前編に引き続き、モバイルデバイス向けMOBA『Vainglory』を手がけるSuper Evil Megacorpのアジア太平洋地域のゼネラルマネージャー、ユン・テウォン氏(以下、ユン氏)のインタビュー後編をお届けする。コラボレーション企画やAndroidについてなど、さまざまなお話をうかがった。

 

ユン・テウォン氏

ユン・テウォン氏

――『Vainglory』を3vs.3ではないチーム結成に変える、もしくはそういう要素を取り入れる予定はありませんか。例えば2vs.2とか、1vs.2とかでも。

ユン氏:
一応あり得ます。(笑)じつは、プライベートマッチでは2vs.2でも1vs.1でもできるんです。先に他のプレイヤーと友達になってプライベートマッチへ招待すればできます。マッチメーカーだと必ず3 vs.3になります。

 
――2vs.2や4vs.4ではなく、3vs.3にしようと決めた具体的な理由は何かありますか。

ユン氏:
なぜかというと3 vs.3の方がバランスがちょうどいいからです。チームの人数が偶数だと、あまりにも強くなり過ぎてしまう恐れがあります。例えば2vs.2だと2人のプレイヤーが1人を攻めたりすることもありますし、3vs.1だったらそれも当然(片方が)強過ぎます。だから3 vs.3だと取れるバランスが一番面白いと思うんです。e-Sportsに関してもその数字が一番適切だと私達はみんな思っています。チーム結成する時、ゲームによっては5人チーム、7人チーム、もしくは1人だけのチームがありますが、今まで見てきた中で3人チームの方が一番ダイナミックで面白かったんです。将来的にはもっといろんなモードを取り入れるかもしれませんが、今はこのままでいいと思ってるのでそれをベースにして開発を進めています。

 

――個人的に一番お気に入りのキャラクターは誰でしょうか。

ユン氏:
前はクラルでしたが、今はフォートレスですね。なぜフォートレスが好きなのかというと、基本的に先頭に立ってバトルへと導いてくれるリーダー的な存在だからです。敵をいっぱいやっつけたりすることはそんなにできませんが、バトルをリードするのに仲間や助っ人みたいに手伝ってくれますから。私からしたらフォートレスはその修羅場を自分のものにするっていうところがすごく楽しいんです。フォートレスの動き方とか行動を見ていると、なんか自分が狼になった気分にもなれます。ただ、自分がいつも負けちゃうっていうのが問題なんですけどね。(笑)

 
――でも負けても「かっこよく負けた」と思えるからいいですよね。

ユン氏:
(笑)いつかフォートレスを使ってよりうまくなれたらいいなあとは思っているのですが、難しいんですよね。

 
――また個人の好みに関する質問なんですが、ジャングルかレーン、どちらが好きでしょうか。

ユン氏:
そうですね、やっぱりジャングルでしょうか。自分が主に使っているのがやっぱりクラルとフォートレスで、遠距離攻撃の優れたキャラクターを試してみると、いつもレーンに移ってしまうのですが、やっぱりジャングルの方がダイナミックでサプライズが多くて面白いと思います。

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――Android版はもうすぐリリースとのことですが、 リリース時からプレイヤーベースはどれぐらいのペースで拡大すると思いますか。(注: 現時点ではAnrdoid版もリリース済み)

ユン氏:
かなり拡大するでしょう。iOS版のみが配信されていた時からアジアは一番大きな市場でしたが、よく考えると日本を除いてアジアというのは主にAndroid市場なんですよね。とにかく人口が多くてAndroidのデバイスを持っている人が多いことを踏まえると、やっぱりプレイヤーの数はかなり増えるんじゃないかと思います。今回のリリースは基本的に完成したゲームの入ったバージョンなんです。前のリリースの重要点というのが「コアなゲームプレイ」を磨くことによってちょうどいいバランスを取らせることでした。新プレイヤーの体験作りにあまりリソースを注ぐことができなかったので、MOBAにあまり慣れてない人だと『Vainglory』はかなり覚えにくいゲームだったと思います。

だから今回のリリースでは、チュートリアルやビデオなどの取り入れとか、そういうところを直すのに結構時間をいっぱいかけました。ゲームの遊び方を説明してくれる動画はもう30本ぐらい入っています。ゲームを見れば分かると思いますよ、チュートリアル動画がいっぱい要るってことが。それと、カジュアルキューとランクキューを別々に分けたことですね。今まではランクキューのモードしかありませんでしたが、カジュアルキューを取り入れることによって新しいヒーローで遊ぶ時や新戦略を試してみたい時などはプレイヤーのランクへの影響がなくなりますし、もっとリラックスしていろいろ試したりしてプレイすることができるようになります。カジュアルなプレイヤーからすると、はてなマークの数が減ってストレスもかなり解消できると思いますよ。(笑)

 

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――Android版のリリースを心待ちにしているプレイヤーが多い地域はどこですか。

ユン氏:
じつは日本も含めてどこもそうなんですよ。私は今まで日本と韓国、台湾、そして中国の4か国でインタビューをやってきましたが、インタビューをやるたびに終わった後に記者から「このゲームは凄く楽しそうだからプレイしたいけど、Androidしかなくて……」って言われるんです。一番よく言われてたのがそれなんです。今まで会ってきた記者の90%ぐらいはみんなAndroidで、残りの10%がiOSというような割合でした。

 
――確かに。私(James)も、iPhoneは電話とメール用に持っていて、ゲーム用にはNVIDIAのSHIELDを使ってるのでアンドロイド版を結構楽しみにしてますね。タブレットで『Vainglory』をやるのであればSHIELDが一番適切ではないかなと思っています。

ユン氏:
『Vainglory』ならNVIDIAのSHIELDが確実に一番優れた端末の一つです。海外でたまにオフラインイベントをやっているのですが 、有線ネットワークとダイレクトHDMI出力に対応していることからよくイベントでも使用しています。

 
――楽しみにしています。で、次の質問に行きますと、プレイヤーの方々は自分の勝利や戦略を分析するのが好きみたいですよね。将来的に『Vainglory』にネイティブの試合録画機能が搭載されることはないでしょうか。

ユン氏:
それは今年の年末か来年の年明けぐらいに一応予定しています。ゲーム開発とはこのようなもので、具体的な日にちはまだはっきりと言えないのですが、そういう機能は前から予定していてかなり楽しみにしています。うまくいけば結構プラスになってくれると期待してますよ。いま言ったとおりプレイヤーは(その機能を搭載することによって)自分のプレイや戦略などを細かく見て分析したり、改良したりすることが可能になるわけなので、e-Sportsのゲームには欠かせないものだと思っています。

 
――「スマーフ(smurf)」について聞かせてください。本当は高レベルだけど、初心者と試合できるように新しくアカウントを作成する行為は、ゲームの環境にとっては良いのか悪いのか、どう思いますか。

ユン氏:
ちょっと微妙ですね。決して良い現象だとは思いませんが、でもそれと同時になぜそういうことをするのかはわかります。なぜならスマーフアカウントを使うことによって、いろいろと実験することができるからです。だから私達がランクキューとカジュアルキューを分別しようと決めたんです。プレイヤーがカジュアルキューでいろいろ試したくても、スマーフに頼らなくて済むようになるんです。要するに、スマーフアカウントっていうのは今までは必要悪だったと考えていましたが、将来的にその必要性をなくそうと努力しています。今回のリリースでそれがちゃんとできているといいなと思っています。

 
――そういう行為をするプレイヤーに対して、何らかの形で、ちょっと厳しい言い方をすると「アカウント停止」などを行おうという考えはありますか。それとも、とりあえずしないように祈るしかないという感じですか。

ユン氏:
懲罰を科すといいますか、本人が公の場で「自分はスマーフだよ」って自ら認めない限り、実際スマーフであることを証明するのは凄く難しいです。

 
――たしかにそうですよね。

ユン氏:
それと、一番いい対応方法っていうのは、より良いゲームを出すことによってその必要性をなくすことと、もっとポジティブな行動を助長することだと思っています。今回のリリースでそれがなんとかできていると思いたいです。

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――『Vainglory』に他のゲームの世界からのキャラクターを取り入れるとしたら、個人的にどのゲームのどのキャラクターに参加させたいのでしょうか。

ユン氏:
ゲームのキャラクターじゃないとダメですか?

 
――ゲーム以外でもいいですよ、例えば漫画のキャラクターとか、自分の好きな政治家とか、何でもいいですよ。

ユン氏:
(笑)ゲームでいうと、自分が前に勤めていた会社Blizzardのキャラクターなら見てみたいですね。例えば『World of Warcraft』だったら面白そうですけど、Blizzardはもう自社のMOBAタイトルがあるから無理でしょうね。(笑)それか任天堂のキャラクターとか、後『Puzzle & Dragons』のキャラクターなら面白そうですね。

 
――将来的に他のゲームの世界や何か決まったタイトルとのコラボなどの予定はありますでしょうか。

ユン氏:
私達はSupercellのやっていることに対しては凄いなと思っています。(Supercellとは)具体的なプランとかはないと思いますが、何かがあれば大歓迎ですね。とにかく何か面白そうでプレイヤー達が喜んでくれそうなものがあれば、是非やってみたいと思っています。何か制限があるかというと、とりあえず自分達のクリエイティビティと現在の優先事項だけですからね。

 
――ということは、いわゆる「鎖国政策」のようなものはないということですか。「『Vainglory』は『Vainglory』で、他のゲーム要素は絶対に取り入れない」みたいなポリシーとか。コラボに関しては一応オープンという感じでしょうか。

ユン氏:
重要なのは、そのキャラクターが『Vainglory』の世界に必要で、違和感がないことです。そういう決断は弊社のストーリーライターが決めるので、何か面白いストーリーを考えてそのキャラクターがなぜ『Vainglory』にいるのかを違和感なくうまく説明さえできれば、ありえると思います。個人的にはすごく面白いだろうなと思いますよ。例えば、別の作品とこういうコラボをやる映画を観るのは好きなので、ゲームでやってはいけないという理由は特にないですからね。だから個人的には見てみたいなと思いますけど、(できるかどうかは)面白いかどうかで決まりますからね。我々は中途半端なことをやるのが嫌いなので、とにかくそのコラボによって物凄く面白くていい方法さえ思い付けば、やります。

 
――要するに「とりあえず1億ドルもらえるからほかの作品のキャラクターを入れます」とか、とにかくお金が欲しいからという理由ではやらないということですか。

ユン氏:
そのとおり。我々は絶対にやらないんです、そういうことを。でもゲームの世界と綺麗にうまく融合するのであれば、そしてプレイヤーの方々に喜んでもらえるなら、いいんじゃないかと思います。ただPRだけのためにやっているように見えるなら、そういうことはしたくないです。

 
――『Vainglory』以外に、よく遊ぶゲームは何ですか。できればトップ3のタイトルも教えてください。

ユン氏:
私も人を採用するかどうか決めるたびに同じことを聞きます。(笑)私にとってはやっぱり一緒に仕事するのであれば、相手がゲーマーであることが重要なんです。今は当然『Vainglory』を一番多くやっていますが、『Vainglory』の前は『World of Tanks Blitz』をかなりやり込んでいました。『World of Tanks Blitz』では、アジアで一番大きいクランにリクルートされて、じつはトップのプレイヤーの1人なんですよ。(笑)生涯でいうと、ゲームの世界へと導いてくれたのが『Ultima III: Exodus』で、そして一番多くの時間をかけてやってきたのは多分『World of Warcraft』だと思います。その次は『Advanced……』

 
――『大戦略エキスパートWWII』ですよね。

ユン氏:
そう、それだ!第二次世界大戦の戦略シミュレーションで、RPG的な要素も含まれていて戦車や武器システムなどを強化したりするゲームでした。最高の戦略ゲームだったと思いますよ。

 
――それはアジアのみのリリースだったのでしょうか。

ユン氏:
欧米でも出たと思いますよ。でもはっきりとは言えないかな。私は日本語ができないのに日本版をやってたので、ボタンの位置とかどれを押したら何がどうなるかとか、そういうのを全部暗記しなきゃいけなかったんです。(笑)

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――次の質問は日本でインタビューを受けられるとほぼ確実に毎回聞かれてしまうかと思いますが、日本にいるファンの方々、そしてこれからファンになってくれる方々へ何かお伝えしたいことがありましたらお願いします。

ユン氏:
まずは『Vainglory』を遊んでいただいて本当にありがとうございます。Super Evil Megacorp一同すごく喜んでいます。我々は全員とも日本のゲームも含めていろいろなゲームを遊んで育ったので、今となって逆に日本では私達が作ったゲームが遊ばれていると思うと本当に感動します。久し振りに自分の居場所に帰ってこれた感じがします。本当に気持ち良いです、「ホームランドに帰ってきたらみんなが自分のゲームを遊んでくれている」みたいな感じですよね。マジで興奮しますよ。(笑)

 
――そして最後に、まだ『Vainglory』をプレイしたことがない方、今回のAndroid版リリースでようやく遊べるようになるという方へのメッセージをお願いします。

ユン氏:
是非お友達と一緒にやってみてください。友達と組んでお互いを助け合って遊んでください。PvPなのですが、仲間との協力を重視しているので、ずっとひとりで行動していると絶対勝利できません。私みたいにならないでくださいね!毎回フォートレスを使ってほかのやつらを全員倒そうとして逆に必ず倒されますから!(笑)友達を助けてあげるとまた助けてもらえるので、それが大事なんです。協力すると勝てますよ。普通は1ゲームに20分ほどかかるので、移動中に遊ぶのはちょっと難しいという人もいると思いますが、カフェなどで簡単に遊べるので、そういうところも魅力です。

『Vainglory』はある意味一昔前のゲームへのオマージュでもあると思います……。「ビデオゲーム」ではなく、友達と一緒にやる遊びという意味でね。今時のビデオゲームは、ひとりで遊ぶようなものが多くなってきていますが、『Vainglory』はその場にいる友達と一緒に遊ぶものです。もちろん家からひとりでも遊べますよ。でもやっぱり仲間と一緒になって、みんなで大声を出してワイワイ遊んでいただいたほうが一番楽しいと思います。(笑)だからぜひやってみてください!

 
――ありがとうございました。

 

 

[聞き手: James R. Mountain]

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