クローズアップ現代「人気の和食 輸出戦略!〜世界への強みは何か?〜」 2015.07.14


イタリア・ミラノで開かれている食をテーマにした万国博覧会。
長ーい行列のお目当ては…大人気の和食でした。
2年前ユネスコ無形文化遺産に登録され世界中で一大ブームを巻き起こしている和食。
しかし、海外の和食レストランの多くは外国資本。
食材も外国産が主流で恩恵は日本経済に届いていません。
こうした中立ち上がったのが京都の料理人たち。
秘伝の技を世界に公開。
和食の本質を伝えその魅力を広めようとしています。
日本発の和食は世界の市場を獲得できるのか。
最前線の動きです。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
日本人の食卓から和食の存在感が薄れつつあるといわれていますが逆に世界では、和食ブームで存在感が高まっています。
JETRO・日本貿易振興機構が2012年と2013年に合わせて13の国と地域で行った調査によりますと和食は好きな外国料理の1位に輝いています。
人気を反映して世界の和食レストランの数は推計で2006年の2万4000店から2013年には5万5000店と倍以上に増加しています。
このブームに乗って国は現在6000億円余りとなっている日本産の食材などの輸出を2020年までに1兆円に増やす目標を掲げています。
国際的な和食ブームの恩恵をまだ十分に得られていない日本。
どうすればもっと国内の産地や食品会社へその恩恵を広げていけるのか。
日本食といってもおすしや天ぷらから世界中で人気を集めるラーメンや東南アジアで受け入れられているカレーさらに洗練された懐石家庭料理まで、実に多彩です。
海外の人に評価されやすいものもある一方で本当のよさを分かってもらいにくいものもあります。
世界市場の中で、どうすれば和食のブランド価値を高め輸出を増やしていけるのか。
京都の料理人たちはみずから何が日本食か素材と向き合い自問自答しています。
食の万博が開かれているイタリア・ミラノ。
ここでも今空前の和食ブームが起きています。
4年前には、およそ60軒だった和食レストランは僅か2年で259軒。
4倍に増えました。
そこで出される料理を見てみると…アボカドとモッツァレラチーズをイタリア産の米で握ったすしにロブスターを使ったカラフルな巻きずし。
ポテトクリームに漬け込んだホタテの天ぷらなど現地のニーズに合わせたメニューは本来の和食のイメージとはちょっと違う感じ。
こうした和食店を経営するのは大半が中国系などの外国人。
さらに、食材も日本産のものはあまり使われていません。
5万5000店ある海外の和食レストランのおよそ9割が外国資本ともいわれています。
和食ブームといっても日本にその経済効果は及んでいないのです。
こうした状況に国はかつて対策に乗り出したことがありました。
9年前、国が海外の和食レストランに対して認証、いわゆるお墨付きを与える制度を計画しました。
そこには、本家である日本の食材の輸出拡大につなげようというねらいがありました。
ところが、これに対して海外から猛烈な反発が起こりました。
すしポリスがやって来る。
日本の価値観を押しつけようとしているというのです。
和食ブームを生かしきれない状況に改めて、日本を代表する料理人たちが立ち上がりました。
一方的な価値観の押しつけではなく和食の本質とは何かみずから整理して発信しようとしたのです。
料理人たちの中心メンバーの一人村田吉弘さんです。
村田さんたちは和食として守りたいこと変えてもいいことは何か議論を詰めることにしました。
まず、料理人たちがそれぞれ秘伝としてきた技を数値化し、本にまとめる作業を始めました。
その中で、料理人たちがとりわけ重視したのが、だし。
素材の味わいを引き出しうまみやこくを与えるだしの使い方こそが和食の核だと考えたのです。
今、村田さんたちは店ごとに異なるだしのとり方や使い方をすべてさらけ出し一つの基準を導き出そうとしています。
さらに、味覚の研究者たちと和食の新たな可能性を模索しています。
この日は、だしの力を探る試みが行われました。
用いるのは牛テール。
くせが強く、本来の和食ではほとんど使われません。
まず、だしをしみこませるためにぬかで湯がき肉の臭みを徹底的に取り除きました。
そして、昆布やしいたけさらに小豆からとっただしをしみこませました。
試食してみると…
だしのとり方の基本さえ守ればあらゆる食材を和食に取り込めるかもしれない。
だしの本当の価値は使い方で決まる。
新たな発見となりました。
今、料理人たちは外国人シェフを受け入れる取り組みを始めています。
海外で和食の店を開きたいという外国人に対しだしの使い方を惜しみなく伝授しています。
こうした担い手を広く育成することで世界に和食の本質を伝えていきたいと考えています。
今夜のゲストは、工業デザイナーの奥山清行さんです。
長らく、フェラーリなどのデザインに携わった経験をお持ちで、そしてミラノ万博の日本館の基本計画策定にも、携わっていらっしゃいます。
この和食ブーム、日本にいらっしゃる、海外のお客さんの数もそうなんですけども、本当に海外でも今、大きなブームが起きてますけど、そのブームを生かしきれていないと、この大きな理由。
海外にもよくいらっしゃるんですけれども、どう感じてらっしゃいますか?
僕、思うんですけれども、日本っていうのは、昔からいろいろな大陸の文化っていうのを取り入れて、年月かけて熟成して、それを日本の文化としてこう、ずっと育ててきた、そういった時間の流れの中で、今のこれだけグローバリゼーションの中で、マーケットも忙しいし、ビジネスも忙しいということで、考える暇があまりなかったということだと思うんですね。
そういう意味ですと、こうやって京都の方なんかが皆さん、こうやって集まって、議論をして、いろんなことをトライするっていう、昔は自然にやってたことっていう、今、あえてグループで、システム化してやるというのは、僕は大変すばらしいことなんじゃないかなと思うんですね。
海外に出ても、今のおすしなどがふるまわれていましたけれども、あれ、本当に日本食なのと思うようなものが、広がっている様子も感じられるんですけれども、日本としては本当に、日本らしいものをちゃんと広げたいという気がするんですが。
日本人にとってみたらそうじゃないですか。
ただ、やっぱりその日本人からしての日本食であって、日本食のすそ野というのは、実はもっと広いものであるべきで、それは海外のお客様の懐に飛び込んでいって、現場を見て、もちろん作ってる現場も見て、お客様が何を本当に欲しがってるかというのを見て、五感を通じて、自分で、やっぱりシェフ本人がやっぱり分かって、初めて新しい日本食の姿っていうのも出てくるもんだっていうふうに思うんですね。
ですから、そのためには、結局、すべてのものを海外に発信していって、それで必ずしもそれがすべて受け入れられるかというと、そうではないと。
割り切りが必要でして、たぶん、一番上の、僕はよく工業製品を作るときに、これをブランドのピラミッドと呼んでいるんですけれども、そのピラミッドを構築してその頂点にある本当一番上の部分というのは、むしろ全く妥協する必要はないんだと、あえてお客さんにこびを売る必要はないんだと。
だけどもそれにたいして憧れがあって、人が育ってきて、なおさら、もっと技術的に高いレベルの人たちがまた生まれてきて、料理ももっと広がっていく。
ただそれだけですと、ビジネス広がらないじゃないですか。
それをきちんとピラミッドのすそ野を作って、ビジネスチャンスをある程度、下のほうで広げていって、お客様の目から見た商品とか食材であるとか、外食産業であるとかというものを、きちんと海外に発信していくと。
そういって初めてピラミッドが完成するんじゃないかと思うんですね。
だから、どこまで妥協すべきなのか、日本人にとって、本当においしいものを食べてもらいたいという気持ちは強いと思うんですね。
でもそれが、受け入れられないケースも多々あるというのも見てこられたわけですよね。
例えばですね、僕なんか、お米大好きなんですけれども、山形の出身ですので。
そうしますと、世界中で恐らく主食というものを持つのは日本民族だけで、それでお米に対するこれほど深いこだわりを持つ、また味が分かるお客様っていうのも、そんなにたくさんいらっしゃらないであろうと、だから、それをむしろごり押ししても、お客様は、そのお米の味についてこれない、これ、分かりやすく現地のお客さん向けに、きちんと料理を作って、それを発信することによって、本当の意味での料理の価値を提供する。
結局日本食というのは、食材だけではなくて、日本という、日本食という料理の、その形自身に価値があるんだということだと、僕は思うんですね。
そうすると今、6000億円、食材、あるいは食品などが輸出されていますけど、それを2020年までに1兆円にしたいと。
この食材や食品を売ろうという中で、戦略はどうあるべきですか?
僕、食材だけですね、その売り上げを上げるというのは、正直、かなり難しいんじゃないかなというふうに思います。
やっぱりこれより人件費が高い、なおかつ、農業が今、改めて再構築されなきゃいけないというところで、1次産業を6次産業に変えていく。
その中で、その食材だけを売っていくよりもむしろ付加価値を付けて、加工商品にして、あるいはそれをもとにするビジネスを戦略的に構築して、初めて、その売り上げというのが10年後、20年後に上がるんじゃないかなというふうに考える必要があると思います。
そうすると、海外で自分もレストラン開こうっていうような、そういう日本人をもっともっと育てたりということも大事だということですか?
やっぱりマーケット大きいところで勝負したほうがおもしろいですからね、今まで実は、ほかの工業製品の世界ですと、それがすでに成立しているわけですけれども、その中で恐らく一番簡単でありそうで、実は難しい日本食をビジネスとして海外で展開する。
これが、なかなか奥深い、戦略的な人員的にもビジネス的にも、これをしっかりと構築していく必要があるんじゃないかなというように思います。
そのピラミッドを作っていくうえで、今、京都の料理人たちが行っていた、海外のシェフを招いて修業させるとか、あるいは、自分たちの秘伝のノウハウをオープンにする。
こうした取り組みで、何かこう、技が失われるんじゃないかと。
僕、その心配は全くする必要はないと思うんですね。
というのは、学校で教えられること、数値化できること、あるいはマニュアルに書けることというのは、ある意味で、本当のトップの職人技ではないと思うんです。
本当の日本食の価値というのは、職人技の価値というのは、もっと高いところにある。
むしろやっている人たちも、なぜそれがそういうふうに成立しているか分からないぐらいの、高みにある技というのを本当はそれが日本食を成立させているもので、それはもう半年、1年、2年、外人の方、どなたかがえいらっしゃっても、なかなかそれは得られるものではない。
だから本当の高みの部分は、全く失うことはないと思います。
むしろ理解者を育てているということですね。
さあ、日本の食材ですけれども、みそやしょうゆ、日本伝統の食材も今、国内消費の低迷に今、苦しんでいます。
こうした中、活路を海外に見いだそうとして、従来の常識を打ち破る戦略を取っているところも出てきました。
ことし3月千葉県で開かれたアジア最大級の食品見本市。
8000人を超える外国人のバイヤーやシェフが会場を訪れました。
海外向けに改良した伝統食品の数々。
メーカーは売り込みに懸命です。
こちらは、海外で人気の抹茶を使った、いなりずし。
海外の流行を取り込むことで市場開拓をねらっています。
食材の特徴を根本的に変えるという挑戦も始まっています。
茨城県にある創業67年の納豆メーカー。
輸出に活路を見いだそうと取り組んでいます。
納豆の国内消費が、この10年でおよそ2割も減るなど市場の縮小に危機感を強めたからです。
しかし外国人に食べてもらうと…ああ、やっぱり。
納豆の命である粘るという食感が苦手なのです。
どうすれば外国人に食べてもらえるのか。
試行錯誤を続ける中で思わぬ情報がもたらされます。
納豆のヘルシーさに引かれた外国人の中には粘りを水で洗い流して食べる人もいるというのです。
そこでこの会社は茨城県と共同で粘りのない納豆の開発に乗り出しました。
注目したのは突然変異で生まれる粘りを作らない納豆菌。
培養を繰り返し2年がかりで商品化に成功しました。
納豆特有の風味と香りはむしろ強みになると考えあえて残すことにこだわりました。
いよいよ、海外への挑戦が始まりました。
フランスで開かれた世界最大級の食の見本市。
茨城県内のほかのメーカーと共同で出展しました。
さらに、有名シェフと組み納豆をバターに練り込んで味付けした特製バターを開発。
果たして反応は…
その場で商談も舞い込んできました。
相手は世界各地に販売網を持つフランスの食品メーカー。
納豆を使ってベジタリアン向けの商品を作れないかというのです。
見本市のあとも問い合わせが相次ぎこれまでに10か国130社ほどの企業が興味を示しています。
納豆を世界に飛躍させようという、今の戦略、どうご覧になられました?
僕も納豆大好きなんですけれども、ねばねば、だめなんですよ。
そうなんですか。
やっぱりですね、僕らにとって、納豆の価値が何にあるかというのと、僕らというか、日本人にとってですね、フランスの方にとって、どこに価値を見いだしたかというと、健康食品ということと、やっぱり発酵食品としての、あの奥が深い味わいだと思うんですよ。
さらに今、赤ワインと一緒に食べてたじゃないですか。
普通納豆は、赤と合わないんですよ。
ところがこの納豆が、このチーズと一緒に、ああやって料理しますと、バターと一緒に作りますと、ああやってすごく味わい深く赤にも合う。
ですから、そういう意味では、まず1つ目は、相手にとっての価値をきちんと見いだすことと、それから食材とか料理だけではなくて、全体のその世界観とか、食べ方とか、ストーリーをきちんと作り出して伝えることだというふうに思いますね。
その国の食が好きになると、その国がぐっと身近に感じて、そういう効果もあって、ソフト戦略としては、非常に重要だと思うんですけれども、いろんなものをマーケティングされてきましたけれども、和食のマーケティングの難しさって、どう感じていらっしゃいます?
食事って、僕、イタリアに12年住みましたけれども、結局、ことばと、それから食事というのは、相手方にとっても、一番、自分たちの文化の中心たるもので、一見、それが簡単に入っていけるようで、ビジネスにしていくには、一番難しいものだと思うんですね。
難しいものなんですか。
ですから、日本は今まで工業製品とか建築であるとか、いろんなものを海外に対して発信してきたと、売ってきたと。
だけども、いよいよ食の番が来て、これを海外に展開していくためには、やはり人材育成も含めて、戦略的な10年、20年というところで、きちんとプロデューサーを立てて考えていく必要があるというように思いますね。
一過性のブームに終わらない、本当に日本食のファンをそして作って、そしてその価値が高い、和食とは価値が高いものだというふうに位置づけて、さっきおっしゃった、ピラミッドの形成なんですけれども、なんでしょう、ラーメンがあったり、カレーがあったりする。
その中で、この構築っていうのをどうやってやればいいですか?
ある意味で、今、おっしゃったように僕ちょっと、危機感持ってまして、日本食というのは、高みも十分世界におすしであるとか、お刺身であるとか、本当に京料理であるとか知られていると。
だけれども、今、いきなりラーメンとか、それが出てきたんで、ラーメンもちろんいいんです。
ただ、ブランドの発展としては、上のほうから徐々にそれを広めていくのが、実は高価値を保ったまま、ブランドを広めていく戦略なんですね。
ですから今、上のところから、さていきなりすそ野に行くまでの間のところを構築していく、そういったビジネス戦略が必要だというふうに思います。
つまり、いわゆる高いレベルの日本食も戦略的に、海外に?
同時に進行していくことが必要であると。
そうすると、日本食はやはり、コストはかかるけれど、食べてみたいという、そういう。
2015/07/14(火) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「人気の和食 輸出戦略!〜世界への強みは何か?〜」[字]

世界的な和食ブームにもかかわらず、思うように収益を拡大できない日本の食産業。海外展開の促進を目指す京都の料理人たちの新たな動きを通して、輸出拡大への方策を探る。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】工業デザイナー…奥山清行,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】工業デザイナー…奥山清行,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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