目撃!日本列島「地震で沈んだ“幻の村”に迫る〜ある科学者の挑戦〜」 2015.07.19


海一面に広がるサンゴ。
温暖な黒潮の恵みを受ける高知・土佐の海です。
ここに大昔の地震で村が沈んだという言い伝えがあります。
1,300年前白鳳の南海地震が四国を襲いました。
この地震で土佐の国今の高知県にあった村が丸ごと海に沈んでしまったというのです。
村の名は黒田郡。
村が存在していた事を示す証拠は見つかっていません。
しかしその伝説は現代まで人々の間に言い伝えられてきました。
高知の海沿いにある学校の防災学習。
かつて村を沈めたという大地震。
その恐ろしさは更に孫の世代へと受け継がれていきます。
地震で沈んだ村は本当にあったのか。
1,300年の時を超え黒田郡の伝承に科学的に迫るプロジェクトが立ち上がりました。
来た来た来た!リーダーの谷川亘さん。
沈んだ村を発見しそこから地震の規模を推定。
将来の防災に役立てるのがねらいです。
幻の村に挑んだ科学者の2年を記録しました。
南海地震で大きな揺れと津波が想定される高知県。
地震発生のメカニズムに迫る世界でも最先端の研究施設があります。
地震を引き起こす海底深くのプレート。
そこから採取してきたコアと呼ばれる地層を分析しています。
巨大地震は重なり合うプレートがずれる事で発生します。
粉々に割れた岩石は地震のエネルギーの大きさを物語っています。
主任研究員の谷川亘さんです。
9年前からここで研究を続けています。
これはコアから取り出した岩石を使いどれくらいの力が加わると断層がずれるのか再現する実験です。
岩石によって成分や含まれる水分の量は異なります。
このため断層がずれる時に生じるエネルギーの量も変わります。
その値を正確に測定する事で将来起こる地震や津波の規模を突き止める事ができるのです。
谷川さんは国際的なプロジェクトにも参加。
海底探査船に乗り込み世界各地の海底の断層を調査してきました。
おととしの夏。
谷川さんはこれまでとは全く違う視点から地震の実態に迫ろうという研究チームを立ち上げました。
1,300年前に地震で沈んだといわれる黒田郡。
その存在を明らかにする事で地震の規模を突き止めようという研究です。
黒田郡は本当に地震で海に沈んだのか。
谷川さんはまず高知県各地で残されている文献や記録を集める事から始めました。
だいぶ古いのでこんな色になってますけれど。
これは昔の土佐湾の海底地形図。
郷土史研究家から入手しました。
自然に出来たとは考えにくい平らな地形や直線上の地形に注目します。
伝承の残る地域に自ら足を運び聞き取り調査も行いました。
この日は須崎市周辺の海で長年漁師をしている人たちに話を聞きました。
井戸の跡を70年以上前に海に潜った時に確かに見たといいます。
続いて向かったのは須崎市から西へ60キロの黒潮町。
海から古い茶わんや銭が出たと子どもの頃に聞いたという男性に出会いました。
(谷川)あのちょっと先で…。
半年間にわたって各地を調査した谷川さん。
次々と具体的な証言を得る事ができました。
聞き取りの結果を基に海底調査を開始しました。
目指すのは井戸の跡があったという須崎市沖の海。
あっちがフタゴ。
そこがフタゴ。
赤いやつね。
多分それの1つ手前の…。
たまたま出会った素もぐりの漁師さんも井戸を見た事があるといいます。
入れま〜す。
は〜い。
水深10メートルのなだらかな海底。
今回の調査では村の痕跡らしいものを見つける事はできませんでした。
なぜ谷川さんは黒田郡と向き合おうと考えたのか。
きっかけは4年前に遭遇したある出来事でした。
2011年3月。
谷川さんは青森県八戸港で海底探査に向けた準備をしていました。
その時…。
6メートルを超える大津波。
日常の暮らしが一瞬にして失われていく様子をぼう然と見つめるしかありませんでした。
非常に…これまでの研究でどれだけの人に地震の恐ろしさを伝え命を救う事ができたのか。
地震の恐ろしさを人々により身近に感じてもらえる研究をしたいと考えるようになりました。
震災から2年。
ある新聞記事に目が留まりました。
地震で沈んだという言い伝えが今も残る黒田郡。
この言い伝えが事実だと科学的に証明できればより身近に地震の恐ろしさを伝えられる。
そして将来の地震への備えにもつながるはずだと研究に乗り出しました。
谷川さんに新たな情報が寄せられました。
ごめんくださ〜い。
・どうぞどうぞ。
は〜い。
かつて高知県土佐清水市に住んでいた男性。
今までにない具体的な情報を得る事になりました。
これで言うとですね…柱のような石がいくつも沈んでいるという土佐清水の海。
ここには弁天島を中心とした村が白鳳の南海地震で沈んだという言い伝えも残っています。
土佐清水の海で海底調査が始まりました。
サンゴが広がる海。
水深5メートルほどの場所でした。
自然のものとは思えない柱のような石。
20個近くが連なるように横たわっていました。
長さは1メートル50センチ。
来た。
あがったね。
(谷川)お〜っでかい!でかい!でかいしきれいだこれ。
これすごい。
ありがとうございます。
すごい!よかったよかった。
谷川さんは早速石の分析に取りかかりました。
いくよ。
場所は…。
場所はどこでも。
(谷川)いいですか?じゃあとりあえず…。
肉眼では分からない石の内部まで調べるためCTスキャン。
1ミリ以下の間隔で画像を切り取っていきます。
(谷川)何か見えた?すると…。
うわっすごい。
人の手でくりぬいたとしか考えられないまっすぐな穴が現れました。
考古学の専門家を招き石が何に使われていたものなのか調べました。
注目したのはのみで削った跡。
隣り合う2面だけに見られました。
かつて階段に使われていたのか。
谷川さんは石を見つけた海に程近い集落を訪れました。
石の階段を見つけました。
室町時代には既に創建されていたというお寺です。
よく見てみると…。
のみで削ったような跡。
階段の幅は1メートル50センチ。
更に集落の中には…。
そっくりそっくり。
ほら…。
この地区では昔から家の土台として使っていたといいます。
海の中で見つけたものと同じ特徴を持つ石を次々と発見しました。
1,300年前の南海地震で海に沈んだという黒田郡。
2年に及ぶ調査で今の土佐清水の海に存在していた可能性が浮かび上がってきました。
今谷川さんは周辺の地域の地層を調べいつどこで石が切り出されたのか調査をしています。
地道な分析を続け過去の地震がもたらした被害の大きさに迫っていきます。
一人でも多くの命を守るため研究を続けていきたい。
伝承から大昔の巨大地震をひもといていく壮大な挑戦は続きます。
2015/07/19(日) 08:00〜08:25
NHK総合1・神戸
目撃!日本列島「地震で沈んだ“幻の村”に迫る〜ある科学者の挑戦〜」[字]

1300年前の地震で海の中に沈んだといわれる集落「黒田郡」。しかしその場所などは明らかになっていない。今回一人の研究者が、幻の集落の謎の解明に取り組み始めた。

詳細情報
番組内容
西暦684年に起きたとされる「白鳳地震」。高知県の沿岸各地には「白鳳地震で『黒田郡』という集落が海の中に沈んだ」という伝承が今も残る。その解明に乗り出したのが海洋研究開発機構の谷川亘さん。地震のメカニズム解明のため、これまで探査船で海底数千メートルの地層を調査する国際プロジェクトに参加してきた谷川さんが、なぜ幻の集落と向き合うことになったのか?そして調査の中で見えてきたものとは?【語り】六角精児
出演者
【語り】六角精児

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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