ギリシャ:破綻危機高まる EU、支援延長拒否

毎日新聞 2015年06月28日 21時54分(最終更新 06月29日 00時49分)

ギリシャを巡る動き
ギリシャを巡る動き

 【ロンドン坂井隆之、アテネ福島良典】ギリシャ議会は28日、欧州連合(EU)などが金融支援継続の条件として提示した財政再建案の賛否を問う国民投票を7月5日に実施することを賛成多数で承認した。EUのユーロ圏財務相会合は27日、国民投票に反対し、30日が期限の現行支援を延長しないと決めた。ギリシャとEUの主張が平行線をたどったまま、ギリシャ財政が破綻し、借金を返済できなくなるデフォルト(債務不履行)に陥る恐れが高まってきた。

 ◇国民投票、議会が承認

 週明けの株式や為替など市場が国際的に混乱する可能性があり、EUなどは市場の混乱回避に全力を挙げる構え。欧州中央銀行(ECB)は28日、臨時の理事会を開催し、預金流出が続くギリシャの銀行の資金繰りを支えるため、資金供給を継続することを決めた。

 ギリシャ議会の国民投票に関する審議は27日午後に開始。28日未明に採決され、賛成178、反対120、棄権2で承認した。チプラス首相率いる急進左派連合などが賛成し、サマラス前首相が率いる中道右派・新民主主義党など野党の大半は反対した。

 チプラス首相は議会演説で「国民が立ち上がり、(債権者のEUなどの)最後通告にノーを突きつけると確信している」と述べた。

 パブロプロス大統領が国民投票実施の大統領令を出す見通し。ユーロ圏財務相会合の支援延長拒否にもかかわらず国民投票を実施するのは「債権者側提案は国民を侮辱するもの」(チプラス首相)との反発がある。年金減額などの「譲れない一線」を越えれば首相は自らの政治基盤を失うことになる。

 ギリシャ議会の国民投票採決に先立ち、ユーロ圏財務相会合は27日、ギリシャへの金融支援を30日で予定通り終了することを決めた。EUはこれまでのギリシャとの交渉で年金減額などの財政再建を求めてきたが、「反緊縮」を掲げるチプラス政権が受け入れを拒み、協議は暗礁に乗り上げた。チプラス首相は27日、民意を問う国民投票実施を表明し、支援延長を求めたが、EU側が反発して、受け入れられなかった。

 ギリシャは30日、国際通貨基金(IMF)への借金16億ユーロ(約2200億円)の返済期限を迎える。このまま支援が終了すると、ギリシャがデフォルトに陥る可能性がある。

 ただ、ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長(オランダ財務相)は27日の記者会見で「ドアは開かれている。必要なら(財務相会合を)再招集する」と述べた。ギリシャのバルファキス財務相も「30日の最後の瞬間までギリシャ政府は戦い続ける」と合意を模索する可能性を示唆した。

 ユーロ圏財務相会合は27日、ギリシャを除く18カ国で危機対応策も協議した。デイセルブルム議長は「可能なあらゆる手段を使ってユーロ圏の統合と安定を守る」と表明。ギリシャに対しても「支援期限が切れた後も必要なら支援する用意がある」と述べた。ECBの資金供給継続もギリシャの銀行の資金繰りを当面維持する狙いとみられる。

 ギリシャのメガ・テレビによると、バルファキス財務相は、預金流出を防ぐため、銀行閉鎖や預金引き出し制限などの資本規制を実施するかどうかを28日夜に決めると述べたという。

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