ギリシャ:7月5日に国民投票…緊縮策、EU案の賛否問う
毎日新聞 2015年06月27日 11時08分(最終更新 06月27日 17時27分)
【アテネ福島良典】ギリシャのチプラス首相は27日未明(日本時間同日早朝)、欧州連合(EU)など債権者側が年金改革などの財政緊縮策を条件に提示した金融支援案を7月5日に国民投票にかけると発表した。債権者側は27日のユーロ圏財務相会合での提案受け入れを要請していたが、民意を問うことを理由に拒否した形だ。支援の期限切れと国際通貨基金(IMF)への16億ユーロ(約2200億円)の借金の返済期限を30日に控え、5カ月に及んだ支援交渉の大混乱は必至。国民投票で否決されればギリシャの財政破綻は避けられない見通しだ。
チプラス首相は臨時閣議を招集後、国民に向けてテレビで演説し、債権者側の提案を「欧州の価値観に反する最後通告であり、国民を侮辱しようとしているようだ」と批判。「これに応えるのは歴史的な責任だ」「国民は誇りを持って決断を下してほしい」と述べた。ただ、「結果は尊重する」と国民が賛成すれば提案を受け入れる考えを示した。
ギリシャ議会は27日、緊急招集され、国民投票実施の承認を審議する。チプラス首相は国民投票についてメルケル独首相、オランド仏大統領、ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁に通告したと説明。投票が実施できるよう、月末で切れる現行の金融支援の期限を「数日間」延長するよう求めたと明らかにした。
ロイター通信によると、債権者側は金融支援を11月まで5カ月間延長し、緊縮策の履行を条件に155億ユーロ(約2兆1400億円)の支援を実施する案を提示。メルケル首相、オランド大統領が26日、ブリュッセルでチプラス首相と会談し、受け入れを迫っていた。提案はユーロ圏財務相会合で協議される予定だったが、チプラス首相は「脅しだ」として拒否した。ギリシャは支援交渉で、年金支給額をカットしないことや公的債務の負担軽減を「譲れない一線」として要求してきた。
チプラス政権内左派のラファザニス・エネルギー相は国民に債権者側の提案を否決するよう呼びかけた。一方、野党の中道右派・新民主主義党のサマラス前首相は「事実上、欧州に対する『イエス』か『ノー』を問うものだ」とチプラス首相の対応を非難した。
チプラス首相率いる与党・急進左派連合は1月の総選挙で「緊縮策の放棄」を公約に掲げ政権に就いたが、支援交渉で債権者側に譲歩する形で緊縮策の一部受け入れを強いられたため、一部の国民や与党内左派から反発が噴出していた。