「きょうの健康」今日と明日は「しっかり治そうアトピー性皮膚炎」です。
悩んでいる方多いかと思いますけれどもご覧下さい。
こういう2日間でして今日は1日目…家庭でできる肌の手入れについて詳しく教えて頂きます。
お話をして下さる方ご紹介致します。
東京逓信病院副院長の江藤隆史さんです。
皮膚科で診療するかたわらアトピー性皮膚炎の患者向けの勉強会を1年に50回1週間に1回15年間も続けていらっしゃいます。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
アトピー性皮膚炎でもう長く悩んでらっしゃる方多いですよね。
はい。
アトピー性皮膚炎の患者さん私アトピー教室などやって3,000人とか卒業生がいるんですけれどもまずはかゆみが強いという事で夜も眠れない。
そういう苦しみもありますがやはり肌が荒れてしまって人目につく肌がボロボロになって真っ赤っかになってしまうと自信をなくしてしまうのが問題でアトピーが原因で学校に行きたくない不登校になってしまったり結婚や就職を諦めてしまうような患者さんも結構いらっしゃいます。
生き方にも関わってくるという事になりますよね。
でもきちんと治療をすれば治ると考えていいんでしょうか?アトピー性皮膚炎を完全に根本的に治すという治療はまだないんですけれども正しい治療とそしてスキンケアをしっかりする事によって症状を抑えて上手につきあっていけば普通の人と同じような人生を楽しんでいく事ができると思います。
正しい治療に出会って人生がどんどん変わっていったという患者さんも私のアトピー教室出身者にはたくさん出てきていますし。
ただアトピーの患者さんやそのご家族の中にはステロイドの使い方やスキンケアの方法をやや誤解していらっしゃったり科学的な根拠のないはっきりしない方法で治療をしようとしたりして症状をずっとひどいままにしてしまっているそういうケースもまだまだたくさんいるのも事実なんですね。
正しい知識を持つそこからスタートという事になりますか。
そうだと思います。
今日は「皮膚バリアを強くする」という事でお話を頂きます。
よろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
さてこちらをご覧下さい。
アトピー性皮膚炎の患者さんの写真ですけれどもこれはおでこ赤くじゅくじゅくしてますね。
これが急性のアトピー性皮膚炎の時の皮膚症状ですね。
それから次の写真はこういうのもよく見ると思いますけれどもこれは首です。
こちらは膝の裏側。
皮膚が厚ぼったくゴワゴワした状態。
少し黒っぽくなってますけどもこれは慢性の皮膚症状で苔むしているように見えますので苔癬化って苔という字を使った言葉で難しい漢字になってますけどもそういう呼び方をする慢性の皮膚症状でこれらの症状というのは皮膚のバリアが非常に低下した状態からこういう状態になっているという事がいえます。
皮膚バリア初めて聞いたので皮膚バリアとはどういうものか教えて頂けますか?バリアというのは要するに外から何か入ってくるのを防御するという事なんですけど皮膚というのはバリアの機能なんですが非常に表面にバリア機能があってすごく薄い層でできてるんです。
ちょっと問題ですけどもその皮膚バリア誰でも持ってる桜井さんも持ってるんですけども…この3つの厚さの中でどれだと思います?全く分かりませんけど真ん中の0.2ミリでしょうか?そう言って下さると思ってこういうふうに出しましたけど僕自身も0.2ミリぐらいかなもうちょっと薄いかなと若い頃は思ってたんですけども厳密に言うと0.02ミリ。
随分薄いですね。
1ミリの50分の1という食品用のラップの2枚分ぐらいの厚さしかないものが我々の体全体を覆ってバリアとして機能してます。
じゃあ次のイラスト見て頂きましょうか。
これが皮膚の構造なんですけれども私たちの皮膚の表皮の部分というのはこのようにレンガのように細胞が何層にも重なってできています。
皮膚の一番表面は少し脂っこい感じですね。
オイリーな感じ。
これ皮脂膜という膜がワックスのように乗っかっています。
その皮脂膜の下にあるのが角層と顆粒層という層があってこの部分がバリアに非常に重要だといわれていてこのきめの細かい並び方がバリアを作っていると言えますしこれが皮膚バリアと言えます。
皮膚バリアがしっかりしていますと細菌やアレルゲンなど外からの刺激をこのようにはね返してくれますしまた皮膚バリアが蓋になって中から水分がどんどん蒸発していくのを防いでくれて肌の潤いを保ってくれます。
一方アトピー性皮膚炎の患者さんの肌では見て下さいこのように痩せ細った角質。
乱れてますね。
角層が乱れてめくれ上がり皮脂も減ってしまっています。
更にはここちょっと見て下さい。
本来ならこの表皮の下にしかない神経が細胞が壊されたと同時に出すシグナルによって神経がどんどん伸びてきて表皮の中のかなり角層のそばまで伸びてくる事も分かっていてそのためにかゆみが強くなるという事が言えます。
このかゆみの神経を刺激したりそれから細菌とかアレルゲンが入ってくる事で刺激したり水分が蒸発して乾燥したりする事によって炎症とかかゆみが起こってくる。
これがバリア機能が低下している状態と言えます。
そもそも角層が乱れる。
どうしてそんな乱れちゃうんでしょうか?角質の細胞を拡大してみましょうか。
このような状態。
健康な皮膚とアトピー性皮膚炎の状態が出てきますけども健康な皮膚では角質細胞ってちょうどつきたてのお餅みたいな状態。
非常にモチモチとした水っぽいんですね。
それは中に入っているNMFという天然保湿成分が水分を保持するものとして重要な働きを示してるんですがアトピー性皮膚炎の患者さんはこのような感じで痩せ細ってますがよく見るとNMFが少なくなって非常に水分が少ない。
乾燥したお餅みたいな状態になっています。
更にこの角質の細胞の隙間を拡大してみます。
角質の細胞の隙間には水分があるんですけどもその水分を保持しているのは角質細胞間脂質という物質でセラミドという。
よく聞きますねセラミド。
このセラミドという物質ががっちり水を押さえ込んで絶対に逃げないような状態で角質細胞の間にため込んでるんですね。
ところがアトピーの患者さんではこのようにセラミドの量が足りない少ないもんですから押さえられる水分の量が少なくて乾燥している状態が続くという事になります。
細胞の中も外も水分が不足。
そして皮脂も少ないという事で皮膚バリアが弱くなっているという事ですか?じゃあその皮膚バリアを強くするそれはできるんですか?アトピーの患者さんのバリア機能の弱さというのはもともとあるものなので完璧に普通の人にはできないですがでもスキンケアという皮膚を大事に育むような治療がありましてそれによってバリアはある程度強くできます。
アトピー性皮膚炎で特に重要なのはスキンケアの中でも洗う事とそして保湿する事。
この2つになると思います。
そうすると正常な皮膚がゆっくりその下で育まれてきてバリアが強化されてくるはずです。
ここで桜井さんに質問です。
洗い方の2つのポイントを比べてみたいと思いますが…極端な2つの洗い方なんですがどっちがいいと思いますか?やっぱりナイロンタオルでゴシゴシ洗うのはすごくよくないと思ってどちらかといったらお湯でさっと流す程度でいいんではないかと思うんですがどうでしょうか。
そうですね。
確かにバリア機能を強化する意味ではゴシゴシはよくなさそうだという事でこちらですがこちらも答え出してみましょうやはりよくないんじゃないかと。
どちらも×です。
せっけんはやはり使って洗って頂くんですがそのせっけんの使い方をうまくやって頂いて洗う。
これが一つのポイントです。
実際にやってみて頂きましょう。
じゃあこちらでお願い致します。
教えて下さい。
ナイロンタオルじゃなくて泡立て用のものを用意しました。
ナイロンタオルでも構わないと思いますがこれをお湯に浸してボディーソープせっけん何でもいいんですけどもせっけんを上にたらして頂きよくもみますとだんだん泡が出てきます。
あっ随分出てきますね。
そうですそうです。
実際にはそれを皮膚にゴシゴシこすってしまう人が多いんですけども…。
実際にこれではなくて?それは駄目駄目。
よくもんで泡が出てきますでしょ?すごいですねいっぱい出ました。
その泡粒を取りまして…。
はい泡を取りました。
それを肌の上に優しく載せて頂く。
泡を載せるんですね?そうです。
うわ〜たくさん取れましたね。
すばらしいです。
ここでゴシゴシこすらないで載せた状態から優しくすすいで頂くと。
泡をこすっちゃいけないんですか?ある程度載せて頂いて…。
なでるくらいですか?そうです。
泡を載せて決してゴシゴシこするんじゃなくて泡の力で汚れを落とすという事で優しく載せてのばして頂いてそしてお湯ですすぐ。
これはやっぱり薄いから?そうですね。
バリアが先ほど言いましたように0.02ミリがすぐ下にありますのでゴシゴシこすればそこを削ってしまう可能性もありますから優しく洗ってせっけんの泡で汚れを包み込むような形で洗って頂く。
それでも汚れはちゃんと落ちるんですね?十分それで落ちます。
そのぐらいの洗い方がちょうどいい。
なるほど。
例えばここに湿疹があるとしますよねそこも載せていいのかちょっと心配ですけど。
傷があるとせっけんつけちゃいけないんじゃないかという方もいますけれども普通の刺激のないせっけんでしたらそういう傷にも細菌とかアレルゲンがついていますから泡を立てたせっけんを載せて優しくすすいで頂く方法が一番いいと思います。
優しくすすぐ。
例えばこういうふうにして。
これも1回ぐらいでいいですか?せっけん成分が残っちゃいけないので丁寧によくゆすぐんですね?すすげましたでしょうか?せっけん成分残ってませんね?大丈夫ですね。
そしたら柔らかいタオルでゴシゴシではなくて優しく押すようにポンポンポンと。
押すように。
ゴシゴシ拭いちゃいけないんですね?これもやはりバリアを壊す原因になりますから。
何か拭いた感がないかなと思いながらも…。
でも水分十分取れます。
ちょっとした残った水分が重要なんでございます。
そうですか。
さっぱりしましたけど洗ったあとはもうこのままでいいんですね?駄目です駄目です。
このあと次です。
次は保湿でございます。
じゃあこちらで教えて下さい。
今洗いましたね。
すると非常に潤った状態の皮膚があってこのままでいいやと思う方多いんですけれどもこの状態。
潤ってますけれどもでも皮膚の表面にあった皮脂膜なんかはまだちょっとは残ってますけどもかなり洗い落としてしまってるはずなんですね。
この皮脂膜がまた出てくるのにしばらく時間がかかります。
このまま置いておきますと入浴して大体20分ぐらいするとだんだん水分が蒸発していってお風呂に入る前よりも乾燥してしまうという事。
20分でそんなになっちゃう?結構早いですよね。
ですからお風呂に入った直後に保湿剤をすぐ塗ってあげて上から蓋をしてあげると逃げようとした水分を…中に残ってますね蓋をして押さえてくれると。
こういう形で皮膚のバリアの代わりになって新しくバリアがまた再生するというか出てくる事を期待して保湿剤を塗っていく事ができる訳ですね。
保湿剤もいろんなものが出ています。
迷ってしまうんですがどんなものがいいんでしょう?保湿剤はですね普通にワセリンみたいなものでもいいですし市販の乳液とかオイルとかクリーム状のものでも何でもお好きなものを塗りやすいものをこまめにできれば一日2回は最低使って頂くのがいいと思います。
一日2回朝晩塗るような形でいい訳ですか?そうですね。
乾燥してるなと思ったらこまめに塗れるようにハンドバッグとか炊事場なんかに置いておいて手なんかも乾燥しますからそういう時には塗り足すような形で使って頂くのがコツだと思います。
でもどうなんでしょう今の時期汗がだんだん出てまいりますけど汗についてはどうなんですか?汗はアトピー性皮膚炎にはよくないという事で汗をかかないように指導するような状況もあったりしましたけれども汗をかく患者さんと汗をかかないように指導した患者さんで比べたところ実は汗をかくように指導した患者さんの方がアトピーの症状が改善しているという事が研究報告されていまして決して汗は悪者ではないと。
汗をちゃんとかく事は健康な皮膚に戻ったという証明にもなりますし汗自身がやはり皮膚を潤わせる水分の役目もします。
ただ汗をずっと残しておくと汗の成分が刺激になってアトピーを悪化させる事もありますのでできるだけこまめにシャワーを浴びるなりぬれタオルで汗をふきとるなりして汗に対するケアをすればむしろ汗はたくさんかいていいんだというのが今の考え方になってます。
それは本当意外でした。
それにしても今日お話を伺ってきちんと洗ってそしてきちんと保湿をすれば皮膚バリアは強くなるという事ですね。
スキンケアというと何かばかにされてそんなのしないよ…特に男の人なんかはですね。
でもアトピーでは非常に重要ですし一般の方でも乾燥肌って結構ありますから非常に重要だと思うんです。
それは皮膚のバリアを強くする事でスキンケアをする事によって丈夫な肌を育むという事なので是非今日の優しく洗って保湿をしっかり。
それを毎日の習慣にして頂ければと思います。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
2015/07/11(土) 04:15〜04:30
NHK総合1・神戸
先どり きょうの健康「しっかり治そうアトピー性皮膚炎 皮膚バリアを強くする」[解][字]
最新の標準治療に基づいてアトピー性皮膚炎をしっかり治す2回シリーズ。1回目はスキンケア。最新情報として汗をかくことは良いのか悪いのかなどを詳しくお伝えする。
詳細情報
番組内容
最新の標準治療に基づいてアトピー性皮膚炎をしっかり治すために役立つ情報をお伝えする2回シリーズ。1回目はスキンケア。アトピー性皮膚炎の発症には皮膚バリアの機能低下が関係していると考えられている。角層や皮脂膜から成る皮膚バリアを強くするには、まず正しく洗うこと。そして正しく保湿すること。どのようにすればよいのかをお伝えする。最新情報として、汗をかくことは良いのか悪いのか、詳しくお伝えする。
出演者
【講師】東京逓信病院副院長…江藤隆史,【キャスター】桜井洋子
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:8504(0x2138)