒を見よ! ハイスピードカメラ最前線」[字][再]
肉眼では捉えられない超高速の世界を見せてくれるハイスピードカメラ。ついに「1兆分の1秒」を捉えるまでになった。研究の最前線をハイスピード映像満載でお届けする。
詳細情報
番組内容
ミルクのしずくが落ちた瞬間に作られる王冠状のリング、カワセミが小魚を捕える素早い動き。超高速の世界を切り開いてきたハイスピードカメラに、さらなる革命が起きている。進化を続けるその速さは、なんと毎秒1兆枚。この撮影により、熱が波となって伝わる様子が世界で初めて捉えられたのだ。これまで誰も見たことのない世界を見てみたい!世界をリードする日本の高速撮影研究の最前線を紹介する。【出演】竹内薫、南沢奈央
出演者
【ゲスト】東京大学大学院理学系研究…合田圭介,NHK放送技術研究所新機能デバイス研究部…大竹浩,【司会】竹内薫,南沢奈央,【語り】土田大
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
情報/ワイドショー – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:13985(0x36A1)