0SWITCHインタビュー 達人達(たち)「園子温×永井豪」 2015.07.11


綾野剛主演の「新宿スワン」。
殴られっ放しは性に合わねえんだよ。
歌舞伎町を舞台にした人気漫画が原作だ。
私はアゲハ。
本名は忘れちゃった。
ベストセラー小説が原作の「リアル鬼ごっこ」。
どうしたの?髪の毛びしょぬれだけど。
出演者が全員女性という異色作。
(叫び声)長谷川博己主演オリジナル脚本による「ラブ&ピース」。
あ〜いカット!公開作が相次ぐ園子温。
今日本で最も忙しい映画監督だ。
今年だけで4本。
来年にはなんと6本の映画が公開予定。
常軌を逸したハイペースで撮り続けている。
自首って何?何でおまけ人生なの?君何かしたの?親から虐待を受けて育った2人の中学生が懸命に生きる姿を描く「ヒミズ」。
震災直後の石巻で撮影が行われた。
ずっと待ってたんだよ。
当時まだ無名だった染谷将太と二階堂ふみを主演に抜てきした。
鬼気迫る演出術で問題作を世に出し続けてきた園子温。
ベネチア国際映画祭では主演の2人に最優秀新人賞をもたらした。
世界が注目する映画監督がこの人なくして自分はいなかったと慕う男がいる。
自分の…デビューから48年。
時代を象徴するキャラクターを生み出し続けてきた。
悪魔の力を身につけた正義のヒーロー…自由自在に変身できる愛の戦士…主人公が人型ロボットに乗り込む初の巨大ロボットアニメ…永井がいなければ「ガンダム」も「セーラームーン」も生まれなかったかもしれない。
出身の石川県に6年前に作られた永井豪記念館。
全国から大勢のファンが詰めかける。
これまで世に送り出してきた作品は300タイトル以上。
69歳になる今も3本の連載を抱えている。
前夜は緊張のあまり眠れず結局明け方まで飲んでしまったという園。
聞いてみたい事っていうか…西早稲田の住宅街。
永井はこの建物で40年以上ずっと執筆を続けてきた。
先生はこちらでしょうか?はい少々お待ち下さい。
すいません。
すご…。
すごいな…。
(永井)あっどうもお久しぶりです。
そんな前ですか。
うん。
実は以前韓国の映画祭で顔を合わせた事がある。
その時はまともに話せなかったという。
園子温は実は漫画家になりたかった。
編集部に原稿を持ち込んだ事もあるらしい。
対する永井豪は大の映画マニア。
年に300本見ていた事もある。
実は監督経験もあるらしい。
映画監督と漫画家。
永井の漫画が思春期のともし火だったという園が舞台裏に切り込む。
クラスメート見たり女教師に対する…変質者になるって言われて。
鬼才園子温。
出世作の裏側を赤裸々に語る。
ああそうなんですか。
もう本当に現場にお金ないんでどこでどう間違えたか…周りが思ってるからあれがすごいバカ受けして…ここは僕の部屋でここで主に仕事してます。
これは自分の原画を基にしたリトグラフなんですけど。
ふだんここで原稿描いてます。
これは…。
こういうヌードとか自分好きなんで自分でペン入れしちゃうんですけど。
ストーリー上はね。
そうですか。
いつの間にかしてたりするんですよね。
何かこう顔は小顔でおっぱいでかいっていうね。
ハハハハ。
やっぱりいろんな…フランス映画とかハリウッド映画とかそういう女優さんなんかでも2次元でモノクロで外国の女優さんとかに憧れてたりしたもんですから体型が僕の当時の日本人女性の体型じゃなくてどちらかというと外国人の方の体型に近いんですけど。
先生の描くこの女性っていうのは…もともとの女性のデッサンというかそれは…おっぱいの形ミロのビーナスとかっていう感じで。
ああそうですか。
分かんないんですけど結局…いろんな作家さんに会うとああやっぱり…何となく分かったりしますね。
やっぱりそういう…なるほど。
これ今描いてて女性のどこにまずこだわりっていうか…。
やっぱり…バランス崩す事多いんですけどね。
そういう時はこうやって…そういうのでね裏から確かめ表にしたり裏にしたり確かめながらデッサン直して。
こうずっと描いてる訳じゃないですか。
描いてる時…そういう事ってないですか?ただ遊びで海外とか行ってても描きたくなっちゃって…思う事はありますね。
へえ〜そっちなんだ。
1972年26歳の時永井は週刊誌5誌同時連載という離れ業をやってのけた事がある。
「チャンピオン」で「あばしり一家」。
「少年キング」は「スポコンくん」。
「マガジン」で「オモライくん」「サンデー」で「ケダマン」。
そして「ジャンプ」で「ハレンチ学園」。
1週間で描き下ろす原稿はなんと100ページを超えたという。
すげえねこれ!あっ懐かしい雑誌…。
すごい!漫画の黄金期ですよね。
これがいいですよね。
今の漫画の雑誌と違って。
この…こういうふうに今こう…ホッチキスでカチャッて何っつうの?ここがプッてあの…束ねちゃうよね。
でまた…買ったら必ずこう…。
インクのにおいが。
そうそう。
こうやって…。
あの青いこの…こういう色のやつとこういう色のやつとまた微妙に違うんで。
子どもの時はこのにおい嗅いでました。
へえ〜。
これは先生もう本当に…。
2部だね。
このころ…。
このころしょっちゅう毎回出てました。
ねえ。
これ同じ週にやったやつ?ええそうです。
こんなに描けるもんなんですか?4誌まで普通にやってたんですけど5誌の依頼が来た時どうしようかなと思ったんだけど…そうして受けたらやっぱりきつくてねどんどんどんどんずれが出てきてね。
大体ね一日朝起きてコーヒー飲みがてらネームはやって…。
朝何時ぐらいに起きるんですか?お昼ぐらいですね。
それで夕方描いてスタッフにもう絵入れてどんどん回してみたいな。
それでえ〜っと夜中にあがるみたいな感じで。
時々翌日に持ち越されたりとかするんですけど大体コンスタントに描けましたねそのころ。
机で…ああ〜。
どんどんどんどん。
後でだいぶ後に…「えっどうして?」って「もうプレッシャーで」。
「え〜!」って驚いてね。
「俺白い原稿見たらもうすぐに絵描きたくなるんだけど」って。
漫画家なんです本当の。
言ったら「いいな〜」とか言われましたけど。
いや埋めたくなるってすごいですね。
何か…思っちゃう。
すぐ手が動いちゃう。
そのころの原稿を一応出しといたんですけど。
これがね「ハレンチ学園」の…。
原画ですね。
1968年昭和43年に連載がスタートした「ハレンチ学園」。
舞台は日本中で一番ハレンチな先生が集まる学園というはちゃめちゃな設定のギャグ漫画だ。
ある日暴れん坊の主人公山岸が始めたのが…。
モーレツごっこいわゆるスカートめくりだ。
これがたちまち学園中で大流行。
学園一のアイドル十兵衛のスカートを狙って大騒ぎに。
必死に逃げ回る十兵衛。
なんとパンツをはき忘れてきたと衝撃の告白。
山岸慌てて謝る。
今見ればなんともチャーミングなやり取りが続くのだが…。
もうこの当時は本当に…ののしり合い。
コメンテーターに怒られてました?父兄の人たちも…変質者になるって言われて…一生懸命弁明しようとするんですけど当時口下手だったしうまく説明できないうちにボンボンボンボン攻撃だけ…。
テレビによく出ましたね。
絶対攻撃されるじゃないですか。
それでも…ひどいですね。
何か僕当時23ぐらいで坊やみたいな顔してたから…ひげ面のやらしいおやじが描いてると思って怒ってたんだけど…だったらそれ言ってよっていう。
番組が終わってからそんな事…。
もう演じちゃって。
そう。
これなんか当時問題になって本当は…水着外れてたんですよね。
そうしたらどうしても…すごい覚えてますこれ。
何て言うかな…あっそうですか。
ほかの漫画のほかの先生でこういう感じじゃないんですよ。
僕…何っつうかな?普通はストーリー上読んでいくものじゃないですか漫画って。
コマで覚えてるってなかなかないんですけど…それはうれしいです。
あれこの時もまだ小学生なんですか?これ。
ハハッだからありえないですよね。
ありえないです。
それからちょっと「ハレンチ学園」も読んでも別に僕は全然自然に生きてきたけど…多分ね…多分そうです。
僕小学生だったんで。
小学生の時このぐらい色っぽかったです。
クラスメート。
人間って…僕はやっぱり…だから…それってやっぱり…魔法ですね。
もう本当に当時の僕自身と…編集やなんか「タブーだから」とかいろいろ言われてその反発もあって…すごくあって…。
そうですよね。
あのクラスメート見たり女教師に対するもやもや。
何かこういろんな…別にいいんだみたいなね。
みんな自覚できてすごい救われたと思うんですよね。
だから本当にあの時それまで僕の中で…あ〜それはよかったです。
園にとって「ハレンチ学園」と同じくらい思い入れがある…あばしり駄ェ門と4人の子どもたちが安住の地を求めて番外地駅に降り立つところから物語は始まる。
ところが…。
町はこのありさま。
激しい出入りを見たあばしり一家。
なぜか大喜び。
それもそのはず。
この一家全員が筋金入りの悪党なのだ。
お約束のヒロイン菊の助のお色気シーンを交えつつ…切って撃って爆破する。
狂気の沙汰を笑いに変えるおきて破りのギャグ漫画。
当時園少年は夢中になったという。
あばしり一家の正月ですね。
あっすごい影響受けてんな。
トリュフォーの映画とかのカット割りにちょっと近い。
ハイスピードで少しずつ脱いでいくっていう。
スローモーションですよね。
それが何かいわゆるちょっと向こうのフランスの映画みたいな感じですね。
まず映画みたいな…サ〜ッと見えてそれを今度紙に移す時にコマ割りそのシーンを…作品は動いてる映像がそのまま見えちゃうんです。
どのシーンを大きくしようかとかそこで…頭の中はやっぱり…。
絵に見えちゃう?映画になってるという。
絵が見えてます。
それは2次元系の絵で見るんですか?それとも…。
いやもうリアルな絵なんですよね。
こういうのの時も…?もっとリアルになっちゃうんです。
あっそうなんですか。
それを…かわいい。
頭の中はもっとリアルなんです。
そうなんですか。
本当にすぐ人が死ぬ…。
キャラクターをその世界で遊ばすみたいなつもりで描いてこういう世界観の中でこんなキャラクターが自由に生きてるんだみたいなのを自分を投影して描いてましたね。
自分の生活は本当に漫画一色で机から離れられないんでその願望が全部作品の中に出ていたのかな。
「暴れたい」みたいなのがアクションシーンになったり「色っぽい女の子に出会いたい」というのが十兵衛とか菊の助とかね。
この色彩感覚っていうのがいいですよね。
こういうとこで急に赤になったりなぜか黄色だったり。
こういう昔の…何て言うかな関係ないですもんねリアルに考えれば。
カラフルな感じで。
せっかく色があるんだから…コマの中まで赤く塗ったりとかいいですよね。
アートというかデザイン感覚というか。
シーンの連続であればそれだけで読めちゃうんだろうなと思ってセリフはその補足ぐらいに考えていますね。
これなんとか漫画にならないかと思ったりするんです。
分かります。
分かります。
そう思うとすごいな。
絵に定着したものをそのころ…それってすごいですよね。
うれしいですね。
それ見たら「こういう子たちが喜んでくれてるんだ」と思うとうれしくてね。
すごく頑張る原動力にもなりました。
今年永井は代表作「デビルマン」の新シリーズ「デビルマンサーガ」の連載を始めた。
最初の連載から40年余り。
「デビルマン」の執筆は永井のライフワークと言える。
1972年ギャグ漫画で人気を博した永井はほかの連載を次々と終了させ「デビルマン」に全神経を注いだ。
当時26歳。
作風をガラリと変え人間と悪魔による地球争奪戦という壮大なテーマに挑んだ。
悪魔と合体する事で同等に戦える事を知った主人公不動明は意を決して悪魔の力と人間の心を持つデビルマンとなる。
明は人類を救う事ができるのか。
息もつかせぬホラーストーリー「デビルマン」は熱狂的に迎えられた。
先生は今また「デビルマン」描いていらっしゃるんですけど。
みたいな事言われて。
それで世界観も今の世界観にして10年後の世界という舞台にしたんですけど自分もキャラクターと共に生きてるという感じなのでどんどん変化していくんでどういう作品になるかなってだんだんだんだん描けば描くほど分からないけども何か面白くなりそうだなって今は思ってますね。
昔の「デビルマン」も描いてるうちに「これは何だろう」っていうふうに考えだしたんですけど多分人間が悪魔になるという事はどういう事かなと考え始めたら多分若い人が突然戦場連れていかれて銃持たされて「殺せ」って言われた時ってそれが悪魔の力かなとか思って。
大魔神サタンの策略により疑心暗鬼になった人間たちは互いに殺し合いを始めてしまう。
恩人一家を救出しようと急ぐデビルマンだが間に合わず見るも無残な姿に。
デビルマンは絶望する。
なぜ人間同士が殺し合うのか。
身を捨ててまで守ろうとした人間とは一体何だったのか。
刻一刻と事態は悪化。
魔の手はデビルマンの最愛の人のところに及ぼうとしていた。
一度は人類を守る事を諦めかけたデビルマンだったが最愛の人の命を救うため決意を新たにする。
しかし駆けつけた先で見たものは…。
最愛の女性一人の命さえ救えなかったデビルマン。
悪魔との戦いを通して人間の本性を問う黙示録的世界観が展開する。
気が付いてみたら…戦争になったらどこまでも一旦滑りだしたら殊に今の戦争は恐ろしいところまでいってしまうんじゃないか。
地球壊滅までいくんじゃないかというそういう警鐘の漫画でもあるなというふうに当時思ったんですよね。
まさに今…いまだにそれはちょっとリアリティーが。
でもただ最初描きたくないっておっしゃって。
それが怖いし描いてると本当に精神的にボロボロになるんです。
だからもう一回つらい思いをするのかと思った時描きたくないと思ったんですけど。
怖いですね。
それ怖くて。
自分…僕は前世とか信じてる方なんですけども多分何かそういう恐ろしい時代の前世を経験しててそういうものを…自分の人生経験考えるとこんな激しい人生送ってないからどうしてこんな作品が出来てくるんだろうってここまですさまじい作品になっちゃうんだろうと考えた時自分が自分の今の人生では経験しないいくつもの転生してきた中で経験してきたものが…非常にそうだと思うんです本当に。
こういう…そうですね。
今年から連載をスタートした「デビルマンサーガ」。
10年後の近未来を舞台にした全く新しいストーリーだ。
ロボット学者の不動勇希は古代文明が生み出した兵器デーモン・アーマーの存在を知る。
ひそかに研究を進めていたのは世界一の軍事企業。
なぜか勇希の体にデーモン・アーマーのパーツが吸い寄せられる。
その正体は…人間を悪魔に変えるよろいだったのだ。
果たして勇希の運命は…!?新しく描くとしたら何を描きたいと思いますか?ギャグ漫画はやらないですか?やっぱり…ババカ…。
自分でこいつら登場人物をね自分で笑いながら描くんですけどね「こいつバカだな〜」と思いながら描いて喜んでたりとかね。
是非描いて頂きたい…。
ギャグ漫画は描いている時すごいハッピーなんですよね。
で疲れないんですよね。
ギャグ漫画描いてる時全然疲れなくてストーリー漫画でこう〜なってくとねものすごく精神的にも肉体的にも疲れるんですけどギャグ漫画はね体は疲れる事もあっても心はねすごく楽しくて疲れ知らずでねいくらでも描けるって感じになるんで。
いや本当にもう一度心から能天気な…アハハハすばらしいギャグ漫画を是非見たい描いて頂けたらと思いますけど…。
常にバランスよく両方描けるといいんですけどたいていねどっちかの注文が集中しちゃうんだよね。
ギャグが当たっている時ギャグばっかりになっちゃうしみたいな…。
そうするとストーリーものが描きたいと思っても描けなかったりとかね。
映画も同じですか?後半は舞台をスイッチ。
人間はなみんな一人一人特別な人間。
才能の原石を磨く手腕に定評がある園子温。
映画「ヒミズ」では無名だった二階堂ふみから壮絶な演技を引き出した。
夢を持て!ボート屋なめんな!普通最高!当時ほとんど演技の経験がなかった吉高由里子を園は発声から鍛え上げた。
ねえ見せてよ。
ジーザスキリストをバカにするやつは…主よお許しを!満島ひかりも「愛のむきだし」で女優開眼させた。
満島は体当たりの演技で数々の賞を総なめにする。
おいかかってこいや!園子温は10代の頃から表現の出口を探し求めた。
17歳の時授業中にノートに書きつけた詩を投稿。
Gパンをはいた萩原朔太郎と称されたという。
漫画家を目指した事もあったがやがてエネルギーは映画に向けられた。
こんにちは。
園子温です。
カメラを手に自主映画の製作に熱中し始める。
30代で路上パフォーマンス集団を主宰。
詩を叫ぶ園のニュース映像が残っている。
外に向かって放出されてたエネルギーとしての寺山修司っていうのが好きなんです。
だから完成されている部分での寺山修司っていうところにはあんまり興味がないですね。
派手なパフォーマンスで注目を集める一方問題作を撮り続けた。
メジャー作品を手がけるようになったのは40を過ぎてからだった。
大の映画マニアで自らメガホンを取った事もある漫画家永井豪。
そうですねやっぱり…永井が向かったのは演劇の街下北沢。
園のアトリエがここにあるという。
そうです。
よいしょっと。
どうも。
どうも。
この間はありがとうございました。
これも園さんの絵ですか?ええまあ…でもいいですねこれ自分の画廊みたいの。
なぜこここんな部屋借りてるかっていうと…そうそうそうです。
…お恥ずかしい。
自分の中にあるものが…よく分かります。
僕もねふと思いついてカシャカシャ描いてもうイタズラ描きしててその中から作品が生まれたりってよくありますね。
やっぱりあの…
(笑い声)これNHK的じゃないのかもしれないですけど「冷たい熱帯魚」なんて僕は面白かったんですよね。
何かすごいインパクトが残っちゃって…。
ごゆっくり見て下さい。
2011年公開の映画「冷たい熱帯魚」。
人はある日突然死ぬ。
実際に起きた愛犬家連続殺人事件をモチーフに人間の狂気を描く。
俺がそうだよ!俺は誰がいつ死ぬかちゃ〜んと知ってんだ!どこでくたばってもらうかそれを決めるのは俺だ!何言ってるんですか…。
おかしな事なんか何もねえだろ。
うああっ…。
吉田さん!?吉田さん大丈夫ですか?これは「冷たい熱帯魚」ですね。
ええ。
あの「高級映画を目指すな」って書いてあるんですよね。
撮影は10日くらいで…低予算なんですよ。
あれ10日ですか?10日くらいで…。
本当に。
すごいな…。
本当に…ああそうなんですか?周りが思ってるから…「園さん愛犬家殺人事件とか好きでしょ?」って言われて「好きじゃないよ」って。
「そういう僕は変な…趣味はないんだ」って言って「いやいやそう言わずに…」とか言って。
あ〜でもそのころあまり仕事なかったんでじゃあ…で台本書いてるうちに…まあそれなりに書けば乗るんで面白くなりそうだなと思ってやったらあれがすごいバカ受けして…「ああ園子温らしい映画」って言われるようになったけど「違う!」って。
園子温らしくはないって。
でもやっぱり面白かったですよ。
いや〜何だろうな…ああいう時ってものすごいロックスターでめっちゃハードな歌歌ってる人に聞くと…「本当はねものすごいメロディーの美しいやつがやりたいんだけど何かのはずみでこっちになっちゃったんだよ」って。
そういう事ってすごくありますよね〜。
KISSとかも何かそれくさいですよね。
もう疲れ果ててこう火噴いてますけど。
この前も見たらすごい背中が哀愁が漂ってて「うええええ」とかいって血吐いてんだけどもう本当に勘弁してくれっていう吹きだしがついてるような。
何かそれに近いものがあって僕はあれは本当に全然やりたくない企画だったんですけど。
何か自分が…あるって事ですよね。
それは分かりますけど…。
やっぱりそうすると園さんが自分らしい作品っていうのはどういうのですかね?それこそ…毒はいわゆる見た目の血みどろとか残酷性はないんですけどエロスも。
でも自分の中でこれ…ありますけど自分では「ラブ&ピース」って自分の心…なるほど。
カメちゃん聞いてるかい?本当の僕はビッグなんだ。
ロックミュージシャンに憧れるしがない会社員鈴木良一。
話し相手はカメしかいない。
メジャーデビュー。
園子温がこの映画の脚本を書いたのは27歳の時。
まだ何者でもなかった自分の姿が投影されている。
会社では超駄目社員の良一。
そしてある日…。
あっ…。
あっ…あっあ〜!あれ?それカメじゃないの?おいおいおいこれカメだろ!おい!見せろ見せろ。
おいおい!カメを会社に連れてきている事がバレ大騒動に。
ひそかに思いを寄せる寺島裕子だけは笑わずにいてくれるが…。
パニック状態になった良一は大事なカメを捨ててしまう。
幻聴消えろ!いなくなれ!消えろ!いなくなれ!消えろ!
(良一)あっあっあっや…や…ああ〜っ!後悔に打ちひしがれる良一。
あ〜ピカドン〜!気持ち悪いな〜!あ〜ピカドン〜!あ〜許してくれ〜!行っちまえよ〜!行っちまえよ!来るんじゃねえよ!あ〜ピカ〜!一方カメがたどりついたのは不思議な地下の世界。
謎の老人が人々の身勝手な理由で捨てられたおもちゃやペットと暮らしていた。
そこから良一の人生は怒とうの展開を見せる。
ミュージシャンとしての成功。
ひそかな恋心。
良一が思い描いていた夢が一つずつ現実のものとなっていく。
今日は…来てくれてありがとう。
良一の夢は膨らみ続け熱狂の渦が広がっていく。
そして物語は衝撃のクライマックスへ。
でも本当に手作りの特撮っていう感じの懐かしい感じがすごくして…。
今CGばっかりになってますからリアリティーはあるけども何か…かわいらしさとか作った人の愛情みたいのがなかなか出にくくなってますよね。
その辺が何か…昔の特撮ファンなんかみんな大喜びするんじゃないかなと思って見ましたけど。
僕は今の子どもにちょっと見てほしいなと思っててCG慣れした子たちに「何かいつもと違う」って感じで「生身っぽい」っていう…。
何かいろんなわくわく感を与えたいなと思って…。
だから小さい頃見た「ひょっこりひょうたん島」とか「セサミストリート」とかああいう人形劇の盛んだった時代の思い出もやっぱ今回ああいうお人形のシーンなんかに取り入れて…。
ああいうのも本当は普通だったらCGで今やるんですけどあれももうこう…「セサミストリート」的な…やったり電気仕掛けでこっちで眉毛をクッと動かしたりっていう昔ながらの単純なあれでやってますけど。
どうしてもね人間…自分がこういうクリエイティブな仕事にいく前っていうのはどうしてもね本当に低迷期というか準備の期間ってすごくあるしその時の心情はやっぱり自分もよく分かるんでやっぱりその辺の気持ちを残しておきたいっていう感じですかね。
そうですね。
やはり悪くはない台本だと思ったんで…。
27歳ぐらいの時に書いた台本なんですけどこの…今年53歳なんですけどやっとできるなっていうので大喜びして…。
よかったですね。
直しちゃいかんと思って…。
セリフも全然変えないでしゃべってやっておりましたね。
20年前作ったシナリオと今回出来た映像とギャップというかそういうのありますか?それとも思いどおりに…当時イメージしたとおりに撮れましたか?そのころの日本映画ってちまちまして…今も変わらないですけど何か若者のちっちゃい悩みを自分のアパートとコンビニの間でやるようなちょっと小さな世界の映画ばっかみんなやってたんで僕はもっと日本映画にないスケール感のあるエンタメを娯楽映画を撮りたいっていう…それでデビューするんだという思いがすごい強くてでこれを書いてたんで…。
でもさすがにここまでスケールのあるものを撮れると思ってなかったんで…。
でもある種の人にはすごい痛い映画かもしれないなとも思ったんですよね。
何かやっぱりあの…結局そういうところでもがいてる人って山ほどいるしそこから出れなくて苦しんでる人山ほどいますよね。
売れてない頃あんな…。
最初テレビにあざ笑われるシーンが…田原総一朗さんに「アハハハ」とかやられる。
僕ああいうのちょっと神経症で参っちゃった時にそういう感じに…。
「あれ?今テレビの人に笑われてねえか?」っていう…。
被害妄想的なものを…。
情け容赦ない妄想シーン。
園監督自身の経験がもとになっている?幻聴開けろ!鈴木はバカ!鈴木は駄目だ。
駄目!乗り遅れている!バカ駄目!消えろ!駄目駄目駄目!気を付けて歩けよ!すいません…。
街歩いてるやつにも「みんなが何か俺の事絶対嫌ってる」っていうような…。
あれ当時書いた頃はそういうパラノイア的なのがあってそれをそっくりそのまま映画に入れたんですよね。
ちょっとした油断すると「みんなが僕の事を嫌ってる」ってふっと思う事があってそういうネガティブな意識っていうのが実はその表現の裏にあるのかもしれないですね。
そういうのはでも自分も多分あると思うんですけどそういうのがやっぱり作品を作る時の原動力でもあるんじゃないのかなと…。
先生みたいに20代で華々しく売れっ子になるのは僕はなくてずっとうまくいかなかった時期もいつか映画監督で有名になるんだと思って石にかじりついてやってきたらやや最近うまくいくようになったんで才能とか運がたとえなくてもずっとそれに耐えてればいつか来るんだなっていうのが今実感してますね。
僕もちょっと監督のまねごとみたいな事してビデシネですか。
そういうものを撮った事あるんですけども…。
タイトルは何て…?え〜っとねあの〜「極道忍者ドス竜」なんていうねヤクザの中に忍者の末えいが全然…いたみたいなそういううその話を作ったりって…。
びっくりしてね…。
分かります。
そういうのはもうしょっちゅう…。
しょっちゅうですか?本当に驚いてねでも自分の演技指導で自分の思いどおりにやってもらうって事はまずできないなと思ってこれは逆に面白いかなと思って正反対に動いてもらったら作品がどうなるか分かんないけどやってしまえって感じで自由にやってもらったんですけど。
それは本当そういうもんなんですよ。
さっき先生がそれこそ演技指導した女の子たちがシャワーを浴びていたり描いているじゃないですか。
表情一つにしても。
そういうのっていうのは本当うらやましいなと思って。
やっぱり現場は常に常に違うんですねやっぱりそれができないというのもあらかじめ分かってて。
そこが逆に僕なんかは面白いなと思って。
園さんの作品見てどれも思うのはものすごく…塗り絵があったら塗り絵から色がどんどんはみ出していくようなイメージがね作品にあってきちんと収まる絵より逆にそういうはみ出しがすごい個性になってて迫力になってて全然予想つかない展開を見せてくれるんだなってすごくよく分かったんですけど。
やっぱり自由に動いてくれる漫画の方々と違ってみんな生きている方なので本物の人間なので「愛してるよ」っていうのをこっからオーラで出していかないといけないんで疲れちゃいますね。
その辺は漫画とちょっと違います。
それはそれで楽しいような気もする僕なんかは。
そういう意味で不思議なもんですよ。
これまで3本園監督の映画に出演している染谷将太は…。
乗らせるのが上手というか。
「これじゃお客さん泣けないからもう一回」とか感動させられるまでやるという。
「ヒミズ」の時とか二階堂ふみさんに「駄目だそんなんじゃ駄目だ。
もう一回もう一回」って。
「うわっずるいな」と思って。
「面白いじゃんやっちゃおうぜ」みたいなそういう感じだったんですよね。
ホテルの出発10分前に…「セリフ覚えて」って言われて結構長かったんですけど。
でも完璧主義の監督みたいのもいますよね?いやでもキューブリックとかよく完璧主義者っていわれてるけど実にいい加減なんですよ。
僕の大好きな「時計じかけのオレンジ」の衣装も相当考え抜いたんだろうなと思ってたらマルコム・マクダウェルって俳優がたまたま前の衣装前の舞台か映画の衣装を車のトランクに積んでてパカッと開けた時にキューブリックの目に「あこれいいじゃん」みたいな。
そんないい加減な感じで。
そういう何とも映画チックっていうか…例えば「熱帯魚」は低予算で10日間で撮影したんですけどその刹那というか…その瞬間の刹那そのダイナミックさが映画に迫力を与えたんじゃないかなと。
それってまあビートルズのデビューアルバムというのは一日でパパッと一発どりででもそれで世界中を席けんした。
だからなにもすごいもの作ってかどわかすという事が時間かければいいとか丁寧にやればいいって事じゃ…。
違いますね。
確かに漫画もそうですね。
逆にめちゃくちゃ極限状態で寝てねえやみたいな殴り書きみたいな感じで描いた時って意外と感性だけがすごく働いてて右脳というかその辺がワッといっちゃって…頭の左で考えちゃうから感覚がそんなに研ぎ澄まされてない感じしますね。
園は現在3本の映画の製作を同時進行させている。
この日は青春SFコメディー映画の編集を行っていた。
漫画原作のちょっとエッチでとことんバカバカしいストーリーだ。
ほら短すぎる。
かつて園少年を悩ませたモヤモヤ感が満載?服装の乱れは心の乱れ。
おっぱい強調し過ぎ!心の声どの子も私のエロさにかなわんに。
心の声僕は人の心の声が聞こえる!一方園は17年ぶりの自主製作映画「ひそひそ星」に取り組んでいる。
俳優の多くは福島の仮設住宅で暮らす人々。
静ひつなSF映画だという。
質をさっきのあれと同じ…質を考えてじっくりやるより…等身大よりもはるか上のものが生まれると僕は思っててだからどんどんどんどん…そう思ってやってますけど。
多分…「ラブ&ピース」を越えて…じゃあこれからが本番?そうですね。
これからが本番になると思います。
そういうのがなくなったら映画監督なんて辞めた方がいいと思うんですよ。
だから今まだじゃあお前は出来てるかというとまだ見たい映画は出来てないというのがすごくあって…ああ気持ち分かります。
それで十分だから上映も何もいらねえやっていう気持ちになれる時になったら自分も達人と言える時がやっと来るんじゃないかなと思いますね。
まだ見ぬ理想の映画を追い求めなりふり構わず撮り続ける園子温53歳。
少年のように夢中になって真っ白な紙を埋めていく永井豪69歳。
2人が明日どんな世界を生み出すのか目が離せない。
2015/07/11(土) 22:00〜23:00
NHKEテレ1大阪
SWITCHインタビュー 達人達(たち)「園子温×永井豪」[字]

今最も多忙な映画監督・園子温が「子ども時代の自分を救ってくれた」とリスペクトする漫画家・永井豪と大興奮トーク!ヌードの秘密、名作・問題作の舞台裏まで赤裸々に!

詳細情報
番組内容
「デビルマン」「マジンガーZ」「ハレンチ学園」、貴重なカラー原画を目にした園は「このコマ覚えてる!」「カット割りがヌーベルバーグのよう」と大興奮。永井には映像が「見え」ており、それを漫画のコマに落とし込んでいくという。今年4本、来年6本の映画公開を控える超売れっ子の園は、人間の狂気を描いた出世作「冷たい熱帯魚」を「全然やりたくなかった」など衝撃告白。過激な作風とは裏腹な二人のキュートさに胸キュン!
出演者
【出演】映画監督…園子温,漫画家…永井豪,【語り】吉田羊,六角精児

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – インタビュー・討論
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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