「新国立競技場」迷走に抗議電話 JSCと文科省、重い空気
総工費が2520億円に膨れあがり、迷走を続けた新国立競技場の建設計画が17日、首相の一声で振り出しに戻った。事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)には巨費投入に反対する抗議の電話が1週間で数百件も殺到。財源のめどが立たないまま計画を進めてきた文部科学省は重い空気に包まれた。東京都の舛添要一知事は「総工費を決める前に(見直しを)できなかったのか」などと強い口調で批判した。
都内のJSCの事務局では、首相が白紙撤回を表明した様子を報じる夕方のテレビ中継に 職員らが くぎ付けになったという。計画に関わってきた 職員 は「正直に言って涙が出る。ここに至るまでにも税金を使っている。(現計画を)前に進められなかったことが申し訳なく情けない」とつぶやいた。
事務局には抗議の電話が頻繁にかかる。 この職員は コストの検証が甘かったことが混乱を招いたと認め「(抗議電話で)首相の判断まで仰がなければいけなくなったのは誰のせいだ、と厳しい指摘もあった。道義的にまた同じプロジェクトに加わることは許されないと思っている」と責任の重さを口にした。
文科省の幹部は、計画見直しをめぐる一連の混乱や2019年ラグビー・ワールドカップ日本大会の会場変更により、国際的な信用を失いかねないとして「JSCと、所管する文科省の責任は免れない」とつぶやいた。
東京都の負担をめぐり、文科省を批判してきた舛添知事は「政府は6月29日に総工費2520億円、完成時期も決定した。これを決める前に(見直しを)できなかったのか」などと批判。ただ、首相の白紙撤回表明後には「国からよく説明を聞いた上で、対応を検討していく」などと淡々としたコメントを発表した。
五輪の準備を担当している都の幹部らには「何でいまさら…」と困惑が広がった。ある幹部は「国が決めることなので、できる限りの協力はしたい」としつつも「これまで時間はたくさんあったのに」とうんざりした様子だった。
(共同通信)