(テーマ音楽)
(鼻歌)さて!え〜とこれでそろったかな。
草刈さん旅行ですか?ちょっと早めの夏休み。
久しぶりに妻と旅行です。
沖縄行ってきま〜す。
いいですね〜!沖縄のどこに行くんですか?妻が首里城とか中城城跡に行きたいって言うんですよ。
世界遺産巡り。
すてきですね。
でも沖縄に行ったらぜひ民家を見てきてくださいね。
え?民家?民家って普通の家でしょ?透き通った海。
サンゴのかけら。
そのサンゴが敷き詰められた白い道に黒い石垣。
色彩豊かな…南国気分をさらに盛り上げるのが赤い屋根の…エキゾチックな風情の民家。
日本と中国との間に栄えた琉球独自の文化と厳しい自然条件が生み出したものです。
小さな木造平屋建てでありながら激しい台風や強烈な日ざしに耐える強さがあります。
沖縄の人の知恵や歴史が詰まった「庶民の家」を知れば本当の沖縄が見えてきます。
今日は沖縄の民家の美をご紹介しましょう。
手つかずの自然が残る竹富島。
昔ながらの民家が数多くあり沖縄の原風景に出会えます。
沖縄の民家の特徴はそうです…沖縄ならではの青空にこの赤。
画家の金城明一さん。
30年以上にわたり赤瓦の民家を描いてきました。
描くのは長年人が住み続けた家。
積み重なった時間が赤瓦の色に出るといいます。
色を楽しめるというかね。
金城さんはさまざまな色を赤瓦に使います。
そうして見ると屋根は実にまだら。
赤い物から黒っぽい物まであります。
金城さんの赤瓦はまるで花のような彩りです。
1枚として同じ赤がない沖縄の屋根。
豊かな赤が複雑なハーモニーを奏でます。
沖縄の民家鑑賞最初の「壺」は…なぜ沖縄では赤瓦なのでしょう。
ヒントは首里城にあります。
かつて沖縄はこの城の王に統治された「琉球王国」でした。
城には17世紀当時貴重だった赤瓦が使われました。
赤は高貴な色だったのです。
当時の庶民の住まいは茅葺きでした。
貴重な瓦を使うことが禁止されていて赤瓦は憧れだったのです。
庶民はこぞって赤瓦を屋根にのせました。
実はこの赤沖縄の土に由来します。
沖縄の南部一帯にその土があります。
「クチャ」という鉄分を多く含む泥です。
赤瓦は黒い土と水だけで作られます。
成形した瓦を40日ほど乾燥させ1,000度という低温で素焼きします。
すると…。
土の中の鉄分が焼くことで酸化し独特の赤が生まれるのです。
この素焼きの瓦は暑い沖縄の気候にも適していました。
水分を蒸発させる時熱を逃がし涼しくしてくれる素焼きの瓦。
沖縄の亜熱帯の気候に適した屋根でもあるのです。
一方こちらは赤瓦が白い物で囲われています。
白と赤のコントラストが美しい屋根です。
白いのは漆喰です。
強烈な台風に襲われる沖縄では瓦が風で飛ばされないよう漆喰で留められています。
この漆喰もまた雨や日ざしで風化。
白から灰色へと変化します。
漆喰と赤瓦は共に年月を重ねながら味わい深い表情になっていくのです。
さらに赤瓦の屋根をより魅力的にしているのがご存じ「シーサー」。
中国の風水思想にある魔よけです。
よく見ると魔よけなのにおちゃめ!かわいいものやユニークなものまでさまざまです。
そもそもシーサーは赤瓦が庶民に解禁された時期瓦をふいた職人がおまけで屋根に残したのが始まり。
作った人の個性や遊び心があふれたものなんですね。
シーサーは屋根と同じ材料で作られます。
作る過程で割れたり欠けたりした赤瓦を利用しているんですよ。
長年沖縄の屋根をふいてきた…大城さんがシーサー作りで大事にしているのが上あごの角度。
この上に目がのるからです。
シーサーの目は門から入ってくる魔物をにらむ角度でつけます。
お客さんが家に入ってきたら玄関で立ちますね。
立った所に獅子が…魔よけだからあまり笑ってもいかんしね。
命を吹き込まれたシーサーが赤い屋根を守ります。
赤瓦漆喰そしてシーサー。
沖縄の風景になくてはならない彩りです。
確かに沖縄の景色には赤い屋根が似合います。
私の家の屋根は和瓦がふいてあります。
確かに漆喰がない。
草刈さん。
うん?その黒い瓦は頑丈なんですが水を吸わず光を吸収するので熱くなるんです。
ああやっぱり沖縄には向かない。
ではここで沖縄の代表的な家のつくりをご紹介しましょう。
沖縄の民家は日本と中国そして琉球の文化が混じった独特の形をしています。
まず石垣の門を入ると立ちはだかる壁。
「屏風門」と呼ばれます。
中国の風水の影響で魔物が家に入ってこないよう建てられています。
屏風門を右に行くとお客さんの入る方向。
左は家の人たちが出入りします。
最大の特徴は玄関がないこと。
広く取った開口部から自由に出入りします。
家屋の南側には全面壁がなく南風をふんだんに取り入れて広々とした庭や自然を感じることができます。
次は沖縄の家の特別な空間を見てみましょう。
280年前に建てられた…本島で奇跡的に沖縄戦の戦火を免れ琉球時代の面影を残しています。
屏風門を右から入ると…。
豪農だった中村家には右手に客人をもてなす離れ。
左が母屋です。
表に面して柱だけが並び広々中が見渡せます。
開口部には部屋を雨や日ざしから守るため長い軒があります。
この軒下の空間は…玄関のない沖縄で雨端は家に出入りしたり軒下でくつろぐなど重要な場所です。
この長い軒を支えるのが…沖縄では強烈な台風で軒が飛ばされないようしっかりと地面とつないでいるのです。
そのため「チャーギ」と呼ばれる頑丈な木材が使われています。
柱を製材すると雨風に非常に弱くなるわけです。
そのために自然に生えたチャーギこれを使ってるんです。
それも自然に生えてるまま上は上根元は根元ですね。
そういう構成のままに置いてますね。
特に木というのは根元は非常に水に強いんです。
製材しないことで雨に強く野趣あふれる表情を見せています。
そのままの木肌を味わおうとするところはまるで床柱みたいですね。
枝が分かれたチャーギ。
遊び心あふれる使い方です。
大事な雨端の空間には沖縄の人々の贅と知恵美意識が込められているのです。
今日二つ目の「壺」は…雨端柱が作り出すもう一つのすてきな美があります。
こちらは17年前に建てられたお宅。
この家に住む山城さんご夫妻です。
こだわったのは沖縄産の木材。
壁にはセンダンや杉が贅沢に使われています。
縁側はクスノキを使用。
どっしりとした重厚感を醸し出します。
そして山城さんご自慢の雨端柱。
これはうちのじいさんが明治の代にうちの実家で植えたチャーギですね。
なかなかこういうのは無いんです今県産でチャーギっていうのは。
探すの大変です。
第二次世界大戦があったから大体それで古いチャーギは無くなっちゃったわけですから。
今もっと大事にせんといけないね。
この雨端柱でとっておきの空間が演出されるといいます。
どんな空間なのでしょう。
そこに見える樹齢100年以上になる柱2本。
この間から見える景色ということになります。
部屋から雨端を望むと丸太のままのチャーギがまるで映画のスクリーンのように庭を切り取ります。
今日は良い風が流れてましてとても心地いいですよね。
こういう感じで…よいしょ。
山城さんにとって極上の時間です。
(三線・沖縄民謡)おじいさんのチャーギがやすらぎの時に寄り添います。
(三線)沖縄の家に行って雨端の下の縁側で昼寝でもしてみたいねぇ。
きっと風が気持ちいいぞ〜。
ね。
草刈さんどこに泊まるんですか?リゾートホテル。
そういえば沖縄の民家に泊まることもできるんですよ。
あ…それもなんだか楽しそうだね。
よし探してみよう。
最後は民家が織り成す景観です。
竹富島。
美しい白い道が印象的な島です。
道はサンゴのかけら。
町が水はけや美しさを維持するために年に2度道や庭に敷き詰めます。
その白に対比するのが石垣の黒。
石垣はサンゴが堆積してできた岩琉球石灰岩を積み上げています。
南国の光の下鮮やかなコントラスト。
この島で生まれ育った…毎朝サンゴの道と祖父が建てた家を掃除をします。
庭には家をより美しくみせる緑があります。
これは家屋敷を守る神様。
だから旧家はたいていこれを持っています。
樹齢200年の大きな木。
根元には「地所御獄」という神様がいます。
赤瓦と緑。
もう一つの鮮やかなコントラストです。
この美しい石垣もまた家を守ってきました。
ちゃんと合理的にできてるんです。
やっぱり昔の人の知恵ですよ。
石垣は強烈な風を弱めます。
また風が家の壁を直撃しないよう絶妙な高さになっています。
島の美しいたたずまいは家と家族を守ろうとした沖縄の人の知恵の結晶でもあるのです。
今日最後の「壺」は…島のほとんどの家にある石垣。
これが竹富島独特の景観をつくってきました。
この石垣は島の人たちが長年の経験から生み出したものだといいます。
この石垣の積み方「野面積み」っていいますね。
外側と内側と両側大きな石を積み上げるんです。
内側にはこういった小さい石をどんどん詰め込んでいきます。
こういったのがギザギザして小さいのが入ってせめぎ合ってそして引っかかり合いますからだからセメントを使わなくても十分もっているんですね。
さらに石積みにはある思いが込められているといいます。
竹富のキーワード「うつぐみ」ということですけど石垣自体も大きい石小さい石それぞれの持ち場でうつぐみし合ってる。
台風の多い島で人々は協力して生きてきました。
美しい石垣には知恵と島の精神が宿っています。
もう一つ独特の景観を持つ島をご紹介しましょう。
渡名喜島です。
わずか4キロ四方に400人余りが暮らしています。
深い緑の森にすっぽりと覆われところどころに赤い屋根がのぞいています。
というのも家々は道から1メートルほど低い場所に建ててあるからです。
堀り下げることで台風の強い風が家を直撃するのを避けるのです。
また家の周りを福木という木がぐるりと囲っています。
肉厚で大きな葉が台風や強烈な日ざしから家を守ってきました。
福木林に抱かれるようにかわいい赤い屋根が肩を寄せ合っています。
先人たちが植えた福木が時を経て心地良い木陰を生み出し人々に豊かな時間をもたらしています。
沖縄の美しい民家の風景。
それは数百年という時間と知恵が育んだものなのです。
よし準備完了。
宿も取れたし。
せっかくだから離島にしました。
ママも沖縄の民家の宿を気に入ってくれたみたいだし。
「あなたやるじゃない」なんてほめられました。
あらあらお熱いですね。
そう。
これからももっと熱くなりますよ〜。
沖縄行ってきま〜す!あママ!ちょっと待って〜!ちょっと待ってくださ〜い!2015/07/12(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「沖縄の民家」[字]
身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「沖縄の民家」。案内役:草刈正雄
詳細情報
番組内容
南国の色彩豊かな自然にあふれる沖縄。多くの旅人をひきつけてやまない沖縄ならではの美がある。「民家のおりなす景観」だ。赤い瓦屋根に珊瑚(さんご)の囲いという独特の景観をもつ沖縄の民家は、中国・日本の間で栄えた独自の歴史、台風や暑さなど亜熱帯の厳しい風土との戦いにより育まれたもの。今回は「赤瓦の屋根」「軒下」「囲い」を通して沖縄独自の美意識に迫る。
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】礒野佑子
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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