安倍晋三首相の決断によって、新国立競技場の建設計画は白紙化へと舵を切った。内閣支持率の下落が目立つ中、世論の逆風をこれ以上強めたくないという思惑が垣間見えるだけに、民主党をはじめとする野党は政権への攻勢を強めている。ただ、競技場のデザインが決まったのはそもそも民主党政権時代であり、お約束の「ブーメラン」が跳ね返ってきかねない。
「(計画撤回には)『反対』じゃないよ。『残念』ということだ」
森喜朗元首相(2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会会長)は、首相との会談後の17日夜、BSフジ番組で複雑な心境をのぞかせた。
競技場のデザインについては「(コンペの直後に)ちょっと違和感を覚えた。第一印象ではなじめなかった」。別の番組の収録では「生ガキみたいだ。(東京に)合わない」とまで言い放った。
官邸での森氏との会談後、安倍首相は「計画を白紙に戻し、ゼロベースで見直す」と記者団に表明した。
安全保障関連法案の衆院通過に、野党などは「強行採決」との批判を強めており、「内閣支持率がさらに10ポイント程度落ち込む可能性がある」(官邸筋)との観測もある。週内の決着に踏み切った背景には、「3連休中にテレビで繰り返したたかれれば、政府・与党への逆風はさらに強まる」(自民党ベテラン)という計算が見え隠れする。