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芥川賞受賞の又吉直樹さん 会見全文
7月16日 22時43分

芥川賞受賞の又吉直樹さん 会見全文
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第153回芥川賞と直木賞の選考会が16日夜、東京で開かれ、芥川賞にはお笑い芸人の候補として注目を集めた又吉直樹さんの「火花」が選ばれました。芸人らしいユーモアのある受け答えで、受賞の喜びを語った又吉直樹さんの会見の全文を掲載します。
Q:最初にひと言お願いします。

すごいびっくりしたんですけど、とにかくうれしいです。ありがとうございます。

Q:又吉さんが敬愛してやまない太宰治が欲しくてしかたなかった芥川賞を取れたことをどう思うか。今後、又吉さんの作品を読んで文学の世界に入っていきたいと思う若い人にメッセージを。

小説を読み始めたのが芥川龍之介と太宰治。太宰が芥川賞取れなくて川端康成に手紙書いたと聞いているので、その状況が時代も全然違うんでどうか分からないけど、いつもテレビで太宰好きとか勝手なことを言うて、すごくたまに申し訳ない気持ちになって。テレビで勝手に言ったときはちゃんと(太宰の墓がある)三鷹にお墓参りにいくようにはしています。今月はもう2回か3回くらい行ったんですけれど。
僕の小説を読んでというよりおもしろい小説たくさんあるんで、好き嫌いありますからね、僕の小説で全然合わないけど、他の人の小説でおもしろくて、読む人もいると思うんで、僕の読んで合わへんかったから、小説読むのはやめとうとなるのだけは、その責任だけはみんなで背負っていきたいと。ここでジャッジしないでほしい。1人目で読んでいただけるのはうれしいですけれども、100冊読んだら、絶対、本好きになると思うんです。最初の2,3冊で難しくて分からないこともあるかもしれんが、そこまでがんばってもらいたいですね。

Q:金屏風の前に座った気持ちは。

うそみたいな感じですけど、似合っていますかね。なかなか、こんだけ緊張することはないですね。

Q:(羽田さんとの)ダブル受賞について

すごくうれしいです。羽田さんがいろんなところで「火花」を紹介していただいて、プロの作家さんが、ちゃんと、偏見なしに扱っていただけることがすごくうれしいですね。

Q:受賞を芥川龍之介が聞いたらどんなことばをかけてほしいですか。

芥川は…、おそらく僕みたいな髪型のやつ嫌いやと思うんです。ベートーベンのことを「天才ぶってる」みたいに書いているのんがあって、すごく印象深いんですよね。ベートーベンは僕、あれでいいと思っていたんですけど。顔の表情と髪型おうてるなと思ってたんですけど。それぐらいすごい厳しい一面を持っている。でも言われてみるとそうなんかなと思わす説得力がある方なんで、おそらく「うそつけ」って。又吉のこの感じをお前、やってるんちゃうかみたいなこと言われると思います。
(ほめてもらう自信は)いやいや、ないです。

Q:吉本興業から始めて、作品自体が現実を描いた一面もあると思うが、その世界では、お兄さんとか師匠もいると思うのですが、ひょっとしたら先生と呼ばれることもあると思うんですが。

もちろん、皆さん、僕のことをふざけて先生と呼ぶケースはあると思うんですが、本気で先生と呼ぼうとしているのは、たぶん相方の綾部だけやと思うんでそこは安心しているんですが、いろんな先輩が「読んだで」とか声かけてくださってそれは本当に感謝しています。

Q:受賞したことで今後、芸人としてやりづらいことはあるか。

特に注目していただくのは芸人としてありがたいことなので不都合は感じていない。あとはコンビでやっているので不都合はないと思います。

Q:綾部さんとは何か話したか

綾部は今、仕事中みたいで、でもコメントはくださったみたい。敬語使ってしまいましたけど。いただきました。

Q:ノミネートされたときから多少の自信はあったのか。

候補にしていただけるという連絡をもらった時に、すごい驚いたのと、うれしかったのと読んでいただけるんだというのがあって正直、自信はなかったです。(多少はあったのか)いや、ないですね。ゼロでした。でもゼロですとは言っていたんですけど、きょうとかも朝から、なんかちょっと緊張していたので、もしかしたら、どっかには期待していたのかも知れないです。

Q:作品を書き始めて書く前と書いたあとで変わったことは。

小説を書く前は、すごくおびえてもいたんですが、急に書きたくなって書いたんですけど。書いているときはすごく楽しかったですね。だから、おもしろいんやな、広い表現というか、いろんなことができるんやなとすごく感じました。
生活の面では小説が注目していただいて、いろんなところで取り上げていただいて、街歩いていても火花読みましたよと声かけていただいているんで。今まで「死神、死神」と呼ばれていたのと違う。ちょっと変わったかな。

Q:これからお笑いと作家の比重はどうしていくか。

今までどおり、芸人100でやって、それ以外の時間で書くというのをずっとやってきたんで、その姿勢を崩さんようにと思っています。それがいちばんどちらにとってもいいと思うんですよね。今までどおり、ちゃんとライブを毎月やっているんですが、その中で、生まれてきたこととか気付くこととか、お笑いで表現できへんこととか、コントにできひんこととか、そういうものがそのまま小説にならないんですけれども、どこかに残っていて、それが文章書くときにも一歩目になることが多いので、すごく必要なことなんです。

Q:次に書きたいものは

書きたいという気持ちは本当にありますね。
(質問者に)結構な時間、僕ら2人でしゃべってますけど?

Q:作品を書こうと思ったのはいつごろで、そのきっかけは何があったのでしょうか。

「小説を書いてみませんか」という声をかけてもらったのが、大きい理由としてありますね。あとは急にテンション上がったというか、例えが難しいんですけど、ジャッキーチェンの映画を見た翌日に階段を走りながら駆け上がりたい衝動に駆られるときってあるじゃないですか。あの感じ。ちょうど西加奈子さんの「サラバ!」を読んで、無敵になったような気持ちが沸いてきてそれで書けたというのはあります。

Q:西さんに言いたいことは

「サラバ!」すごくおもしろい。大好きな作品です。

Q:今回の作品で「文学界」を大増刷に結びつけた。単行本も20万という初版。今、64万部までいっていると聞いた。受賞の効果、ミリオンも狙えるところにある。100万部についてイメージは。

小説書いているときはそんなイメージはもちろんなかったけど、書き終わるとせっかく書いたんで、いろんな方に読んでいただきたい。どんどん読んでもらって、僕のを読んで、そっから別の本も読んで、本好きな人が増えたらまた楽しくなるなと思いますね。
「火花」は若手芸人のことに触れているので、劇場にすごく多くの芸人がいるんで、劇場にも来てもらって、全体的にお笑いとか文学、音楽、演劇もどんどん盛り上がっていけばいいと思っています。

Q:話す芸と書く芸の違い。表現でそれぞれで自由なところと不自由なところは。

お笑いで不自由なことは何でしょうねえ。お笑いも割と何やってもいいというのはあるんですけれども、めちゃめちゃ子どもみたいなこと言うと、自分が2人とか3人に瞬間的になれたら、幅が広がるなというのがあって、やはり人間なんで自分の体と声、これでやるしかない。
でも、映像が出るともしかしたら、それもできるのかもしれないので、そんなに不自由はないのかなと言いつつも。ゆうたらあかんこととか人によって全然感じ方が違うんで。小説も同じもの書くんですが、読む人はみんな違うんで。お笑いの場合は、すぐにお客さんが笑ってへんなと思ったらやり方変えたり、まあ今(会見で)誰も笑ってませんけど。
でも、小説の場合は変えられないですもんね。書いてもうたものが、そのまま読まれるんでそこの違いはあるなと感じています。

Q:小さい頃から自分の頭の中に独り言があふれていると聞いた。お笑いのライブもしながらどこかに残っているものが文章になると言っていたが、残っているものと「独り言」と関係がありますか。

散歩しながら走ったりしているときに頭の中にことばが出てくるんですけれど、なんでもないことなんですけれども、そこから文章を書いたりすることはよくありますね。

Q:最後にひと言

本当にたくさん集まっていただいてありがとうございます。まだお読みでない人がいらっしゃったらぜひ読んでみてください。

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