法医学教室の事件ファイル 2015.07.11


(カメラのシャッター音)
(荒い息遣い)
(井筒直人)うわあー!!
(井筒)ああ…痛…。
(女性)大丈夫ですか?誰かに押されて…。

(根岸由香里)直人!
(由香里)直人…大丈夫なの?怪我したって…。
どうしたの?何か私に…。
これ…。
メールも来てる。
(井筒)「由香里は俺の女だ手を出すな」って…。
嘘よこんなの。
信じて。
私何も…!信じたい!でも…会うのやめようしばらく。
怖いんだ。
奴のやり方だんだんエスカレートしてってるしこの怪我も…。
私のせいなのね…。
ごめん。

(二宮一馬)七海叔母さんの様子が変?
(二宮早紀)そうなのよ。
叔母様言ってたでしょ?またお嫁さんとケンカして家出てきたって。
うん。
それがねその小田原のお嫁さんとしてるの…仲良く長電話。
えっ…?あでも仲が戻ったんならいいじゃないか。
よかったよかった。
そうじゃないのよ。
叔母様が言うにはね私たち夫婦が夫婦ゲンカをしててで叔母様はその仲裁のためにここに来たって。
まだ夫婦仲がしっくりいってないからしばらくはここにいるって。
え…では俺とお前がケンカ?そうよ〜。
(二宮愛介)あれじゃないの?うん?命が短いから気合が入っちゃって。
バカ!もう言うに事欠いて命が短いなんて。
縁起でもない。
だっていつも…!
(七海)「いのち短し」ほら自分で言ってんじゃん。

(七海)「恋せよ乙女〜」「紅き唇〜」「あせぬ間に〜」「熱き血潮の冷えぬ間に〜」「明日の月日はないものを〜」ああ『ゴンドラの唄』…!?ハハ…さすが叔母さんうまいね。
小田原のカラオケ大会で準優勝しただけあるよハハハ…。
グッドモーニング〜!グ〜…。
あ皆さんおはよう。
(2人)おはよう…。
ねぇ叔母様叔母様。
叔母様ひょっとして恋をしていらっしゃるんじゃありませんか!?え…?いやだ愛介。
う〜ん話したのね〜?ハハ…やだやだやだアハハ。
ああ〜赤くなっちゃう〜。
ねすごいでしょ?気持ちは女子高生だから。
恋ってそういうもんなのよ〜。
それに歳くってたって叔母様一応未亡人だからね。
(咳払い)あっ…ああねぇ叔母様の好きになった人ってどんな人なんですか?教えて教えて教えて〜。
ねぇねぇねぇ何してる人?何してる人?ん?いくつ?いくついくつ〜?ウフフ…。
25。
うああー!!えーっ!?
(愛介)痛い痛い…。
と…年下…!?足のサイズ。
ああ…。
何だ足足…。
足だハハハ…。
もう〜。
でもイケメンなんですか?イケメン?イケメン?うーん聞きたい?聞きたーい!もう聞きたい!
(携帯電話)
(七海)どうしようかな〜。
俺だ。
(七海)言うのやめようかな〜!静かに!
(舌打ち)ああ…。
殺し…?すぐ行く。
行くぞ。
はい。
叔母様ごめんなさい。
えぇ〜!?うーん…いっつもこうなんだもーん。
あんっ!
(パトカーのサイレン)
(小池勇樹)ストーカー…!?
(内藤辰比古)聞いてないのかね?私は2日前にあの子と2人で横浜東署に被害届を出しに行ったんだよ。
(有田光志)いやぁ参ったな。
ストーカー被害は生活安全課の仕事で…。
そんな事を言ってるからあの子は殺されたんだ!あの子は「警察は当てにならないから自分でそのストーカーを捜す」と言って…。
(井筒)先生!内藤先生!
(内藤)直人…。
さっきの電話本当ですか!?ああ…殺されたんだ。
お前を襲いあの子をずっとつけ回していたストーカーにな。
殺された…?
(園田巡査)ご苦労様です。
(未奈)先生。
(大石貴一)主任!
(大石)被害者は根岸由香里さん29歳。
保土ヶ谷の介護センターに勤めるヘルパーです。
あの犬を連れてる人は?
(大石)第一発見者で110番通報してくれた内藤さんという方です。
内藤さんは被害者の中学時代の恩師らしく近所に住んでいて犬の散歩の途中で立ち寄り遺体を発見したと。
(岩本刑事)主任!
(岩本)鑑識さん終わりました。
頼む。
はい。
ニンニク臭がするわ。
ヒ素を飲まされたのかしら?縛って無理やりヒ素を…?うん?どうした?いや…死後硬直の度合いが違うのよ。
上半身と下半身で。
死後硬直の度合いが違うって…。
どういう事かしら…?無理やり飲まされたにしては衣服に染みもなかったし口の周りや顎にも圧迫痕や抵抗した跡がない。
粘着テープで縛られた圧迫痕は蒼白だし…。
桑田君念のため生活反応があるかどうか組織を取って調べてもらって。
(桑田)わかりました。
じゃ始めます。
黙祷。
始めます。
280グラム。
肺にかなり強い浮腫…。
分析してみないとわからないけどたぶん有機系のヒ素と見ていいわね。
脅迫のメールがひと月ぐらい前から?
(井筒)ええ…。
「由香里と別れろ。
さもないととんでもない事になるぞ」とメールが来るようになりそして写真が…。
これは…!?
(井筒)削除したかった。
でも犯人に繋がるかと思ってとっておいたんです。
由香里はこんな写真写させるような事はしない。
その写真とメールをお借りしても…?お預かりします。
その他にはどんな事が?ケーキの大量注文のイタズラ電話があったり歩道橋で誰かに突き飛ばされて怪我を…。
由香里は僕の心の支えだった…。
新しいケーキを作ると必ず試食してくれて…。
(井筒)「ユカリ・アムール」って名前付けたんだ。
どうかな?美味しい!すっごく美味しい!アハ…よかった!
(芝山刑事)ダメですね。
(三浦刑事)写真の背景に場所を特定出来るようなものはありません。
主任!この携帯に送られてきた写真とメールは関内のネットカフェから送信されたものでした。
ネットカフェか…。
誰が送ったか特定出来ないな。
はい残念ながら。
で根岸由香里さんは半年ほど前からストーカー被害に遭っていたようです。
友人の話だと干してあった下着が盗まれたりしょっちゅう誰かからカメラで盗撮されているような気がしていたと。
(有田)深夜の電話などは「今着ているピンク色のパジャマはきれいだね」とどこからかのぞかれてるようで由香里さんは怯えていたそうです。
(携帯電話)俺だ。
(大石)主任におう人間がいます。
元木不二子という女性でその女性は以前井筒直人さんの店のスポンサーをしていて根岸由香里さんに井筒さんと別れろと…。
(大石)「しつこく迫っていたそうです」で井筒直人は?「かなり怒っていたそうで…」それで根岸由香里さんも協力してお金をかき集め…。
「元木不二子の出資した分を叩き返したという話です」その事を根に持って…。
元木不二子の家は資産家で人を雇って嫌がらせをする事も出来るしそういう事をやりかねない女性だと。
(美佐)それだけ彼女直人君にゾッコンなんです。
よし。
その元木不二子という女性を当たってくれ。
(元木不二子)自業自得なんじゃないの?あの由香里って子かわいい顔してるけど結構裏じゃ何やってるかわからないって感じだったし。
ああ…どこかで男引っかけて逆恨みでもされたんじゃないの?
(大石)つかぬ事をお訊きしますがあなたは昨日の夜10時から12時の間はどちらに?アリバイ?はぁ…ちょっと待ってよ。
私疑われてるの?私を誰だと思ってるのよ。
元木の娘よ。
県警の本部長も知ってるし市長にだって顔が利くのよ。
あなたを飛ばすくらい…。
まあまあ…。
これが私たちの仕事ですから。
家にいたわ。
パパとママはこの半年ずっとパリだし証明する人間はいないわ。
どう?面白いから手錠をかけてみる?クビになってもいいっていう覚悟があればの話だけどハハ…。
生活反応がない…?ええ。
粘着テープで縛られていた手首や足首の圧迫痕には生活反応がなかったの。
ちょっと待てよお前。
どういう事だ?それ。
つまり死んでから粘着テープで縛られたって事。
そんなバカな…。
なんで死んだ人間を縛ったり…?考えられるのは1つよ。
偽装…。
偽装…?という事は誰かが他殺に見せ…。
(大石)第一発見者で110番通報してくれた内藤さんという方です。
まさか…あの内藤という元教師が…?ありえない事じゃないと思うの。
「ストーカーを捕まえろ。
奴が犯人だ」ってしつこく有田さんたちにそう言ってたそうね?うん…。
だがな死因と思われる有機系ヒ素もその飲ませたコップも現場には…。
なかった。
だからそれも偽装の一環として持ち去ったのよ。
まあ確かにそれも考えられない事じゃない。
だがなあの現場の状況は明らかに他殺なんだよ。
でも生活反応がなかった事は動かしがたい事実よ。
わかった。
その線をもう少し明確に法医学的に立証してくれ。
な?頼むぞ。
OK。
じゃ左肩。
(未奈)はい。
やっぱり関節が外れてるわ。
(桑田)ホントだ…。
(永岡)はあ?どういう事なんですか?これ。
遺体のこんな所の関節が外れるって。
先生言ってましたよね?上半身と下半身の死後硬直度合いが違うって。
それと関係が…?大ありだわ。
おそらく根岸由香里さんは死後マッサージを受けたんだと思う。
し…死体にマッサージ?失礼します。
横浜東署の二宮です。
ちょっといいですか?犯人が捕まったんですか?由香里を追いかけ回していたストーカーが。
いえ。
その事で監察医から少しあなたにお訊きしたい事があるというので。
初めまして二宮です。
ロダンだけじゃなくて先生もお茶になさったら?叔母様…!?あ…え…?いやだ何よなんであなたたちまでここに…。
(七海)もしかして邪魔しに…。
あそうか…。
先生の教え子が亡くなった事件って一馬…あなたの署が担当なのね?ん…?ううんそうだけど…。
叔母さんこそどうしてここに?内藤先生はねうちのご贔屓さんなのよ。
亡くなられた奥様がうちの蒲鉾が大好きでね。
先生あのこれ…うちの甥です。
甥とその嫁。
ああそうですか。
男の一人所帯なもんで七海さんにはいつもお世話になってます。
まどうぞお上がりください。
あじゃあのお茶を…。
叔母さん!
(咳払い)悪いけどこれ事件に関する話なんだ。
ね?席を外して。
いいね?そうなの?そうなの。
う〜んじゃわかった…。
すいません…。
お邪魔虫だってさ〜。
つまんないねロダン。
で何でしょう?私に訊きたい事って。
はい。
根岸由香里さんの遺体は本当に最初から粘着テープで縛られていたのでしょうか?どういう意味ですか?それは。
私が何かしたとでも?由香里さんのご遺体の手首と足首の粘着テープを巻かれた圧迫痕には生活反応がありませんでした。
つまり亡くなった後で粘着テープを巻かれたという事です。
それに上半身と下半身で死後硬直の度合いが違いました。
おそらく誰かがマッサージをして死後硬直を和らげたと思われます。
そして硬直のゆるんだ彼女の手を無理やり後ろに回して粘着テープで縛りつけた。
そのために彼女の肩の関節は外れていました。
何のためにです?なぜそんな事を?自殺を他殺に見せかけるため…。
私を疑ってるんですか!?冗談じゃない。
私は何も知らない。
由香里は殺されたんだ。
こんな事をしてる暇があったら由香里を追い詰めたストーカーを捜したらどうなんですか?お願いです先生。
本当の事を言ってください。
明らかに由香里さんのご遺体は死んだ後で縛られたと言ってるんです。
それが由香里さんからのメッセージなんです。
彼女の最後の声なんです。
最後の声…?はい。
じゃあんたは卑劣なストーカーに悩まされて深く傷ついた由香里のここにあった最後の声を聞いたって言うのか!それは…。
あんたの聞いたのは由香里の声じゃない。
あの子の心の声は聞いちゃいない。
あくまで否定なさると我々としては法にのっとって…。
もういいから帰ってくれ。
あどうしたんですか?先生。
何か言い争って…。
七海さん。
(電話をかける音)あなたの甥御さんとはどうも話が合わないようだ。
帰ってもらってください。
ああ俺だ。
始めてくれ。
ちょっとあなた…。
ちょっとそんな…。
叔母様の前でそんな事…。
裁判所の家宅捜索の令状です。
根岸由香里さんに対する死体損壊の容疑で家宅捜査をさせてもらいます。
おいちょっと待て!何を言ってるんだ。
遺体を粘着テープで縛っただけで死体損壊になるんです。
(刑事たち)失礼します!おいちょっと待て!ここは私の家だ。
そんな勝手な事はさせない!内藤さん!これ以上抵抗すると公務執行妨害になります。
我々は由香里さんの亡くなられた真相を知りたいだけなんです。
だから由香里はストーカーに殺されたんだ。
殺されたんだよ!連れていけ。
はい。
さあ。
一馬…。
叔母さんも外へ!え…?早紀頼む。
さあ叔母様。
(ため息)いいか?かかってくれ。
主任!根岸由香里さんの日記じゃないですかねこれ。

(由香里の声)「なぜなぜストーカーは私を苦しめるの?」「直人にまで手を出して」「私は死んで…直人に謝るしかない」「ごめんなさい直人。
ごめんなさい」何だ?これは。
破られてる…。
(大石)変ですね。
しかも乱暴に。
鑑識に回してくれ。
はい。
(有田)主任!これはヒ素の瓶とコップ…。
自殺に使われたと思われるヒ素が発見されました。
署の方で話を聞かせてもらいます。
これが警察のやり方か!?肝心のストーカーを見つけもせずにそれでも血の通った人間か!お気持ちはわかります。
だが遺体に細工するのは人間として許されん!ふざけるな…バカ野郎!
(大石)おい!
(内藤)俺は行かんぞ!警察に話す事などない!公務執行妨害です。
逮捕します。
連行しろ。
あなた…!先生…。
(大石)来るんだ。
(七海)一馬…!
(井筒)先生!これ約束のケーキ!どういう事なんですか?先生。
根岸由香里さんは自殺の可能性があります。
え…でも殺人だって…。
内藤さんが自殺を他殺に見せかけた。
由香里は殺されたも同じだ。
敵を討ちたかった。
…先生!ありがとうございます。
由香里に代わってお礼を言います。
ストーカーは僕が…僕が必ず見つけます!先生!
(パトカーのサイレン)直人…。
宗雄…?
(大石)日記から破られていたのは2ページでその破られた次のページに残っていた筆圧による字のくぼみをこれから読み取ります。

(由香里の声)「これは最後の賭けよ」「この賭けに勝ちたい」…。
(有田)どういう意味っすかね?これ。
ストーカーをやっぱり見つけたんですかね?それで対決した。
あっそれじゃ殺人になるのか。
(内藤)ごめんな由香里。
あんなひどい事して…。
本当に申し訳ない。
こうするしかないんだ…。
お前を追い詰めたストーカーを…見つけ出すためには…こうするしかないんだ。

(大石)根岸由香里さんの日記を破ったのはあなたですね?
(内藤)日記…?何の事だ?日記に自殺をほのめかすような事が書いてあった。
だからそのページを破った。
違いますか?知らん。
私は何も知らない。
それよりストーカーはどうなってるんだ?捕まえてくれたんですか?…やっぱりな。
由香里と一緒にストーカー被害を訴えに行った時もそうだった。
じゃあここに被害届出して。
多いんですよね勘違いというのが。
ホントにストーカーされてるの?
(内藤の声)まるで由香里の思い過ごしじゃないかと言わんばかりの態度だった。
事件にでもならなければ動かないっていう感じが見え見えで…。
だから私はな私は…。
根岸由香里さんが最後に賭けに出るとしたらそれはどんな賭けだと?何の話だ?それは。
どういう意味ですか?いえ。
ご存じなければいいんです。
叔母様。
スープだけでも召し上がってください。
体に障りますよ。
ありがとう。
でもいいの。
何にも食べたくない。
ああ…大丈夫ですよ。
警察だって内藤先生がやむにやまれずそうしたって事は十分わかってるはずですから。
だったらいいんだけど…。
ねぇあなたからも言ってよ。
先生は由香里さんの事自分の娘のように思ってたって。
ええもちろん。
それに由香里さんもね先生の事を慕っていたの。
亡くなられた奥様の介護も自分の母親のように親身になってやってくださったんですって。
あ…それだけじゃないわ。
先生は由香里さんにずっと負い目を感じていたの。
負い目…?由香里さんが最初に自殺未遂した時中学校の担任の先生だったそうで。
あ…親からの虐待が原因らしいの。
まあ…。
その事に気づいてやれなかった自分は教育者として失格だって。
由香里さんにすまないって…。
そんな事が…。
社会人になってからの自殺未遂の時も先生が紹介してくださった勤め先でセクハラを受けて…。
紹介してくださった先生の優しい気持ちとの板ばさみになって…。
それで自殺を図った…。
まあかわいそうに。
そんな傷つきやすい子に何度もつらい事が…。
(ドアの開く音)あっ…。
あお帰りなさい。
ああ。
(咳払い)内藤辰比古は容疑を認めた。
今日は帰れないが明日には帰れるだろう。
不起訴になるか在宅起訴になるかは検事の判断だ。
捕まえたの?ストーカー。
うーん?いや捜査は続けるよ。
納得出来ない事があるんだ…。
納得出来ない事って何よ!?捕まえなさいよ!ストーカー。
叔母様あとは私が。
はぁ…。
ねぇ納得出来ない事って何?うん…?ああまあちょっとな…。
えぇ?法医学的な事?え…違うよ。
気にするな。
でもさストーカーは捕まえてくれるんでしょ?絶対。
あ…ああ…。
だがな被害者の根岸由香里さんが自殺したんだ。
確証が取れない。
ストーカー規制法で立件するにも難しいだろうな。
ちょっと待ってよ。
うん?私が法医学で由香里さんの自殺を証明した事が由香里さんを自殺にまで追い込んだストーカーを野放しにする事になるわけ?そんなむなしい事になるの?誰も野放しにするなんて言ってないだろ。
出来る限りの事はする!出来る限り…?うん。
あれ…?出来る限りって何…?なんで絶対捕まえるって言えないの!?もう警察がそんなふうだから内藤先生は自殺を他殺に見せかけてまでストーカーを捕まえようって思ったんじゃない。
ああもう…。
私今内藤先生の気持ちすっごいよくわかる。
ああもういい。
それ以上言うな。
お前の仕事は終わったんだよ。
お前は法医学者として真実を解明した。
もうそれで十分だ。
終わってないでしょ!法医学者として終わったって人間として女として…!私は由香里さんの本当の心の声聞いたんだから。
おい…おーい。
あ?お前また余計な事しようと思ってないか?ああ〜フン…するかもねぇ。
警察がそういう態度だったら。
ん…!?早紀!ストーカーは絶対に捕まえるの!いい?捕まえるのよ!お前の指図は受けん!腹減ったな…。
おいメシ。
腹減っちゃった。
自分でチンしてよ!ちゃんと支度してあるから。
え…?メシメシメシメシってメシオヤジ!うるさーい!ああーもうホントに頼りにならないんだから警察は。
うん!はぁ…。
ホントに…ああ…。
(ため息)
(ため息)「これは最後の賭けよ。
この賭けに勝ちたい」…。
何か…何か隠されてる。
先生…。
あ…どうもご心配をおかけしました。
いいえ…。
私先生がなさった事は決して悪い事だとは…。
私にはもう近づかない方がいい。
失礼します。
先生…。
(電話をかける音)
(呼び出し音)
(石山宗雄の声)「石山です。
ただ今留守にしてます」「メッセージをお願いします」
(発信音)宗雄…内藤だ。
お前にどうしても訊きたい事がある。
電話をくれ。

(七海)怖いの…。
内藤先生何考えてらっしゃるかわからなくて…。
まさかストーカー見つけ出して復讐なんて…。
私からうちの人に伝えておきます。
内藤先生の事を気にかけてくれるように。
でも…心配する資格ないのよね。
何だか私…失恋しちゃったみたいで。
叔母様…。
でもねホント…内藤先生に会って変わったのよね私。
いろんなお話出来たし人生ってこんなに楽しいんだって。
大丈夫ですよ。
事件が解決したら…ストーカーが捕まったら先生またきっと叔母様と会ってくださいますよ。
きっと…。
そうなってほしいけど…。
(ため息)
(石山)うわあー!
(石山)うああっ!!
(自転車の止まる音)誰だ!?そこにいるのは。
(内藤)違う…!私じゃ…。
(園田)お前…!?私が殺したんじゃない。
私じゃない!動くな!待て!
(園田)止まれ!
(園田)おとなしくしろ!俺じゃない…俺じゃないんだ!俺じゃないよ…。
(パトカーのサイレン)
(園田)いやぁびっくりしました。
通りかかったら表に犬が繋がれてたんでおやっと思ったんです。
でもやっぱりあれですか…。
この間亡くなった根岸由香里さん絡みで…?ああいえいえ…その自分あの女性のアパートの近くに住んでるんです。
それに巡回連絡の時にも何度か顔を合わせていますし。
(岩本)主任!殺されたのは根岸由香里と同じ内藤辰比古の教え子だ。
内藤先生の…?ああ。
内藤辰比古は園田巡査に殺人の現行犯で緊急逮捕された。
ええっ!?逮捕時かなり抵抗されたそうだ。
あ…そんな…。
(咳払い)まあ余計な感情を入れずに検視を頼む。
ええ…。
あれ…?衣服が濡れてるわね。
揉み合った時にそこの水槽にでも落ちたんですかね。
胸部の創長1.9センチ。
創洞…。
およそ3センチから4センチ。
心臓まで達している可能性があるわね。
何かしら?この傷。
皮膚表層が欠けて炭化している。
電流痕…?
(桑田)なんで電流痕が…?そういえば濡れてたわ…。
桑田君あの廃工場で調べてほしい事があるの。
大至急行ってきて。
(桑田)は…はい。
(大石)石山宗雄はあなたの教え子で自殺した根岸由香里さんとも中学で同級だった。
それだけじゃない。
石山宗雄は卒業してからもずっと根岸由香里さんに思いを寄せていた。
(石山)なあ由香里。
直人なんかと付き合うのやめて俺と付き合えよ。
この間電気工事の仕事をしてたと思ったら今度はセールスマン。
もうしょっちゅう仕事変えるんだから。
そういう人はお断り。
この野郎言ったな〜。
覚えてろよ。
お前の事とことんストーカーしてやる〜。
きゃあ〜怖い。
直人〜。
(井筒)やくなよお前は。
(有田)黙ってちゃわからないだろう。
(有田)「石山宗雄が根岸由香里さんのストーカーだったんだな?」
(石山)先生…俺…俺じゃない…。
ストーカーは…由香里をつけ回してたのは…。

(内藤)宗雄…!宗雄じゃない。
あいつはストーカーじゃない。
何言ってるんだ!石山宗雄がストーカーだと思ったから奴のアパートの前で待ち伏せしたんだろ?目撃者だっているんだ。
確かに私はアパートの前で宗雄の帰りを待っていた…。
(内藤)宗雄!
(石山)先生…!?待て!お前なのか…?お前が由香里のストーカーか?違う…俺じゃない。
信じてくれ俺じゃない…!
(内藤)待て!じゃなぜ逃げるんだ?
(ロダンの吠える声)
(内藤)俺の目を見て話せ!俺じゃない…!放せよ。
宗雄!
(石山)放せって…!ああっ…!ああ…。
ごめん先生。
でも今は話せないんだ。
ごめん!
(吠える声)待て宗雄!
(吠える声)ロダンこのにおいだ。
追ってくれ!そしてあの廃工場へ行った時すでに宗雄は誰かに刺されていた。
(有田)いやあんたはあの廃工場に隠れている石山宗雄を見つけ揉み合い石山宗雄のナイフを奪い刺したんだ。
(刺す音)
(石山)ああ…!違う。
私じゃない。
じゃあ石山宗雄の爪の間に挟まっていたあんたの肉片はどう説明するんだ!?これはアパートの前で宗雄と揉み合った時に…。
(有田)じゃあなんで逃げたんだ?
(内藤の声)逃げたのはもう誰にも頼らないと決めたからだ。
私は2人のかわいい教え子の命を奪った人間を許さない…!《石山宗雄殺しもあの日記と何か関係があるのか…?》
(携帯電話)どうした?聞いたわ内藤先生は犯行を否認してるって。
でも疑いは晴れないんでしょ?だから私が法医学的に先生の無実を証明するわ。
内藤辰比古の無実を…?ええ。
明日みんなを集めて。
あの事件現場に。
じゃあ。

(桑田)先生出来ました!OK。
じゃあ始めるわよ。
被害者石山宗雄が濡れていたという事は揉み合ってでこの水槽に落とされたっていう事よね?はい。
じゃ実験君!
(永岡)はい。
あなたが石山宗雄。
そして桑田君あなたは内藤辰比古。
はいやってみて。
(桑田)はい。
(桑田)こいつー!この野郎!ああー!はいOK。
で凶器となったナイフは石山宗雄のものだったのよね?それは確認が取れてます。
そのナイフをすでに持っていたのかあるいは水槽に落ちてから出したのかはわからないけれどいずれにしろ内藤辰比古は何らかの形でそのナイフを奪い取り…刺した。
ああー!
(安東篤)おおいいじゃないですか。
これのどこがおかしいんです?どこをとっても内藤辰比古の無実を証明する証拠には…。
ならないわよね?でも石山宗雄の遺体には手のひらに電流痕があったの。
電流痕…?そう。
電流の出ていった跡よ…。
未奈ちゃん。
(未奈)はい。
もちろん本当に電流を流すわけにはいかないから格好だけよ。
そしてこの豆電球も感電しないように水の中で使えるものを使ってる。
まず犯人は石山宗雄を突き飛ばした。
ああー!するとこの水の中に流れていた電流によって…。
パチッ…。
ああー!ビビビビビ…。
でも電流が弱かったのか石山宗雄が電流のショックに強かったのかはわからないけれどこの感電は死には至らず石山宗雄は手のひらに電流痕を残し気絶した。
石山宗雄の電流痕と同じ形よ。
(村中葉子)鑑識の報告書によると確かにその縁から石山宗雄の肉片が発見されてるわね。
ええ。
犯人はこれで彼が死んだと思い電源を切り様子を見にまた戻ってきた。
すると死んでいなかった石山がよろよろと起き上がりナイフを使って反撃し犯人はそのナイフを奪い彼の胸を刺した。
うああー!バカバカしい。
さっきと同じじゃないですか。
電流痕はどう関係するのよ?鑑識さんが検出した内藤辰比古の足跡はこの黄色よ。
それを図面にしたのがこれよ。
この黄色が内藤辰比古。
そしてこの青が石山宗雄。
そしてもう1人の誰かの足跡がこの赤。
これは何度か配電盤を往復してる。
内藤辰比古は配電盤の所には行っていない…。
じゃあ内藤辰比古は犯人じゃない。
犯人は電流を流しスイッチを切った人間…。
そういう事。
納得した?決まったな。
よし捜査を見直すぞ!
(一同)はい!何で私がここに…?何かあったんですか?事件の進展が…。
根岸由香里さんのアパートの大家さんが思い出してくれたんだ。
必要以上に彼女の事をいろいろ訊いてきた巡査がいたとな。
それだけじゃない。
君の出したゴミの中からおびただしい数の処分された根岸由香里さんの写真が発見された。
いけませんか?警察官が人を好きになっては。
それに…妙な事で疑いがかかると思って写真は処分したんです。
誰に好意を持とうとそれは自由だ。
だがな…警察官の立場を利用して女性の身辺を探る!卑劣な行為だ!すいません。
本当にお前じゃないのか?ストーカーは。
それを石山宗雄に気付かれ殺した。
違います!俺はそんな事してません!信じてください!嘘をつけ!昨日あの廃工場に行ったのは偶然ではなかった。
偶然です…!本当にパトロール中に通りかかっただけなんですよ!信じてください!本当なんです!
(園田)お願いします信じてくださいよ…!はいっ…。
よしはいお座り。
内藤先生!あああんたか。
あんたが私の身の潔白を証明してくれたらしいな。
えぇ…。
石山さんのご遺体がそう教えてくれたんです。
私は法医学者として当然の事をしただけですわ。
だが礼は言いたくない。
確かにあんたは由香里の死を自殺と見破った。
あんたのそこに付いてる目は法医学者という科学者の目だ。
人間の本当の悲しみを感じ取る目ではない。
そういう人間に礼は言いたくない。
先生ちょっと待ってください!私にはやる事があるんだ。
え?まさか犯人を捜しに…!?ちょっ…先生!座れ…待て。
さぁロダンこのにおいだ。
これは宗雄が渡してくれたもんだ。
犯人のシャツの切れ端に違いない。
さよ〜くにおいを嗅ぐんだ。
犯人がどこに逃げたか教えてくれ。
(ロダンの吠える声)待ってください内藤先生!それ…!邪魔しないで欲しいんだ。
犯人の遺留品ですよね!?ダメですよ警察に渡さなくちゃ!やめてください。
自分で犯人を捜し出して復讐しようなんて!においというのはなこうしてる間にも刻々と消えていくんだ!あんたと話してる暇はない!警察を呼んだらこの切れ端を燃やすぞ!私は警察を信用していない。
由香里宗雄…2人の敵を討つのは私の仕事だ!あ…もう!犯人はここに車を停めていたようだな。
お願いです先生。
ここから先は警察に…。
今警察でどういう人間の名前が容疑者として挙がっているのかあんた知らないか?それは私には…。
知っていたとしても言うわけはないか…。
役に立たんな。
さ来い。
あっ…!どうしたんですか?その手。
何でもない。
あんたには関係のない事だ。
ちょっと待ってください内藤先生…。
(携帯電話)どうした?…何?犯人の遺留品?詳しく話してる暇はないの!とにかく犯人はあの廃工場の裏に車を停めていた。
だからそこ調べて!待て!それでその遺留品は?内藤先生が持ってるわ。
それをロダンにかがせた…。
あ!じゃあね!あのバカ…!
(ロダンの吠える声)ああ…あ〜困っちゃったわねぇあなたの飼い主さん。
頑固な連れ合いを持つと苦労するわよねお互い。
(吠える声)容疑者?ああそうだ。
おまえ具体的に名前を出されて警察で訊かれなかったか?こういう人間を知らないかとか。
その中に由香里をストーカーして宗雄を殺した人間がいるかもしれない。
えぇ訊かれました。
園田という由香里のアパートの近くに住むお巡りさんとあともう1人。
教えてくれ!警察が今マークしてる人間のところへ行ってこいつをロダンにかがせる。
それは?宗雄を殺した犯人の遺留品だ。
これを使って私は犯人を突き止める。
じゃあ僕も!あ…。
ダメだ。
これお客さんからの注文なんです。
すぐに仕上げないと。
いいんだよ。
お前は心配しなくていい。
私が1人でやるから。
とにかくそいつの名前を教えてくれ!じゃあ。
金魚のフンみたいについて来る。
警察の回し者みたいな人だ。
すいませんお願い出来ますか?先生が何か無茶な事をしそうになったら必ず止めてください!絶対止めますから!
(携帯電話)
(内藤)あいつが園田か…。
私を逮捕した巡査だ。
ロダン頼むぞ。
何だよ?この男か?ロダン。
いい加減にしてくれ。
あんたらまで俺の事を疑ってるのか!?ふざけんな!ダメだったみたいですね。
やっぱりムリですわこんな事。
早くこのシャツの切れ端を警察に…。
あきらめるのはまだ早い。
もう1人いる。
来い。
ロダン頼むぞ…はい。
(唸り声)
(吠える声)何よこの犬!
(ロダンの吠える声)
(内藤)よし…よしロダン。
よしわかったいいぞ。
待て…待て!あんただな?あんたが根岸由香里をストーカー騒ぎで追い詰めあの廃工場で石山宗雄を殺した!何の話よ!?警察呼ぶわよ!警察なんかいらない。
いいから来い!な…何ですか!?何なのよ…!内藤先生暴力は…!県警の本部長に電話する!覚えとくのね。
なぜ邪魔するんですか!?においで突き止めたロダンのお手柄私も認めます。
だからこの事を警察に。
私も証言しますから!直人さんも心配してました。
亡くなった由香里さんも石山宗雄さんだって同じように心配してると思います。
先生に無茶をして欲しくないって。
バカ野郎!なんで俺に連絡しなかったんだ!?いやだからそれは…。
私が警察を呼んだらこの切れ端を燃やすと脅したんだ。
もういい。
犯人はわかったからこれはそっちに。
鑑識に回すんだ。
はい!ねぇ…元木不二子徹底的に調べてくれるんでしょ!?ロダンは彼女が犯人だって!彼女はシロなんですよ。
アリバイがある。
アリバイ…?それ本当のアリバイなんですか?彼女資産家の娘だそうだからお金で人を雇って…。
(葉子)その線も調べたんでしょ?二宮警部。
でも彼女と被害者を結び付けるものは何もなかった。
手ぬるいんじゃないですか?彼女は本部長の知り合いだと息巻いてた!まさかその圧力に屈して…!早紀お前いい加減にしろ!ちょ…ちょっと待ってください。
ロダンは確かにあのシャツの切れ端のにおいをあの女からすると言った!そうよ!ロダンは元警察犬なのよ!そのロダンがそう言ったの!だからって…二宮さんお2人の素人捜査を野放しにしておくつもりはないのよ。
素人ってそん…!いいから!2人とも来てくれ。
(大石)準備出来ました。
ロダンには臭気判別をやってもらう。
は…?先生このガーゼ2枚に先生のにおいを付けてください。
私の?であそこに1番から5番までの番号があります。
何番に先生のにおいの付いたこのガーゼを置けばいいですか?声にしないで数字を。
(大石)ロダンこのにおいだ。
ロダン行け!《2番よ…2番ロダン頑張って!》やった!ああやった…やった。
わぁ偉かったねぇロダン。
本当に偉かった!ねぇ。
(内藤)時間のムダですよ。
ロダンの臭気判別に問題はありません。
いやまだです。
0回答出来るかどうかもう一度やってもらいます。
0回答!?何なの?それ。
0回答って。
0回答とは1番から5番まで同じにおいのものを置いてなかった場合ここには同じにおいのものはないと何もくわえずに帰ってくる事だ。
ロダンにそれが出来るかどうか。
そんなの簡単よ!ねぇ〜ロダン信じてるからね。
頼むぞロダン。
(大石)じゃあ始めます。
ロダンおいで。
さぁおいで。
さぁおいで…はい…はい。
このにおい…はい。
《そうよ…それでいいのよロダン》《そこに答えはないの。
だから持ってきちゃダメよ》やはりな…。
ロダンが警察犬を引退したのはもちろん年齢のせいもあるが人間の期待に応えようとするあまり0回答が出来なくなったからだ。
あなたは元木不二子さんにあのシャツの切れ端と同じにおいを感じて欲しいと期待した。
ロダンはそれに応えただけです。
私の負けだ。
ロダン…さぁ行こう。
そんな…ロダンは確かに…!あきらめさせろ!捜査というものは素人の関わるものじゃない。
お前もな!警察犬は鑑識課の備品扱いなんです。
備品…?だから亡くなっても葬式をあげる事は義務付けられていない。
使えなくなった不要の備品として処分されるだけなんです。
そんな…!命があるのに。
子どもを作る事も許されず人間の捜査のために力を貸してきたのに最後はその結末だ…。
ロダンが引退して引き取り手がなくて私が貰い受けてうちに来た時によほど疲れていたんだろうね。
それは毎日毎日寝ていた。
ロダン…お前は私と同じだな。
おいぼれだ。
2人の教え子の命が奪われたっていうのに私は何も出来なかった。
もうこの世の中にはいらないのかもしれないな…。
お前も私も。
そんな事…!私は教師としても失格。
人間としても自分が情けないです。
老兵は消えゆくのみです。
私あきらめません!このまま犯人が見つからなかったら悔しいじゃありませんか!悲しいじゃありませんか!内藤先生…!
(ため息)
(犬の鳴き声)
(犬の鳴き声)はい…はいはいはい…。
(犬のおもちゃを鳴らす音)は〜いはいどうぞ〜。
すいませんありがとうございました!はいおいで。
(犬の鳴き声)
(犬の鳴き声)
(犬の鳴き声)ロダンは本当に内藤先生の気持ちを汲んで媚びただけなのかしら…?じゃあなぜ園田巡査には何の反応も示さなかったのに元木不二子にはあんなに吠えたのかしら?何よこの犬!根岸由香里さんはストーカーに全裸の写真を撮られていた…。
なぜその時由香里さんは乱暴されずに済んだのかしら…?犯人が男じゃないから…女だから…由香里さんを犯す事が出来なかった…!?そうよ…それなら成り立つ!でも石山宗雄さんと元木不二子…どこで結び付くの?どこで…。
何よ!?あれからずっと考えていたんだがやっぱりどうしてもあんたに訊きたい事があるんだ。

(パトカーのサイレン)
(シャッター音)内藤先生!遺書だ。
机の上にあった。
「由香里をつけ廻したストーカーは石山宗雄だった」「それが許せなかった。
ロダンを使い他に犯人がいるように見せかけようとしたが虚しくなった。
すまない」「由香里や宗雄に教えた事のあるこの教室で死んでお詫び…」嘘よこんな遺書!お前と同じ考えの人間がもう1人いる。
先生は達筆なんです!そんなパソコンで遺書なんて…。
絶対嘘だ…絶対誰かが偽装したんだ!そうよ!私もそう思う!早紀。
検視を頼む。
眼瞼結膜下…充血。
少し溢血点があるわ。
何かしらこの傷?防御創…?これ…。
あっ…!うぅ…。
骨折してる…。
ちょっと待って!その紐…見せて。
どうしたんだ?内藤先生は親指を骨折していた!あの手で…この紐をこんなに固くは結べないわ!
(ため息)叔母様…。
一馬から連絡があってね。
一目…内藤先生に…。
すみません。
司法解剖の前ですから。
あ…ああ…。
(嗚咽)
(嗚咽)
(桑田)防御創と断定するには少し傷が薄いですよね。
えぇ…。
背中見せて。
(未奈)はい。
何かしら?これ…。
遺体の発見された教室にはこんな跡がつくようなもの何もなかったですよね?えぇ。
どこか犯人に殺された場所でついたとか。
ありうるわね。
桑田君写真を撮ってこの形と同じような圧迫痕が出来るものを永岡君と手分けして探してちょうだい。
はい。
内藤先生お願いです。
私に先生の最後の声を聞かせてください。
本当の声を。
叔母様。
先生…。
先生!内藤先生…!
(泣き声)先生…。

(七海)「いのち短し」「恋せよ乙女」「紅き唇」「あせぬ間に」「熱き血潮…」
(七海の嗚咽)
(未奈)どうしたんですか!?先生。
うん何でもない。
あ…ずいぶん集めてくれたのね。
そりゃね先生の命令とあればたとえ火の中水の中…。
今度は実験しなくて済みそうだなんてそれで力入ったんですよね。
バカお前余計な事言うなよ。
とにかくこの中からこの写真の圧迫痕と同じ形になる物を探すのよ!始めて。
(一同)はい。
(桑田)これは…短い。
(未奈)これは…合わない。
(永岡)おっ!これは…。
え?あ〜問題外。
(未奈)ダメだ…。
(桑田)これは…。
なかなか見つかりませんね…。
(ため息)
(一同)おっ…!危ないな…。
ダメでした…。
(永岡)ダメか…こっちは…。
(桑田)ハァ…違うな。
(永岡)ダメだ…。
もうお手上げですよ先生。
こんな圧迫痕作るのなんてないですよ…。
でも何かあるのよ!あるからこんな形の圧迫痕が出来たわけでしょ!私たちがそれを見つけられてないだけよ!でもどっかで見た事あるのよね…。
こんな形になるもの…。
あら叔母様。
あらまあ。
あ早紀さんおかえりなさい。
ほ〜らきれいになってるよ。
どうしたの?ねぇ?はい。
いいかなぁ?この子も一人ぼっちになっちゃったし私が飼う事にしたんだけど。
もちろん小田原で飼うのよ。
お水…。
あそうだ私前に犬のビスケット間違えて買ってきちゃって。
うちのが食べてそのままにしてあったから。
あれどっかにあったはずですから持ってきますね。
ありがとう。
犬のビスケ…犬のビスケと…。
あら愛介。
どうしたの?あ…何でもない。
何よ?ちょっと何隠したの?何もないよ。
え〜?何よ見せなさいよ。
「お誕生日おめでとう」?叔母さんのさ。
いつもお小遣いくれるから何かしなくちゃと思って。
これ…買ってきたんだ。
でも叔母さん大好きな人亡くなっちゃってお誕生日どころじゃないよなって思ったから…。
そこんとこだけ食べちゃおうって思ったんだ。
あ…そう。
叔母様お誕生日だったのね。
愛介。
あんた偉い。
そういう気配りが出来るようになってお母さん嬉しい。
そうよね…。
今おめでとうはつらいわよね…。
OK!2人でこの字のとこ食べちゃおう。
ね。
うん。
急げ急げ…あっ!そっか…これ…これよ!ちょっと待って。
どうかした?え…?あ永岡君?明日また海パン用意して。
それとペンキも。
うん。
圧迫痕の出来るものは私が買っていくから。
お願いね!う〜ん…ちょっと小さいわね…。
じゃあこれは…。
ああこれね。
ピッタリだわ。
OKじゃあこれにペンキ塗って。
はい。
はい。
永岡君海パンの用意は?出来てます!でも先生…こんなん写真で照合すりゃいいでしょ?なんで僕がわざわざこんな事…。
念には念を入れたいの!本当にこれで同じ形の圧迫痕が出来るかどうか。
始めて。
はいわかりました。
まず首の索状痕が斜めになり縊死と同じ状態だったという事は…犯人は後ろからこうして紐でこう首を絞めたんだと思うの。
ちょっとやってみて。
はい。
そして背中に圧迫痕があったという事は引きずり倒し…その時にこれが落ちた!
(永岡)あ〜…。
あ〜!ちょっと待って待って待って…!そんな背中の真ん中じゃなくてもっとこっちこっちこっち。
もっとこっちにずらして。
そうそうそう…OK。
そこで倒れる!
(桑田)え〜い!
(永岡)わぁ!OK!ペンキ付いたわね?じゃ立ち上がって。
(未奈)ほぼ同じですね先生。
この圧迫痕と。
えぇ。
でも何なんです?この先生の買ってきたものは。
等分器よ。
等分器?な…何ですか?その等分…。
きれいに同じように分けるもの。
私ちょっと行ってくる!
(永岡)えっ…ちょっ…えっ!?うちの人にこの事知らせといて!先生ちょっと待ってください!未奈ちゃん二宮警部に大至急電話して!はい!
(七海)早紀さ〜ん!叔母様!?ねぇ何かわかったの!?あなた今朝ご飯も食べずに出てったからすっごく気になって。
犯人の手掛かりが見つかったんです。
今からそれを確かめに。
じゃ!本当?じゃあ私も!ダメですよ叔母様!私だって内藤先生の…!ダメです!バカな真似はやめろ!等分器は何に使うものかわかった。
だがもっと証拠を固めて…!ゴチャゴチャ言ってんじゃないの!考えるよりここは動けよ!神様そう言ってんの!叔母さん…叔母さんどうしてそこに?そうなのよ…ダメだって言ったんだけど勝手に車に乗り込んでいらしたの。
私だけじゃない。
驚くんじゃないわよ!ロダンもね…ほら!ちょちょちょちょ…。
内藤先生の敵を討つって一緒よ。
ちょっと叔母さんやめて…ね?やめて…。
うるさいわね。
切るわよ早紀さん。
はぁ…ああ…。
いい?ロダン。
ね?ほら合図があったらすぐ飛び込むのよ。
ロダンだからって『考える人』なんてポーズしてちゃダメなのよ。
わかった?
(ロダンの吠える声)まぁまぁそれにしてもいろんな道具があるんですねぇ。
等分器…。
ケーキをきれいに切り分けるのに欠かせない道具ですよね。
何かわかったんですか?先生を殺した犯人とか。
信用出来ませんよ。
あんなパソコンで作った遺書なんて。
あっ…それ!あっ…ああそれだわ…。
自殺じゃない偽装だってあなた真っ先に言うからだから…だから私その言葉に引っ掛かって…。
何の話です?何を言ってるのか。
園田っていう警察官が由香里さんにストーカーまがいの事をしていた事を認めたそうよ。
家の周りをうろついたり下着を盗んだ事があるんですって。
じゃあそいつが犯人!?そうじゃないでしょう。
由香里さんがストーカーに悩まされてるのを知ったあなたはそれに便乗してあなた自身がもっと過激なストーカーに化けたのよ!考えてみたらあなたなら由香里さんが何色のパジャマを着ていたかなんて知ってるしストーカーに襲われたふりをして1人で階段から落ちる事だって出来る…。
バカバカしい…。
そんな話するんなら帰ってください。
僕は忙しいんです。
何より決定的なのは…由香里さんの裸を撮ったという写真よ!あなたは由香里さんを襲い…裸にして…撮影した!裸にしておいて手を出さない…。
普通のストーカーでは考えられない。
でもあなたならそうするわよね?もし手を出せば由香里さんに自分だと気付かれてしまう恐れがあったから。
くだらない話はやめてください!あなたは一昨日元木不二子さんにここに押しかけられたでしょ?そしておそらく彼女に迫られた。
(不二子)ね?由香里って子もいなくなったんだしまた2人で楽しもう?ねぇ直人。
勘弁してください。
ケーキならすぐ作りますから店には二度と来ないでください。
お願いします。
そして不二子さんに付いたあなたのにおいにロダンが反応した!
(ロダンの吠える声)何よこの犬!それは犯人のシャツの切れ端と同じにおいだったからよ!内藤先生もそれに気付いたんだわ。
さっき元木さんに電話して確認を取ったわ。
一昨日の夜内藤先生に何か訊かれなかったか…。
(不二子)何よ!?昼間ロダンに吠えられる前にあんた誰と会っていたんだ?内藤先生はあなたを突き止めあなたに言ったんでしょう。
(内藤)お前なのか直人…。
お前が由香里を追い詰め宗雄を殺した…。
先生…。
やぁ〜!あなたは自分の身を守るために内藤先生を…!教え子を思う内藤先生の気持ちを踏みにじった…!あなたはひどい人よ!これが…内藤先生の背中に圧迫痕を付けた等分器…。
これを鑑識に持ち込めば内藤先生に繋がる何かが出てくるはずだわ。
どうぞご自由に。
あなたのつまらない推理に振り回されるより気が楽です。
構わないから持ってってください。
ずいぶん余裕があるのね…。
ここからは何も発見出来ませんよ。
パティシエの厨房というのは清潔第一が何より大切でね。
もう使用した器具やケースはそれは丹念に洗うんです。
つまらないものが残ってないようにね。
(七海)早紀さん来て!ちょっと〜!
(ロダンの吠える声)待って…待って待ってロダン!叔母様!どうしたんですか!?わかんないのよ!なんかねああ…風フーッと来たらロダンが急に走り出しちゃったのよ!何か内藤先生のにおいを感じたのかも!?そうなの?え?ロダンどこ行くの!?
(七海)ロダンどこなの?どこ!?
(ロダンの吠える声)どこいくの?ロダン…!ああ…どこどこどこ!?え?あ…。
どうしたの!?そこに内藤先生のにおいがするの?そうなの?ロダン!どういう事?あ…遺体を運ぶ時このシートを使って中学校まで運んだのかもしれない!ちょっと…お願い。
ちょっと待ってね。
(七海)早紀さん危ない!逃げて!ロダンおいでおいで…!うわーっ!あー!叔母様!うちの人に電話を!わかった!うわー!ああっ…ロダン!あー嫌…ああっ…!
(ロダンの吠える声)うるせぇ!あ…ああ…!ああ…ああ…!早紀さん…。
死ね…!
(ロダンの吠える声)黙れ!
(ロダンの吠える声)危ない…危ない…早紀さん!
(ロダンの吠える声)
(ロダンの唸り声)うわっ…!この野郎…!早紀!あなた…!大人しくしろ…!
(井筒)あ…嫌だ…!早紀!大丈夫か!?えぇ。
叔母さん大丈夫!?大丈夫…痛い…。
ああ…ロダン。
ロダンありがとうね…。
ありがとうねロダン。
ありがとう…。
どうしたの?ロダン。
ロダン…?どうしたの?ん?ん?どうした?あ…。
これは…。

(由香里の声)「直人…石山君から聞いたわ」「あなただったのねストーカーは」「でも私は信じたくない」「だから私は賭けをする」「これは最後の賭けよ」「この賭けに勝ちたい…」あの晩由香里に呼ばれてアパートへ行った。
(由香里)あなたはストーカーのふりまでして私と別れたかった…。
嘘よね?そんな事しないわよね?あなたは。
そう…やっぱり。
そんなに私が邪魔?消えて欲しい?だったら飲む…。
ここにヒ素がある。
私飲むから。
止めないのね…止めてくれないのね。
(うめき声)由香里…。
(うめき声)直人…あ…愛してる…。

(大石の声)お前は根岸由香里さんの日記の中から自分に都合の悪い個所を破り指紋を拭き取り…逃げた。
(有田)そしてお前はお前をストーカーだと見破った石山宗雄に呼び出され…。
(石山)出て来い直人!俺は…お前を絶対に許さない!出て来い!…うわぁ!
(うめき声)
(有田の声)お前は感電事故に見せかけ石山宗雄を抹殺し…。
(有田の声)全てに決着をつけるつもりだった。
だが石山宗雄は…。

(刺す音)ああっ!ロダンが発見したあのシートからは内藤辰比古さんの毛髪が発見された。
バカなんだよみんな余計な事するから…。
由香里も自殺なんかしないでストーカー騒ぎに巻き込んで俺に申し訳ないって気持ちで大人しく身を引きゃよかったんだ。
そのためのストーカー騒ぎだったのに。
お前にほれてるフランスの三ツ星レストランのオーナーの娘がいるそうだな。
ミッシェルさんっていうんだって?その子と結婚してパリに店を出して貰う計画があった。
だから由香里と早く別れたかった。
あいつはね由香里はすぐに死にたがるんだ。
ミッシェルの事がバレて店の前で自殺なんてされたらたまったもんじゃないと思った。
それでストーカー騒ぎをやって由香里さんの傷つきやすい心を利用しようとした。
店を出すために彼女から受けていた援助も返したくはなかった。
チマチマと生きるのが嫌になったんだ。
俺にはでっかい夢があって世界と勝負したかった。
だけど皮肉だよな…。
由香里に頼まれてストーカーが俺に手を出すのをガードしようとして内緒で俺に張り付いてた宗雄が…。
うわぁ〜!ああ…痛…。
大丈夫ですか?
(井筒)誰かに押されて…。
全ては俺の芝居だと知る。
好きだったんだろ宗雄は。
由香里の事が。
だったら俺の事なんか気にせず2人でうまくやりゃよかったんだ。
間抜けな奴だよ。
な〜に身勝手な事を言ってるんだ。
連れて行け。
お前からパティシエという仕事を取り上げて俺はホッとしている。
お前のようなクズの作ったケーキを子どもたちが食べずに済む。
内藤先生天国で喜んでくださってるかしら?本当の声を聞けたと思うんだけどね…。
(ロダンの吠える声)あ〜!そうか喜んでくれてるか!じゃあ行くわね。
さロダンおいで。
はいはい。
ねぇよかったね。
新しい飼い主さんが内藤先生の事大好きな人でね〜。
内藤先生の分もロダン可愛がんないとね。
うん。
はい。
そうだよ叔母さん。
ロダンを大切に。
恋は自粛!年相応に生きる事!なんて。
あなたって本当にデリカシーないわねぇ…。
だからさぁ頭の中ガチガチで明治時代の男みたいになるのよ。
明治男。
何だ?その明治男って。
だって叔母様はねれっきとした独身女性なのよ。
ねぇ年よりずっと若く見えるんだし。
周りがほっときませんよね〜!ウフフ早紀さんだって。
あら!私は本当に若いんですぅ〜!ウフフ。
だからさぁなんなら未亡人になってみたら?アハハモテるわよ〜。
あ〜それいいかも!いいかもしんないです〜!それじゃね〜!は〜い。
バイバ〜イ。
じゃあね気をつけてね。
はいは〜い。
ハハいいねぇ女はのん気で。
未亡人になったらモテるか…。
まぁお前もなぁちょっとガタがきてるけどまだまだ使えるしな。
幸せな未亡人になれ。
ハァ?…バカ!未亡人になるともれなく俺が死んじゃうって事じゃないかよ。
ちょっとそれ今気付いたの?遅ぇよ!遅い?すっげぇ遅ぇ!すっげぇ遅い?ハハハそれだけ回転鈍かったら当分長生きね。
長生きするか。
ハハハ。
よかったよかったまぁしょうがないよ。
長生きするよ俺は。
幸せな未亡人にはさせない〜!ハハハ〜!苦しい…苦しいよぅ…苦しい…。
2015/07/11(土) 12:00〜13:55
ABCテレビ1
法医学教室の事件ファイル[再][解][字]

襲われた婚約者、死後硬直のズレと電流痕の謎…女医と警察犬に臭気判別“0回答”の罠!!

詳細情報
◇番組内容
アパートの自室で手足を粘着テープで縛られた介護ヘルパーの死体が発見されて!!彼女の遺体を解剖した早紀は、上半身と下半身の死後硬直の度合いが違うことに疑問を持つ!!人気シリーズ第27弾!今回の事件は七海(由紀さおり)のラブストーリーが!
◇出演者
名取裕子、宅麻伸、由紀さおり、小野寺昭、河相我聞、高杉瑞穂、中村愛美、斎藤陽子、五十嵐めぐみ、佐野和真 ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
福祉 – 音声解説

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
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日本語
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