野村周平
2015年7月18日05時33分
総工費高騰で世論の反発を受けた新国立競技場の建設計画は、政府の判断により白紙に戻されることとなった。2019年のワールドカップ(W杯)日本大会で新国立を使用するはずだったラグビーをはじめ、スポーツ界全体に波紋が広がっている。
建設計画が白紙に戻ったことで、19年秋、日本で開催されるラグビーのW杯では新国立競技場を使うことが不可能となり、急きょ開催計画の見直しが求められることになった。東京都内で17日、記者会見を開いた大会組織委員会の嶋津昭事務総長は、厳しく現状を受け止めた。
組織委は15日、開催自治体の代表者すべてを集めた初めてのミーティングを行ったばかり。「ここまで急転するとは思わなかった」という嶋津事務総長は、「国民の意見を踏まえた決断だと思う。ただ、我々としては残念。災い転じて福となす、となるように取り組んでいきたい」と淡々と語った。
現実は厳しい。新国立では開幕戦と決勝の開催が決まっていた。最新鋭の会場を使って、大会盛り上げの起爆剤とする皮算用だっただけに、嶋津事務総長は「新しい国立でラグビーを見たいという期待は大きかった。そこは痛い。ビジネスモデルは厳しくなるだろう」と顔をしかめた。
メイン会場の代替地については今後、開催自治体や国際統括団体「ワールドラグビー」(WR)と協議を始めるが、多くの関係者は横浜国際総合競技場(日産スタジアム)での開催が濃厚という。WRは開幕戦や決勝会場に求める収容人数の目安を6万人以上としており、7万2千人余りを収容する横浜は要件を満たしている。02年のサッカーW杯日韓大会で決勝が開催された実績もある。
ただ、8万人収容の新国立と比べれば約8千席少なく、平均チケット単価を2万円とすれば、開幕と決勝の2試合だけで少なくとも3200万円の収入減が見込まれることになる。横浜で開催するはずだった試合が、より規模の小さな会場に移る可能性なども含めれば、巨額の減収も想定される。日本協会関係者は「いずれ、新国立が抜けた穴の大きさを感じることになるはずだ」と危惧する。
WRとの協議も難航しそうだ。この日の発表を受け、WRは「組織委や日本スポーツ振興センター(JSC)から繰り返し(建設を)保証されていたにもかかわらず、新国立競技場がW杯に間に合わないと聞き、非常にがっかりしている。新国立競技場は、19年大会で柱となる存在だった。WRは速やかに組織委に詳細な説明を求めるとともに、今日の発表の影響について検討する」とコメントするなど、厳しい姿勢を見せた。
元日本代表WTBの大畑大介さんは「残念なことは残念。ただ、今回のことで、W杯の存在を知った人も多くいると思う。そういう人たちにも届くよう、今後もW杯のPRをやっていくしかない」と話す。
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