盗難の仏像1体、韓国から長崎・対馬に戻る
読売新聞 7月18日(土)13時18分配信
2012年に盗まれ、韓国に持ち込まれていた国指定重要文化財「銅造如来立像(どうぞうにょらいりゅうぞう)」(高さ38・2センチ)が18日、約2年9か月ぶりに所有者の長崎県対馬市の海神(かいじん)神社側に引き渡された。
像は17日に韓国で日本政府関係者に引き渡され、18日午前の福岡空港発の旅客機で対馬市に到着。文化庁の職員2人が同市の県立対馬歴史民俗資料館を訪れ、神社関係者に渡した。神社の保管庫は盗難時にかぎが壊されており、当面は同資料館で保管される。
引き渡しは非公開で、像は数本の指の一部が欠けていた。文化庁によると、1974年の重要文化財指定当時、左手の五指と右手の中指など三指がすでに欠けており、同庁は「盗難でさらに欠けたのかは不明」としている。
引き渡しに同席した市教委職員によると、文化庁職員から、像が盗まれた神社の保管庫内に指先が残っていないか念のため確認するよう求められたという。神社側は「少なくとも右手中指の指先は、盗まれる前はあったはずだ」としている。
如来立像は12年10月に同神社から盗まれ、窃盗団の刑事裁判終了後も韓国で保管されていた。韓国最高検は15日、「国内で所有権を主張する寺社や団体がない」とし、日本側への返還を発表。「盗難当時の所有者だった神社が(所有の)正当な権利者とみるのが相当」として返還が決まった。
一方、対馬市の別の寺で盗まれた長崎県指定有形文化財「観世音菩薩坐像(かんぜおんぼさつざぞう)」については、韓国の寺の訴えで移転禁止の仮処分決定が出されて返還されておらず、日本政府が返還を求めている。