刑事110キロ 2 2015.07.10


(花沢太郎)「以上のとおり録取して閲覧させたところ誤りのない事を申し立て署名指印した」ではこちらのほうに署名と指印お願いします。
(加賀美麗華)嫌だと言ったら?えっ?誰もいない取調室。
悪徳刑事に暴行され自白を強要された…。
そう言ったらどうなるのかしら?いや…今さらそれはないでしょう。
キャーッ!誰か助けて!やめて刑事さん!そんなひどい事しないで!ああっ!痛い!痛い…。
(笑い声)あら誰も来ないわねえ。
もうみんな帰りましたよ。
残念!誰か来ればこの胸元を引き裂いて名演技を見せてあげられたのに。
誰も信じませんよ。
私そういうキャラじゃないので。
どうかしらね。
あなたにはこの私もすっかりだまされたから。
どうぞ。
あっそうだ…。
これにもお願い出来ますか?あら…私のポートレート。
どこで手に入れたの?うちのおふくろが大ファンで。
もちろん私もそうなんですけど。
ありがとう。
嬉しいわ。

事件は4日前に起こった
(加賀美麗華)「美しく生まれれば楽しい事ばかりだ」。
そうおっしゃる方もいます。
(麗華)さて本当でしょうか?
(ベル)街へ行きます。
馬車を用意しなさい。
(拍手)
(相本)はい1幕終了です!時間5分巻いてます。
はい!
(好子)お疲れさまです。
いつものように次の出番まで1人になりたいから下がっていいわよ。
失礼します。
(ドアの開閉音)
(麗華)「たとえあなたが私を見捨ててここを去ろうとも私があなたを忘れる事などありません」「覚えていますか?私は覚えています」「あの晴れた日を…風になびくあなたの髪…」うん!「愛しい言葉を紡ぐ口元」「力強く私を抱きしめたその熱い手…」
(麗華)「決して忘れない。
いざオデッサへ」「らんちき騒ぎがお好きなら夜が明けて…」
(直美)今あの人は本番中よ。
そう地下のしみったれた劇場で。
初日でピリピリしていたけどわかってくれたみたい。
(直美)それから…例の計画もね。
大丈夫ようまくいくわよ。
いつ頃日本に戻ってくるの?
(チャイム)誰か来たみたい。
またあとで電話するね。
(直美)姉さん!?どうしたの?その格好。
それに今本番中じゃ…。
(直美)嫌ーっ!ああっ…。
嫌っ!
(殴る音)
(解錠音)誰やんこんなん付けたん…。
今日点検なんかあらへんで。
第2幕始まります。

(ノック)先生あと5分ほどで出番です。
(麗華)「あの晴れた日を…」「風になびくあなたの髪私を見つめる優しいまなざし」あっ好子ちゃんちょっと…。
(好子)はい。
(麗華)「言葉を紡ぐ口元」「力強く私を抱きしめたその熱い手…」「決して…」
(ノック)先生そろそろお願いします。
先生!
(麗華)わかってる!今行きます。
あっ!
(ドアの開く音)お待たせ。
お願いします。
この野郎!オラッ!何を騒いでるの?戦争はもう終わったのよ。
今はお昼寝の時間よ。
(拍手)
(林弘太郎)むごいっすね…。
(捜査員)ちょっと…ちょっと!
(麗華)通してちょうだい。
ここは私の部屋なのよ。
(捜査員)待ってください!
(麗華)どきなさい!
(林)ああっ!なんなんだよ!?今現場検証中だぞ。
あなたこそその口の利き方は何よ!?
(鬼久保巌)あの…女優の加賀美麗華さんですよね。
京都府警の鬼久保と申します。
部下が失礼致しました。
直美さんが殺されたって本当ですか?えっああ…。
あの…恐らく物盗りの犯行だと思われます。
あの…貴重品入れが荒らされていたんですが中に何が入ってたんですか?私の宝石類が…。
それ高価なものなんですか?当たり前です。
私は本物しか身につけません。
申し訳ありません…。
お前はほらあっち行ってろ!
(花沢太郎)ちょっとすいません。
ちょっとごめんね。
ちょっと通してくれる?
(木内光義)すいません。
(荒い息遣い)現場検証のせいでエレベーター止められてて階段上ってきました。
ハア…。
こちらもお仲間?お仲間だなんてそんな…。
京都府警の木内です。
花沢です。
あなたが犯人?バカ!被害者のお姉様の加賀美麗華さんだ。
加賀美麗華って…あの加賀美麗華さん!?ファンなんです〜!うちのおふくろが。
もちろん私もそうなんですが。
去年の『最終列車の女』素晴らしかったです!あらご覧になってくださったの?いや〜もう見たも何も!最後の場面のモノローグ感動しました!ありがとう…。
ああっすいません!遺体は?ああ…あっち。
頭部に2か所鈍器による傷あり。
入り口の鍵はオートロックで外からはカードキーがないと開かない。
従業員への聞き込みは警部に言われたとおりすでに済ませておきました。
まあすぐに解決するさ。
こちらが妹さんですか…。
ちゃんと確認してもらいました?えっ?あっあっ…。
確認してもらってないんですか?いや…。
だっ…お前…!ダメじゃないですか!だって…。
加賀美さんこちらにお越し頂けますか。
申し訳ありませんがご遺体の確認お願い出来ますか?はい。
妹です…間違いありません。
ありがとうございます。
大丈夫ですか!?申し訳ありませんでした!少し向こうで休みましょう。
大丈夫ですか?ああ…。
まずは部屋のカードキーに関してですが事件があった部屋のものは今まで紛失したという記録はありません。
(錦織玲子)偽造する事は出来ないの?もちろん専門家なら出来ますが…。
マイクロチップが入っていて宿泊客の名前やチェックインした日時が記録されるようになっています。
前もって準備するのは難しいって事ね。
つまり鍵は中から被害者自身が開けた可能性が高いという事です。
そっちは?
(権田千夏)防犯カメラの映像が全て届いたので今から分析に入ります。
ところで花沢は?
(麗華)こんな事ぐらいで芝居を中止にするなんて考えられないわ。
(堺)こんな事って…。
人が死んでるんですよ!?しかもあなたの妹さんなんですよ!?その私が幕を開けようって言ってるんだからなんの問題もないじゃないの。
第一妹はこの芝居とはなんの関係もないわ。
殺されたのだって事故に遭ったようなもんよ。
(堺)えっ…。
チケットは完売したんでしょ?楽しみにしてるお客様にも申し訳ないわ。
それはそうなんですけど…。
あとの事はよろしくね。
じゃあ私は準備をするから。
どうも花沢です。
今日もおきれいですね。
あっ!あの…やっぱり着替えが終わってから改めてまた来まーす。
ちょっと!これ上げてくれない?私がですか?早くして。
はい!失礼しまーす。
そんなに目をつぶらなくてもいいじゃない。
こう見えても昔は踊り子でみんなが私の体を見たがったもんよ。
存じ上げております。
スタイル抜群で超人気でしたよね。
その後女優に転身されてこれまた大成功。
また調子いい事言って!あなたの年齢じゃ知らないでしょ?いろいろ調べたみたいね私の事。
いえいえおふくろが大ファンでして。
まあそういう事にしておきましょうか。
それで何かわかったの?事件の事。
それなんですがいくつかお聞きしたい事がありまして…。
どうぞ。
あなたの妹さんなんですが誰か人から恨まれていたというような事はありませんか?なんでそんな事聞くの?物盗りの犯行なんでしょ?あの怖い顔した刑事さんそう言ってたわよ。
もちろんその方向で捜査を進めていますが念のため。
妹は…と言っても半分しか血は繋がっていないんですけど。
確かお父様が外でつくられた娘さんだとか…。
それも調べたの?うちのおふくろがまったくいい歳して芸能ニュースばっかり見てるもんですから。
だったら妹の性格の事も聞いたんじゃないかしら?彼女の母親はなんていうか…身持ちの悪い女で。
彼女も母親に似たのかしら。
色恋沙汰で他人に恨まれる事は多かったみたいよ。
噂では妹さん最近あなたの元旦那さんと婚約なさったとか。
勘違いしないでね。
私あの子の事恨んだりしてないわよ。
私には実力もあるしたくさんの彼氏もいるわ。
けどあの子は若いっていう他にはなんの取りえもない。
貧弱な体を使って男をたらし込むしか能がないから。
手厳しいですね…。
でもその男性はここ数年あなたの芸能活動の大スポンサーでそれを失うのはあなたにとって相当な痛手だったんじゃありませんか?言ったでしょ?たくさんの彼氏もいるって。
お金持ちも多いのよ。
なるほど。
そんな事で困るような加賀美麗華ではないとそういうわけですね?私を疑う暇があったらさっさと犯人を捕まえてほしいわ。
大事な宝石がごっそり盗まれたんだから。
(好子)すみません遅れて!今日は中止だって聞いたもので。
そしたら堺プロデューサーから急に連絡があって…。
誰ですか?あなたは。
先生の支度中ですよ。
出ていってください!ちょっとその…。
あのちょっと…!
(麗華)なかなか面白い人よこの刑事さん。
どうやら私も容疑者の一人みたいよ。
先生がですか!?そんなのバカげています。
だって先生はあの時ずっとこの楽屋でセリフの練習をしていたんですから!えっ?そうなんですか?ただいま!よいしょ…。
あれ?権ちゃんみんなは?聞き込みに行ってます。
なんだよ。
せっかくどら焼きもらってきたのに…。
食べる?結構です。
えっ!?千石屋のだよ?食べます!だよね。
これね麗華さんの付き人さんにおわびの印にもらったの。
麗華さんの着替え手伝ってたら変な人に間違われちゃって。
花沢!あっおかえりなさい。
何やってたんだよ!捜査会議にも出ないで…。
加賀美麗華さんの着替えをのぞいていて捕まったそうです。
やっぱり…。
ちょっと話作らないでよ!あれ?権ちゃん。
これ犯行現場前のカメラ映像?
(千夏)そうです。
殺害現場のフロアのものなんですがちょうどスイートルーム前が死角になっていて…。
えっ?スイートルームの前が死角って…。
それじゃあ防犯カメラの意味ないじゃない!私もそう思ってホテルに問い合わせたら以前はあったそうなんですけど3か月前に外したと。
加賀美麗華さんから強い要望があったそうです。
プライバシーを守りたいと。
さすが大女優だね…。
京都府警の花沢です。
(井川)えっ?差し入れ持ってきました。
どうぞ。
どら焼き!これ食べていいの?どうぞどうぞ。
おい!みんなごちそうになろうか。
いただきます!いただきまーす!あの…その代わりといってはなんなんですがあとでお話聞かせてもらえますか?例の事件の事で。
ええ?ああいいけど。
どら焼き1個じゃねええ話聞けまへんで。
ああっ!もう1つどうぞ!もう1つ?ハハハハハ!うーん…。
そうですか。
わかりました…。
ホテルの退職者リストは全滅だ。
全員にアリバイがある。
鬼久保さんたちのほうでも難航してるみたいです。
おい。
そっちはどうなんだよ?舞台の関係者。
うーん…。
おい花沢!お前犯人は加賀美麗華だと言ってるらしいな。
えっ?先方から政治家を通じて抗議があったんだよ。
まあ俺がなんとかうまくまとめてきたけどね。
お前らの尻ぬぐいするのは勘弁してほしいよ。
林飯行くぞ!
(林)ごちそうさまでーす。
いやおごるとは言ってないよ俺は…。
課長まで駆り出されたんですか?もっと上の者を呼んでこいって言われて仕方なくね。
でも実際どうなの?彼女にはアリバイがあるそうじゃない。
犯行当時舞台の本番中だったんでしょ?台本読んだんですけど第2幕の冒頭に彼女の出番はないんです。
だからその間に楽屋を抜け出す事も出来たわけで…。
おいおい…。
その時加賀美麗華はセリフの練習をしてた。
付き人が聞いてたんだろ?そこなんですよ引っかかるのは。
今さらセリフの練習なんてしますかね?だってこれ何度も再演されてる演目なんですよ。
それに…。
それに?倒れ方が美しかったんです。
妹さんの遺体を見たあとなのにまるで舞台の一場面のように…。
課長実験してみたいんですが。
今僕たちがいるのはここです。
うん。
廊下を挟んで加賀美麗華さんの楽屋とは向かい合わせです。
うん。
現場のスイートルームまではこのエレベーターを使うのでほぼ距離は同じです。
で?これお願いします。
用意…押して!
(ボタンを押す音)
(花沢の声)1幕と2幕の間は約5分。
2幕が始まってから加賀美麗華さんの出番までも約5分。
この約10分間に楽屋まで戻ってこられれば犯行は可能です。
ああっ…!ごめんなさい!
(チャイム)ルームサービスでーす。
わーっ!鈍器で1回!鈍器で2回!はい倒れた!はい死んだ!うわーっ!よし…!ピッピッピッピッ!よし!楽しい?…いえ。

(足音)はい。
(ボタンを押す音)なんだ随分かかったなあ…。
行きはよかったんですけど…帰りが他のお客さんたちたくさんエレベーターに乗り込んできちゃって…。
なるほど…。
そういう事は大いに考えられるな。
つまりエレベーターを使うのは現実的じゃないって事か…。
ああ…。
非常階段…非常階段使ったのかもしれません。
いや…犯行現場14階だぞ。
非常階段無理だろう。
加賀美麗華さんは3時間出ずっぱりの舞台を1か月続ける人です。
普通の女の人より体力があります。
いや…。
実験続けましょう…。
次木内っちゃんお願いします。
俺!?嫌だよ!だってそっちが実験やろうって…。
俺はもう…。
俺はもう…。
いやだからってな…。
真犯人を捕まえるためです!用意…スタート!
(ボタンを押す音)あっ!着いた…。
(林)はい。
(鬼久保)おっ今度は木内か。
うっ!うらっ!痛い!早く倒れて!
(林)あっ…。
(鬼久保)何やって…!どけ!はい死んだ!うわっ!嘘!?死んだ…。
よし!どけよお前!何やってんだよ!ごめんなさい。
引っかかってる引っかかってる…おい引っかかってる!あっ…ああっ!
(ボタンを押す音)遅い。
全然間に合ってない。
いや…やっぱり…非常階段は…厳しいよ…。
加賀美麗華の犯行っていうのは無理があるんじゃないか?うーん…。
何かからくりがあるはずだ。
とにかく今日のところは彼女に謝って帰ろう…。
無理言って終演後の劇場で実験やらせてくれって頼んだんだ…。
はい。
(麗華)あなたは笑顔で…。
ちょうどセリフの練習してる…。
しっかり謝れ。
(麗華)私は残されて一人ぼっち。
(ノック)花沢です。
例の実験終わりました。
改めておわびしたい事がありましてちょっとお時間よろしいですか?はい。
あの…加賀美麗華さんは?先生ならとっくにお帰りになりましたよ。
えっ!?いや…今中で声してましたよ?ちょっと失礼。
あれ?確かにセリフの練習してる声が聞こえたんですけど…。
あっ!それはこれじゃないですか?
(麗華)「聞きました。
拳を空に突き上げ…」私女優志望なんです。
だから先生のセリフを録音して何度も聞いて勉強してるんです。
(麗華)「命を落としたのでも戦い続けるのでもなく…」あらかじめ録音しておいた声を流しておけばそれを聞いた人物は中に本人がいると思い込んでしまう…。
シンプルだけど効果的なアリバイ工作ですね。
これで大きく前進したな。
けど…非常階段使うのはやっぱり無理だろう。
かといってエレベーター使うと他のお客さんと遭遇する危険性がありますからね。
確かに。
そのリスクは避けたいよな…。
すいませんちょっと失礼します。
(ぶつかる音)ごめんなさい!すんません!あっ!おばちゃん今どこから来たの?どこってあっちからやけど?あっちって…。
いや…僕と上でぶつかりそうになったよね?うん…。
ちょっと案内して!このエレベーターはホテルの従業員専用で一般のお客さんや劇団の人は使わはりません。
それに従業員言うても客室係なんかは一般のエレベーター使うさかいに私らぐらいかなあ。
あの…事件のあった日何かいつもと変わった事ありませんでしたか?そういうたらあの日は点検の予定なかったのにここに点検中の札付いてたわ。
つまりそれが付いていた間はこのエレベーターを使う人は誰もいなかったというわけですね?そういう事やろなあ。
この青い線が一般のエレベーターを使ったルート。
そしてこの赤い線がホテル従業員専用のエレベーターを使ったルートです。
(千夏)距離が全然違いますね。
赤いほうがだいぶ短い。
そっちのルートを使えば加賀美麗華が芝居の上演中に犯行を犯す事が可能だっていうわけね。
その可能性が出てきました。
でも着替える時間はあるんでしょうか…。
着替えって?これを見てください。
全ての防犯カメラの映像をチェックしたんですがこの人物が怪しいんです。
これはちょうど地下の劇場側からホテル側へ出てきたところでこの先にホテル従業員専用のエレベーターがあります。
エレベーター内の映像は?防犯カメラは設置されていませんでした。
なるほど…。
犯人はそこまで計算済みか。
それで?時間をさかのぼって調べてもホテル側から劇場側へ入っていく人物が映っていないんです。
つまり元々劇場側にいた人物がホテル従業員の制服を着て出てきたのではないかと。
だったらますます加賀美麗華の可能性が…。
ですが舞台用の衣装から制服に着替えるには時間がかかります。
着てた衣装を脱いで制服に着替えて犯行を犯して戻ってきて再び衣装に着替える…。
なるほど。
これ結構やっかいね…。
あっ!それなら方法があります。
先日舞台の裏方さんたちにいろんな話を聞いたんです。
どうも。
これ差し入れです。
(上田)よし!これで大丈夫かな。
なんですか?それ!あっという間に着替えちゃったじゃないですか!これは早替え用の衣装で糸がほつれたところがあったんで縫い直していたんです。
すごい!後ろのところがマジックテープになってるんですね。
だから同じように作った従業員の制服をあらかじめ用意しておけば…。
すごーい!それなら着替えの手間は省けますね。
アリバイ崩れましたね。
やったじゃない!でもまだ決め手に欠けます。
どうして僕が帰ってくるまで待ってくれなかったんだ!?ご自分でお建てになられたんですか?そうよ。
実家の趣味の悪い墓には入りたくないからね。
うちのおふくろも同じような事言ってます。
自分専用のお墓が欲しいって。
そんな話をしに来たわけじゃないでしょ?
(麗華)劇場の権利?はい。
あなたの前の旦那さんがそれを持っているとそう聞いたものですから。
それがどうしたの?直美さんはあなたの前の旦那さんをそそのかしてあの劇場をより利益の出る遊戯施設に作り替える計画だった。
もしそうなればあなたはもうあそこで芝居を打つ事が出来なくなってしまう…。
あなたにとってそれはとても耐えられない事なんじゃないでしょうか?立派な殺人の動機になるわね私にとっては。
正直に言うけど私あの子が死んでも悲しくなんかないわよ。
あの子に何がわかるっていうの?芝居を打つ苦労も栄光も何かを達成する喜びも何も知らずに薄っぺらな欲望のままに生きてるような子よ。
でも私はやっていないわ。
たとえ動機はあったとしてもね。

(咳払い)あっ権ちゃん!どうしたの?花沢さんが持ってこいって言ったんでしょ。
怪しい人物が映ってる防犯カメラの映像もう一度検証したいからって。
ああ…そうだった。
ごめんね無理言っちゃって。
助かる助かる。
あの…何か?いい加減お嬢さんを追いかけるのやめてもらいまひょか。
お嬢さん?麗華さんは何も悪くないんだ!あの人は俺たちにとって大切な人なんや!俺たちから奪わんといてくれ!私たちはただ事件の解決を…。
そんな事はどうだっていい。
どうだっていい…?人が1人死んでるんですよ。
あの女は俺たちの劇場を売り払おうとしていた。
いなくなってみんな内心ホッとしてるよ。
私たち二度と警察の捜査には協力しません。
もし逮捕とか裁判になったらみんな先生のアリバイを証言します。

(チャイム)
(木内菜穂子)はーい!ちょっと待って!えっ!?えっ!?危ない危ない危ない!えっ?えっ?花ちゃん?えっどうしたの!?無理やり居酒屋に付き合わされたんですけどもう無理です!!
(いびき)
(菜穂子)加賀美麗華さんってそんなにも裏方さんたちから慕われていたのね。
正直驚きました。
言葉も性格もきつくて敵も多い人だって聞いてましたから。
支えてくれる人がいなければあんなに長く第一線で活躍出来ないよ。
それに現実的な事を言えば彼女が倒れたらみんな仕事にあぶれるわけだし…。
みんなの生活も彼女の肩にかかってるわけね。
劇場を守るためだったらなんだってする…か。
まだ彼女が犯人と決まったわけじゃないだろ。
それはそうですけど…。
花ちゃんも苦しいところね。
(千夏)えっ?ああ…。
本当はあの人が犯人であってほしくないってそう思ってる気がする。
それで珍しく飲みすぎちゃったってわけか…。
(いびき)
(麗華)ああ…女に生まれた事がこんなに恨めしいとは。
金を稼ぎ地位を得て男たちと互角に仕事をしてきたのに…。
それなのに…あの男の微笑みが他の女に向けられている。
そう思っただけで夜も眠れぬとは…。
ああ…!この胸が苦しくてたまらない…!ああ…!
(拍手)あ〜よかったわ〜!加賀美麗華はまだまだきれいやわ。
でも前のほうがよかったな…。
最後でネックレスがパンって飛び散るのよ。
そこが素敵だったのになんで変えちゃったのかしら?へえ〜そうなん?ネックレスがパンって飛び散んの?もったいないやんそんなん!本物なわけないでしょ。
でもそこがかっこよかったのよ。
へえ〜そうなんか…。
ちょっといいですか?びっくりした!
(稼働音)あら?一体何をしようっていうんだよ?ネックレスです。
ネックレス?昨日権ちゃんにダビングしてもらった映像を今朝確認したらあの怪しい人物ネックレスをしてたんです。
でも女の人ならネックレスぐらい…。
いや…ここの従業員はアクセサリー着用禁止だ。
だからカメラに映っていたのは従業員じゃない。
それで?その人物がもう一度カメラに映った時にはネックレスはしてなかったんです。
だからもしそいつが犯人だとすればここで被害者と揉み合いになってネックレスを引きちぎられたっていう可能性ありますよね?
(ノック)はいどうぞ。
また刑事さん?もう開演だからあとにしてくれる?すぐに終わります。
妹を殺した犯人がわかったの?わかりました。
犯人は…女優加賀美麗華です。
私にはアリバイがあるわ。
事件のあった時私は楽屋でセリフの練習してたのよ。
付き人の好子さんに聞いてもらえばわかるわ。
彼女が聞いたのはあなたの声だけです。
あらかじめ録音されたものを流せばなんとでもなります。
でもそれでは返事が出来ないじゃない。
たとえあなたから返事がなくても彼女にとっては不思議でもなんでもありませんよ。
だってあなた普段から彼女にまともな返事なんかしていないじゃないですか。
それだけで私を逮捕出来るのかしら?麗華さん。
あなたはあの事件を境に第3幕の芝居を変えましたよね?本来嫉妬に狂ったあなたは恋人からもらったネックレスを自らの手で引きちぎるという演出だった。
なのにあの日以降それをやめ自らの手でギューッと握りしめるだけの芝居に変えた。
それはなぜです?それはもちろんそのほうが効果的だと思ったからよ。
演出家も賛成してくれたわ。
そろそろ1ベルが鳴るわね。
あなたが芝居を変えたのはあのネックレスが本物だからです。
あのネックレスはあなたの個人の所有だとお客さんの間でも有名です。
しかし舞台上では万が一の事を考えてよく出来た偽物を使う事になっています。
あの日もあなたの首には偽物がかかっていた。
しかし犯行時に何かが起きてネックレスはバラバラになって散らばった。
あなたはそれを拾い集めて他の宝石と一緒にまとめてどこかへ隠した。
しかしネックレスなしで舞台に戻るわけにはいかない。
そこで貴重品入れの中にあった本物を首にかけて舞台に戻った。
それを引きちぎるわけにはいかない。
だから芝居を変更した。
実は現場で散らばったネックレスの一部を発見しました。
あなたが拾い忘れたものです。
今それを鑑定に出しているんですがきっと偽物でしょう。
そして今あなたが首からかけているそれは本物のはずです。
(ノック)失礼します。
花沢。
現場に落ちていた例のネックレスのかけら鑑定結果が出た。
どうだった?やっぱり僕の推理どおり偽物だったでしょ?いや…本物だった。
そんなバカな…。
じゃあ舞台上で麗華さんがしていたのは偽物って事?そうよ。
だからネックレスのために芝居を変える必要なんかなかったのよ。
どうやらあなたの推理も見当外れだったようね。
(笑い声)僕の負けです。
(拍手)よかった!よかった!
(好子)よかった…。
先生本当によかった!
(拍手)そこまで!動かないでください。
(麗華)あなた…。
なんでこんなところに…。
あなたこそなぜこんなところに?しかもこんな時間に。
私は…夜眠れなくて。
下手な言い訳はもう終わりにしませんか?間違いありません。
これは一か八かの賭けでした。
賭け?ええ。
あなたが犯人だという事はもうとっくにわかっていました。
ただ決定的な証拠がない。
そこでうちの木内刑事に一芝居打ってもらったんです。
残念ながら現場でネックレスの一部を発見する事は出来ませんでした。
しかしそれを発見したと言いそれが本物だったと報告すれば…。
ネックレスは1つが本物で1つはよく出来た偽物です。
実に精巧に出来ていてちゃんと見てもどっちが偽物だかわからない。
恐らく今となってはあなたでさえその区別がつかないはず。
そこで嘘を言いました。
もしあの時引きちぎられたネックレスが本物だという鑑定結果をあなたに伝えたらその真偽を確かめるためにあなたなら絶対に行動に出るはず…。
そう思ったんです。
フフッ…。
私を芝居でだますなんて…あなたいい役者になれるわよ。
そしたら相手役に使って頂けますか?ごめんなさい。
私は二枚目しか使わないの。
わかってます。
それにしてもなぜ宝石類を処分しなかったんですか?どこかに捨ててしまえば我々もお手上げでした。
私初めて舞台に立った時に決めた事があるの。
千秋楽を迎えたら自分へのご褒美のために宝石を1つ買う。
そうやって1つ1つ集めたものなの。
なるほど。
そう簡単に捨てられるものではありませんね。
でも本物かどうか自分でもわからなくなってしまうなんて…私の人生みたいね。
笑えるわ。
(笑い声)
(笑い声)
(笑い声)ライトをつけてください!加賀美麗華の花道だ!ありがとう。
2015/07/10(金) 09:55〜10:53
ABCテレビ1
刑事110キロ 2[再][字]

「舞台本番中の殺人!!疑惑の主演女優に完璧アリバイ!幕間10分の瞬間移動!?」

詳細情報
◇番組内容
交番勤務20年の刑事・花沢太郎(石塚英彦)が京都の街で事件解決!
◇出演者
花沢太郎…石塚英彦
木内光義…中村俊介
権田千夏…星野真里
鬼久保巌…石丸謙二郎
林弘太郎…陳内将
木内菜穂子…井上和香
錦織玲子…高畑淳子

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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