(松下)うわー!うっ!ああ…。
(神津)お待たせしました。
(古沢)悪いね忙しいところ。
いえ。
(古沢)何にする?あっでは同じものを。
(マスター)かしこまりました。
珍しいですね縁談以外で僕に頼みとは。
(古沢)おっ気にしてるのか?まあその話は後なんだ。
実は今日は義理の息子というよりも名探偵の君に頼みがあるんだよ。
(古沢)これなんだけどね。
(神津)これは…人骨ですか?ああ。
大腿骨の一部。
40年ぐらいたってるようなんだけど。
まあ大きさからしておそらく成人女性。
他の部分はまだ何も見つかってないんだ。
犯罪心理学専門の僕にこの話を持ってくるというのは?いや神奈川県警が他の事件が忙しくてちっとも動いてくれないんだよ。
(マスター)どうぞ。
ありがとう。
(古沢)まあいずれにしろこれだけでは身元どころか事件性があるのかないかも分からないけどさ。
で僕にどうしろと?だから調査してほしいんだよ。
もし事件性があれば神奈川県警も動いてくれるしまあそうでなければホトケさんの供養もできるしね。
何かめんどくせえって顔してるね。
あっ…ちょっとしました。
ハハッ。
とにかく頼むよ。
まあお父さんの頼みとあれば断れませんね。
うん。
頼みます。
神奈川県八坂村。
(古沢)それと例によっていい娘さんが見つかったんだよ。
紹介したいんだ。
それは結構です。
あっ…。
しかしもう6年も一人暮らしだろ?まだ6年です。
再婚なんて僕には考えられません。
そうか…。
まっ娘も幸せだな。
君にそんなに愛されてるなんて。
(バイブレーターの音)失礼。
ああ。
もしもし神津です。
どうしたんです?こんな時間に。
(英美)あっ神津先生!あのう松下さんが…。
分かりました。
僕も向かいます。
どうしたんだ?恭介君。
人骨の件はひとまず預からせてください。
失礼します。
(医師)あした検査入れとくから。
(看護師)分かりました。
(英美)あっ先生。
早乙女さん。
彼はいったいどこで何をしてたんです?それが私にもよく…。
突然この病院から電話がかかってきて。
病院はどうやってあなたの連絡先を?松下さんの携帯の履歴からです。
彼しょっちゅう私に電話してくるので。
なるほど。
あっ。
いやいや…別にそういう関係とかじゃないですよ先生。
私ほとんどね聞き流してます。
友達いないんじゃないですか松下さん。
あっあのう私病院から電話をいただいた早乙女です。
松下君の容体は?
(看護師)頭を強打していてまだ意識が戻っていません。
事故当時はどういう状況だったんですか?すみませんそこまでは…。
今夜は他に救急患者は?えっ?いえいないと思いますが。
ちょっと。
先生。
どこ行くんですか?・ちょっとよろしいですか?
(土岐子)はい。
何でしょうか?松下研三君とはお知り合いでしょうか?
(土岐子)どうしてそれを?この寒いのにサンダルをお召しになっていますね。
さぞ慌てて来られたんだろうと思いました。
失礼ですが彼とはどういったご関係で?
(土岐子)あのうあなたは?協立大学で教鞭を執っている神津といいます。
松下君は大学時代の後輩です。
先生犯罪心理学の教授なんですよ。
犯罪心理学…。
そうでしたか。
失礼いたしました。
私倉橋土岐子と申します。
美容外科クリニックで広報を担当しております。
あのうもしかして倉橋美容外科ですか?あのう院長さんがよくテレビに出てらっしゃる。
ええ。
院長の倉橋圭市郎は私の父です。
あっそういえば松下さん言ってたわ。
「今倉橋グループの会長さん取材してるんです」って。
それで私が窓口となって松下さんとやりとりを。
申し遅れました。
私東興生命の早乙女英美と申します。
法人さま個人さま各種保険を取り揃えておりますのでよろしければぜひ。
早乙女さん。
あっすいません。
つい。
あなたがここにいらっしゃるということは彼の事故と関係がおありなんですね?ひょっとしたら私のせいで何かに巻き込まれたんじゃないかと。
巻き込まれたって…。
事故ではなく事件だと?分かりません。
警察に相談しようかと考えてたところで。
でも…。
あのう…。
ぶしつけなお願いで恐縮なのですがどうか相談に乗っていただけないでしょうか?僕はまだ引き受けるとは言ってないんですが。
松下さんが事件に巻き込まれたかもしれないんですよ。
だったらなおさら警察に任せるべきです。
冷たいんですね。
そう言う早乙女さんこそ目的が違うのでは?ずいぶん大荷物ですが。
あっやだ違いますよ。
じゃあ先生こそ何しにいらしたんですか?こんな所をうろうろと。
えっ?人骨?何ですか?これ。
ちょっと人から頼まれてね。
神奈川県高塚郡…。
これも同じ八坂村だ。
ええ。
奇遇ですが。
あっあのう…。
あっすいません。
人骨が見つかったのはこの辺りか…。
ほこら?かつての祈祷所か何かか?美容整形で大もうけしてる一族なのに何を好きこのんでこんな山奥に住むんでしょうね。
そうですね。
わざわざおいでいただきありがとうございます。
こちらになります。
わ〜!立派なお屋敷ですね。
あっ。
これは…素晴らしい。
先生。
あっ失礼。
見たところかなり年季の入った建物のようですが先祖代々こちらに?元はある一族が住んでいたそうです。
その血筋が途絶え空き家になっていたのを父が買い取ったとか。
どうぞ。
皆さんお連れしました。
ご紹介します。
先日お話しした犯罪心理学教授の神津先生です。
神津です。
どうも。
先生は数々の難事件を解決した名探偵でもいらっしゃいます。
(土岐子)あっこちら保険調査員の早乙女さんです。
東興生命の早乙女と申します。
よろしくお願いいたします。
あちらが姉で倉橋家長女の澄子です。
父と同じ美容外科医です。
(澄子)どうも。
(香取)澄子の夫で香取幸二といいます。
倉橋グループの不動産部門を担当しています。
よろしく。
でこちら菊川君。
彼も澄子と同じ美容外科医。
そして土岐子ちゃんの婚約者でもある。
ちょっと幸二さん。
その話はまだ。
(菊川)菊川です。
よろしくどうぞ。
(香取)あっそうだ。
一杯どうです?生ビールも出せますよ。
あの私車なんです。
お構いなく。
あっそうですか。
(土岐子)そしてあちらが姉で次女の…。
あれ?あの人モデルのSAYAじゃないかしら。
はい?あのほらCMなんかにも出てるじゃないですか。
アルファベットのSAYAでSAYA。
すっご〜い。
あのうお会いできて光栄です。
(烈子)ありがとうございます。
(土岐子)本名は倉橋烈子といいます。
事務所の方針で本名は非公開ですのでお願いします。
分かりました。
それにしてもお医者さんにモデルさんにすっごいご一家だこと。
(澄子)ねえ。
学会の資料作らないといけないんだけど。
早く始めてくれる?でもお父さまがまだ…。
(澄子)いいから。
「呪縛の家に棲みたる者は水に浮かびて殺さるべし」「呪縛の家に棲みたる者は火に包まれて殺さるべし」「呪縛の家に棲みたる者は地に埋もれて殺さるべし」「呪縛の家に棲みたる者は宙を泳ぎて殺さるべし」これが例の手紙ですか?
(土岐子)はい。
先日郵便受けに入ってました。
以前からちょっとした嫌がらせのようなことはあったんですがさすがにこれはちょっと…。
何のつもりだ。
脅迫状か?僕も最初見せてもらったときはそう思いました。
それにしても仰々しいね。
そうですね。
やけに時代がかってるというか。
何か呪いの手紙みたい。
・
(圭市郎)くだらん。
(土岐子)お父さま。
(圭市郎)ただのいたずらにいちいちうろたえてどうするんだ。
お二人にもこんなくだらんことに付き合わせてしまって大変申し訳ない。
いえ。
(土岐子)でもお父さま現に松下さんが何かに巻き込まれたかも…。
松下?ハハッあの提灯記事専門のルポライターか。
私怖くなって松下さんに相談してみたんです。
そしたら「ちょっと心当たりがあるから調べてみます」って。
その矢先にあんなことに…。
「呪縛の家」ってのはこの家のことを指してるのか?もしそうだとすれば倉橋家に恨みのある人物がいるということになりますね。
(澄子)お父さまでしょ。
(圭市郎)何?恨まれる相手なんていくらでも心当たりあるんじゃないかしら。
父親に向かって何を言うんだ!まあまあお父さん!おい澄子。
まあとにかく放っときゃいいんだそんなものは。
ハァ…すみません。
何のお力にもなれない上にお食事までごちそうになってしまって。
(土岐子)いいえ。
こちらこそ父があのような失礼を。
いえ。
ひとまず今日のところは。
怪文書との関連性は分かりませんが松下君が何らかのトラブルに巻き込まれたことは間違いありません。
僕でよければ協力しますよ。
ありがとうございます。
またご連絡いたしますので。
では。
(セルモーターの音)おかしいな…。
(セルモーターの音)どうしました?いやエンジンかからなくて。
えっ!?嘘まさか故障?ちょっと車検出したばっかりなのに。
仕方ない。
今夜はお屋敷に泊めていただこう。
えっ?えっ!?これでは帰れないからね。
あのうそれでしたら…。
(土岐子)誰も使ってないので。
狭くて申し訳ないのですが。
いえお気遣いありがとうございます。
それではお風呂が空きましたらお呼びいたします。
失礼します。
いや〜まさかこんな展開になるなんて。
困りましたね。
しかも同じ部屋だなんて。
土岐子さん何か誤解されてるんじゃないかしら。
いや…まあ私は別に構わないんですけどね。
私は。
あっ早乙女さんどうぞベッド使ってください。
僕はソファで寝ますから。
あっそんなことより息子さんに電話してあげた方がいいんじゃないですか?きっと心配してますよ。
そうでした。
あっ翔太?お母さんだけど。
ごめんね〜今日お母さん仕事で帰れなくなっちゃったのよ。
おばあちゃん呼んでくれる?
(烈子)角度が嫌なの何度も言わせないで!差し替えといてね。
今日は実家に泊まるからパソコン開けない。
携帯に送ってくれる?ホントしっかりしてよね。
(圭市郎)よっと。
(香取)おっ。
澄子姉さん知らない?
(菊川)いや。
風呂に入ってんだけど。
そういえば長過ぎるな。
私ちょっと様子見てきます。
(香取)あっ頼むね。
お医者さんっていうより実業家って感じがしません?倉橋圭市郎。
美容外科で稼いだお金で不動産業にも進出。
今や巨大グループの会長。
ですが日本の美容外科の第一人者であることは確か。
まだ美容整形が世間で認知される前から研さんを積んできたわけですから大したもんですよ。
まあそれこそ実業家的嗅覚かもしれませんが。
・
(物音)
(烈子)澄姉大丈夫!?何かあった!?
(土岐子)澄子姉さん!どうしました?
(土岐子)あっ…姉がお風呂から出てこないんです。
(香取)開いたぞ!
(香取)す…澄子?
(圭市郎)あっ!
(烈子)澄姉!
(菊川)救急車呼んできます!
(土岐子)はい。
澄子…。
澄子!澄子…。
そんな…。
お姉さん…お姉さん!
(泣き声)お姉さん…。
(土岐子の泣き声)ハァ…。
こんな所に…。
何やってるんですかこの大変なときに。
たまたま僕たちが招かれた日にあんなことが起きた。
偶然だと思いますか?えっ?変圧器のコードが切断されている。
動かないのはこのせいでしょう。
ちょっと待ってください。
どういうことですか?僕たちを帰らせないように仕組んだ人物がいる。
…ということです。
確かにあの怪文書が公表された直後にタイミング良く人が死ぬなんて変ですよね?「水に浮かびて殺さるべし」まさに書かれていたとおりじゃないですか。
もしかして何かの呪い?ハァ…。
呪いなんてナンセンスですよ。
じゃあ何だっていうんですか!ですから…。
(杵築)あっちょっと。
捜査関係者以外はまだ入らない。
すいません。
・
(篠原)どうした?
(篠原)あっ。
神津先生。
早乙女さんまで。
篠原警部ですか。
お久しぶりです。
お久しぶりです。
…ってお二人揃ってどうしたんですか?ええちょっと。
あっそれより警部これは事件ですか?事故ですか?わざわざこんな田舎くんだりまで出向いてきましたが単なる入浴中の事故です。
神津先生のお力をお借りするまでもありません。
うん。
(篠原)ホトケさんに外傷はなし。
洗面所は内側から鍵が掛かってる。
入り口以外はこの窓だけ。
当然ながら人の出入りは不可能。
密室です。
そうでしょうか?
(篠原)うん?これはたまたま今日起こったわけじゃない。
逆ですよ。
犯人はやろうと思えばいつでもできた。
この日を選んだのは僕と早乙女さんがいたからです。
現場が密室だったことを第三者に証言させようとしたからです。
犯人って…。
先生はこれが他殺だと?てかどうやって?あの小窓は換気のために少しだけ開いていました。
あの隙間から例えば毒性のガスを注入し昏睡させ溺死に見せ掛けることは可能です。
あっいや…それはちょっと。
警部解剖は念入りにお願いします。
杵築。
(杵築)何すか?解剖は念入りにと伝えろ。
俺の勘だ。
はい。
(篠原)行け。
はい。
先ほど意識は回復したんですが。
(松下)うう…。
松下さん?
(松下)あ…ああ…。
う…。
何言ってるんでしょう?まだ意識が混濁しているようなので。
て…ちょ…。
て…。
て…ちょう…。
「手帳」と言ってるようですね。
「紅霊教」「かつて八坂村に存在した新興宗教」聞いたことありませんね。
戦後の混乱期にはこの手の宗教法人が各地で勃興していたそうですから。
「開祖は卜部舜斎。
1910年生まれ」「戦後間もなく紅霊教を起こし一時は信者も数千人を数え一大勢力を築いていた」「やがてその教義や霊験がインチキだとバレてしまい教団は一気に求心力を失っていった」「信者の中には全財産を寄付した者も多数おり村は生活に困窮した元信者らの怨嗟に満ちたという」《呪ってやる…》《未来永劫卜部家を呪ってやる!》なるほど。
でも松下さんどうしてこんなこと調べてたのかしら。
続きがありますね。
舜斎には3人の娘がいたようです。
長女の聡海次女の陽子三女の楓。
その3人が相次いで不審な死を遂げた。
「1960年に聡海が海岸で水死体となって発見」「翌1961年には陽子が山火事にまかれ焼死」「同年楓が崖から転落死」
(舜斎の泣き声)「失意の舜斎とその妻は数年後行方不明となる」「一連の出来事は『八坂村の呪い』として村人に語り継がれることとなった」えっその紅霊教の本部って…。
(土岐子)《元はある一族が住んでいたそうです》《その血筋が途絶え空き家になっていたのを父が買い取ったとか》地元の人にとってあの屋敷はまさにいわく付きということですね。
呪縛の家。
つまりこれは倉橋家の人間がどうこうということじゃなくてあの屋敷そのものが呪われてるってことですよね?怖っ!言ったはずですよ。
呪いなんてナンセンスです。
松下君は誰かに襲われたんでしょう。
おそらくあの家の秘密に近づこうとしたせいです。
秘密?彼はいったい何にたどりついたのか…。
うん?
(バイブレーターの音)失礼。
(バイブレーターの音)はい。
(篠原)あっ先生。
倉橋澄子の解剖結果が出ました。
血中の酸素濃度は低く肺の内部に水泡がたまっていました。
典型的な溺死の所見です。
先生にあれほどまで言われたので私も念入りに調べさせたんですけどね。
体内から毒物は一切検出されませんでした。
事件性はなしというのがうちの見解です。
やっぱり呪いなんですよ。
呪い!?先生が他殺だと思う根拠は何なんですか?
(篠原)「呪縛の家に棲みたる者は水に浮かびて殺さるべし」「呪縛の家に棲みたる者は火に包まれて殺さるべし」なるほど。
これがかつて存在した紅霊教という新興宗教にかけられた呪いというわけか。
あいにく僕は呪いなど信じませんよ。
教祖卜部舜斎の娘たちは元信者に謀殺されたとみるべきでしょう。
今回の犯人がやろうとしていることはその言い伝えになぞらえた連続殺人。
つまり見立て殺人なのです。
見立て殺人?犯人の目的はまだ分かりませんがそう遠くないうち第2の殺人が起きる可能性があります。
えっ!?次は誰が狙われるんですか?倉橋家はちょうど紅霊教の卜部家と同じ3姉妹です。
澄子さんの「澄」が水を表しているとすれば烈子さんの「烈」は火を表してるともとれます。
(篠原)確かに。
烈火のごとくなんて言いますもんね。
怪文書の順番から見れば次に狙われるのは烈子さん。
つまりモデルのSAYAさんです。
警部くれぐれも彼女から目を離さないように。
分かりました。
頼みましたよ。
はい。
どうせお前だろう。
あんなくだらん手紙を書いたのは。
(昌子)フッ…。
狙いは金か?
(昌子)バカにしないでよ。
今日はこの「コントロールフリーク」について話をしよう。
物事全て自分の思いどおりにしようとする。
そこに快感を覚えるタイプの人間がいます。
これをコントロールフリークといいます。
まあ多かれ少なかれみんなの周りにもいるはずですよ。
あ〜いるいる。
(学生)やたら仕切りたがるやつな。
お前だろ。
(学生)俺!?まあそれがいい方向に向いているうちはいいんですがね。
ホントに狙われるんすかね〜。
うるさい!俺の勘だ。
(圭市郎)あっ!ああ…。
(坂出)会長!
(坂出)おいこら待てー!会長!会長大丈夫ですか!?会長!ああ…。
俺だ。
何!?うん。
うんうん。
よし。
それじゃあ。
腕のやけどだけで済んだのは不幸中の幸いでしたね。
烈子さんと土岐子さんにも連絡…。
わざわざ呼ぶことはない。
大したことじゃない。
包帯とサングラスの女?
(坂出)はい。
顔はまったく分かりませんでした。
くそっ!先輩の勘外れましたね。
いやターゲットは違うが「火に包まれて殺さるべし」硫酸によるやけども広い意味ではそうとれる。
(杵築)まあそうっすけど。
(篠原)とにかくその包帯女を早いとこ捕まえることだな。
(杵築)あっ。
失礼します。
(チャイム)では今日はここまで。
(学生)腹減った。
(学生)何か飯食いに行こうよ。
(学生)いいよ。
包帯女?硫酸?違う!それは今回の見立て殺人とは無関係だ。
(篠原)えっ!?烈子さんは今どこに!?・あ…ああ!うー!烈子姉さん!
(土岐子)誰か!誰か来てください!
(烈子)うう…!
(土岐子)姉さん!
(香取)どうした?烈子姉さんが!
(香取)あっ…。
(土岐子)開かないんです!姉さん!
(非常ベル)
(香取)あっ開けてください!
(土岐子)早く!ああーっ!
(土岐子)早くしてください!
(香取)助けるからな!
(香取)うわっ!
(土岐子)キャ!姉さん!姉さん…。
(篠原)直接の死因は熱傷による気道閉塞です。
苦しかったでしょうね〜。
身を焼かれながら死んでいったんですから。
で部屋の中。
テーブルの周りの損傷が激しいことから火元と断定しました。
灰皿には何かを燃やした形跡がありました。
いずれにせよこれは烈子さん自身が火を付けたことは間違いありません。
なぜです?密室だったからですよ今回も!これは自殺です!じゃなきゃ呪いだ呪い。
いいえ篠原警部。
断言してもいい。
これは他殺です。
何でだよ!?例の包帯女の存在です。
正体は不明ですが警察のマークを烈子さんから外すためのフェイクだったことは間違いない。
火が広がる前に彼女は逃げようと思えば逃げられた。
これどう説明するんですか!?それに先生あなた澄子さんのことも何一つ解き明かしてないじゃないですか!これが殺しだったらわれわれ警察はみすみす烈子さんを!これだけは確かです。
次は土岐子さんか圭市郎さんどちらかが狙われます。
よく調べましたね。
助かります。
先生のためなら喜んで。
あっお待たせしました。
こちらです。
施術が1件入ってまして。
こちらこそ突然お邪魔してすみません。
どうぞ。
皆さん大変でいらっしゃいますね。
ご不幸が重なって。
僕はまだいいんですけど会長も土岐子も相当参っています。
心のケアが必要です。
そうですか。
今日は別件で伺いました。
このクリニックは以前医療ミスで裁判沙汰になっていますね?同クリニックでアンチエイジング施術を受けた女性らが術後に痛みやひきつれなどの後遺症が残ったとして集団で提訴。
原告は10名。
損害賠償請求額は4億円に上った。
訴えられたのはこのクリニックの執刀医。
会長の圭市郎さんや澄子さんの他あなたも含まれています。
10名のうち4名を担当されましたね?どうしていまさらそんなことを?少し気になりまして。
医者だって人間です。
完璧ではありません。
とはいえ美しくなりたいと願う患者さんの心と体を傷つけてしまったことは深く反省しています。
で?このことが何か関係あるんですか?例の正体不明の包帯女。
この中の誰かが会長を狙ったっていうんですか!?可能性はあります。
顔を隠すだけならスカーフでも何でもいいはず。
わざわざ包帯を巻いていたことに何らかのメッセージを感じます。
復讐というわけですか。
なら僕も狙われるかもしれませんね。
圭市郎さんが襲われてどう思われました?えっ?あなたと土岐子さんとのご婚約はまだのようですね。
圭市郎さんがお認めにならないからですか?だとしたら何だというんです?理由は?分かりませんよ。
あなたはそのことについて圭市郎さんを恨んでるんじゃないですか?何を言うんですか…。
僕は会長に感謝こそすれ恨んだことなんか一度もありません!
(篠原)分かりました。
医療ミスの被害者ですね?調べておきます。
それと…。
先日はすみませんでした怒鳴っちゃったりして。
つい気が立っちゃって。
おわびというのも変ですが一つ参考になればと。
はい。
倉橋澄子の夫で不動産部門社長の香取幸二ですが…。
(篠原)彼はかなりの借金を抱えています。
ギャンブル癖があるそうです。
借金…。
なるほど。
ありがとうございました。
ちょっと香取さんのところへ立ち寄りたいんですが。
いいですよ。
例の集団訴訟ですか。
グループ全体にとっても大きなダメージでしたよ。
でも裁判には勝ったんですよね?裁判にはね。
会長が金にものをいわせて最強の弁護団を結成したので。
「裁判には」とはどういう意味ですか?美容整形は信用第一。
表沙汰になった時点で負けでしょ。
確かに。
でもね昔澄子に聞いたんですが実はわりとよくあることなんです。
医療ミスがですか?大なり小なりね。
ちょっとしわができてしまったとかそんなのも含めて。
だから被害者同士が団結する前につぶしておくべきだったんだ。
つぶすというと具体的には?訴えられる前に示談に持ち込み同時に誓約書を書いてもらうんです。
「この件について今後一切口外しない」とね。
文字通りお金で解決するわけですね。
このご時世情報管理が何より重要ですから。
うちのグループには会長直属でそれを担当する部署があると聞いています。
その資金はどこから?さあそこまでは。
まあ会長も色々手広くやってますからお金はあるんじゃないですか。
なるほど。
そこは香取さんとしても気になるところですよね。
はっ?どういう意味ですか?あなたは表向き香取姓を名乗っている。
だが実際は倉橋家の婿養子です。
しかし澄子さんが亡くなったことで微妙な立場になった。
圭市郎さんがあなたとの養子縁組を解消してしまえば文字通り赤の他人になってしまう。
何が言いたいんだ。
しかしその前に圭市郎さんに何かあれば話は別ですが。
失礼な…出ていってくれ!
(杵築)医療ミスの原告団ねぇ…。
(篠原)この中に包帯女がいるはずだ。
防犯カメラで背格好と現場にいた時間は分かってるんだ。
一人ずつつぶしていくぞ。
また警部の勘っすか?
(篠原)ああ。
もちろんだ。
人骨?これも同じ八坂村だ。
「呪縛の家に棲みたる者は水に浮かびて殺さるべし」「呪縛の家に棲みたる者は火に包まれて殺さるべし」
(篠原)紅霊教という新興宗教にかけられた呪いというわけか。
これは他殺です。
狙いは金か?
(菊川)復讐というわけですか。
何が言いたいんだ。
倉橋家に恨みのある人物がいるということになりますね。
ハァ…。
(古沢)よう。
あっお父さん。
いつものくれる?
(マスター)かしこまりました。
どうしたんだ?浮かない顔をして。
あっ…。
正直攻め手に欠けています。
ああ1件目の溺死は事件性なかったらしいな。
解剖の結果も外れでした。
2件目も何も出てこなければ僕は科学的根拠なしで犯人と対峙しなければなりません。
非常に苦しい闘いになります。
そうか…。
そういえばお父さんどこへ行かれてたんですか?監察医務院。
あの…大塚のですか?ああ。
(解剖医)《古沢教授!どうしてここへ?》《倉橋烈子さんのご遺体だね?》《は…はい》《解剖の結果は?》《死因は検視のとおり熱傷による気道閉塞です》《特に不審な点はありません》《死因を究明するだけでは不十分なんだ今回》
(解剖医)《えっ?》《採取したサンプルはどこにあるかな?》《持ち帰って調べたいんだよ》
(解剖医)《分かりました》わざわざ調べてくださったんですね?名探偵が疑問を抱いてるんだ。
法医学者も全力で協力しないとな。
お父さん…。
成分分析の結果ホトケさんの気管と肺からほんの微量だがね神経性の毒物が検出されたんだ。
神経性の毒物…。
《何なのよ!》
(古沢)おそらく灰皿か器の上で彼女は何かを燃やしたんだ。
その燃やしたものか器に毒が塗られていてそれが気化して肺から体内に回った。
《うっ…ゴホッ…》逃げようと思えば逃げられた…。
違う。
体が言うことを聞かなかったんだ。
やはりあれはれっきとした殺人だったんですね?そうだな。
あの部屋は密室だったんだろ?彼女はあくまで自分の意思で部屋に入って自ら鍵を掛けた。
そして何かを燃やしたんだ。
そう。
そこが謎なんです。
でもおかげで糸口はつかめました。
本当にありがとうございました。
ハハッ。
ところであの人骨の方はどうなってるんだ?あっそちらの方はあのうまだなんです。
まあいいや。
別に急ぐ案件でもないし。
ただ発見場所にはほこらの跡がありました。
(古沢)ほう。
祈祷所のような施設があったかと思われます。
あの村にはかつて紅霊教という新興宗教の本部がありました。
そこが現在倉橋家が住んでる屋敷です。
(古沢)ほう妙なつながりだね。
まるであの家に呼び寄せられたかのように運命的なものを僕は感じます。
う〜ん…呪縛の家か。
もっと深く知る必要がありますね。
(土岐子)あのうさっきから何を?実は松下さんが走り書きを残していたんですよ。
事件の鍵を握る何かがあるかもしれないって先生が。
この屋敷の見取り図でしょうね。
ここは昔あった別館の跡です。
でもこんなとこにいったい何があるんです?おそらく紅霊教に関する秘密。
えっ?彼はそれを知ったため襲われたと僕は考えています。
《うわー!》《うっ!ああ…》印の付いた場所がこの辺り。
あっ…。
ENEって…。
もしかして東北東?さすがですね早乙女さん。
2・3・4・5・6。
先生!
(土岐子)こんな地下があるなんて知りませんでした。
この屋敷が元紅霊教の本部だったことはご存じですよね?圭市郎さんがなぜこんないわく付きの屋敷を買い取ったのか…。
(土岐子)これは…。
教壇が元信者から巻き上げた財産。
これが隠されているのを知っていたからではないでしょうか。
(土岐子)父が…。
これ全部換金したらとんでもない額になりますよ。
え〜。
おお…。
圭市郎さんが裸一貫からここまで上り詰めることができたのもこの潤沢な資金があったからですよ。
・ギャー!うう…。
(土岐子)えっ…仏像ですか?いや…これは人間の遺体ですね。
(土岐子)えっ!?ミイラ化している。
死後数十年はたっているでしょうね。
(土岐子)数十年って…。
いったい誰なんです?・とうとうたどりついてしまったか。
(土岐子)お父さま?倉橋さん。
この方は卜部舜斎。
紅霊教の教祖ですよね?卜部舜斎…。
(圭市郎)なぜそう思うんだ?この印が物語っています。
この宗教の考えを大まかに言いますと水・火・土・風の四大元素をあがめるものです。
その考えは古代ギリシャ時代からあるもので土俗信仰にもよく取り入れられております。
紅霊教を起こした卜部舜斎とは果たして何者だったのか?僕はここで卜部家と倉橋家の奇妙なつながりに気付きました。
つながり?はい。
卜部舜斎は自分の娘3人に聡海陽子楓と名付けました。
ほらそれぞれ水・火・風を表しています。
そしてあなたの娘も澄子さん烈子さん土岐子さんと水・火・土がモチーフになっています。
最初はただの偶然かと思っていましたが四大元素が紅霊教の重要な教義であることを知り確信に変わりました。
卜部舜斎は倉橋圭市郎さんあなたのお父上ですね?えっ?えっ…会長のお父さんが紅霊教の教祖?でも松下さんの調査では教祖の子供は3姉妹でしかも全員もう…。
実は長男がいたんですよ。
聡海陽子楓。
水・火・風。
あと一つは?土?そう。
圭市郎さんの「圭」は土2つでできています。
ホントだ。
たまたま屋敷を買った人の名前に土が付いているよりも生き残った息子が戻ってきたと考える方が僕にとっては自然でした。
戻ってきたというと?疎開のようなものです。
相次いで娘を失った舜斎さんは危機感を覚えせめては長男だけでも助けようとしたのでしょう。
(舜斎の泣き声)いつか必ず一族が隆盛を極めることを願って。
(土岐子)本当なの?お父さま。
(圭市郎のせき)
(土岐子)あ…お父さま。
(圭市郎のせき)
(土岐子)本当なら話してお父さま。
あのころ私はまだ16歳だった。
それから遠い親戚に預けられて10年。
再びここに戻ったときは屋敷は朽ち果てていた。
だがこの地下室だけは無事だったんだ。
まるで父親が私のために守ってくれていたかのように。
全てを失った私だがこの財力があればやり直せる。
実際に私の人生はここから始まったのだ。
いいえ。
あなたは縛られてるだけです。
先代からの因縁に。
何を!?まさに呪縛の家ですよ。
卜部圭市郎さん。
真相はどうあれ怪文書の予告はまだ終わっていない。
このままでは悲劇は繰り返されるんですよ。
次はあなたかもしれない。
あるいは土岐子さんかもしれない。
お父さま…。
それでもいいんですか?あなたの知ってることを全て話してください。
あ…あの女…。
うっ!
(土岐子)お父さま!
(圭市郎)うっ…ああ…!
(圭市郎のせき)私…呼んできます!
(土岐子)すみません。
ええ。
ああそうですか。
はい。
分かりました。
どうぞお大事に。
圭市郎さん命に別条はないそうです。
そうですか。
よかった。
篠原警部。
調べました神津先生。
原告団全員見事に空振りでした。
そうでしたか…。
ご苦労さまです。
医療訴訟問題は無関係ということですか。
だとしたら何だっていうんですか。
いったい誰が得するんだ。
損得で言うなら土岐子さんですね。
えっ?先生彼女を疑ってるんですか?当然です。
疑わない理由がない。
でも彼女は私たちに相談を持ち掛けたんですよ。
ええ。
怪文書を見つけたのも僕たちを自宅に招いたのも彼女です。
そして2件とも第一発見者だった。
姉2人が死んでこれで倉橋圭市郎も死んだとなると遺産はほぼ独り占め。
となると婚約者の菊川も怪しいな。
彼は会長に感謝していると言っていました。
何かご存じですか?一応調べました。
彼は優秀な学生でしたが父親が残した借金のせいで進学は諦めていました。
このとき学費を援助したのが倉橋圭市郎だったそうです。
そりゃ感謝しますよね。
あとは借金まみれの香取か…。
「あの女」とは誰のことでしょうね。
《あ…あの女…》《うっ!》《お父さま!》他にもいたりして。
えっ?あっいやあのう最初に私たちが呼ばれたとき澄子さんが…。
《お父さまでしょ》
(圭市郎)《何?》《恨まれる相手なんていくらでも心当たりあるんじゃないかしら》あの顔には何というか父親の持つ汚らわしさを軽蔑するようなニュアンスがありました。
あれだけ精力旺盛な人だから浮気の一つや二つしててもおかしくないしそれこそ隠し子なんかいてもおかしくないんじゃないかなぁ…。
早乙女さん。
すいません。
ただの思い付きです。
いい着眼点だ。
えっ?もし圭市郎さんが認知していない隠し子がいたとして彼の血筋が全て途絶えた後に現れたらどうなるでしょう?遺産はその隠し子のもの。
調べてみる価値はあると思います。
というわけで警部よろしくお願いします。
お願いします。
またかよ…。
先生さよなら。
(昌子)さよなら。
じゃあね先生。
(昌子)はいさよなら。
では快楽殺人ではないタイプの連続殺人はどのような動機によるものなのか?少なくとも憎しみだけではないはずです。
でも先生憎しみで人を殺すことはよくあるんじゃないですか?それは感情によって思考が短絡つまりショートした状態であって長期的な異常行動の説明にはならない。
異常行動とは結果ではなく状態なのです。
愛情と憎しみ。
相反する感情を同時に抱えること。
すなわちアンビバレントの状態こそが常軌を逸した行為へと人を駆り立てるんです。
そしてたいていの場合行為者はそのことに対して無自覚だ。
ある連続殺人鬼に裁判官が問いました。
「どうしてあなたは殺人をやめられなかったんですか?」「どうしてそんなふうにしか生きられないんですか?」と。
殺人鬼はこう言いました。
「私は自分の人生が不自由だなんて思ったことは一度もありません」「むしろ自由です」怖っ。
人間の心の闇というのは実に興味深いものですね。
ここっすね。
(チャイム)木下さん。
木下昌子さん。
ちょっとお話伺いたいんですが。
いらっしゃいませんか?
(ノック)いないみたいっすね。
(篠原)木下さん!しっかりして!死んでるな…。
これ。
(篠原)毒物を飲んだと思われます。
自殺でしょう。
やっと捜し当てたのに。
木下昌子36歳。
中学の理科教師。
父親が倉橋圭市郎であることは確認済みです。
母親は彼の援助を一切受け付けず生活は相当苦しかったようですね。
圭市郎さんは認知するなり引き取るなりしなかったんですか?当時長女の澄子さんが奥さんのおなかの中にいましたからね認知なんかしちゃったら修羅場ですよ。
なるほど。
(篠原)これまでも倉橋家に嫌がらせを繰り返していたようです。
筆跡鑑定の結果例の怪文書も彼女が書いたものだと分かりました。
さらに学校の理科室から硫酸入りの瓶が紛失しています。
(圭市郎)《あっ!》《ああ…》
(杵築)背格好からいっても包帯女の正体は木下昌子ですね。
よっぽど父親のことを恨んでたんでしょう。
けれどこんな昔の写真を大事に持っていた。
父親に対する愛情と憎しみのはざまで彼女なりにもがいていたんでしょう。
それがある瞬間に爆発した。
倉橋圭市郎は初めから心当たりがあったんでしょう。
でも本当のことを言い出せなかった。
実の娘が他の姉妹を殺したなんて考えたくもなかったでしょう。
《あの女…うっ!》《お父さま!》せっかくここまで証拠を固めて引っ張れると思ったのに。
先に死なれるなんてなぁ…。
果たして自殺でしょうかね。
(杵築・篠原)えっ?彼女は共犯者にすぎない。
これはおそらく口封じでしょう。
他に共犯者がいるってことですか?一連の事件のきっかけをつくったことは間違いない。
だが殺人を実行したのは別の人物だと考えるべきだ。
何らかの利害が一致したことで木下昌子は真犯人に協力をした。
それがあの硫酸事件か。
ええ。
再三言っているようにあれは警察の目をそらし真犯人が第2の殺人を実行しやすくするためのフェイクです。
そして計画が大詰めを迎えた今彼女の存在が邪魔になったのでしょう。
くっそなめやがって!犯人はいったい誰なんですか?その前にまだ大きな謎が残っています。
《烈子姉さん!》《彼女はどうして自分で密室をつくったのだろう》《あっ…》
(せき)《そしていったい何を燃やしたのか?》《見られては困るもの?》
(土岐子)《事務所の方針で本名は非公開ですので》そうだったのか…。
(せき)ハァハァハァ…。
皆さんお揃いですね?揃いもなにも君が呼びつけたんだろう。
いったい何の用だ?今日は僕が導き出した結論を伝えに参りました。
結論?一連の殺人事件の犯人がようやく分かったんです。
今回の事件の発端はこの屋敷にまつわる因縁。
すなわち紅霊教の成り立ちまでさかのぼります。
全てはこの一族の積み重ねてきた業の深さが原因なのです。
まず第1の事件の真相についてお話ししましょう。
警察の見解は事故でしたがあれはれっきとした他殺です。
犯人は窓の隙間からあるガスを浴室に流し込んだのです。
そのせいで澄子さんは浴槽内で意識を失いそのまま溺死した。
ちょっと待ってくれ。
検視結果によれば毒物は検出されなかったそうじゃないか。
毒物とは言っていません。
僕も初めはそう思っていましたが分かったんです。
空気中に当たり前のように存在する二酸化炭素ですよ。
(菊川)二酸化炭素?以前香取さんがおっしゃったようにここにはビアサーバーがありますね。
(香取)《一杯どうです?生ビールも出せますよ》液化炭酸ガスです。
中身は皆さんご存じのとおり二酸化炭素。
それを使ったっていうんですか?使用人によれば中身はほとんど空だったそうです。
浴室の外へボンベを運びつないだチューブを窓から浴室に差し入れる。
あとは少しずつガスが出るようバルブを調節しその場を立ち去ればいい。
二酸化炭素は無色透明で空気より重いため気付かぬうちに浴室内に充満させることができます。
酸素濃度の低い空気を少し吸い込んだだけで人間は酸欠状態になり失神します。
浴槽に漬かっているときであれば当然…。
溺死する。
こうして犯人は別の場所にいながら殺人を実行しなおかつ事故死に見せ掛けることができた。
あとは騒ぎに乗じて外のボンベを元の場所に戻せばいいだけ。
それでは第2の事件についてはどうでしょう。
これも自殺や事故ではなく他殺です。
犯人は烈子さんが部屋へ入り自ら鍵を掛け何かを燃やすように仕向けたのです。
何かとは?その前に烈子さんの特徴について幾つか注目すべき点がありました。
彼女は普段から手鏡で自分の顔を見ていました。
あれはナルシシズムの表れであってモデルをやるような人には特段珍しいことではありません。
しかしその烈子さんがここでぎょっとしたような表情を浮かべたんです。
それはなぜか?ガラスに映る自分の姿を見たからです。
でも烈子さんは自分のことが大好きなんですよね?今の自分はね。
さてここで皆さんに見てもらいたいものがあります。
烈子さんの高校の同級生から借りてきました。
これが当時の烈子さん?彼女は自分の容貌がコンプレックスでした。
学校も休みがちで卒業後は誰も姿を見たことがないと言っていました。
おそらくこの家に長らく引きこもっていたと思われます。
烈子さんはこのガラスに映った姿を見て当時の自分を思い出してしまった。
だからぎょっとしたんですね?このままではいけないと当時の彼女は思ったんでしょう。
一念発起し自ら全身の美容整形を受けることにしたんです。
そうですよね?菊川さん。
そんなもの出されたら認めざるを得ないじゃないですか。
ええ。
執刀したのは僕です。
正直ここまで化けるとは思わなかった。
いまだに彼女は僕の最高傑作だ。
新たな肉体を得まさしく彼女は生まれ変わった。
しかしそれと同時に決して暴かれてはならない秘密を抱えることになったのです。
犯人はそんな彼女の心理を巧みに利用しまたしても別の場所にいながらにして犯罪を実行したのです。
犯人は烈子さんに「過去の写真を手に入れた」と伝えた。
「倉橋グループ本社に来れば返す」とでも言ったのでしょう。
こうして犯人は烈子さんを応接室までおびき寄せることに成功。
誰にも知られたくないという心理から彼女は自らドアに鍵を掛けた。
犯人は写真の他に灰皿とライターもさりげなく置いておいた。
気性の激しい烈子さんの性格からいってその場で写真を処分するはずだという確証があったのでしょう。
犯人はさらに灰皿から床のカーペットまで可燃性の液体を染み込ませていた。
これにより炎は一気に部屋中に広がりました。
《何なのよ!》《うっ!あっ…》
(烈子のせき)でもその時点で逃げようと思えば逃げられたはずです。
写真には熱で気化する神経性の毒物が塗られていました。
そのため彼女はその場を動くことができなかったのです。
何てひどいことを…。
以上のことから分かるように犯人は非常に頭のいい人物です。
そして倉橋家に強い恨みを抱いている。
もっと言うと倉橋圭市郎その人に。
菊川さん。
あなたは会長に感謝しているとおっしゃってましたね。
ええ。
なぜです?学費を援助してくれたからですか?そうです。
ではなぜ赤の他人であるあなたに援助したのでしょうか?それは…。
興味があったのであなたの母親のことを調べさせてもらいました。
もうお亡くなりになられたみたいですね。
父親はあなたが幼いころ借金を残して出ていった。
今篠原警部が調べてくれてるところです。
先生。
今こちらからも電話しようと思っていたところです。
ようやく捜し当てましたよ。
先生の言ったとおりでした。
例の写真も入手しましたので画像を転送しますよ。
ありがとうございました。
では。
(バイブレーターの音)やっぱり。
さてここで例の医療ミスによる集団訴訟の話をしましょう。
原告団は総勢10名。
うち4名は菊川先生の執刀ミスによるもの。
こちらがその4名です。
彼女たちには外見上共通点があります。
(香取)共通点?長い黒髪。
そして顎のほくろ。
ホントだ…。
もう一枚写真を見てもらいます。
長い黒髪。
顎にはほくろ。
菊川さんあなたの母親ですね?犯罪心理学にこんな言葉があります。
代償性母親殺し。
母親に対する愛情と憎しみ。
相反する感情を抱えた人物のとる行動の一つです。
母親によく似た特徴を持つ女性を傷つけることで自分の心の中の母親を殺すのと同等の効果を得る。
このことと学費のことを合わせて考えるとある結論が導き出せます。
あなたの母親は倉橋圭市郎さんの愛人だった。
やめろ。
(菊川)《ねえもうやめてよ》《あのおじさんが来るの嫌なんだよ》
(紗緒里)《うるさいわねじゃああんたが借金返せるの?》《あのバカ男が残した借金をさ》・
(チャイム)《はーい!》《ほら早く!》《お母さん…》あなたは女手一つで自分を育ててくれた母親を愛していた。
と同時に汚らわしさに耐えられなかった。
やめろ!《久しぶりだな。
おとなしくしてたか?》《会いたかったわ》それでもあなたは母親から愛されたかった。
そのためにはどうすればいいか必死で考えた。
(紗緒里)《それで頑張ったつもり?》《100点じゃなきゃ認めてあげないから》《あなたも圭市郎さんのように立派なお医者さんになりなさい》それで医者を目指したんですね。
そう。
全ては母親に認められたいがため。
しかしその母親はあなたが国家試験に合格する直前に亡くなった。
服毒自殺だったそうですね。
自殺の真相を確かめずにいられなかったあなたは自ら倉橋家に入り込んだ。
そしてある日真相を知ることになる。
(圭市郎)《4件ともわざとお前がやったんだな?》
(圭市郎)《まだあんな母親の影を引きずってるのか》《フッ…愚か者めが》《いや〜あの女はしつこかった》《捨てた私を恨んで当て付けのように自殺をした》《ハハッ。
こっちこそいい迷惑だ》《血は争えんな》《フフッ》《お前のようなやつに私の大事な娘はやれん》あなたは母親もろとも倉橋圭市郎に全否定され侮辱された。
その瞬間あなたの目的は彼への復讐へと変わったんです。
あとはきっかけさえあれば倉橋家を絶望の淵にたたき落とすことはいつだってできたわけです。
それがあの怪文書。
フッ…。
最初から犯人の目星は付いていたよ。
(澄子)《木下昌子。
覚えておきなさい》《あの女お父さまに認知されなかった腹いせに色々嫌がらせしてくるのよ》《そうなんですか?》《まあもともとはお父さまが諸悪の根源なんだけどさ》
(菊川)それで利害が一致したふうを装い彼女を引き込み包帯女の役割を与えたんだ。
《分かったわ。
あなたの言うとおりにする》《薬品の調達なら任せといて。
これでも理科の教師だから》《うん》《面白くなってきたね》《一緒にあの家をつぶしてやりましょう》いずれ口封じに殺害することも初めっから計画していた。
もちろんさ。
ちょっと待ってください。
昇さんが父を恨んでたことは分かりました。
でもだからといって姉たちを殺す理由にはならないはずです!ハハハハ…。
つくづくおめでたい女だな。
倉橋圭市郎に復讐を果たすにはただ殺すだけでは足りない。
あいつの大切なものを次々と奪い圧倒的な絶望を与えてから殺す。
昇さん…。
土岐子。
君を殺せなかったのは残念だよ。
だけど最後の目的はもう達成した。
えっ?
(時報)
(せき)ああ…あっ…。
ああ…。
うっ…ハァハァ…。
ハハハハハ!ざまあみろ!ハハハ…。
僕をバカにするからだ!ハハハハ…。
アッハッハッハッハ!あなたが圭市郎さんに飲ませようとしたのはこれですか?まさか…。
後で成分分析してもらいましょう。
これぐらい僕が予測できないとでも?ああ…ハァ…。
ハァ…。
ああ…ハァ…。
時間稼ぎのつもりだったのに…。
裏をかかれたのか…あんたに…。
最後の最後にやつを殺せなかった!チクショー…。
(菊川の泣き声)
(杵築)行くぞ。
ほら。
昇さん…昇さん!昇さん…。
(泣き声)
(古沢)そうか…。
土岐子さん気の毒だったな。
僕のやったことは正しかったんでしょうか。
当然じゃないか。
これ以上の犯行を未然に防いだんだから。
あっ。
ご報告忘れてました。
うん?例の人骨の件。
おっ分かったの?はい。
さすがだね。
行方不明だった卜部舜斎の奥さんのものでした。
う〜ん。
圭市郎さんとのDNA鑑定で親子だということが立証されました。
そうだったの…。
おそらくあの地下室で舜斎さんの最期をみとり村人に見つからないよう厳重に封をした上で一人山へ入っていったのでしょう。
紅霊教の祈祷所か。
ええ。
いかさまとはいえ夫婦二人で築きあげたものですからね。
何とも悲しい話ですが。
それが夫婦の絆というものじゃないでしょうか。
絆か。
あっそう絆といえば…。
今度こそこの子いい子なんだけど。
紹介したいんだよ。
どうだい?ん?ほら。
結構だと言ってるじゃないですか。
いい子なんだけどね〜。
駄目かな?
(松下)いや〜ご心配おかけしました。
不肖松下研三もうすっかり元気であります!ハハハ早速騒がしいな。
もうちょっと寝ててもよかったのに。
え〜英美さん…。
心配してくれてたんじゃないんですか?はいはい。
で結局何があったのよ?いや…隠し財産のことまではつかんだんですけどね。
でもボディーガードの男の人の顔が怖くてつい逃げちゃったんですよ。
それでうっかり足を滑らせて…。
《うわー!》《うっ!ああ…》自分で落ちたんじゃないの!まあそうですね。
もう人騒がせなんだから。
どうせあの土岐子さんにうまく乗せられたんでしょ?奇麗ですもんね。
いやいや…。
確かに奇麗ではありますけど何て言うかこうつかみどころがないっていうか。
まあ一言で言いますと僕のタイプではないってことですね。
英美さん治ったら埋め合わせにデートします?しないし。
てか何の埋め合わせなのよ。
いや心配かけたから。
そもそもね電話し過ぎ。
メールにしてメール。
あれから何をする気も起きなくて。
父も入院しました。
もう長くないでしょう。
私の様子を見にきてくださったんですか?それもありますがちょっと確かめておきたくて。
あなたは菊川医師の一番近くにいた人間です。
ひょっとして彼の異常性に気付いていたのではないんですか?にもかかわらずあえて見ぬふりをしていた。
もちろんだからといって罪に問われるわけではありません。
あなたがどう考えていたかなど証明のしようがありませんからね。
僕はただ純粋に好奇心から知りたいのです。
あなたはあの怪物をわざと野に放ったのではないですか?この家にまつわる全てを葬り去るために。
呪縛の家から解き放たれ自由と財産を得るために。
さっきから何をおっしゃってるんですか?神津先生。
私は自分の人生が不自由だなんて思ったこと一度もありませんよ。
むしろ自由です。
そうですか。
2015/07/10(金) 21:00〜22:52
関西テレビ1
金曜プレミアム・神津恭介〜呪縛の家〜[字][多]
資産家一家が次々と事故死!家にかけられた呪い!?怪文書との関連は?名探偵・神津恭介が連続密室殺人の謎を解き明かす時、悲劇の一家の真実が明らかになる…
詳細情報
番組内容
神津恭介(片岡愛之助)は法医学者で義理の父・古沢三郎(里見浩太朗)から、神奈川県で見つかった“人骨の資料”を渡され、調べてほしいという相談を受ける。そんな中、生命保険調査員の早乙女英美(水野真紀)から神津へ1本の電話が…。ルポライターの松下研三(藤井隆)が何者かに襲われケガを負ったという。慌てて病院へ駆けつける神津。病院で神津は、美容外科クリニックで広報をしている倉橋土岐子(前田亜季)と出会い
番組内容2
「私のせいで何かに巻き込まれてしまったのでは…」と打ち明けられる。
早乙女とともに神津は、倉橋家のある“八坂村”へ出向くことに。その場所“八坂村”は偶然にも三郎から依頼された“人骨”が見つかった場所だ。立派なお屋敷に倉橋家が勢ぞろいする中、土岐子は郵便受けに入っていたという“怪文書”について話し始める。“呪縛の家に棲(す)みたる者は 水に浮かびて殺されるべし”。そんな“呪縛の家”から
番組内容3
はじまる怪文書の内容に怖くなった土岐子が、松下に相談したところ事件に巻き込まれたというのだ。“呪縛の家”は倉橋家をさしているのだろうか。
捜査に協力すると決めた神津。するとその夜、長女の澄子(月船さらら)が浴槽で死んでいるのが見つかる。“水に浮かびて殺されるべし”と、まさに“怪文書”通りだ。神奈川県警捜査一課の篠原継雄(宇梶剛士)が捜査するが、入浴中の事故死との見方が強いという…。
出演者
片岡愛之助
水野真紀
藤井隆
前田亜季
姜暢雄
月船さらら
舞羽美海
篠田光亮
寺田農
里見浩太朗
スタッフ
【脚本】
入江信吾
【原作】
高木彬光『呪縛の家』(光文社文庫刊)
【編成企画】
成河広明 (フジテレビ)
清水麻利子(フジテレビ)
【プロデュース】
佐々木淳一(松竹)
足立弘平(松竹)
西麻美(松竹)
【監督】
本田隆一
【制作】
フジテレビ
【制作著作】
松竹株式会社
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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2/0モード(ステレオ)
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