2モーガン・フリーマン 時空を超えて 「時間」は存在するのか? 2015.07.09


私たちを取り巻く「時間」。
「時間」とは一体何なのでしょうか。
先に進むだけで戻る事はないのでしょうか。
過去現在未来はつながっているのでしょうか。
それとも別々に存在するのでしょうか。
科学における最大の謎「時間」。
時間は宇宙の基本的要素の一つなのでしょうか。
そもそも時間は本当に存在するのでしょうか。
時間空間そして生命。
時空を超えて未知の世界を探求します。
「今何時か」と聞かれ「9時2分だ」と答えたとします。
でもいつどこにいるかによって時刻は異なるかもしれません。
多くの人にとって「時間」は一日を区切る数字の並びです。
私たちは時計をもとに起きて仕事に行き眠りにつきます。
しかし常にそうではありません。
私には時計と無縁の日々がありました。
子供の頃の夏休みです。
太陽の位置だけを目安に過ごしていたそのころ時間にはそれほど意味はありませんでした。
今私たちの生活は時間との競争です。
でも何と競争しているのでしょうか。
時間は宇宙にもともと存在するものなのでしょうか。
それとも人間が文明を維持するために作り出した抽象的な概念なのでしょうか。
答えを得るには「時間とは何か」を知る必要があります。
簡単ではありません。
時間とは物事が同時に起こるのを防ぐものだと考えます。
時間のおかげで物事は始めから終わりまで順を追って起こります。
時間はこれまで考えられてきたようなものではない事が分かってきました。
時間は人が受動的にたどっているものではなく脳内で能動的に構築しているものなんです。
そのため同じ出来事でも人によって捉え方が異なる可能性があります。
時間は存在しません。
存在するのは一つ一つの瞬間それぞれが独立した「今」です。
僕は時間を表示させる事が好きなんです。
ロジャー・スミスは時計職人です。
スミスが作るオーダーメードの時計は一つ数千万円もします。
時計作りで一番難しいのは極めて小さな歯車などの部品を規則正しく動かす事です。
時計作りはとても時間がかかるし工程も複雑です。
一つ一つの部品が完璧なバランスを保っていなければなりません。
バランスが崩れると時計の進み方が変わってしまうからです。
スミスはグリニッジ標準時に合わせて時計を作っています。
世界中の時計が基準にしている時刻です。
1884年国際会議によってイギリスのグリニッジ天文台を通る子午線が「本初子午線」に定められここの時刻を地球の標準時とする事が決まりました。
私たちが知る「時刻」の誕生です。
時刻という尺度はイギリスの科学者アイザック・ニュートンが考えた「時間」に最も近いものです。
ニュートンは宇宙は神が作った巨大な時計のようなもので時間は一定のリズムで脈打つ拍動のようなものだと考えました。
理論物理学者のリー・スモーリンは時間の謎を解き明かそうとしています。
ニュートンの時間の概念は絶対的でさながらメトロノームのようなものです。
ニュートンは時間とは何にも影響されずに時を刻み続けるものだと考えました。
宇宙で何が起ころうが起こるまいが関係ありません。
メトロノームのようにひたすら同じリズムを刻み続けると言うのです。
問題は誰にも絶対的な時間は分からないという事です。
私たちは出来事と出来事の間の関係によって時間を把握しています。
ミュージシャンが演奏する様子を見るとよく分かります。
演奏が始まるとミュージシャンたちは音符と演奏の進行の関係から相対的に時間の流れを把握します。
時間とは実はそういうものなんです。
メトロノームを止めて片づけてしまいましょう。
それでも音楽は続き世界は今までどおり動き続けます。
これはアインシュタインの「一般相対性理論」の土台でもあります。
時間は宇宙で発生する変化との関係によって作られているんです。
時間についての研究が進むほどアインシュタインの「相対的な時間」の方がニュートンの「絶対的な時間」より正しいと考える人が増えています。
アメリカ・コロラド州の国立標準技術研究所にアルミニウムイオンを用いた世界一正確な時計があります。
極めて低い温度に冷却された原子の振動を測定して時を刻みます。
誤差は37億年に1秒もありません。
2010年2つのアルミニウムイオン時計を横に並べて完全に同期させてから片方を30センチほど持ち上げる実験が行われました。
すると持ち上げられた時計が少しだけ速く動きました。
物の動きを遅くする地球の重力の影響がほんの少し弱まったからです。
アインシュタインは20世紀初めに既にこの結果を予見していました。
アインシュタインの理論で宇宙を認識すれば「時間」は一方方向に進む必要はありません。
始まりも終わりもなくなるのです。
もし私たちが物理的に時間と切り離されているとすればそれぞれの行動を分断し並び替える事もできるでしょう。
世界はこのように見えるかもしれません。
ショーン・キャロルはカリフォルニア工科大学の理論物理学者です。
私たちの周りには3次元の空間が広がっています。
しかしアインシュタインは時間もまた次元の一つだと考えました。
時間と空間が一つに合わさった「時空」です。
私たちは4次元の空間で生きているんです。
アインシュタインは更に重力は時空のゆがみの表れだという事に気付きました。
惑星やブラックホールは周りの時空をゆがませます。
私たちがいわゆる重力と呼んでいるものです。
でも実際は時間と空間がゆがんでいるんです。
そのため重力が強い場所に近づいた時と離れた時とでは感じる時間の流れが異なるんです。
例えば宇宙では地球上よりも時間が早く進みます。
時間の相対性がもたらす奇妙な効果です。
アインシュタインの洞察は更に広がります。
空間は今ここに全てが同時に存在しています。
では時間はどうでしょう?あらゆる時間つまり過去現在未来が同時に存在しているという事はないのでしょうか。
物理学ではあらゆる瞬間が現実です。
しかし全ての時間が同時に存在しているわけではありません。
それぞれの瞬間は空間におけるそれぞれの場所のようなもので存在はしますが別の場所にあります。
また私たちは今この瞬間を体験する事しかできません。
過去の瞬間に戻る事もできなければ未来の瞬間に行く事もできません。
本当に時間を飛び越える事はできないのでしょうか。
世界には時間と切り離された人がたくさんいると考える科学者がいます。
もしかすると時間は人間の頭の中にあるのかもしれません。
時間とは宇宙で規則的に脈打つものなのでしょうか。
それとも場所や人によって変化するものなのでしょうか。
年を重ねると時間の流れは速くなるように感じます。
私たちと時間との関係が年齢とともに変化するからです。
時間の経過は年齢比の平方根の割合で早くなるという研究結果があります。
例えば10歳を「1」とすると20歳ではおよそ1.4倍60歳ではおよそ2.5倍時間の流れが速まります。
同じ1秒でも年齢によって感じ方が異なるという事です。
神経科学者のデイヴィッド・イーグルマンは私たちの時間認識は生物学的状態および心理学的状態によって左右される事を発見しました。
目覚まし時計が鳴る直前に目が覚める人もいるでしょう。
それは人間の体にもともと備わっている体内時計が「起きる時間だ」と教えてくれるからです。
しかし感覚の遮断や過度の刺激意識状態の変化によって時間の感覚が変わる事があります。
事故に遭った人の中には事故の瞬間をスローモーションのように感じ細かい点まで鮮明に思い出せる人がいます。
これは記憶が時間をゆがめる事が原因です。
非常に緊迫した出来事が起きると脳はその一部始終を細かい所まで記憶しようとします。
だから長い時間だったように感じるんです。
脳は常に膨大な量の情報を処理し同期させます。
簡単な動作も脳のスピードとパワーが可能にしているのです。
指を鳴らした時指を動かすと同時に音が鳴っているように感じますよね。
でも本当にそうでしょうか。
実は聴覚が音を捉えるスピードの方が視覚が動きを捉えるスピードよりも速いんです。
つまり脳は音を先に認識するという事です。
脳はバラバラのタイミングで認識した情報を統合し同時に起こった一つの出来事として仕上げます。
だから情報を認識するタイミングに差があっても私たちはそれを一つの出来事として認識できるんです。
脳が情報を統合し処理するにはほんの少し時間がかかります。
つまり私たちは皆ほんの少し過去を生きているという事です。
この遅れは脳が出来事を的確に処理するために必要なものです。
もし脳の働きが損なわれるとあなたが感じる時間と他の人たちが感じる時間は異なってくるでしょう。
深刻な事態を招く可能性もあります。
ある事例があります。
ドライブに出かけた男性が道沿いの木や建物が猛スピードで通り過ぎていくのに気付きました。
アクセルを緩めても状況は変わりません。
彼は世界が加速したと思いました。
しかし実際は男性の方が減速していたのです。
歩き方も話し方もゆっくりになっていました。
時間をうまく認識できずにいたのです。
原因は脳腫瘍だと判明しました。
人は皆時間を認識する時計のような機能を持っています。
イーグルマンはこの脳の機能がほんの少しでも損なわれると重大な精神疾患につながりかねないと考えています。
統合失調症は基本的に時間認識の障害かもしれないと私は考えます。
仮に時間認識が損なわれ物事が前に起きたのか後に起きたのかが分からなくなったとします。
すると物事に対する認識は断片的なものになり自分が何をしたのかも分からなくなります。
私たちの時間認識がいかに揺れ動くかを示すためイーグルマンは時間認識を僅かにゆがめる実験を考え出しました。
(イーグルマン)ボタンを押すと画面が光る仕組みを思い描いて下さい。
(イーグルマン)通常ならボタンを押すとすぐに画面が光るところを10分の1秒ほど光るのを遅らせます。
脳はこの遅れに慣れていきます。
押したあと光るまで思ったよりも遅い事を理解しそれを補正します。
すると押したと同時に光ったように思えてきます。
再び遅れを元に戻しボタンを押したらすぐに光るようにすると今度はボタンを押す前に光ったと感じるようになります。
「ボタンを押していないのに勝手に光った」と思う。
こうした事は統合失調症の症状でも見られます。
人間の主観的な時間認識は伸び縮みする事が分かりました。
イーグルマンは時間は本当に存在するのか疑問を抱き始めました。
時間は人間が抱く最も強固な「思い込み」かもしれません。
その本質をつかみ時間が脳によってどう構築されるのかを解明するには物理学のあらゆる方程式を見直す必要があるでしょう。
宇宙に関する物理学的見地から時間の謎を解明できると考える研究者がいます。
この研究者はアインシュタインの方程式を見直す事で時間は全く存在しないと結論づけました。
「時間は幻想だ」。
この考えは急進的に思えるかもしれません。
しかしこれは2,500年前からある考え方です。
古代ギリシャの哲学者パルメニデスは「運動」は不可能だと論じました。
物体が移動するには無限に小さな行程を無限に繰り返さなければならないからです。
無限の繰り返しなど誰にもできません。
それゆえ運動は不可能であり変化も不可能また時間も幻想であるとパルメニデスは考えました。
この考えを理解した人は誰もいませんでした。
現実には運動は起こり物事も変化し時間は過ぎていくからです。
量子物理学の法則と照らし合わせパルメニデスの説は正しいと考える科学者がいます。
イギリスの物理学者ジュリアン・バーバーです。
バーバーは数学的な根拠をもとに宇宙に時間は存在しないと主張しています。
しかしバーバーが暮らすイギリスの田園地帯は過去に取り囲まれています。
ここは非常に古い通りで後ろにあるのが私の家です。
1659年に建てられました。
当時ニュートンは10代で時間と運動について考え始めた頃です。
もし時間が存在しないなら街並みの古さは何を意味しているのでしょうか。
バーバーは私たちが目にしているものは全て遺跡の発掘現場のようなものだと言います。
まず物が存在し時間は後から推測されます。
1,000年前に建てられた教会も14世紀の壁画も時間が空間の中に存在する証拠だと考えます。
過去は今とは別のもの別の世界です。
万物の配置が異なる別の「今」なんです。
時間の中に瞬間があるのではなく瞬間の中に時間があるんです。
バーバーの時間に対する見解はアインシュタインの相対性理論と量子力学の融合を図るために考え出されたホイーラー・ドウィット方程式に基づいています。
ホイーラー・ドウィット方程式には時間を表す「t」の文字がありません。
そのため多くの人はこの方程式を相対性理論と量子力学が相いれない更なる証拠だと考えました。
しかしバーバーは違いました。
量子力学とアインシュタインの一般相対性理論を融合するこの方程式から得られる解が正しいなら時間は存在しません。
存在するのはコマ止めの静止画像のような空間だとバーバーは考えます。
問題はそれがどう関連しているかです。
私が考える宇宙は系統だった膨大なスナップ写真の集合体のようなものです。
それぞれが独立した世界を形づくり他の世界とつながる事は一切ありません。
どの瞬間のどの世界も非常に豊かです。
それが私たちの世界なんです。
フィルム映画が1秒24コマで映像を動かすように私たちの頭の中では「瞬間」が再生されているとバーバーは言います。
つまり実際は何も動いていません。
私たちが「時間」と呼ぶものは幻想だという事です。
(バーバー)量子力学的に考えるとある意味宇宙は静止しています。
何も変化しません。
バーバーによれば静止した瞬間全てが同時に存在します。
例えば「昨日はもう存在しない」と言ったらそれはまるで数字の13が「11は死んだ」と言うようなものです。
おかしな話でしょう?それぞれの瞬間は活力と生命にあふれています。
数学的に表現するならある意味で「永遠」です。
バーバーは更に過去の自分を同じ人間だと思うのも幻想だと言います。
それぞれの瞬間で人は違う人物であり無限の次元に散らばっているからです。
無数のあなたが存在しています。
今のあなたは子供時代のあなたと同じではありません。
違う人物です。
言うなれば多くの点で私は3歳の時の私よりも他人のあなたに似ています。
客観的に考えれば大人と子供よりも大人同士の方が共通点がずっと多くありますからね。
もちろんDNAが同じといった面はあります。
しかし経験や世の中に対する理解度を考えれば私は大人のあなたにより似ています。
私から見れば3歳の私は今の私とは全くかけ離れた存在です。
私がいる部屋はタイムカプセルです。
さまざまな時代の証しがそこら中にあります。
歴史の証拠は全て現在に存在しているという事です。
歴史とは証拠によって再構築されたものです。
あるいは現在から見た仮説とも言えます。
地質学者が考える太古は現在から推測されたものにすぎません。
自分の過去について私が信じている事も実は全てまたはほとんど全てが経験と一致するように推測されたものです。
全てがあまりに首尾一貫しているので本当に過去があると信じてしまうんです。
バーバーの時間の考え方は物理学の世界では真剣に受け止められています。
しかし誰もが賛成しているわけではありません。
バーバーの親友リー・スモーリンは反対の立場です。
時間は幻想でも誰かが作り出したものでも出現させたものでもありません。
時間は現実です。
時間が存在するかをめぐって物理学の世界では激しい対立が起きています。
時間とは私たちが作り出した幻想なのでしょうか。
「そうかもしれない」と考える科学者もいます。
一方「時間は存在する」と考える科学者たちは知覚と観察が伝えるものを無視できないと言います。
「時間は存在する」と主張する科学者たちは私たちが世界を「時の流れ」として体験していると考えます。
更に時間の経過は宇宙でただ一つの真実かもしれないと言います。
ティム・モードリンは物理学が専門の科学哲学者です。
時間の経過が本当に幻想であるなら絶えず年を取っていく事も日々近づいてくる死を心配する事も現実ではない事になります。
しかしそれは信じられません。
私が生きている世界にはどう考えても当てはまりません。
モードリンは時間の存在を否定する物理学者がいるのは数学を扱う事による職業病のせいだと考えます。
物理学では世界を全て数学によって表そうとします。
数学の世界の数字や幾何学は時間とは関係がありません。
数字という変化しないものばかりを扱っていると世界が変化するとは考えにくくなってきます。
時間の存在を否定する人たちは世界を数学で表せるという考えにとらわれているように思います。
数学の事で頭がいっぱいになり実際の世界が見えなくなっているんです。
バーバーの考えでは空間は確かに存在し時間は幻想です。
一方モードリンは時間こそ必要なもので空間はなくてもかまわないと考えます。
空間を根本とする必要はありません。
でも時間は常に根本です。
それをひっくり返す事はできません。
時間は全ての土台となる存在です。
物理学はその事に十分な注意を払ってきませんでした。
空間が先か時間が先か。
これは宇宙の爆発的誕生ビッグバンにまで遡る議論です。
ビッグバンが宇宙をつくった事に関しては物理学者たちの意見は一致していますが時間をつくったかについては意見が割れています。
物理学と哲学の分野には時間は幻想だと考える人が大勢います。
永遠は時間の枠外にあると言うのです。
私も以前はそう考えていましたが今は時間は現実だと考えます。
リー・スモーリンは時間はビッグバンの前から存在し宇宙が終わったあとも続くと考えています。
それを証明するには光が長い距離において速度を変えるかどうかを観察すればいいと考えます。
光は秒速およそ30万キロメートルの速さで進みます。
もし時間が存在せず宇宙が不変ならば宇宙のどこにおいてもその速さは変わらないはずです。
しかし時間が存在するなら時の経過と共に光の速度が変わる可能性があります。
物理現象の基本法則の一つである光の速度が変わるという事は宇宙は不変ではなく変化しているという事です。
時間が存在しないはずがありません。
光の速度が不変でない事は厳密に検証すれば分かるはずです。
実験は実際に行われています。
フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡は宇宙のかなたで起こるエネルギーの放出ガンマ線バーストを観測します。
ガンマ線バーストは宇宙の初めの頃の光の速度を知る手がかりになります。
100億光年先で起きたガンマ線バーストによって2つの光子が飛んできたとします。
一方の光子の方がより高いエネルギーを持っています。
私たちのいる今の宇宙ではどちらの光子も全く同じ速度で進みます。
しかしはるか昔の宇宙では光の速度が異なったとするとより高いエネルギーを持った光子が少し遅れるはずだとスモーリンは考えます。
(スモーリン)100億年たった時点で高エネルギーの光子が1秒から3秒ほど遅れるでしょう。
十分に観測できる差です。
100億年につき1秒でも観測する事は可能です。
近い将来フェルミ・ガンマ線宇宙望遠鏡が捉えたガンマ線バーストのデータから時間が存在する証拠が得られるかもしれません。
物理法則が変化するという決定的証拠が見つかれば時間の存在をめぐる論争は終結するでしょう。
では時間が存在するとしたらその理由は何なのでしょうか。
物理学は理論上時間を必要としません。
それでも私たちは時間の中を動いていると感じます。
一体時間はどこから来たのでしょうか。
ある科学者は時間が逆に進む反転した宇宙の存在が鍵を握ると考えます。
時間をどう捉えるかについて科学者たちの説は分かれています。
しかしなぜ時間は存在するのかを問う人は多くありません。
人間が考え出したものではないのなら時間はどこから来たのでしょうか。
カリフォルニア工科大学の理論物理学者ショーン・キャロルはその謎を解明したと考えています。
時間は存在します。
証拠は至る所にあります。
しかしなぜ時間が存在するかは謎に包まれています。
キャロルは時間が過去から未来へ一方方向に動いているという常識を受け入れています。
しかしなぜ時間に向きがあるのでしょうか。
キャロルは「エントロピー」と呼ばれる乱雑さの尺度と密接に関係していると考えます。
物理法則の一つである熱力学第二法則によると時間がたつほどエントロピーが増大します。
つまり乱雑さが増すという事です。
ですからエントロピーが増す前の初期の宇宙は非常に秩序立っていたはずです。
整然と並べられたビリヤードのボールのように。
しかしやがて混とんとしてきます。
宇宙も同じ事です。
時間と共に混とんの度合いは増しエントロピーが増大していきます。
ビッグバンによって宇宙が誕生して以来エントロピーは増大してきました。
キャロルは過去が未来と異なるのも時間が一方方向に進むのも私たちが過去を記憶し年齢を重ね進化が起きたのも全てエントロピーの増加が理由だと考えます。
では何が謎なのか。
エントロピーは時間がたつと増大します。
しかし基本的な物理法則には過去と未来の間に違いはありません。
ニュートンやアインシュタイン量子力学によってもたらされた物理法則も同じで時間の向きによる違いはありません。
例えばボールが2つだけの単純な物理状態を考えてみましょう。
一方のボールをもう一方にぶつけた場合時間を逆行させても違和感はありません。
しかし複雑でマクロな状況では過去と未来に違いが出てきます。
だからボールがたくさんある場合時間は一方方向にしか進みません。
でないとビリヤード場は大騒ぎになるでしょう。
騒音に割れるグラス飛び散る血…。
これらは全て宇宙のエントロピーを増大させます。
そしてエントロピーの増大が時間の向きを決めます。
ではなぜエントロピーは最初低かったのでしょうか。
宇宙はバランスを欠かないのでしょうか。
未来はどんどん無秩序になっていくのに過去は極めて秩序立っていたんです。
物理学者にとっては悩みの種です。
キャロルはその答えを多元宇宙の中に見いだしました。
この理論によると私たちの宇宙は無数に存在する宇宙の一つかもしれません。
(キャロル)「母宇宙」を想像して下さい。
母宇宙は「子宇宙」を生みます。
子宇宙は小さな空間の泡として誕生しやがて大きくなります。
低エントロピーから高エントロピーへ。
私たちの宇宙と同じです。
母宇宙が子宇宙を生みその子宇宙では時間は前に進むとします。
するとバランスを取るために時間が逆に進む宇宙も生み出されます。
全てが反転した宇宙です。
つまり私たちの宇宙と正反対の「双子の宇宙」がどこかの次元に存在するという事です。
宇宙はそれぞれ独立していてそれぞれに時間の矢があります。
ただもう一つの宇宙と比較すると時間の矢は逆向きなんです。
キャロルの説は発表以来注目されています。
この説は時間の謎を解明するものなのでしょうか。
物理学の進歩には「もしこうなら?」と考える事が大切です。
「もし」と考えるうちに「そうだ!」と気付きうまくいく場合もあればうまくいかない場合もあります。
量子力学と多元宇宙論は時間の謎に挑むための興味深い方法を提示してくれます。
ここに「ひも理論」を加えたらどうなるでしょうか。
こりゃ不可思議だ。
時間には多くの謎があります。
絶対的か相対的か。
幻なのかそれともエントロピーの産物なのか。
謎はまだあります。
昨日今日明日という前提を揺るがすような問題です。
時間は横に流れているように思えます。
しかしもし上下にも流れているとしたら。
時間にも空間のように私たちには見えない複数の次元が存在するとしたらどうでしょうか。
スティーブ・ワインスタインは複数の次元が存在すると考えます。
更にそこに電子や光子などの素粒子が存在するのではないかと推察します。
ワインスタインは物理学者哲学者そしてプロのミュージシャンです。
ワインスタインの時間の考え方はひも理論から発展したものです。
ひも理論では空間に私たちには見えない4次元以上の空間が存在すると考えます。
ワインスタインはそれが時間にも当てはまるのではないかと考えました。
(ワインスタイン)空間の次元を自由に増やせるのであれば時間の次元も増やせるのではないかと考えたんです。
それまで時間はずっと1次元的な「線」と捉えられてきました。
しかし2次元なら線ではなく「形」になります。
ギターのケーブルは遠くからは1次元的な線のように見えます。
でも近くで見ると別の次元があるのが分かります。
円周があり円筒のような形です。
私たちに見えている次元は別の方向に広がっているのかもしれません。
ワインスタインは電子や光子などの素粒子は2つの「時間の次元」にわたって存在していると考えます。
素粒子を表す場合一般的に時間軸のどこにあるかを説明します。
このピックが素粒子だとするとこことかここにあるとかいうわけです。
図にする場合は縦軸が時間ならそこに記していきます。
時間にもう一つ次元があるとしたらどうでしょう。
その次元がギターのネックと直角にあると想像してみて下さい。
すると素粒子の位置はここだけではなくここやこっちにもあるかもしれません。
量子論では原子より小さい粒子は空間に明確な居場所がないためどこにあるかは推測するしかありません。
しかしワインスタインは居場所はあると考えています。
時間のもう一つの次元です。
もしこれが本当なら物理学の革命です。
不確実だった量子の世界が変わるからです。
しかし時間に2つの次元がある事を証明するのは簡単ではありません。
時間の2つの次元を説明するには極めて難解な数学を用いる必要があるからです。
物理学者にとっても理解するのは大変です。
あまりに難しくて頭がパンクしてしまうかもしれません。
時間のもう一つの次元とは何か。
これは私が今まで研究した中でも最も難しい問題です。
取り組む人は少ないでしょう。
しかしワインスタインは苦労しがいのあるテーマだと考えます。
(ワインスタイン)多元的な時間というのは一つの説です。
間違いかもしれませんがこれまでにない考え方だと言えます。
物理学者たちはさまざまな方法で宇宙を捉え時間の謎に迫ろうとしています。
しかし突き止めようとしなければ永遠に謎は解けないという点で意見は一致しています。
(スモーリン)一生懸命研究するしかありません。
失敗や間違いを繰り返す覚悟が必要です。
これは物理学だけではなく科学全般に言える事でしょう。
あらゆる間違いを検証し尽くしてようやく正しい答えにたどりつくんです。
時間は存在するのかそれとも幻想なのでしょうか。
私たちの感覚では過去は永久に去ったもので未来はこれから起こるものです。
いつの日か時間の物理学的側面は解明されるかもしれません。
しかし人間の生と死のサイクルが変わる事はありません。
子供時代の輝く夏は永遠に戻りません。
しかしまた新しい夏が巡ってきます。
さまざまな出会いが待ついくつもの新しい夏が。
博士の母トメが2015/07/09(木) 23:00〜23:45
NHKEテレ1大阪
モーガン・フリーマン 時空を超えて 「時間」は存在するのか?[二][字]

時間とは何か?宇宙に実在するのか?人間が作った幻想か?科学最大の謎とされる「時間」。世界の研究者が時間の真実に迫る。

詳細情報
番組内容
俳優モーガン・フリーマンがいざなう未知の世界。3月に放送したシリーズ第2弾。「時間」について第一線の研究者が持論を展開する。そもそも時間の定義は何か?1日を数字で刻むもの。脳で構築しているもの。時間は存在しない…。事故にあった時、起きたことをスローモーションのように感じるのは、脳の働きによるものだという。時間認識の違いは何をもたらすのか?考え始めると眠れない時間を過ごすことに!?(2011年米)
制作
〜ディスカバリー制作〜

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
英語
サンプリングレート : 48kHz

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