山村美紗サスペンス「不倫調査員片山由美9 黒髪人形・尼寺殺人事件」 2015.07.10


(乃梨子)ええ男やなぁ。
うちがもうちょっと若かったらこの溢れ出る色気で口説いてるのにな〜。
(片山由美)乃梨ちゃん惚れっぽいなぁ。
ようそれで不倫調査員務まってるな。
まぁ年の功やね。
で今回のターゲットがこの石原修一ってわけやね。
そう。
やり手のフリーライターで今花岡清泉のことを調べてんねやて。
花岡清泉か。
不幸な女たちの駆け込み寺を開いて大評判。
カリスマ的な人気もあるらしいな。
なんやベールに包まれてるような感じやろ。
石原さんが調べてるのもそこらしいんやけど。
(康子)待て〜!あっ!ねぇ修羅場修羅場!
(康子)覚悟しなさい!落ち着いて落ち着いて!落ち着いて〜!あんたは片山由美?はい。
もとはというとあんたが原因なのよ!えぇ〜私?あんたの作った調査の報告書それが諸悪の根源なのよ!よりにもよって亭主の浮気相手が実の妹だなんて!
(毬子)姉さん許して!とともかく人殺しは…人殺しはやめましょう!人殺し?えぇ…冗談じゃないわよ!亭主と寝た罰としてこの子の髪の毛を切ろうとしてるだけよ。
髪?あ髪の毛!そうだわ片山由美!代わりにあなたの黒髪いただくわ!いやいや!何でこうなるの…。
これが不倫調査員の宿命や!
(清泉)恋の究極はまさしく不倫です。
人間は女も男も死ぬまで性と愛のことを考えてる。
でしょ?じゃなきゃバイアグラなんて売れないもんねぇ。
(笑い声)
(清泉)人間って生涯性愛を求める生臭い存在なのよ。
あれ?石原さんまだ来てはらへんのですか?
(咲江)えぇ。
自分から誘ったくせにね。
さて今日は不倫の結果すさまじい人生を余儀なくされた歴史上の人物のお話お話。
文覚上人といえば宗教のうえではたいへんな偉人だけれども不倫の果てに頭を丸めた人なのよね〜これが。
(女性)嘘!?
(笑い声)嘘じゃないのよ。
文覚上人はもともとは遠藤盛遠という名で平家の武士だったんだけれど袈裟御前という人妻にひと目惚れしてしまったの。
まそれもありなん。
袈裟御前は私のようにいい女だったのよ。
(笑い声)
(清泉)こらこら笑うところじゃありませんよ。
袈裟御前もまた不倫と知りつつ盛遠との逢瀬を重ねてしまった。
めくるめく快楽にのめり込んでしまったの。
盛遠はどうしても袈裟と別れられず袈裟御前の夫を殺そうとします。
その企みを知った袈裟御前は盛遠を夫婦の暮らす邸内に手引きするのよね。
盛遠は刀を抜くと一気に夫の寝所に踏み込むやえいやぁ!してやったり…。
これで邪魔者はいなくなり袈裟と添い遂げられると思い布団の中を見下ろすと…そこに横たわっていたのはなんと愛する袈裟御前その人だったのです。
さすがやわ花岡清泉さんの話。
ユーモアたっぷりで感服したわ。
乃梨ちゃんは甘いなぁ。
お代は見てのお帰りの講談話と変わらへんやんか。
甘いのはあんたのほう!今の若い人はな抹香臭い道徳話なんか耳貸さはらへんもん。
そりゃそうやけどな。
それにしても石原さん遅いですねぇ。
(奈津子)仕事熱心な人だし来ないわけないんですけど。
言わんこっちゃない。
奈津子やっぱりあなたの片思いなのよ。
あの人のことはあきらめたほうがいいって。
ママ…そんなこと言ったって。
石原さんうちの財産狙ってあなたに近づいてきたんじゃないの?ねぇ片山さんそこのところよ〜く調べてくださいね。
(早苗)あのう片山由美さんじゃありません?あ!あなた…。
川島早苗です。
その節はお世話になりました。
あなたも清泉さんの講演会聴きに?いえ。
私今清庵で暮らしてるんです。
清庵?清庵ってあの清泉さんが庵主さまを務めてる尼寺?はい。
実は私…。
あ…ちょっと…。
もともと男を見る目がないのか由美さんにお世話になったあとまた騙されちゃって首吊ろうとしたんです。
えぇ!そこを通りかかった清泉様に救っていただいて。
清庵には私みたいな境遇の女性が他にも何人かいるんです。
そんな私たちに清泉様は生きる希望を与えてくださるんです。
あぁ清泉様にねぇ…。
(拍手)清泉さんサインください!
(蔵田)えらい?M5$で!*こりゃまた7k9=。
(蔵田)偉そうなことを言うとるが性愛にまみれとるのは花岡清泉…己よ。
男から男へと渡り歩き男の精を吸い尽くしたという噂じゃ。
相手の男やその家族を破壊したのもおそらく2度や3度ではあるまいて。
善剛寺のご住職はお酒が入るといつも清泉様の悪口を言い募るんです。
ご住職いい加減になさってください。
お酒が過ぎますよ。
おぉ早苗か。
いつまでもそんな尼寺におらずにわしのところに来い。
幸せにしてやるぞ。
おやめなさい!それ以上の乱暴狼藉は許しませんよ。
蔵田住職あなたも僧籍にある身なら恥を知りなさい。
いい気になるなよ花岡清泉。
お前の悪行は御仏が許さん。
近いうち必ずや天罰が下るだろうよ。
(笑い声)〜
(石原)うっ…。
はいもしもし片山です。
(島崎)おはようございます。
中央署の島崎です。
あっお世話になってます。
課長はまだおやすみですか?えぇあ!事件ですか?殺人事件が起きました。
どこで?誰が殺されたんです?
(片山俊介)でしゃばるな。
刑事は俺だよ。
はいかわった。
何?ガイシャは?フリーライターの石原修一?場所は?嵯峨野の善剛寺。
状況は?
(所)ご苦労さんです。
ご苦労さん。
(所)死体は犬の散歩にきた近所の住民が発見しました。
死亡推定時刻は昨夜の10時から11時です。
背中から鋭利な刃物を突き立てられ傷は心臓まで達しています。
凶器は?近くには見当たりません。
鑑識さん!
(鑑識)はい。
この名刺から石原修一の身元が確認されました。
(島崎)課長このカメラなんですがメモリーカードが抜き取られています。
犯人にとって何かまずいものが写されていたということでしょうか。
それとポケットに入っていたガイシャのハンカチなんですがよく見てください。
(所)人間の毛髪です。
ハンカチの中に大切そうに包み込まれていました。
俊さん!俊さん!このお嬢さんね被害者とおつきあいしてたの!刑事さん早く。
ほら!昨日の午後待ち合わせた花岡清泉の講演会を石原さんにすっぽかされた?はい。
でも昨夜彼から電話があったんです。
電話が?何時に?8時27分。
それまでは…私のほうから何回も何回も石原さんのケータイに電話をしたんです。
でもいつも留守電になってて。
で8時27分に向こうから連絡があった。
えぇ。
用事ができて花岡清泉さんの会に行けなくてごめんって。
私からどこかで食事しない?って誘ったら10時に人に会うから駄目だって。
10時に?どこで誰と会うと言ってました?聞いたんですけど答えてくれませんでした。
失礼します。
はい。
(柳原)石原の部屋ですが部屋が荒らされています。
特にパソコンが叩き壊されています。
それにCDDVDデータフロッピーディスクのたぐいが一枚も見当たりません。
複数の女性から恨まれていた?
(柳原)石原は取材先の女性を言葉巧みに口説き落とし情報を得ていた。
そのために官庁や会社をクビになり石原を恨んでいる女は大勢います。
容疑者は数知れずということか。
男女関係が動機だとすると婚約間近だった山崎奈津子も怪しいですね。
(島崎)彼女は祇園の老舗呉服店のひとり娘で今までずいぶん石原修一に貢いでいたことがその後の調べでわかりました。
いざ婚約の段になって石原に袖にされそうになり…。
いやよ!私絶対別れないから。
うるせえなぁ
(島崎)逆上して…一気にということも。
確かに山崎奈津子は石原にベタ惚れだったな。
それを心配した母親がその…あの…。
不倫調査員片山由美すなわち課長の奥さんに石原の素行調査を依頼した。
はいだが…。
本格的な調査が入る前に石原は殺害された。
そうなんだよ。
(鑑識課員)課長!ガイシャが持っていた黒い毛髪の分析結果が出ました。
推定年齢40代から60代にかけての女性のもので微量ですがヘアカラーの成分が検出されました。
ヘアカラー?
(鑑識課員)はい。
(平太郎)え?調査対象が死んじまったんだから石原さんの調査は打ち切りかね。
じゃ何と言われようと手付金は返さんからね。
社長ご安心を。
調査は続行です!そうです調査続行!
(栄子)はい!先ほど山崎さん親子にお目にかかってきました。
片山さん奈津子の無実を証明するためにも石原さんの周囲を徹底的に調べてください。
はいそりゃよかった。
だけどそれは新しい依頼だから別料金ってことで。
んなアホな!調べることは同じなんやから。
(栄子)はぁ〜がめついおっさん!元刑事が聞いて呆れるわ。
転職間違えはったん違います?
(3人)ほんまほんま!何を言ってるんだね。
君たちに中小企業経営者の苦労がわかってたまりますかって!あかんって!めっ!めっ!めっ!〜気持悪いねあの人形。
ねぇほんと不思議だよね!髪の毛がしぜんに伸びるなんて。
なんか細工してるんじゃないの?違うよ!ほんとに呪われた人形なんだって!エクステエクステ!そんなこと言ったらほんとに呪われちゃうよ!髪が伸びる市松人形…。
1,000円!?高いな…1,000円?〜
(蔵田)石原修一には天罰が下ったのじゃ。
あやつお葉さまをニセモノだと言い張り雑誌に告発記事を書いてやるとぬかしおったわ。
(根来)仏を畏れぬ極悪人じゃ!のう?住職。
(女性)あっ!あそこあそこ!まぁこれはこれはようこそいらっしゃいました。
どうぞどうぞ。
こちらにおわしまするはいかなる科学でも解明できない超常現象国宝級のお葉さまにございます。
国宝級?
(蔵田)日本国内はもとより全世界から注目をされております霊能人形。
人間の祈祷や怨念をすべて黒髪に込められその黒髪が年々伸びております!
(蔵田)あぁ…ありがとうございます。
髪の毛の伸びる人形?うん!噂には聞いてたんやけどね善剛寺のお葉さまという人形しぜんに髪の毛が伸びるんやって。
善剛寺?嫌だ…。
石原さんが殺された現場の裏が善剛寺。
うん。
俊さん。
そんなそっけない感じでいいのかな?石原さんはねそのお人形は捏造品やないかと探ってたらしいのよ。
善剛寺の人形を石原修一が探ってた?そう。
ふうん…。
はい!え?お駄賃は?おかわり。
はい…。
(所)すると課長は石原がハンカチに大切そうに包み込んでいたのは…。
善剛寺のお葉人形の髪の毛じゃないかと思ってね。
なるほど…石原はそれが江戸時代の髪の毛ではないことを実証し告発記事を書こうとしたわけですね。
善剛寺は一年前までは誰も寄りつかない寺だった。
それが突然髪の毛が伸びる人形が話題になって全国から人が集まるようになった。
住職は蔵田鉄寛。
石原は他に何か人形がニセモノである証拠をつかんでたんじゃないかな。
そして写真を撮った。
(所)だからカメラのメモリーカードやパソコンのデータが盗まれたっていうわけですか。
(蔵田の笑い声)バカおっしゃい。
お葉さまの髪の毛はしぜんに伸びる。
この写真は10年前のお葉さまです。
髪の毛がまだ肩までしかございません。
ところが今のお葉さまはまこと見事な黒髪が…。
(蔵田)お葉さまは江戸時代初期からこの寺に伝わる人形なんだが長い間この蔵の片隅で眠っておった。
ところがわしは去年放り出されたままになっておる人形を見つけた。
わしがこの寺を継いだ10年前には肩までしかなかった黒髪がなんと腰まで伸びておった。
今の人形の髪の毛は絹糸や合繊を使っておる。
しかし江戸時代から伝わる由緒正しい市松人形は本物の人間の毛髪を使っておる。
だから…。
しぜんに伸びても不思議はないということですか?そのとおり!400年間肩までだった髪の毛がこの10年で突然腰まで伸びた。
まさしく科学では解明できないもの。
自然の憑依摩訶不思議なことだ。
そんな疑いを持つとはあの石原とかいう大バカ者と同じだな。
それでは石原修一はやはりこちらに?何回も通ってきおったわ。
あいつは金のためならなんでもヨタ記事にするインチキ野郎だ。
これを見ていただけますか?この毛髪はこのハンカチにくるまれて石原さんのポケットに入っていました。
長さといい色といいこの人形の髪の毛に似ていませんか?あやつわしの目を盗んでお葉さまの髪の毛を盗んだんだな。
分析の結果この毛髪はわりと最近のものでね女性用のヘアカラーの成分アセトジアミンが検出されました。
江戸時代にアセトジアミンなんて成分存在しないはずなんですがね。
(笑い声)この髪の毛はお葉さまのものではない。
違う髪の毛だ。
おそらく石原はこの髪の毛をお葉さまのものだと偽りわしとこの寺を陥れようとしたのだ。
うん間違いない!ご住職?うん?石原さんが殺害された夜の10時から11時ごろどこで何をされてました?うぬらわしを疑っておるのか?いいえ。
関係者の方々に一応アリバイをお聞きするのが決まりでして。
あの日は…。
(蔵田)午後は花岡清泉の講演会に出て懇親会でしこたま酒を飲みその後河原町の馴染みの店へ行き…。
寺に帰ってきたのは10時前後。
酔っ払ってそのまま寝てしまったわ。
すみませんが鑑定したいんですがこの人形の髪の毛1本ご協力願えませんか?断る!石原の持ってきた髪の毛は断じてお葉さまのものではない!即刻立ち去れ!やっぱり捜査令状とって押収するかな…。
でもなぁ人形の髪の毛1本でもし違ったら署の笑いもんだしな…。
髪の毛が伸びる人形の伝説や民話って結構全国にあるんやね。
そこに本買ってあるでしょ。
死んでしまった子供そっくりの人形を作ってお寺に奉納したらお誕生日のたびに髪の毛が伸びる…とかね。
「どうかうちの娘の髪の毛を切ってください」って父親が夢枕に出るからその人形を取り出してみたら…。
髪の毛が伸びていた。
そうなのよ…。
怖いじゃないかよ!そんな怖がらなくたって。
あっ善剛寺といえばねおかしな話聞いたよ。
善剛寺はなもともとは鏑木善幸さんという穏やかな方がご住職を務めてはったんえ。
あぁそうなんですか。
そのころは檀家も多くてな…。
じゃが11年前やったかいな関東のどこぞの寺の次男やっちゅう蔵田鉄寛が居つくようになり鏑木住職の身の回りの世話をするようになったんえそれから半年して鏑木住職は近所の檀家さんにご挨拶もなく姿を消したんだって。
ふうん…。
で檀家の連中は蔵田に問いただしたそうなんだけどね…。
蔵田:鏑木住職は修行の旅に出られました。
私がここに来て後継ぎができた。
これで心おきなく若いころからの夢でありました全国巡礼ができるとおっしゃいまして…それで檀家連中は納得したのか?いや一応警察に相談したらしいんやけど事件性が薄いってそのままになったんやって。
それで蔵田鉄寛はそのまま住職として居ついたわけか…。
うん。
(早苗)失礼します。
はい。
清泉様蔵田住職がお見えになりました。
はい。
書き損じは捨ててしまってもよろしいですか?いいわ。
早苗さんよろしく。
歴史的この屏風返してもらおうか。
もとはといえばわが善剛寺が所有していたもの。
それをおのれが鏑木前住職を色仕掛けで落とし込み奪った。
(清泉)そんな…言いがかりです。
ふん図星だろうが。
現世でさんざん悪行を重ねたおのれだからな。
鏑木住職に導かれて仏門に入るまで確かに私は心乱れただれた生活を送っておりました。
自暴自棄になったことも…。
だけれど…いいえだからこそ男に騙され生き方に迷っている女たちを救うことができるのです。
(蔵田)いいかげん名士気取りはやめろ!わしはな人を使っておのれが若いころどんな女だったか今調べておる。
〜蔵田さん…あなたのような御仁が同門に仕えているだけでおぞましい。
言うたな清泉!本来寺院は人々の修羅を救うもの。
それをあなたは利益を求めて財物をむさぼっている。
これは聞き捨てならんことを!名誉毀損で訴えるぞ!どうぞ。
警察が介入してお困りになるのはあなたではなくて?檀家はごまかせてもこの私の目はごまかせませんよ。
あなたは鏑木住職をどこへやったのです!?ふん…。
(所)蔵田鉄寛はかなりのなまぐさ坊主です。
蔵田はそもそもは千葉県のお寺の次男坊なんですが若いころから行いが悪く何回も警察沙汰を起こしています。
とりわけ女好きで地元の噂によれば見初めた檀家の娘を強姦まがいに犯してしまったことがあるらしいです。
だがそのときは住職である父親の尽力で示談になったんですが勘当同然で実家の寺を追い出され食い詰めたあげく善剛寺に流れ着いたんです。
それからしばらくして鏑木前住職が謎の失踪をした。
蔵田は住職に頼まれたと言い張り後を継いだ。
(島崎)だが檀家に見放されて泣かず飛ばず。
(島崎)そこで髪の伸びる人形をでっちあげてひと山を狙った。
そこに現れたのがこのフリーライターの石原修一だ。
お葉人形の髪の毛が伸びるのがインチキだと暴かれたら寺はまたさびれてしまう。
(島崎)そこで石原を殺害しお葉人形が捏造品であるという証拠のメモリーカードやパソコンのデータを奪い取った。
(所)しかし石原がお葉人形の毛髪を抜き取りハンカチの中に保存したことまでは気がつかず見逃してしまった。
ということなら見事に辻褄が合うんですがね。
課長!石原修一殺害の凶器と思われる包丁が発見されました。
山科の恋慕寺の境内です。
〜あっちです。
(柳原)辺りを掃除していたら寺の坊さんが発見したそうです。
どす黒い血痕が付着していたので不審に思い届け出たんです。
なぜ石原殺害の凶器とわかった?鑑識さんが石原の傷口と形状が一致している刃物だと気づき血液型を調べたところ一致したんです。
持ち帰ってもよろしいでしょうか?科捜研でDNAを鑑定しますので。
お願いします。
これは?
(柳原)袈裟御前を祀ったものです。
善剛寺?
(中村)なんや宣伝したわりにろくなもんないな。
(山田)長い間貧乏寺やったんや。
売れるもんはとっくに売ってしもうたんや。
(川越)そのお葉人形かて怪しいもんやからなぁ。
シーッ!ご住職来はったで。
あぁ皆さんようこそおいでくださいました。
我が善剛寺に代々伝わる由緒正しい品々でございます。
よく品定めをして高く買ってちょうだいね。
あれ?ご住職このお琴やけど…。
(蔵田)ははぁさすがお目が高い。
それはお値打ちもんですよ。
これもしかして花岡清泉はんの清庵にあったお琴では?あやつは安いほうを使ってそれは大切に保管しておりました。
清庵にあったもん勝手に売ってええんかいな。
花岡清泉はうちの鏑木元住職が育てた尼じゃ。
その琴ももとはといえばうちが所蔵していたもの。
それを先日私が取り戻してきたんじゃ。
ささ…気軽に値をつけてくださいね。
どケチどもが!せっかくまる1日割いたというのに!ろくな儲けにならんわ!〜よし蔵田鉄寛を任意で呼ぼう。
動機は十分だし石原修一殺害当夜のアリバイはない。
包丁に付着していた血液のDNAも石原修一と一致しましたしね。
よし行こう!
(サイレン)蔵田住職がどこ行ったかわからない?
(根来)ゆんべ夕食を差し上げてわし引き上げたんや。
今朝いつもどおり6時に来てみると住職の姿がのうて。
ほなわしゃこれで。
いませんよ。
墓のほうにも。
我々の動きを察知して高飛びしたということでしょうか。
とにかくもう一度徹底的に捜してみよう。
はい。
すみません。
(根来)はい。
これ開けてもらえますか?わしね開けることできませんねや。
(柳原)課長!窓が…。
柳原これ上がれるか?すみません。
これちょっと借りていいですか?
(根来)どうぞ。
(柳原)課長!人が倒れてます!〜ご住職!ご住職!課長。
〜背後から頭を殴られたようですね。
ホシは蔵田じゃなかったのか…。
はい。
(早苗)あっ由美さん?この間の清泉様の講演会のときはどうも。
早苗さん。
はい。
川島早苗です。
ごく内輪の会なんですけれども今度清泉様の説話会が開かれるんです。
女性だけが限定の。
よろしかったらいらっしゃいません?清泉さんの?はい。
この間の講演会でも取り上げた清泉様十八番の袈裟と盛遠。
ほら不倫を扱ったお話。
あぁ!あのお話の清泉様なりの解釈を披露する会なんです。
ぜひお聞きしたいわ。
明日の午後3時から。
場所は清庵です。
清庵ね。
一度伺ってみたいと思ってたから。
ほな明日。
ただいま。
(栄子)由美さん大変!遺体で発見された男性は善剛寺の住職蔵田鉄寛さん。
48歳です。
死因は頭蓋骨骨折と思われ警察では殺人事件とみて…。
これは物騒なことになってきたな由美さんよぉ。
うん…。
何か収穫あったん?え?石原さんの悪い噂ばっかりで事件につながることは何にも。

(清泉)袈裟!袈裟!お主はなにゆえ夫の寝所に寝ておったのじゃ?これ袈裟何か言わぬか!袈裟!袈裟!!盛遠は愛する袈裟御前をわが手にかけてしまいました。
袈裟御前はなぜ夫の寝所に寝ていたのか。
皆さんわかりますか?
(ざわめき)袈裟御前は不倫を恥じて自分の過ちを清算しようと夫に代わって自分が夫の寝所に寝て盛遠に討たれたのです。
袈裟御前は自分の死をもって不倫の罪をあがなおうとしたのです。
常日ごろ私は不倫こそが恋の究極だと話しています。
だけれどそれは本心ではない。
不倫は本当に切ない。
〜若いうちはそれがわからない。
まさしく恋は盲目。
相手に妻がいようが子供がいようが突っ走るだけ突っ走ってしまう。
周囲を傷つけるのを何とも思わない。
でもそれはまっとうな人の道ではない。
不倫は当人どうしのみならず確実に周囲の人々を傷つける。
不倫ブームの今だからこそ私は声を大にして言いたい。
あなたたち不倫は絶対おやめなさい!袈裟御前は辞世の句にこう記しています。
私の交際相手は見事な結婚詐欺師だったんです。
由美さんのおかげで被害を最小限に食い止められました。
そう。
早苗さんがお世話になったんですね。
お礼を申します。
いえそんな…。
でも清泉様私はそれに懲りずまたろくでもない男に引っかかって死のうとした。
そこを清泉様に救っていただいたんです。
清泉様は私の恩人です。
あの…先ほどのお話なんですけど…。
盛遠…?盛遠は袈裟御前を殺したあとでそのあとどうしたんです?袈裟の血のついた刀を夫の前に差し出し「どうかこの刀で自分の首をはねてくれ」と申し出るのです。
でも夫はそれを拒絶する。
それを美談だと称賛し殺生を嫌った夫を偉いと言う人がいるけれど私はそうは思いません。
なんでです?私が考えるにそこで盛遠の首をはねてしまえば盛遠は苦しみを味わうことなく袈裟が死んだのと同じ夜にまるで心中したかのように2人はあの世に一緒に旅立ってしまうからです。
妻を殺された夫はそれをよしとしなかった。
その代わり…生きよ生きて苦しめと地獄の責め苦を与えたのです。
一緒に死ねれば…あるいはその時死ねなくともすぐに後を追えればどんなに気が楽になることか。
生き残った者の苦しみこそが…まさしく贖罪。
苦しくて苦しくてでも耐えなければならない。
なぜならその罪を選んだのは自分自身なのだから。
それこそ…自分に与えられた業なのだから!〜清泉様…。
この蔵の鍵はダイヤル式です。
長年寺に勤めててこの番号知らないんですか?えぇ。
この鍵は蔵田住職ともう一方しか番号を知らんのですよ。
もう1人というのは?花岡清泉さんです。
前に蔵田住職が清泉さんに倉を貸してたことがあったんです。
花岡清泉に倉を貸していた…?じゃあ石原さん殺しの凶器の包丁袈裟御前の石碑のそばにあったん?ところがだその凶器を発見した恋慕寺の坊さんはそのまわり毎日掃除してたって言うんだ。
それなのに今ごろになって発見されたんだぞ。
ふ〜ん。
あっ!袈裟御前といえばね今日花岡清泉さんの説法に行ってきたんだけどなんとテーマは袈裟御前と盛遠やったんよ。
え?うちね初めて彼女の話を聞いたときは不倫を諌める説法なんかしてええかげんな人やなと思ったんよ。
不倫を商売にしてるんだったら君と一緒じゃない。
まあね。
けどね今日じかに会ってみてあ〜純粋な人なんやなと思った。
あの人ね絶対人には明かせない暗い過去を抱え込んでると思うわ。
お腹空いたお腹空いた!食べましょう食べましょう。
いい匂いね。
あれ?これ…善剛寺の蔵の見取り図?あぁなんでわかる?ここって蔵田住職さんが殺されたとこよね?あぁ。
お葉人形ってなに?落ってたん?例のほら髪の毛が伸びるで話題になった人形。
その髪の毛がばっさり切られてたんだ。
髪の毛切られてた?うん。
調べたんだけどやっぱり最近のものだっていうことがわかったんだよ。
じゃあ石原さんが狙っていたとおり捏造品やったんやね。
まぁそういうことだな。
寺男が白状したんだよ。
すみません。
髪の毛は知り合いの美容室からわけてもろうたんです蔵田住職に命じられて人形の髪の毛を細工してたって。
蔵田住職の遺体のそばに髪の毛を切った人形が置いてあるってことはこれは何か犯人のメッセージだと思うんだよ。
ねぇ…このお琴ってなに?はいそこまで!ちょっと!余計なことに首突っ込むな。
俊さん!そんなこと言うていいの?袈裟御前と盛遠はねお琴は重要な小道具なのよ!そうなの?そうなの。
ふ〜ん。
聞きたい?聞きたい。
ほな…よこし。
盛遠が散歩してるとあるお屋敷からお琴の音色が聞こえたの。
盛遠はその琴の音色にすっかり惚れ込んで誰が弾いてるのか興味がわいた。
ここは袈裟御前のお屋敷と言い伝えられている料亭。
ちゃんと断ってあるし行こう!おい…おい!お琴を弾いていたのは袈裟御前やった。
つまり盛遠は袈裟御前に一目惚れした。
つまり2人は知り合ったきっかけはお琴なのよ。
月日が経って盛遠が忍び込んでくる夜に袈裟御前が夫と最後の晩餐をするの。
事情を知らない夫は袈裟御前の琴の音色で眠りに落ちてしまう。
それから袈裟御前は夫の寝所に向かい自らの不倫を清算するために盛遠に討たれてしまう。
琴か…。
琴。
しかし蔵田住職とお琴ってどうもしっくりこないな。
髪を切られたお葉人形と同じように犯人の何らかのメッセージなのかな?蔵田住職に琴…。
石原さんが殺された凶器は袈裟御前の石碑のそば…。
それにタイミングよく花岡清泉の袈裟と盛遠の説話会か。
あっ!俊さん?清泉さんを疑ってるの?え?え?蔵田住職が殺されていた蔵は鍵がかかり密室状態だった。
その鍵の番号を知っているのは蔵田住職と花岡清泉だけだ。
密室…鍵の番号…。
あっ!お琴といえばね…。
中村:これもしかして花岡清泉はんの清庵にあったお琴では?えっ?じゃあ蔵田住職が抱えていたのは花岡清泉のお琴だっていうのか?うん…たぶんそうやと思う。
(島崎)課長!はい。
蔵田住職と花岡清泉の仲はとてつもなく悪かったそうです。
清泉は若いころ善剛寺で修行を積んだんですが清庵を興す際鏑木前住職から数々の仏具や調度品を譲り受けていました。
(島崎)蔵田は再三清庵に乗り込みその返還を求めていたそうです。
蔵田はそれを売り飛ばす算段だったんでしょう。
それだけじゃありません。
清泉は鏑木前住職の失踪にも蔵田が深く関わっていたのではないかと疑っていたらしいです。
蔵田と清泉の関係はわかった。
だがもうひとつ…最初に殺された石原修一と清泉の関係はどうなんだ?それなんですが石原がよく原稿を寄稿していた雑誌の編集部に聞くと…。
編集長!近いうちに特大スクープ持ってきますよ。
(編集長)おっ何だい?今をときめく花岡清泉のスキャンダル花岡清泉のスキャンダル?石原の口ぶりからするとどうやら清泉が若いころに起こしたある事件に関することらしいとのことです。
清泉は若いころに事件を起こしていたのか…。
はい刑事課。
なに?善剛寺の裏山で白骨死体!?
(警官)ご苦労さまです。
(所)ご苦労さまです。
この蔵書印は鏑木前住職のものですわ。
中国に行った時にですね有名な寺の坊さんにもろうたとかで大事にしてはりました。
鏑木善幸の?やっぱりそうじゃ!花岡清泉が噂してたとおり蔵田住職が鏑木さんを殺して寺を乗っ取ったんじゃ!そうかな?鏑木住職はお前が殺ったんじゃないのか?蔵田はもう死んでる。
死人に口なしだ。
そんな!わしゃ何もしてまへんよ。
警察の方が何か?
(所)蔵田住職殺害の件なんですが現場の蔵の鍵の番号をあなたもご存じとか?はい。
確かに私は知っておりますが?
(所)失礼します。
実は清泉さん…その後の捜査で鍵には蔵田さんの指紋の他にもうひとつ別の指紋がついていたことがわかったんです。
善剛寺関係者の指紋は全部採取して照合しましたが一致するものはありませんでした。
清泉さんぜひとも協力者指紋をお願いしたいんですが…。
そう…鍵についていたのはやっぱり私の指紋でしたか。
清泉さんあなたがいちばん最近あの鍵に触れたのはいつですか?さぁ…?庵の改築が終わって預けてあった調度をあの蔵から引き取ってからは一度も触れておりません。
(島崎)ここを改築したのは?2年前です。
(島崎)なんでまた仲が悪い蔵田住職に預けたんでしょう?もともとここの調度は鏑木住職からいただいたものです。
庵の工事中の間だけはせめて里帰りさせてやろうと。
(早苗)清泉様。
お琴のお師匠さんがお見えになられました。
(清泉)お稽古の時間なので申し訳ありませんがそろそろ…。
それでは。
(清泉)先生しばらくお待ちください。
(美沙子)お琴は私が。
早苗さん。
はい。
あれ…何でしょう?袋の中に何か硬いものが。
この花瓶は?私が愛用しているものです。
清泉さんが?鑑識結果出ました。
血液型頭蓋骨陥没個所の形状ともに一致。
あの花瓶は蔵田鉄寛を殺害した凶器に間違いないそうです。
密室…鍵を開けられるのは蔵田鉄寛と花岡清泉だけ。
鍵には清泉の指紋。
凶器の花瓶は清泉の所有物。
石原修一はといえば花岡清泉の過去の秘密を暴こうとしていた。
〜先生!先生…!私を1人にしないでよ先生…。
先生!〜
(所)清泉さん。
黙秘いたします。
犯行の否認じゃなくて黙秘ですか?はい。
心証的には立場悪くなりますけど。
構いません。
清泉さんが犯人やなんてそんな!人間の業を説いてはる人が人殺しなんかするわけないやんか。
本当に高潔な人間なんてめったにいないさ。
そう前に君が言ったように清泉やっぱり過去に事件起こしていたらしいよ。
あのねあの人は自前でたくさんの女性を救済してはるの。
やけに彼女のかた持つな2〜3回説法聞いただけで!すっかり感化されちまったのかい。
違うって!ほなお聞きしますけどね。
何でしょう?なんで自分の花瓶を凶器に使うの?凶器なんかいくらでもあるやんか。
それなのに血のついた花瓶を自分の部屋に置いといてお琴の先生が来たときにさも見つけてくださいみたいなおかしいやん!じゃあ言いますよ。
はいどうぞ。
蔵の鍵を開けられるのはあのダイヤル知ってるのは清泉だけ。
蔵は密室状態!鍵には清泉の指紋!普通どう考えたって清泉が犯人だろ。
夜食。
ありまへん。
えっ?ありまへん!鍵…鍵…鍵ね…。
その凶器を発見した恋慕寺の坊さんはそのまわり毎日掃除してたって言うんだ。
それなのに今ごろになって発見されたんだぞ?確かにな…変やな。
〜こら!すみません!勝手に入り込んでしもうて。
あんたいったい何者やねん?古い蔵に興味があるんで開いてたんで入ってきてしもうた。
すみません。
ちょっと取り込んでるんや!出て行ってくれ!すみません。
はよ行け!ただいま。
おかえりなさい。
どないしたの健太君?
(健太)あ…由美さん。
映画観るのに預けといたんだけど僕の自転車の鍵が開かないんだ。
おかしいな〜。
6621に間違いないんだよな?もう2年も使ってる鍵だもん間違うわけないよ!2年ってずいぶん新しそうな鍵やけど?ごめんごめん健太!あの鍵今にも壊れそうやったさかい新しいのに付け替えといたんや。
なんだ!先に戻ってきてな新しい番号教えよう思ったんやけど遅くなってかんにんな!これ新しい番号や。
(乃梨子)ほら開いた。
(平太郎)よかったな健太!新しい鍵…。
一般歓迎…。
あの日蔵には誰でも入れたんだ。
これは古い品物で今どき扱ってる店あるかな。
そうですか。
それに一般の家庭やったら4桁もんで十分で合わさる確率が100万分の1の6桁もんのほうがあんまり出えへんからね。
そうですか。
すみませんけど京都じゅうの鍵屋さんのリストもらえます?
(店員)え〜っ!お願いします。
〜本当に高潔な人間なんてめったにいないさ。
清泉やっぱり過去に事件起こしてたらしいよ花岡清泉。
本名花岡薫子。
東京都荒川区出身。
藤愛女子高等学校卒業。
40歳で出家。
へぇ美術展5回入賞してる。
平成の駆け込み寺として大繁盛。
栄子ちゃんあんたお世話にならんほうがええ。
ほんまや。
もう!あのね由美さんお金にならない調査は願い下げなんだけどね。
つったって今のところ他に調査依頼ないじゃないですか。
開店休業状態。
ほんまほんま。
所長たまには駅前で客引きしてきはったらどうです?そうそうティッシュ配って。
あのね宣伝用のティッシュを買い込むお金なんかありませんよ。
このクラブはどうやって買ったんですかね?これは中古ですよ!あれ高校卒業してから40歳までのデータが何ひとつあらへんやん。
俊さんが言うてた清泉さんが過去に起こした事件て何やろう。
相変わらず黙秘ですか?もう4日目です。
このままだと地裁にあなたの逮捕状を請求しなければならなくなります。
〜ただいま由美。
何だ?「調査のため東京に行ってきます。
すみません由美」東京?
(亀田校長)本来ならお話しすべきではないのですが殺人事件が2件も絡んでいると聞いてはね。
早く事件を解決させるためにもぜひ聞かせてください。
今から28年前私がまだ新任教師のころです。
先輩の先生がかつての教え子と心中事件を起こしたんです。
心中事件?
(亀田校長)ええ。
(亀田校長)不幸にして先生は命を落とし教え子だけが生き残りました。
もしかしてその教え子っていうのは?花岡薫子さんです。
清泉さん。
(亀田校長)当時はマスコミも今みたいにすべてを暴き出すなんてことのない時代でした。
花岡さんも先生の名前も家族のことをおもんばかって伏せられました。
あのその一緒に心中した先生っていうのは?この先生です。
最後の年の卒業アルバムです。
(亀田校長)美術の教師でした。
(亀田校長)ひと月ほど前やはり花岡薫子さんのことを聞きに来た方がいたそうです。
誰です?先日殺害されたフリーライターではないかと。
石原修一さん?ええ。
そのとき応対した者が海外研修から昨日戻り留守中の新聞を読んで聞きに来られた方が殺されたことを知ったんです。
警察に届け出ようと考えていたところでした。
で石原さんに心中事件のことは?話してしまったそうです。
〜清泉:一緒に死ねればあるいはそのとき死ねなくともすぐに後を追えればどんなに気が楽になることか。
生き残った者の苦しみこそがまさしく贖罪。
苦しくて苦しくてでも耐えなければならない。
なぜならその罪を選んだのは自分自身なのだから〜清泉さんの心中事件の話教えてくれへんかったね。
当たり前だろ捜査機密だ。
警察なめんなよ。
んもう!石原は花岡清泉の過去の事件を暴こうとしていた。
ということは清泉の容疑が濃くなったということだ。
なあ由美?はいごめんね。
うちの清泉への思い込みが激しかったのかもしれへんね。
清泉の無実を証明しようとして逆に殺人の動機を掴んでしまった。
ということだ。
なあ由美?はいはい…。
もしもしあぁ乃梨ちゃん?見つかったんよ。
絵と同じような鍵売ってはるお店が。
え?
(乃梨子)息子の自転車の鍵屋さんにな古い鍵扱こうてるお店知らへんかって聞いたら太秦のほうに1軒老舗のよろず屋さんがあるって聞いたさかい来てみたらそやけどな言うてはんのはお店の奥さんで売らはったお店のご主人はもうすぐ帰ってくる言うはるさかい。
うんわかった。
ほなすぐ行くし。
このタイプの在庫は2個しかなくて確か1週間ほど前に1個。
あの買っていったのこの人ですか?
(店主)いやちゃうね。
ちゃう…ほなこの中にいます?この人やね。
ええ!〜清泉:恋の究極はまさしく不倫です。
不倫は当人同士のみならず確実に周囲の人々を傷つける〜
(絵皿の割れる音)はい。
〜〜早苗さん。
袈裟御前の石碑のそばに落ちていた石原さんが殺されたときの凶器。
それから蔵田住職が殺されたときに抱いていたお琴。
あなたがやったことなんよね。
(早苗)由美さん何がおっしゃりたいんです?石原さんに手をかけたのも蔵田住職に手をかけたのもそしてその罪を全部清泉さんに被せようとしたのも全部あなたがやったことなんやね。
違う?ばかばかしい。
どうして?すべては石原さんがあなたに近づいたところから始まった。
石原:君の過去なんてそんなの関係ない。
好きだ愛してるよ早苗石原さんの仕事は暴露記事を書くことやった。
彼の狙いはあなたを通して清泉さんの取材をすることやった。
人間はね死ぬまで女も男も性と愛のことを考えてる彼は言葉巧みにあなたに近づきあなたを口説いた。
あなたは清泉さんを敬愛し恩人とも言っていた。
その清泉さんの過去を暴くためだけに自分は利用されてるんだと気がついたとき石原さんに殺意を抱いたんと違う?そんなことはありません。
由美さんあなたの邪推です。
そうやろか。
あなたは一命を投げ出しても彼女を守ろうとしたんと違う?そやからあの夜善剛寺の裏の林に石原さんを呼び出したんと違う?
(うめき声)あなたは石原さんが清泉さんの件と同時に善剛寺のお葉人形の秘密を暴こうとしていることを知っていた。
そやから石原さん殺しの罪を蔵田住職に被せようとした。
あなたは合鍵で石原さんの部屋に入り清泉さんの過去がわかるようなデータをすべて廃棄しようとして…。
〜清泉さんが若いころ恩師と心中事件を起こしたことを初めて知った。
早苗さん。
あなた清泉さんの心中相手の忘れ形見やったんやね。
〜お父さまが亡くなられたときまだ6歳やったあなたはお父さまが教え子と心中したことを知らされずに育った。
けど今となって知ってしまった。
お父さまを死にいたらしめた相手が花岡薫子。
今の清泉さん。
あなたが尊敬して石原さんを殺してまでその立場を守ろうとした清泉さんであることを。
警察は石原さん殺しの容疑者として蔵田住職をマークしていた。
あなたの狙いどおりにことは進んでいた。
けど父親の敵である清泉さんのことを思い詰めたあなたは新しい計画を考えて…。
幸せにしてやるぞ蔵田さんと待ち合わせたあなたは先に蔵に行き鍵を開け待ち伏せをした。
私が鍵を開けた?私は鍵の番号を知らないわ。
確かに蔵の鍵の番号は蔵田住職と清泉さんしか知らなかった。
鍵にはその2人の指紋がついていたそうじゃないですか。
だから警察は清泉様を犯人だと。
うちね京都じゅうの鍵屋さんあたってみたの。
そうしたら…。
買ってたのこの人ですか?いんや。
ちゃうね。
ちゃう…ほなこの中にいます?
(店主)この人やね。
きれいな人やったんでよう覚えておりますわあなたは蔵の鍵の番号がわからないから同じ鍵を購入しそれを使って密室を作ろうとした。
善剛寺で即売会が開かれた日朝から夕方まで蔵は開けられていて鍵は扉のかんぬきにぶらさがったままやった。
あなたは隙をみて…。
そやから即売会が終わって蔵田住職がかけた鍵は早苗さんあなたが新しく買った鍵。
そんなの由美さんの勝手な思い込み。
間違った推論です。
ところが新しい証拠が見つかりました。
我々は令状を取り清庵を家宅捜索しました。
するとあなたの部屋からこれがでてきました。
あなたの指紋がついて。
その鍵は私が清庵で使おうと思って買ってきたものです。
指紋がついてるのは当たり前じゃないですか。
そのとおり。
ただあなたの指紋の他に蔵田住職の指紋も付着していました。
ん?なんだ?早苗どうして開けたんだ?早苗?蔵田さんを殺害しその罪を清泉さんに着せた。
〜あなたは蔵田住職を殺害した後あなたが買った新しい鍵ではなく元の鍵にかけかえた。
〜だから我々が押収した鍵にはあなたの指紋はなく蔵田住職と清泉さんの指紋しかなかった。
これが鍵のトリックです。
それから早苗さんあなた凶器に使った花瓶を清泉さんの部屋のお琴の袋の中に隠し石原さん殺害の包丁を後日この石碑のそばに置いたのも袈裟御前と盛遠の話をヒントに警察の目を清泉さんに向けさせるため。
そやからあなたはうちを清泉さんの説法会に誘いうちの関心が袈裟御前と盛遠の話に向くように仕向けたんよね。
由美さんお話はそれでおしまい?え?大変な空想力ですねでも由美さん片山刑事私がそこまで清泉様を憎んでるのならそんな回りくどい方法は取らずそれこそ「父の敵!」って直接殺してしまうんじゃないかしら。
うちもそう考えた。
けどあえてそうしなかったのは…。
そこで盛遠の首をはねてしまえば盛遠は苦しみを味わうことなく袈裟が死んだのと同じ夜にまるで心中したかのように2人はあの世に一緒に旅立ってしまうからです。
妻を殺された夫はそれをよしとしなかった。
その代わり生きよ生きて苦しめと地獄の責め苦を与えたのです袈裟御前と盛遠の話のように清泉さんに生きて生きて苦しめと地獄の苦しみを与えたかったから。
そやけど清泉さんは袈裟御前と盛遠の話に基づいた事件の設定や自分の花瓶が凶器として使われ自室から発見されたことでもしかしたら早苗さんあなたが犯人やないかと。
そやから…あなたをかばおうとして。
(清泉)違う!早苗さんは犯人じゃない!この私です!由美さんあなたの推論は間違っています大間違いです。
石原さんは私が永遠に葬っておきたい過去を暴こうとした。
だから私が手にかけました。
蔵田住職は常日ごろあらゆることで仏門の名を汚していた。
だから制裁のために殺しました。
犯人はこの私です。
早苗さん許してね。
あなたの家庭をメチャクチャにしてしまったのはこの私です。
あなたからお父さまを奪い取ってしまったのはこの花岡清泉です。
人間の心の中は常に修羅。
私もあの後どんなに死にたいと思ったことか。
でも死ねなかった。
死のうとするとあの人の姿が見えてきて。
生きろ。
生きて苦しめって。
そしてお前と同じような修羅の苦しみを抱えた人たちを救い出せって。
だから…。
恥を忍んで私は生きた。
生きて仏門に入り自分を罰し同じような女たちを少しでも救えればと…。
でもまさか…まさかそこにあの人のひとり娘であるあなたが飛び込んでくるなんて。
早苗さんあなたが清庵で暮らすようになって少しずつ身の上を聞いているうちにあなたはあの人の遺児なんじゃないかって思うようになったの。
そしてこの間お父さまの写真が差出人不明で送られてきたときそれが確信にかわった。
早苗さん私にあの事件のことを思い出させて苦しめるのが目的だったのよね?だって…あなたは私の父を殺したあの事件のことを忘れたかのように不倫話をおもしろおかしく話して世間の気をひいて。
私はそれが許せなくなった。
そうそうよね。
私は自分をまな板の上にのせてもっともっと罰を受けようとしたのだけれど。
でもあなたから見れば。
そうよ!無神経!犯罪的!あなたは私の父を殺した人殺し!片山さん黙秘などして申し訳ございませんでした。
石原さんと蔵田住職を手にかけたのはこの私です。
早苗さん!〜清泉様じゃない私が…私が。
早苗さん。
私が2人を殺したんです。
清泉様に罪を着せようとしたんです。
命を賭けてあなたを守ろうと思った。
でもあなたは私の父の命を奪った女だった。
あなたを尊敬する気持が憎しみにかわった。
私の心の葛藤が清泉様あなたにわかる?わからない絶対わかるはずない!ごめんねごめんね。
この世でたった1人しかたった1人の男しか愛せなかった私がすべて悪いの。
五欲煩悩と修羅を人一倍抱えているのはこの私です。
早苗さんごめんね。
ごめんなさい。
(清泉)ごめんね。
(泣き声)当分会えないってわかってるのに清泉さん毎日毎日面会に来てる。
減刑嘆願書も出すってさ。
そっか…。
なあ由美。
ん?俺にだよもしものことがあったらお前尼寺に行け清泉さんのとこ。
何言うてんの。
ウチは俊さんが死んだら新しい恋に目覚めるの。
尼寺なんか行きません。
そうですか。
俺だってそう簡単に逝きはしないよ。
俺ねこう見えても結構署じゃモテるんだよ。
そやな俊さんうちが死んだら今にもっともっと幸せになると思うわ。
はい。
うちがずっと俊さんにぴったりとくっついてるからね。
刑事は俺だよ。
はいかわった。
え〜お駄賃は?髪の毛が伸びていた…。
そうなのよ…。
2015/07/10(金) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
山村美紗サスペンス「不倫調査員片山由美9 黒髪人形・尼寺殺人事件」[字][解]

不倫調査員・片山由美が難事件に挑むシリーズ第9弾!

詳細情報
番組内容
ある日、フリーライター・石原修一が刺殺体で発見される。捜査を進める中、彼は女性から絶大な人気を誇る尼僧・花岡清泉を取材対象にしていたことや、清泉に敵対心を持つ住職・蔵田が所有する「髪が伸びる人形」に捏造疑惑を持っていたことが判明して…。歴史上の人物、文覚上人と袈裟御前の恋愛話が事件解決の鍵になる!
出演者
片山由美…池上季実子
 片山俊介…神田正輝
 花岡清泉…小柳ルミ子
 岡島乃梨子…山村紅葉
 川島早苗…星野真里
 蔵田鉄寛…小西博之
 根来勇作…佐藤蛾次郎
 石原修一…竹本孝之
 鑑識課員…ゆうたろう
 坂巻平太郎…丹古母鬼馬二  ほか
原作脚本
【原作】山村美紗『黒髪殺人事件』より
【脚本】佐伯俊道
監督・演出
【監督】南部英夫

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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2/0モード(ステレオ)
解説放送あり
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