「100%の勝率で毎月25%以上の利益を得ていく方法」などと喧伝されていた「FX常勝バイブル」という情報商材の頒布者とこれにより顧客獲得をしていたインターネット専業FX取引業者の損害賠償責任を肯定した事案。
通称名「大橋ひかる」を名乗る者が「100%の勝率で毎月25%以上の利益を得ていく方法」であるなどと喧伝して「FX常勝バイブル」という情報商材を頒布し,「FX常勝バイブル」では,株式会社マネースクウェア・ジャパンというFX業者(上場会社である)で口座を開くことが推奨されており,大橋とマネースクウェアとの間では,FX常勝バイブルを経由して口座開設等がなされたときには報酬が支払われることになっていた(いわゆるアフィリエイト契約)。
判決は,大橋(及び同人が実質的に首謀者であった幸せwin株式会社)は,FXで「100%の勝率」などということは あり得ないのに(実際も現に損失が出ている),誤った情報を提供して原告に取引をさせたのだから,不法行為責任を負う,マネースクウェアは,上記を顧客獲得の手段としていたのだからFXに関する誤った理解をして口座開設を申し込む者がある可能性を認識していたはずであり,そうでなくとも認識すべきであり,それを前提に適合性審査をするべきであるのにそれをせずに取引を開始させたのであり,この顧客獲得行為自体が違法である,と判示した。取引業者における適合性審査の杜撰さも指摘されている。
金融商品取引法によって不招請勧誘が禁止されている相対FX取引について,インターネット上のバナー広告などが氾濫している。これにより副業収入を得ようとする行為(いわゆるアフィリエイト)も盛んになされている。アフィリエイトを行おうとする側はより目を引く方法で一般のインターネット閲覧者の注意を集めたいだろうし,FX業者側も,多少強引な経路をたどってきた者であっても口座を開設してもらいたいという動機が生じることはやはり否定しがたい。現在も,そして今後も本件同種の問題は起こりうる。
本判決は,FX業者が直接に開設したHP等においてでなく,顧客誘引を委託した相手が行った「顧客誘引活動」についても,関与の態様によっては取引業者の顧客獲得行為の問題となる場合があることを示し(この点を指摘する初めての判決であると思われる。),取引による損害の賠償を命じたものであり興味深い。
判決PDF(業者控訴,被害者附帯控訴,和解)
⇒先物取引裁判例集53巻352頁
⇒消費者法ニュース78号275頁
⇒金融・商事判例金融SUPPLEMENTVol.3No.1
⇒国民生活センター「消費者問題の判例集」
(東京地方裁判所平成23年2月28日判決) 銀行系証券会社によるノックイン型投資信託勧誘事案
2.アトランティック・ファイナンシャル・コーポレーション
(東京地方裁判所平成20年7月16日判決) ロスカット・ルールに関する重要な初判断
3.アルファエフエックス
(東京地方裁判所平成22年4月19日判決) 区分管理を怠った業者の役員らの責任に関する判決
4.アーバンコーポレイション役員ら
(東京地方裁判所平成24年6月22日) アーバンコーポレイション事件の対役員らの判決
5.アーバンコーポレイション査定異議訴訟
(最高裁判所平成24年12月21日判決) アーバンコーポレイション事件の対会社の判決群
6.野村證券
(東京地方裁判所平成25年7月19日判決) 仕組債の時価評価についての説明義務違反など 7.幸せwin,大橋ひかる,マネースクウェアジャパン
(東京地方裁判所平成20年10月16日判決) 情報商材業者や,これを利用して集客していた業者の違法性を肯定したもの 8.SMBCフレンド証券
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