ハートネットTV「未来へのキックオフ〜精神障害者のフットサルチーム〜」 2015.07.07


ナイスカット!惜しい惜しい惜しい!いいよいいよ!フットサルのコートから響くにぎやかな声。
プレーするのは精神障害がある人たちです。
落ち着いて落ち着いて。
やっぱり決めれた時の爽快感です。
楽しい。
とにかく楽しい。
パス回してシュートまで持っていくのが楽しいです。
きつくない?きつくないっす。
きつくない。
今精神科の病院やクリニックでフットサルに取り組むところが増えています。
チーム数はおよそ130。
仲間と声をかけ合いプレーする事で積極性が生まれると注目され全国大会が開かれるほどの広がりを見せています。
フットサルに魅せられた選手たちの姿を追いました。
その一角にフットサルのメンバーが通う精神科のクリニックがあります。
こんにちは。
こんにちは。
はいどうぞ。
ここに通う患者は統合失調症やうつ発達障害てんかんなどの障害があります。
今夜はちゃんと眠れてるかな?眠れてます。
眠剤とリスパダールのんで今6時7時には起きますね。
そう?はい。
立派立派。
特に力を入れているのは患者同士が一緒になって取り組むリハビリ。
人と上手にコミュニケーションをとる事が社会生活には欠かせないという考えからです。
そのため30種類以上ものリハビリプログラムを用意しています。
陶芸や俳句ストレスの対処法を話し合う会などさまざまです。
その中の一つがフットサル。
3年前から始まりました。
フットサルはサッカーののコートで行う5人制のサッカーです。
現在20代から40代までの10人が参加しています。
卓球とかソフトボールとは違う1対1の関係ではなくてもうちょっとこう多面的な要素が必要です。
つまり相手はどこにいるのか味方がどこにいるのか。
…効果があると。
メンバーの1人ヒロさん22歳です。
ヒロさんは名古屋市内のグループホームで暮らしています。
4年前統合失調症と診断されました。
決められたとおり薬を服用する事で今症状は落ち着いています。
のみ忘れを防ぐための工夫もしています。
どうしてそれは?発病のきっかけは高校を卒業後1人暮らしをするため休みなく猛烈に働きストレスをためた事だと言います。
ずっと幻聴が聞こえてきて。
「もうやめてくれ」って叫んでもどんどん聞こえてくるから嫌でした。
耐えれませんでした。
「お前の家族の事を言え」とか「お前の事を言え」とか。
どんどん言ってました自分で。
ブツブツブツブツ。
幻聴のほかに家族や友人の影が白く見えるなどの幻覚症状も現れるようになりました。
そのためすぐに精神科を受診。
薬物治療を1年半にわたって行った結果症状は落ち着いてきました。
退院後クリニックのデイケアで出会ったのがフットサルでした。
練習は月に2回。
近くのフットサルコートまで出かけます。
チーム名は…亀のようにゆっくり着実に病から回復したいという願いが込められています。
心理面のサポートを行う臨床心理士の仕事をしています。
今日練習から帰ってきてからちょっとミーティングの時間をとろうと思ってるので。
みんな大丈夫かな?早く帰らなきゃいかん人とかいる?いないです。
ヒロさんも酒井さんも共にサッカーの経験者。
戦術なども一緒に考えていきます。
コートに着くと誰よりも早く着替えて練習を始めるのがヒロさん。
技術とリーダーシップが見込まれて1年半前からキャプテンを務めています。
(酒井)じゃあ今日もフットサルのプログラムを始めたいと思います。
よろしくお願いします。
(一同)お願いします。
え〜っとどうしようかな?どっちから…。
そういうまあ…鳥かごと3対3とかねそういうふうな練習ができたらいいかな。
練習は楽しく行う事を一番大切にしています。
まずは継続して参加したくなるようにするためです。
ちょっと狭いかい?大丈夫大丈夫。
特に重視しているのはパスの練習。
受け手の事を考えてパスをすると自然と声かけが生まれます。
早いな。
危ない。
(笑い声)危ない。
あ〜。
精神障害がある人の多くは自己肯定感が低くなりがちです。
シュートが決まると少しずつ自信が芽生えていくといいます。
いい汗を一緒に流すとメンバーの心が動く。
スポーツの魅力です。
楽しい。
とにかく楽しい。
パス回してシュートまで持っていくのが楽しいです。
きつくない?きつくないっす。
きつくない。
ちょっときつい。
患者さんとスタッフという訳じゃなくてみんな対等に何て言うんですかね…人としてコミュニケーションがとれるっていうのがすごくいいところだなと思いますね。
見るからに…実感は感じますね。
キャプテンとしてチームを引っ張るヒロさん。
しかしかつては他人を思いやる事が難しい時期もありました。
去年の秋に行われた試合での事です。
ハーフタイム。
チームメートに近寄っていくヒロさん。
うまく守備ができなかった事に腹を立ててしまったのです。
勝ちたい気持ちが高まり思わず強い言葉をかけてしまいました。
(せきこみ)大丈夫?追い詰められたチームメートはそのストレスで過呼吸に。
(せきこみ)
(ヒロ)ちょっとチームメートにデイフェンスが悪くてちょっと暴言というか傷つけてしまって言葉で。
「このままじゃいけないと思います」って言ってて何か「監督は今の状況どういうふうに考えているんですか?」って。
「どうしたらいいと思いますか?」とかって。
すごい食い下がってきたんですよね。
なのであのプログラムとしては試合をやって帰ってきて片づけをして通常だったらそれで終わりなんだけどそのあとで1時間ぐらい時間をとってヒロさんと僕とで結構徹底的に話し合いをしたんですね。
それから見つめ直す事によってだんだんひぼう中傷しなくなりました。
このあとチームにあるルールが生まれました。
何だっけ?4つのルールが。
みんな覚えてるよね。
あるよね。
みんな覚えてるのかな?俺だけだと思う。
覚えてないでしょ。
書いた方がいいんじゃない?チームが大切にする4か条。
今ではヒロさんが先頭に立ってこのルールを守るようになっています。
それぞれ全部いいなと思って4か条。
守っていきたいなと思ってます。
全員を盛り上げる役割をしてます。
いつも練習もしてるんですけどその中でも引っ張っていく存在になっていきたいです。
フットサルが広まっている背景には初心者でも取り組みやすい事があります。
サッカーと異なり選手は何回でも交代が可能でオフサイドのルールもありません。
更に精神障害者用の特別ルールとして通常20分ハーフの試合が7分ハーフと短くなっています。
ヨシタカさん22歳です。
サッカー経験はありません。
最初はきつかったですけどもう何で走るだけでこんな苦しいんだと思いましたけどいざ走って…慣れてきたらもう楽しくて。
楽しいです。
ヨシタカさんは17歳の時ストレスから来る不安や緊張で発作を起こして体調が悪化。
大学を休学していた時に出会ったのがフットサルでした。
フットサルができるようになったのは医療スタッフのおかげでした。
体がちょっとだるい?ちょっと疲れて。
フルで出れるからすごいなと思うんだけど。
交代がいないけど…大丈夫?次出れそう?まあ後ろの方にいて…。
メンバーの体調を気遣いながらスタッフは励ましの声をかけ続けます。
お〜ナイスナイス。
お〜いいね。
惜しい惜しい惜しい…!失敗する恐怖心から最初はプレーにも消極的だったヨシタカさん。
しかしその度に声をかけられ今では周囲を驚かすプレーをするまで実力を高めました。
お〜!ナイスシュート!お〜今の最高!ナイスシュート!ナイスシュートナイスシュート!あ〜今の格好いい!ナイスシュート。
ねえ。
どうぞどうぞ。
あんなきれいなシュートは決めた事がなかった。
ただいま。
・お帰り。
お疲れ。
フットサルを楽しんだ日は家に帰ってもその話題で盛り上がります。
2点決めてきたぞ。
2点決めてきたぞ。
2点決めてきた?ゴール入ったの?今日。
入った入った。
ドリブルもできた?まあシュートだけだけど。
あっシュートだけ…すごい。
すごいすごい。
久しぶりにしてはすごいじゃん。
ねえ。
すごいすごい。
頑張っとるね。
不安を抱かず新しい事にチャレンジするにはどうすればいいのか。
ヨシタカさんはその方法を見つけられるようになりました。
今の目標はまず大学を卒業する事。
そして就職活動をするつもりです。
一緒にやると恐らくパニクっちゃってどっちかができなくなるともう片方も一緒に駄目になってって結局2つとも駄目になってしまうと思ったからどっちか1つずつ一個一個やっていこうと思って。
フットサルをやって前向き思考になった事からそういう事を考えるようになったんだと思います。
精神科のクリニックや病院がフットサルに取り組む動きは今全国に広がりチーム数は130以上。
精神障害者だけで運営するチームや地域の人が入ったクラブ形式のチームも誕生しています。
フットサルなどのスポーツを続ける事が精神障害者にどのような効果があるのか。
調査結果によると運動している人の方が肯定的思考が高く仕事に復帰する人の割合も多い事が分かってきました。
最初2006年始めた頃というのは…大学進学を含めてですね。
そういう意味では手応えという言い方をするとリカバリー回復に向けて非常に後押しをしてくれる活動なんじゃないかなというふうに思いますね。
キャプテンのヒロさん。
実は去年から飲食店でアルバイトを始めました。
ヒロさんのチームメートのユウタさん28歳です。
ヒロさんのアルバイトにユウタさんも刺激を受けています。
(ユウタ)その間何やってるの?料理作ってる?皿洗いとか?皿洗いとか。
特に料理…。
料理?オーダーメイン。
オーダーメイン?オーダーとってるの?すごいね。
よく病気抱えてそこまでできるなと思って感心してる。
ユウタさんはクリニックのソーシャルワーカーと一緒に就職相談に出かける事にしました。
障害者就業・生活支援センター。
ユウタさんは高校1年生の時ささいな事が気になる神経症を発症。
その後一旦就職しましたが仕事のストレスで症状が悪化。
統合失調症と診断されました。
やって来たのは…仕事探しの相談や制度についての情報提供などを行っています。
ユウタさんが就職相談をするのは病気になってから初めてです。
酒井といいます。
よろしくお願いします。
ユウタさんは実は今年3月にフットサルの県大会で最優秀選手に選ばれました。
その自信も後押しとなっています。
(酒井)まあ普通に働けるようなそういうふうに…。
障害になって4年くらいたつんですけど病気になって。
だいぶつらい思いしてきましたね。
やっぱどこ行ってもやっぱり病人扱いされちゃうし。
それが一番つらいですね。
(酒井)チャレンジは可能かなと。
はい。
僕「働けますか?」って言ったら「働けるよ」と言う。
あなたがそうやって言ってくれんと。
「働きたい」って。
働きたいです。
(酒井)全然問題ないです。
もうフットサル以上に頑張れるかもしれん。
ユウタさんにとって大きな一歩を踏み出す日となりました。
全国に広がりを見せている精神障害者のフットサル。
10月には愛知県で全国大会が予定されています。
すずかけタートルズのコーチを務める藤本さん。
ほかのチームと交流する事もメンバーの大切な経験になると考えています。
そこで全国大会を前に大阪の強豪チームと交流試合を計画しました。
皆さん初めて大阪とかそういう遠くまで行くので集合時間とか注意事項とか書いて。
外の人とのつながりとか外の人たちがお仕事もしながらフットサルを楽しんでいる様子とかいろんな事を吸収してほしいなと思ってるんですけど。
大阪遠征当日。
待ち合わせ場所は名古屋駅です。
迷ってるのかな?教えてくれた?場所。
本当?分かってた?ここ。
迷ってた?え?迷ってた?迷ってないよ。
もう1時間以上前から来てるよ。
本当?マックで本読んでた。
そうなんだ。
全然来ないから…。
体調は大丈夫?大丈夫。
朝ごはん食べた?食べた朝マック。
朝マック?楽しみだね。
楽しみです。
試合会場は大阪万博記念公園にあるフットサルコートです。
2時間以上の移動。
初めての場所で初対面の人と交流する事はメンバーにとってかなり勇気が必要な事です。
こんにちは。
この日試合をするのは…メンバーの半数近くが仕事をしながらフットサルを続けています。
真庭さん。
はい。
(真庭)お久しぶりです。
お久しぶりです。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
ようこそ。
またあとでねピッチの中で。
いつもどおり真っ先にピッチに駆け出したのはヒロさん。
一方ヨシタカさんは少々緊張気味。
みんなから離れた所でストレッチです。
僕が今日の司会を…。
YARIMASSE大阪のコーチやってますサカイダイゴといいます。
ダイゴって呼ばれてます。
ダイゴさん。
好きな食べ物はハンバーグです。
あ〜面白い面白い。
じゃあうちのキャプテンから。
楽しんでやるんで皆さんよろしくお願いします。
(一同)お願いします!好きな食べ物…。
特にないです。
名古屋らしい事。
みそかつ!みそかつです。
イエ〜イ!無理やり言わして盛り上がるって!大阪のチームは不安や緊張が強いメンバーの事を思いさまざまな工夫を準備していました。
もうこれ嫌や〜!できへんねんもう。
何かおかしいって。
嫌や〜!もうやめよやめよ。
これやめよこれやめよこれやめよこれやめよ…。
はい自己紹介から!広島生まれです。
パスは自己紹介をしながら。
左も使えます。
今日朝早く起きました。
面白い人たちです…と思いました。
笑わせてくれるんで面白いです。
やっぱりさすが大阪です。
まだあんまり話してないけど何か明るい人たちだなと思った。
やったるで!愛知!
(一同)オ〜!頑張ろう。
交流試合が始まりました。
惜しい惜しい惜しい!いいよいいよ!おいヒロ!ヒロ!ヒロ!オーケー!試合が動いたのは後半。
先制点をあげたのは大阪。
その1分後。
ゴールを決めたのはヒロさん。
いいよいいよ!試合中ヒロさんの成長が見てとれる場面がありました。
ファウルで倒した相手を気遣います。
頑張れ!いけるいける!失敗を恐れる事が多かったヨシタカさん。
ボールを取られても最後まで相手に食らいつきます。
フットサルで人との関わりが広がったユウタさん。
自然にチームメートと声をかけ合うようになっていました。
このあと大阪のチームがゴール。
2対1でYARIMASSEの勝ちです。
礼!
(一同)ありがとうございました。
(拍手)何かよかった。
強かったけど。
もっと点取られると思ったけど。
あんまり2ー1だったからよかったです。
誰も何か最後まで交代したいって言わなかったからすごいなと思ったんだけど。
しんどかったでしょう?しんどかった。
しんどかったね。
暑いし。
すごい走ったね。
走ったわ。
元気にガッツポーズ!フットサルというスポーツで精神障害からの回復のきっかけが生まれる。
この日もたくさんの笑顔がありました。
試合からおよそ1週間。
大阪で刺激を受けたユウタさん。
体力を更につけるため走り込みを自ら課す事にしました。
やっぱりフットサルができるようになってくるとほかの事もできるんじゃないかとちょっと自信がついてきますね。
ヒロさんはアルバイトを始めて半年。
今将来の夢も抱き始めています。
バイトも続けて2年は続けて…それに向けて頑張っていきたいと思います。
それぞれの胸に希望が膨んでいきます。
2015/07/07(火) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV「未来へのキックオフ〜精神障害者のフットサルチーム〜」[字][再]

いま精神障害者の間にフットサルが広がっています。フットサルというスポーツの中から自然に回復のきっかけが生まれると、チーム数は130に増加。選手達に密着しました。

詳細情報
番組内容
いま全国各地の精神科で、フットサルに取り組む所が増えています。チーム数は130以上。秋には全国大会が開かれる程です。パスを出し合うことで他人と声を掛け合う環境が生まれます。さらにシュートが決まると自信がめばえます。スポーツを続けることで肯定的思考が高くなり、仕事に復帰する人の割合も多いという調査もあります。愛知県のチームすずかけタートルズに密着、病気からの回復をめざして奮闘する選手達を見つめます。
出演者
【語り】おおみちとせ

ジャンル :
福祉 – 障害者
福祉 – 高齢者
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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