安保法案衆院通過:「60日ルール」で成立の公算大きく

毎日新聞 2015年07月16日 19時35分(最終更新 07月16日 20時21分)

衆院本会議で安全保障関連法案が賛成多数で可決され、拍手する安倍晋三首相(右)ら=国会内で2015年7月16日午後2時6分、長谷川直亮撮影
衆院本会議で安全保障関連法案が賛成多数で可決され、拍手する安倍晋三首相(右)ら=国会内で2015年7月16日午後2時6分、長谷川直亮撮影

 集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案は16日、衆院本会議で自民、公明両党と次世代の党などの賛成多数で可決され、参院に送付された。政府・与党は憲法の規定「60日ルール」を適用した衆院再可決も視野に入れており、法案は成立する公算が大きい。反発を強める野党側は17日以降のすべての国会審議に応じない構え。関連法案は安倍内閣の最優先課題だけに、政府・与党は世論の支持が低迷したままでも今国会で成立させる考えだ。

 衆院本会議では民主、共産、社民各党は討論が終わった後に退席、維新は否決された維新の対案の採決の後、退席し、いずれも採決には応じなかった。会派離脱中の川端達夫副議長と無所属で沖縄4区選出の仲里利信氏は議場に残って反対した。

 安倍晋三首相は衆院本会議後、記者団に「日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増している。日本国民の命を守り、戦争を未然に防ぐために、絶対に必要な法案だ」と法整備の必要性を強調。そのうえで「新たな議論のスタートを迎えた。議論は参院に移るが、良識の府ならではの深い議論を進めていきたい」と語った。

 一方、民主、共産、生活、社民の各党は国会内で法案に反対する集会を開いた。民主党の岡田克也代表は「議論をしても国民は納得しない。もう早くするしかないという中で行われた追い込まれ強行採決だ」と語り、関連法案の廃案を目指す考えを示した。また、共産党の志位和夫委員長は「安倍政権と与党による強行採決に満身の怒りを込めて抗議したい」と声を張り上げた。

 16日に参院に送付された関連法案は、60日ルールを適用すれば9月14日以降に再議決が可能となる。自公両党は衆院では可決に必要な3分の2を超える議席を有しており、60日ルールを適用すれば法案の成立は確実な情勢だ。

 ただ、参院では自民単独では過半数に届かず、強引な国会運営は難しい状況で、参院での審議入りの時期も不透明だ。与野党は法案を審議する特別委員会の設置でも合意できていない。自民、民主両党の参院国対委員長は今月6日以降、連日会談しているが、16日の協議でも結論に至らなかった。自民側は特別委の定数を35人とするよう提案。民主側は「35人では少数野党に議席が配分できない可能性があるので増やすべきだ」などと求めている。

 参院では「1票の格差」を是正するための参院選挙制度改革の関連法案の審議を優先させる見通し。その上、国会空転が長引けば、安保関連法案の審議入りはさらにずれ込むことになる。与党幹部からは「月内の関連法案審議入りは厳しい」との声も漏れ始めている。

 一方、野党側は、衆院での審議時間が116時間を超えたことから同程度の審議時間を参院でも確保すべきだと求める声がある。【高橋克哉、福岡静哉】

 【ことば】60日ルール

 衆院で可決し、参院に送られた法案が60日以内に採決されなければ参院が否決したとみなす憲法59条の規定。この場合、衆参の議決が異なることになり、同条の規定で、衆院が出席議員の3分の2以上の賛成で再可決すれば法案は成立する。

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