百貨店や航空会社などが扱う「積み立てサービス」に関心が集まっている。一定の金額を毎月積み立てていくと、満期時に「ボーナス」が加算され、積立額を上回る金額の商品券や旅行券などを受け取れる。ボーナスを金利に換算すると、定期預金よりも高水準になる。使用目的は限られるが、低金利下の意外な「高金利商品」として人気を呼んでいる。
三越伊勢丹ホールディングスの「エムアイ友の会」は毎月の積立金が5000~5万円の1年満期コースと、毎月の積立金が5000円の半年満期コースがある。ボーナスは1年満期コースで積立金の1カ月分、半年満期コースでは0.4カ月分。毎月5000円を1年間積み立てると積立総額6万円に対して6万5000円分、半年間だと積立総額3万円に対して3万2000円分を受け取れる。
「ボーナスを積立総額に対する金利に見立てると、1年満期で8.3%という高水準になる」(ファイナンシャルプランナーの花輪陽子氏)。金融商品ではないので単純に比べられないが、1年物定期預金金利はインターネット銀行でも年0.1%前後で、それよりも魅力的だ。預金金利と違い、ボーナスから税金を引かれることもない。
ボーナス以外の特典が付く百貨店も多い。大丸松坂屋の「JOY CLASS」は全国約1000店の提携施設で割引などの優待を受けられる。高島屋の「ローズサークル」は中元・歳暮期に5%の買い物優待券をもらえる。
ただ商品券は基本的に積立先の百貨店でしか使えない。特定商品の購入予定がある人や、出産や入学などのイベントに向けた出費が見込まれる人に合う商品だ。
航空会社にも積み立てサービスがある。「旅行積み立て」は百貨店と仕組みが若干違い、最初に目標額と1~5年の積立期間を決め、毎月積み立てる方法と、最初に一括払いして設定した満期日に受け取る方法の2通りがある。
毎月積み立ては余裕資金でコツコツためられる一方、満期日が同じならば一括払いの方がボーナスが多い。例えば「JAL旅行積立」で1年後に50万円ためる場合、毎月4万1001円を1年間(合計49万2012円)支払うと7988円分のボーナスがもらえる。一括払いは最初に48万5437円を支払うと1年後に1万4563円のボーナスがもらえる。半年満期で一括払いするコースもある。
夏のキャンペーンもある。ANAセールスの「ANA旅行積立プラン」は8月31日までにインターネットで申し込むと、ANAカード会員限定で満期時に受け取る旅行券10万円分ごとに1000円分ずつ上乗せされる。
旅行積み立てで受け取った旅行券は国内・海外のツアーや航空券に交換できる。提携ホテルでの宿泊や食事、機内販売などにも使える。
積み立てサービスには注意点もある。途中解約の場合、それまでの積立額は原則戻るが、受け取りは商品券や旅行券になる。積立先が倒産した場合、全額は戻らない恐れもある。積立先を選ぶ際は金利やサービスだけでなく、企業の信用度も考慮して慎重に選ぶ必要がある。(浜美佐)
[日本経済新聞朝刊2015年7月11日付]