イッピン「“ふわり”に技あり 麦わら帽子〜岡山 帽子〜」 2015.07.19


皆が納得して城を移る手だてを探します。
許さぬ。
(椋梨)奥の方々に…。
幕府軍に打ち勝つだけの力を持つ事ができると思うか!どうかお力を!夏の強い日ざしを遮り上品で軽やかな印象を演出する…夏本番の東京。
大の帽子好きという滝沢沙織さんが東京駅にある帽子ショップに極上のイッピンがあると聞きやってきました。
かわいい。
国内のある産地で作られた帽子を扱うお店。
きれいだな。
いらっしゃいませ。
こんにちは。
さて噂のイッピンは…。
こちらの麦わら帽子です。
こちら。
持っても大丈夫ですか?はいどうぞ。
へぇ〜滑らかすごく。
手触りもいいし。
はい。
すてきですね。
おしゃれな帽子で。
ちなみにこれっておいくらぐらいするんですか?こちらにございます。
え!ちょっと待って。
え?はいそうです。
そうなんですね。
こちら岡山県で作られた麦わら帽子。
驚くほどの緻密さ。
金色に輝く麦の風合いにたおやかな弧を描く絶妙な形。
上品さが際立ちます。
そのかぶり心地は?おぉ!かぶった感じがすごい柔らかいですね。
なじむ。
フィット感がいいですね。
ありがとうございます。
従来の麦わら帽子にはない柔らかな肌触りとフィット感。
きょうは岡山生まれの極上の帽子を徹底リサーチします。
岡山県笠岡市。
滝沢さん早速麦わら帽子を作ったメーカーを訪ねました。
こんにちははじめまして。
滝沢沙織と申します。
石田と申します。
よろしくお願いします。
迎えてくれたのは…明治30年創業の老舗帽子メーカーを兄弟4人で切り盛りしています。
実は岡山県が帽子の一大産地ってご存じですか?笠岡市をはじめとする瀬戸内海沿岸地域では麦わら帽子の出荷額が長らく全国1位を誇ってきました。
ここにも帽子いっぱい!わっここで…。
あら?これは…。
これが材料になります。
「麦稈真田」といって…。
麦稈真田?「麦稈」とは「麦の茎」みたいな意味なんですけど。
「真田」というのは「組み紐」のことをいいます。
麦稈真田とは数本の麦を編んで1本の紐状にしたもの。
この紐状の素材をブレードともいいます。
触ってみると結構ボコボコしてますね。
手で編んでありますので。
これをぐるぐる渦巻き状に縫っていって…。
えどういうことですか?全部つながってる感じです。
え!全部1本ですか?そうです。
麦わら帽子の材料はこの1本の麦稈真田だけ。
これを渦状に縫い合わせて作ります。
普通幅は8ミリほどなのに僅か3.5ミリの極細を使っているためです。
こっちでもフィットするけどこっちのフィット感は全然違いますね。
全然違いますね。
この美しい丸みも細い麦稈真田だからこそ生み出すことができるのだといいます。
極細の真田を操る最高峰の職人技とは?弟の昌司です。
よろしくお願いします。
お願いします。
縫製を任されている昌司さん。
昌司さんは2003年フランスの国際的な帽子コンテストで銀賞を受賞。
美しく正確に縫製する技術が絶賛されました。
縫製に使用するのは昭和30年代から使い続けているこのミシン。
極細の真田を縫うための特別な調整をしています。
今回は滝沢さんの頭のサイズに合わせて作ってもらうことに。
この木型に合う形にしていきます。
縫い始めるのは頭頂部から。
(ミシンの音)帽子を回転させながら1段ずつ真田を重ねて縫っていきます。
幅が薄いじゃないですか?はい。
縫う所が何ミリみたいな?1ミリ!幅3.5ミリの真田の縫い代は僅かに1ミリ。
ここに正確に針を落としていかなくてはなりません。
しかも表面に凹凸があり幅もそろっていない真田を重ねて常に1ミリの縫い代を保つのは至難の業。
そんな微妙な調整が本当に出来るんでしょうか?秘密は両手の指の動きにありました。
きれいに均等に縫えてるじゃないですか?何でなんですかね?定規というガイドに帽子の端をそわせて針が一定の場所に来るようにするんですがまずは左手の親指にご注目。
決してまっすぐではない端を定規に押し当てすぎず離しすぎず。
ぴたりと合うよう微妙な力加減でコントロールしていくんです。
更に右手の親指でも。
小刻みに動いているのが分かるでしょうか?親指の腹で表面の凹凸を感知し針が的確に入るよう瞬時に修正しています。
押したりすると曲がっちゃうってことですか?ってことは手の微妙な…。
この時左手の他の指はといえば…。
本当ですよね。
昌司さんの驚くべき指の動きをご覧下さい。
まるでピアニストのようです。
自在に指を操って帽子が常に一定の速度で回転するようにしているのです。
研ぎ澄まされた感覚が生む正確無比な縫い目。
超絶技巧に脱帽です。
帽子作りは更に続きます。
縫製作業で難しいとされるのがツバが張り出し始めるこの部分。
引っ張ったりしながら。
この難所に差しかった時に昌司さん左手の位置を大きく変えました。
今度は左右の手で縫う部分を引っ張り微妙な角度をつけてツバを作っていきます。
力のバランスが少しでも崩れるときれいなラインができません。
帽子の形は指先の力加減一つに懸かっているんです。
そして難所を越えると左手はまたもとの位置へ。
本当に手の感触だけで引っ張ったりとか上げてみたりするということなんですね。
へぇ〜。
はい。
あ〜完成!ここまでおよそ1時間。
なんと木型にピッタリ!滝沢さんかぶり心地は?おおピッタリ!ピッタリピッタリピッタリ。
どう似合う?80メートルの真田が1ミリの幅で縫い続けられついに1つの帽子になりました。
驚異の指先が生んだイッピンです。
岡山生まれの麦わら帽子に海外も注目しています。
オーストラリアの…イギリスのキャサリン妃やトップモデルの帽子も手がける世界的なデザイナーです。
新しく帽子を共同開発しようと石田さんの工房を訪れました。
ハワードさんはインターネットで石田さんの帽子を見て以来繊細な美しさに憧れ続けてきたといいます。
世界が認めた岡山の麦わら帽子。
今年の冬オーストラリアでの販売が決まりました。
麦わら帽子といっても形はさまざまです。
例えばこちらの中折れ帽子。
もともと男性用だったのが近年ではかっこよさを求める女性に人気です。
でもこの複雑な形いったいどうやって作られるのでしょうか。
こちらの部屋。
縫製した帽子の形を整える「型入れ」と呼ばれる仕上げの作業を行います。
作業を任されているのは型入れ歴40年の…熱した金型に帽子を入れ空気圧をかけてプレスします。
窯の温度圧力時間を調整しながら帽子の形を作り出すのです。
ホヤホヤ!型入れをすると形が複雑な中折れ帽子もこのとおり。
このハット型がこれからできるとは思わなかった。
そういう仕組みになってたんだ帽子って。
型入れで最も難しいのは金型の温度を調節することだといいます。
金型は均一に熱せられていないと仕上がりにムラができます。
ところが底の部分は火に近いため温度が高くなってしまいます。
この温度差を大塚さんは長い職人歴の果てにたどりついた独特のやり方で解消します。
霧吹き?
(音)シュー!長年の「シュー」で。
そして温度の高すぎる部分に霧を吹きかけ温度を下げるのです。
では音の違いを聞いてみましょう。
プレスに最適な温度はこの音。
(音)シュ。
温度が高すぎると。
(音)ジュ。
皆さん分かりましたか?もう一度聞いてみましょう。
(音)シュ。
(音)ジュ。
(音)シュ。
(音)ジュ。
いい音の「シュ」という時点で何度ぐらいあるんですか?分からない。
分かんないんだ。
とりあえず帽子にはいい温度だよっていう。
そうそう。
なるほど。
帽子温度です。
おしゃれな帽子の表情を決める仕上げのひと手間。
数字には換算できないベテラン職人の経験によって支えられていました。
岡山では晴天が多い気候と潮風の恵みで江戸時代から良質な麦が作られてきました。
しかし麦わら帽子が西洋から入ってきたのは明治になってから。
この頃岡山での麦稈真田の製造が始まりました。
明治末期には当時アメリカで流行していたカンカン帽の材料として盛んに輸出されます。
それにより岡山の真田作りは一大産業へと発展。
一方で麦わら帽子そのものも作り始めます。
当時の繁栄をしのばせる貴重なものがあると聞いて訪ねました。
海外との取引に使われた麦稈真田の見本帳です。
麦を染めてから編まれた色鮮やかなもの。
複雑で凝ったデザイン。
30種類を超える編み方が開発されたといいます。
こうした高い技術は岡山の麦わら帽子作りをいっそういっそう発展させました。
本当にいろんな編み方がありますね。
しかし戦後になると麦稈真田作りは安価な中国産におされ衰退していきます。
今では国内の生産は途絶え真田作りを知る人もごく僅かになってしまいました。
ところでこれらの帽子麦わら帽子だと思いますよね。
実は麦わらで作られているものは1つもありません。
岡山では麦わらに変わる新たな素材を取り入れることで帽子作りが続けられてきたんです。
滝沢さん帽子の材料を作っている井原市の工場を訪ねました。
ここですね。
あ!すごい音が…。
カラカラする音が。
なんだなんだ?・
(大きい音)お〜すご〜い!ずらり並んでいるのは…複数のボビンを回転させ糸を複雑に編むことで帯状の紐を作ります。
ブレードと呼ばれる帽子のもととなる材料です。
この工場を経営する…40年前帽子用のブレードの製造を始めました。
今作っているのは麦稈真田にも見えますが実は…。
はい。
そうなんですか!まだらに染められた糸状の紙を編んで麦わらのような風合いを作ります。
製紐機はこんなことも可能です。
13個あるボビンのうち1つだけ色を変えてもらいました。
1個やるだけですごく鮮やかなきれいな色!柄が出るでしょう。
本当ですね。
こうやっていろんな色を組み合わせて。
すごくきれい。
びっくり。
色や柄を思いどおりに変えられるこの機械で紙だけでなく綿やアクリルレーヨンなどさまざまな素材のブレードを作ることができるのです。
これがこの帽子。
本当だ。
柔らかい!本当だ。
全く一緒。
へぇ〜。
これがこれになるんだぁ。
山田さんが開発するブレードは毎年100種類を超えるといいます。
なるほど。
岡山で生み出される多彩な帽子。
麦稈真田で培われた技術とセンスが今なお帽子作りを支えているのです。
倉敷に今大人気の帽子店があると聞き訪ねました。
早速ミシンが…。
いろんな帽子がありそうです。
こんにちは!きょうはよろしくお願いします。
滝沢沙織です。
お願いします。
すごくたくさんありますね。
年間500種類の新作帽子を発表するというこのお店。
個性豊かな帽子が並んでいます。
中でもこの夏人気なのが…。
こちらのジュート素材の。
ジュートって何ですか?麻の一種の素材になるんですけど。
はい。
畳んだりとかしてもしわが寄らないタイプになります。
へぇ〜本当だ。
バッグの中に入れててもまたすぐしっかり戻りますもんね。
目が粗く強いというジュートの特徴を生かした帽子。
無造作に潰してかぶるのが今年の流行です。
この店では帽子のデザインや縫製を自社で行っています。
そのためオーダーメードをすることができるんです。
滝沢さんもオリジナル帽子を作ってもらうことに。
まずは100種類以上あるブレードを選ぶことから。
なんか明るい感じの色で作りたいんですけど。
ボーダーっぽくもできるってことですか?そうですね。
途中で変えて差し色にしても。
入れて?縁だけ赤もいいですね。
なるほど。
へぇ〜。
じゃあこれでまとめようかな。
女性っぽさもあるし…。
はい。
かわいい感じで。
なじませてはい。
こんな感じで。
頭のサイズを丁寧に測っていきます。
これぐらいで?はい。
3色のブレードを組み合わせたオーダー票が出来ました。
さぁイメージどおりに出来るでしょうか?こんにちは!
(一同)こんにちは!工場で縫製の作業を見せてもらいました。
ここでは女性のスタッフ7人で年間1万2,000個の帽子を作っています。
素材によって硬さも柔らかさも全然違うから。
それは違いますね。
目の調子とか段が変わる時とかは外れないように気をつけないと。
慎重に。
オーダーによっては素材や幅が異なるブレードを縫い合わせなければなりません。
ここではどんな注文にも対応できる経験と技が求められます。
(ミシンの音)滝沢さんのオーダーした帽子が縫い上がりました。
できた!あっこんな感じで…。
かわいい。
どうでしょうか?皆さん。
皆さんオッケーです。
ツバの端に入れた赤色のブレードが印象的。
みんなこの喜びを味わうんでしょうね。
自分でオーダーした時にイメージして。
あぁ…。
私まさにこのイメージしてたので。
よかった。
だからすごくうれしいです。
思わず笑顔になる自分だけの帽子。
世界でたった1つのイッピンです。
今回帽子の旅をしてみて一番手が技っていうのを感じましたね。
だからこれからより帽子を選ぶ時にもてっぺん見ちゃったりとかするんだろうなぁとか素材何を使っているんだろうなぁっていうのを知らないうちに見てるんだと思います。
西洋からやってきて今や日本の夏に欠かせないものとなった麦わら帽子。
岡山では美しくかぶり心地のよい帽子を作る技がこれからも受け継がれていきます。
2015/07/19(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン「“ふわり”に技あり 麦わら帽子〜岡山 帽子〜」[字]

繊細で美しい形と抜群のフィット感。日本有数の帽子産地・岡山県が生み出した極上の麦わら帽子が今回のイッピン。極細の麦わらを編む超絶技巧とは?女優・滝沢沙織が迫る。

詳細情報
番組内容
繊細で美しい形と抜群のフィット感。今回のイッピンは、日本有数の帽子産地・岡山県が生み出した極上の麦わら帽子。麦わら帽子は、数本の麦を編んで1本のひも状にした麦稈真田(ばっかんさなだ)を渦状に縫って作るが、イッピンは、極限の細さの真田を縫製したものだ。世界的な帽子デザイナーが絶賛した超絶技巧を、滝沢沙織がリサーチ。新たな帽子の素材を開発する工場や、セミオーダーできる人気店も訪ね、帽子作りの神髄に迫る
出演者
【リポーター】滝沢沙織,【語り】平野義和

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:15355(0x3BFB)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: