NHK短歌 題「ガラス」 2015.07.07


「NHK短歌」司会の剣幸です。
今日もご一緒に短歌を楽しんで下さい。
それでは早速ご紹介致します。
第一週目の選者は佐佐木幸綱さんです。
よろしくお願いします。
佐佐木さん冒頭の一首…。
梅雨になるとねこの歌を思い出すんですけど。
実はわりと若い時期まだ学生運動なんかが盛んな頃ですね。
やっぱりねいろいろ仲間の中でね勇気とかそういう事を大事に考えているそういう仲間がたくさんいましてそういう時の歌なんです。
力強いですね。
今になると梅雨の時思い出して勇気なくなったなと思ったりしてるわけですけど。
そんな事はないです。
よろしくお願いします。
そして今日のゲストは漫画家の里中満智子さんです。
ようこそお越し下さいました。
ありがとうございます。
つい最近大作の「天上の虹」を完結されたばかり。
どうですか?長い間かかっちゃったんですけれどもそもそもがね「万葉集」が好きで「万葉集」に作品を残してらっしゃる多くの方々をなるべくたくさん出したいと。
そういう方たちが出てくる物語を作ろうとして持統天皇を主人公に描き始めたんですよ。
だから「万葉集」様様なんです。
随分長くかかったんですね。
何年ぐらいかけて?32年かかりました。
大作ですね。
私も昔から漫画をよく拝見させて頂いてましたのでたくさんお話伺いたいと思います。
先生は久しぶりにご対面?久しぶりっていうか大昔にね教育テレビで「百人一首」の番組でご一緒した事がありまして近江神宮でね百人一首の大会があってそれの中継に出てくる人たちなのね。
もう大昔。
寒かったですね。
じゃあまたたくさんお話伺います。
それでは今週の入選紹介したいと思います。
では第一首目です。
研究室は大学なのかあるいは企業なのか分かりませんけれどそんなに大人数じゃない人たちが出はいりしているんですね。
その人たちは新しい人入ったりやめてったりするけれども瓶はずっとそこに定点観測みたいにいていろんな人間模様を見てきたのかなという歌ですね。
人間を見るのにちょっと視点を変えた独特の視点から流れていく動いていく人間というのを捉えてとても工夫のある作だと思います。
では次です。
大学でしょうかね高校かもしれませんけれども。
先輩たちの靴が展示されている。
僕はどこかね…箱根マラソンの靴が展示されてるの見た事あります。
そういう事で昔の先輩のイメージがそこに残っているというちょっとセンチメンタルですけどねなかなかいい青春の甘酸っぱい感じがちょっと感じられて。
では次です。
里中さんどうでしょう?これね共感する方多いんじゃないかなと思うんですよ。
みんな疲れてるんですね。
この「早く終われという顔が」までが何となく主観で「ガラスに映る」っていうのを読んだところで客観性を持っているという。
だから自分だけじゃないんだみんなそうなんだっていうね何か共通体験みたいな感じが浮かんできて皆さんお疲れさまですねって言いたいですね。
情景が非常に面白いって言ったらなんですが身につまされるんですけど面白いですね。
やっぱりおっしゃるように基本は自画像なんだと思いますね。
思わぬところに自分が映っててそれをついつい見ちゃったという。
緊張した時間の中の退屈みたいなのがふっと出てていいですね。
では次です。
自由題で頂きました。
お葉書拝見するとこの方90歳でいらっしゃるんですね。
年齢と合わせて読むと何とも人生を大切に生きる丁寧に生きるそういう心のたたずまいのようなものがキチッと表現されていいと思いました。
「おそれつつたしかめ生きる」というのがとても丁寧にキチッと歌われてます。
「帰るなき道」というのが一期一会のような一回かぎりのような本当に大事なという感じが出てて表現がとてもキリッとしてますね。
では次です。
ほんとにこれ明るい歌で希望って感じがするんですよ。
詠んでいるこの生徒に信頼されている先生みんなが見つめるその光の先という事でとても素直な人生これからだという光に満ちた歌だと思います。
これを読むとこの情景が浮かんでくるだけじゃなくて読んだこちらが希望を持つんですよ。
ああどうかこの子たちがこのまままっすぐに生きていけますように。
そういう世の中でありますようにというそういう願いまで浮かんでくるほど本当に素直ですてきな歌ですね。
明るさっていうのがやっぱりこのポイントですよね。
ガラスとかフラスコとか光とかあるいは教室とかっていうのがみんなおっしゃるようなね明るさを補強しているんですね。
いろんな部分で。
一首の中でそれがバラバラにならないで統一を持って光明るさがパッと表現されてとてもメリハリの利いている歌ですね。
では次です。
向き合ってガラス拭いている。
ちょっと自分の事を考えるとてれると思いますけどね。
歌としては「悩ましく」というところがとてもいいですよね。
ユーモラスだしそこにてれないで我慢している感じも出ててね。
いかがですか?「素っぴんの」というところが68歳の方なんですけれどもあえて素っぴんの妻が悩ましいというところが昔はもっとお化粧して華やかなものが好きだったという68歳という年齢を経てとてもほほ笑ましく…。
親しみやすい感じがね。
親しみやすい感じがしますね。
では次です。
これね一見寂しそうに思うんですけれども人生には節目ってありますよね。
退職っていうのはとっても大きな節目になると思うんですけれどその時に振り返ってみて手作りのガラスの器具が捨ててある。
これ用がなくなったから捨ててあるのかあるいはどこか欠けてしまって捨ててあるのか分かりませんが年月を感じさせますよね。
自分自身もある程度の年になって退職をすると。
これまでの人生が充実してたんでしょうねきっとね。
だから今後また違う生き方をするんだけれどもその時にふとこれまでの事を振り返るっていう何かゆとりがあるような気がして今後もお元気でどうか楽しんで生きて下さいとエールを送りたくなるような歌ですね。
新しい先生が来られたという事なんですね。
ちょっと…という気持ちとまあいいやという両方ね複雑な気持ちが出てますね。
では次です。
なかなかね不思議な歌だなと思ったんですよ。
この歌から感じるのはこれからの暮らしへの諦めなのかそれとも納得なのかちょっとよく分からないんですね。
ガラスの汚れは誰が付けたのか自分なのか相手なのかそれとも年月というものが自然に汚していくのか。
それを拭うのは手のひら。
これは自分の手のひらなんだろうと思うんですよ。
この汚れを愛おしいと思うかどうかで今置かれてる感情が違うんですがいろんな事を考えさせて下さるなぁと。
でもまあ願わくばこういう事の積み重ねで人生の味わいを深めながらいい関係を続けていって頂きたいなと思いますね。
非常にいい鑑賞でそのとおりだと思いますね。
しばらく暮らしてきてさて何だったんだろう?これから何なんだろうってふっと考えたというそういう歌なんですよね。
日常生活のちょっとした動きみたいなのにうまく焦点を合わせてると思いますね。
では次です。
自由題で頂きました。
まだ商品を売る時計屋さんじゃなくてね実際に部品から作ってる時計屋さんといういかにも昭和という感じのところをうまく捉えています。
「じゃりじゃりと」が上手ですね。
音がちゃんと聞こえてきそうですものね。
以上入選九首でした。
それでは特選の発表です。
では三席お願いします。
兼松正直さんの作品です。
では二席をお願いします。
仁科光雄さんの作品です。
それでは一席の発表お願いします。
松田わこさんの理科室の作品にしました。
さっきおっしゃった明るさがポイントですけどね。
もう一つ言うとね非常にドラマチックですよね。
みんなの視線がそこにパッと集まっている。
そういうドラマチックなところをうまく捉えた作品で一席にふさわしいと思います。
ありがとうございました。
以上入選作品のご紹介でした。
続いて「入選への道」今回惜しかった一首を添削して頂きます。
作品はこちらです。
「雨ふる梅雨」というのはちょっとおかしいみたいですけれども空梅雨ではないちゃんと雨が降ってる梅雨というそういう意味というふうにとりました。
この歌ゆっくりと愛しむごとくかたつむりが動いていくというのはいいわけですけどね。
ちょっと「ゆく」のところを変えるとその方向性が出てきて少しイメージに具体性が出るだろうと考えました。
こういうふうにどうでしょう?「かたつむりのぼる」というとどちらの方向に上っていくのかそのガラス戸との関係においてイメージが具体化する。
イメージを具体的に作るというのは短歌の中でとても大事な事なのでねそこのところを注意して頂ければと思いました。
ありがとうございました。
皆さんも参考になさって下さい。
では投稿のご案内です。
続いては選者佐佐木幸綱さんのお話です。
正岡子規は短歌を作り始める時に体が動かなくなるんですね。
寝たきりになってしまう。
5年間ぐらい寝たきりの生活を続けるんですけどねそれがかわいそうだという事で高浜虚子がガラス戸を入れてくれます。
そうすると冬になっても庭が見えたりするという事でこの歌はそういうガラス戸ガラス窓という題の中の何首かの中の一首を選んできました。
足袋の歌としては最初の歌だと思うんですね。
今はわりと足袋なんていうのは珍しくなっちゃって高校生なんかは知らないんだろうと思いますけどね。
昔は足袋今の靴下のようにいっぱいあるようなそういう何でもないものをキチッと歌った初めての歌でね珍しいと思いました。
正岡子規という人は写生という事で有名ですけども私が写生って言っちゃうよりは「我とは何か?我とは視点なのだ」ものを見るという事ですね。
写生っていうのは何かっていうとね我を中心に世界を遠近法で捉える方法なんですね。
そういうふうに考えて我というものは何なのか?その見る場なのだというふうな事を文学史の中で言い続けていった。
きれいなものをただ歌うっていうんじゃなくてねきれい汚いは別として我との関係をキチッと歌っていく。
それが新しい短歌の道筋になるんだというふうに言ったんですね。
それを分かりやすい言い方で「写生」というふうに言って我々そういうふうに覚えていますけれどもやっぱり我の位置づけのしかたという事で捉え直すのが近代短歌をキチッと捉え直す形になるんじゃないかと僕は考えてるんですけれど。
ガラス戸ってほんとに正岡子規にとってはすごく狭いこんな限られた空間の中ですごい世界というか宇宙ぐらいを見ていた感じもちょっとしますね。
そこで雨に降ってくる松の葉っぱを歌ったりね何でもない事を歌うんですね。
一生懸命。
すばらしい!ありがとうございました。
続いてはこちらです。
こちらは今日のゲスト漫画家の里中満智子さんからのご紹介の一首です。
この歌は?この歌は持統天皇が夫である天武天皇が亡くなった時に捧げた挽歌なんですね。
持統天皇っていうのは昔私が小さい頃は権力志向の冷たい人でっていうふうなイメージだったんですが私持統天皇の歌を「万葉集」で読んで有名な歌ありますよね。
「春過ぎて夏来るらし…」とか。
あれも実に堂々としてて構成力がしっかりしてて冷静な方だなっていう気がしたんですよ。
だから単に権力志向でね感情に任せて何かをしでかすみたいなそういうイメージとはちょっと違ったなと思って冷静に人生を過ごした方だなと思ったんですがしかしこの「北山に…」の歌は感情がほとばしりあふれてるんですよね。
亡き夫への強い愛が感じられて自分と夫との愛が宇宙にまで広がっているというそういう感じがしたんです。
リズムも大変いいしこのリズムが嘆きの強さのような気がして随分歌によってその方の作者の性格とか価値観とかそういうのって想像ができますので。
今の歌はスケールが大きいですよね。
どうですか?持統天皇の歌は。
よく言われてるのはね月が持統天皇で星が王子たちだねたくさんおられるから。
そこを雲になった天皇の魂がずっと遠ざかっていくという非常にスケールの大きな歌ですよね。
壮大な絵が浮かんできそうな気がするんですよ。
そのイラストをご用意して頂きました。
こちらです。
これは別に壮大な絵じゃないんですけど。
きれいですよね。
こちらは?こちらがその挽歌ですね。
「北山に…」の時の。
挽歌を詠んだ時なので喪服を着せて描きました。
当時の喪服は白なので喪の間はずっと白を着るんですね。
だからモノクロの色調で描きました。
何かつらい絵なんですけど。
他にもたくさんイラストをお借り致しました。
歌と共に拝見致します。
これは有間皇子という方の作品で…。
縁起を担いで枝を引き結んで幸せであったらまた帰り道に見るよと言ってるんですがじゃあ帰り道って何かというとクーデターの疑いでクーデターといってもこの方天皇の息子なんですよね。
だからクーデターも何もないんですがちょっといろいろな陰謀があったみたいでその事で取り調べを受けるために牟婁の湯という所に連れて行かれる途中なんですよ。
幸運があればまた命長らえて帰り道にここを通ると。
そういう願いをかけて詠んだ歌なんですが帰ってこられなかったんですね。
和歌山県の海辺ですね。
だからここをどういうつもりでどういう心境で通っていったのかなって。
今の年齢満年齢にするとまだ17〜18歳ですよ。
若いですもんね。
若いですよね。
だからそこで生死を分ける今後の事その心境を考えると全ての歌がひと事ではないんですよね。
その方の身になってみると。
そういう事を考えるきっかけになった歌です。
他にもこちら。
これは高市皇子という天武天皇の息子さんです。
これは十市皇女と言われる一説によると高市皇子の恋人だったと言われております。
額田王の産んだ娘さんなんですよね。
その方がお亡くなりになった時に山吹は黄色ですね。
清水…水で黄泉の国に自分も行きたいと。
十市皇女のいる所に行きたい。
だけどその道を知らないから自分は行けないんだというどうしようもないつらさを歌った歌なんですよ。
高市皇子という方はそれなりの働きをなさるんですが人生で十市皇女が亡くなった時の三首しか歌を残してらっしゃらない。
記録にはないんです。
どういう心境だったんだろう?またこれもいろいろ考えさせられた歌ですね。
とてもしみじみとしたいい歌ですよね。
あの世まで追っかけて行きたいんだけれどもという気持ちですよね。
現代にも通じますね。
こういう愛とか。
そうですね。
もう一つ。
これは但馬皇女という方で先ほど出た高市皇子の奥さんの一人なんですけれどもどうやら不倫なさってたようでこれは人の噂があまりにもうるさいから私はもうこれまでの人生に渡った事のない朝の川を思い切って渡るわとある種開き直ったような歌なんですが非常に強い歌ですね。
夫の方が上司不倫相手が部下なんですよ。
危険です。
危険なんですがその愛の強さを堂々と歌いきった非常に意志の強い歌だなと思います。
女性の恋歌でも一番激しい「万葉集」の中で女性の恋歌として有名な歌ですね。
なかなかここまで言い切れないですよ。
昔の方もいろいろいろんな事を思いながら普通の言葉ではなく歌だからこそ表現できる事っていうのがたくさんありますね。
完結されてどうですか?ほっとしました。
ただ歌をたくさん描かせて頂いて作者の皆様勝手に描いてすみません。
お時間になりました。
今日は楽しいお話ありがとうございました。
佐佐木さんまた次回もよろしくお願い致します。
それでは次週またお目にかかります。
2015/07/07(火) 15:00〜15:25
NHKEテレ1大阪
NHK短歌 題「ガラス」[字]

選者は佐佐木幸綱さん。ゲストは漫画家の里中満智子さん。持統天皇を主人公にした「天上の虹」を描き終えたばかりだ。万葉集の和歌を参考に人物像を作り上げたという。

詳細情報
番組内容
選者は佐佐木幸綱さん。ゲストは漫画家の里中満智子さん。持統天皇を主人公にした大作「天上の虹」を描き終えたばかりの里中さん。万葉集の和歌を参考に人物像を作り上げたという。【司会】剣幸
出演者
【ゲスト】里中満智子,【出演】佐佐木幸綱,【司会】剣幸

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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