危険と隣り合わせの平穏な日常
命の危機は私たちの事情など察することなく突如襲い来る
その原因が私たち人間にあることも少なくない
想像を超える悲劇はなぜ起こったのか?
そこには決して許されることのないある理由があった
あなたは記憶しているだろうか?
かつて日本を未曽有の大惨事が襲ったことを
ある人はやっと手に入れた憧れのマイホームを突如奪われ…
ある人は…
(絶叫)
多くの人が命を落とす中…
いずれのケースにも共通しているのは罪なき人々がある日突然思いもかけない恐怖に見舞われたという紛れもない事実である
(たけし)どんなに世間を騒がせた出来事でも時とともに人々の記憶から忘れ去られる運命にあります。
(たけし)今回番組で取り上げる2つの悲劇もまた同じ。
しかしだからこそ人々を悲しませたあの出来事から私たちは何を学び…。
こよいもう一度考えてみませんか?
国内史上最大の大惨事といわれる火災がある
閉店後の商業ビルで起こった悲劇
ビル火災としては国内史上最悪
118名の犠牲者を出した
この忌まわしい火災事故はいったいなぜ起こったのか?
閉店後客のいないデパートにもかかわらずなぜこれほどまでの犠牲者が出てしまったのか?
一瞬のうちに…
容赦なく襲い掛かる…
未曽有の大火災で…
通称ミナミの繁華街と呼ばれるその一角に…
悲劇の舞台となった千日デパートはあった
デパートとはいえ実質は各階のフロアを細かく区切り商店などに貸し出す形の雑居ビル
1階から5階は食料品店や雑貨屋など様々なテナントが入っていた
また6階にはゲームセンター
さらに屋上には当時としては珍しい観覧車が設置されていた
しかし今から43年前の5月
その巨大施設が前代未聞の大火災に巻き込まれることになる
火災当日。
デパートはいつもどおり定刻の…
閉店後はビル1階の保安室に待機する保安係2名がデパート内を巡回していた
客のいなくなったデパートは不気味なくらい静まり返っていた
だが実はこのビルの中で1軒だけ…
ビルの最上階7階のフロア
そのほとんどを占めるキャバレープレイタウンだ
当時のキャバレーは今と異なり生バンドの演奏をバックにダンスをしたり有名歌手の演奏を聴きながらお酒を飲んだりと粋な大人が楽しむための空間だった
(男性)待ってたよ。
(あけみ)お待たせ。
ごめんね。
ほとんどの企業で週休二日制など考えられなかった時代
サラリーマンたちにとって土曜日の夜は…
午後10時20分
通常千日デパートには1階の保安室
唯一にぎわう7階のキャバレー
閉店後はこの1階と7階2つのフロアを除いて人はいないはずだった
だがこの日は違った
(男性)お前ら手休めんな。
早せんと朝までに終わらんぞ。
(一同)はい。
ビルの3階にある婦人衣料品店で現場監督を含め5人の作業員が電気配管工事を行っていた
依頼主はこのフロアのほとんどを占めるテナントだった
しかし午後10時30分ごろのこと
舞い上がる炎に作業員が気付いた
作業員の叫び声を聞いた現場監督は3階にある火災報知器のボタンを押した
(警報音)
これにより火災の連絡は1階の保安室へと知らされる
そして…
火災発生の一報を受けた保安係2名がすぐさま現場へと急行。
しかし…
このときすでに炎は消火器では手に負えないほど燃え広がっていたのだ
火災発生の一報を受けた保安係2名がすぐさま現場へと急行。
しかし…
このときすでに炎は消火器では手に負えないほど燃え広がっていた
火を消そうと手を尽くすも時すでに遅し
(男性)係長。
もう手には負えへん。
部下の報告を受けた係長がすぐさま119番に通報
(係長)もしもし。
消防ですか?
その後係長自らも現場へと急行した
しかし119番通報したとき3階の第一報の連絡からすでに6分が経過していた
そのころ7階のプレイタウンには客が57人
ホステスが78人
バンドマンダンサーらが11人
そしてボーイら従業員を含めて合計181人がフロアにいた
彼らは皆土曜日の夜を満喫していた
それにしてもいったいなぜ火災報知器が押されたにもかかわらず7階では誰も火災発生に気付かなかったのか?
千日デパートの全てのフロアには火災報知器が備え付けられていたのだがそれらは皆保安室に連絡するだけのためにあった
つまり3階で火災報知器を押したとしても直接7階には伝わらないのだ。
それだけではない
火災発生の一報が入った際には保安室から全館一斉に放送を流し避難を促すという手はずになっていた。
ところが…
7階にだけは放送が流れる仕組みが整備されていなかったのである
実は千日デパートの管理体制は複雑な構造になっていた
1階から6階は千日デパートのオーナー会社が管理
7階のプレイタウンはオーナー会社の子会社が管理していたのだ
この2つの会社による管理体制が今回の悲劇を生んだ大きな要因の一つだった
いざ火災が発生したとき両者の間でどのように対応するのか具体的な取り決めがなされていなかったのだ
1階の保安係は基本的にデパート部門の担当であり7階のプレイタウンについて管理責任はなかったのである
そのため…
危機的状況にもかかわらずプレイタウンだけが取り残された
(あけみ)うん。
ホステスのあけみは数年前に夫と離婚
その後一人娘を育てるためにこの仕事を始めた
当時キャバレーで働くホステスにはあけみと同じくシングルマザーの女性や夫の稼ぎだけでは生活が苦しい主婦が多かったという
つまりホステスのほとんどが子供を持つ母親だったのだ
(男性)あっ。
そうや。
(男性)何言うてんの?
くしくも火災があったのは…
千日デパートビルにはそのことを知らせる大きな垂れ幕がかかっていた
(あけみ)うん?
(男性)うん。
(あけみ)ええん?
プレイタウンの各テーブルでは客とホステスが大いに盛り上がっていた
だがこのとき…
魔の手は確実に迫っていたのである
土曜夜のデパート。
キャバレープレイタウンは大いに盛り上がっていた
だがこのとき…
魔の手は確実に迫っていた
保安係が119番通報をしたちょうどそのころ
(一同)はい。
(一同)はい。
バンドのリーダーだった高平さん
彼はいったん仲間たちを控室に待機させ状況を把握するため探りに出た
エレベーターの隙間から立ち上る白い煙にボーイが気付いた
3階の作業員が火災を発見してからわずか11分
すでに…
(男性)火事や。
(従業員)ああ。
高平さん。
(高平)そうか。
(従業員)いいじゃないですか。
とそのときだった
(従業員)逃げろ。
逃げろ。
男性客がレジへ向かおうとしたそのときだった
店内はたちまちパニック状態となった
そしてこの後プレイタウンを戦慄の恐怖が襲うこととなる
たちまちパニック状態となったキャバレー
店内にいた人々が一気にエレベーターへと押し寄せた
このときプレイタウンの事務所には支配人の須藤がいた
彼は火災の際避難誘導を行う防火管理者でもあった
・
(悲鳴)
そんな彼がようやく異変に気付いたのは店内がパニックになった直後のことだった
(須藤)どこかってどこだ?
(須藤)分からない?
多くの客やホステスが1階に降りるためにエレベーターホールへと殺到した
100名を超える人々がわれ先にと押し寄せる
ところが…
扉の隙間から煙が激しく噴き出しもはやエレベーターで逃げることは不可能だった
(従業員)はい。
7階にあるプレイタウンから下へ下りるには通常2台ある専用の直通エレベーターを使用する
だがそれが使えない今地上へ下りるには…
それが支配人である須藤の指示した…
非常口の扉の先にあるA階段だった
ここを通れば7階から1階へと逃げることができる
さらにプレイタウンがあった7階にはこれ以外にも1階へと通じる階段が3つ存在していた
一つはエレベーターホール近くにあるB階段
ここは普段ホステスが帰宅する際に使用する階段だった
6階から2階の店内と接することなく直接1階へと下りられるため都合がよかったのだ
またホールから一番遠い場所に存在していたC階段
さらにステージ脇にあるD階段
これら4つの階段はデパートの名物でもあった観覧車のある屋上にもつながっていた
もし階下へと逃げられない場合は…
しかしプレイタウンにいたほとんどの人間がこれらの階段を使用しなかった
正確には使用できなかったという
いったいなぜ4つの階段は使えなかったのか?
この後プレイタウンで起きた地獄のような惨劇が明らかとなる
(紺野)怖い。
(剛力)国内史上最悪のビル火災と呼ばれる千日デパート火災お送りしていますが。
ここまでご覧いただいて…。
(設楽)怖いですね。
(剛力)ねえ。
(設楽)もうだって実際起きてしまったから犠牲者が出てるってことですもんね?
(剛力)そうですね。
はい。
(北川)たった43年前のことと思えないですよね。
(日村)そうなんですよね。
(北川)何か最近とも思えますけどね。
(剛力)ちなみにあきさん。
当時のキャバレーって今とどう違うのかって…。
(あき)今はねああいうキャバレーっていうのはないんじゃないかしら?生バンドがあって…。
すごくやっぱり大人の社交場みたいなんで。
(日村)そうですよね。
(あき)ねっ?でもう有名な歌手の人が来て生バンドが入ってるからそこで歌を歌ったりとか。
(日村)そういうことか。
(あき)そう。
ご夫婦で見に行ったりとか。
(紺野)ご夫婦で?
(あき)そう。
見に行ったりするの。
歌手の人が来て。
そういうとこだったのね。
(設楽)でもさっきVTRで言ってたけど今のキャバ嬢みたいなイメージとちょっと違う感じなんですね。
(あき)違うね。
うん。
(設楽)もうちょっと落ち着いてたりみんな子供がいたり色々な理由があって働いてる人が多い。
(あき)そうですね。
(剛力)もう一度その7階に閉じ込められた方々のこちらをご覧いただきたいと思うんですが。
(設楽)ああ。
これね。
(剛力)エレベーター。
見取り図。
(設楽)だからABC全滅だったんだもんね?
(紺野)でも4つも階段があったのに何で使えなかったんだろう?
(日村)そこですよね。
(あき)そこだよね。
鍵か何か掛かってたのかしら?
(日村)そういうこともあり得るし。
ドアが要は開かないっていうね。
(設楽)でも何かもっと原因がありそうだね。
使えるはずの階段が使えなかったとか。
(日村)いっぱい階段あるじゃん。
脱出口は。
(剛力)閉じ込められた方々にとって救いとなるはずだった階段。
なぜ全て使うことができなかったのか?続きをご覧ください。
突如炎と黒煙に包まれた千日デパート
作業員が火災を発見してからプレイタウンの店内がパニック状態に陥るまで…
わずか15分足らずの出来事だった
一方保安係から通報を受けた大阪市消防局は間髪を入れずに…
現場に近い南消防署はもちろん市内各所から消防車が千日前へ急行
このとき現場に向かっていたのはポンプ車はしご車放水車などと救急車が合わせて84台
そして消防隊員は実に596人
大阪市消防局はこの未曽有の大火災に万全の消火態勢で臨んだ
保安係の119番通報から3分後の…
がこのときすでに千日デパートは3階を中心に2階4階へと火が回り…
(従業員)はい。
プレイタウンの支配人須藤は煙が充満したエレベーターホール脇の非常口その扉の先にあるA階段から皆を避難させようとしていた
しかし非常口は…
(女性)開かないじゃない!
客や従業員がデパート内に勝手に出入りすることを防ぐため普段から鍵が掛けられていた
(須藤)おい。
鍵!
(従業員)はい。
(須藤)鍵持ってこい。
早く。
(従業員)ちょっと!どいてください。
落ち着いて。
どいて!
非常口を開けるために必要な鍵
それはクロークの中に保管してあった
だが…
そこもすでにエレベーターの隙間からあふれる煙が充満
それ以上先へ進むことはできなかった
(須藤)落ち着いてください。
落ち着いてください。
(従業員)支配人。
(須藤)鍵は?
(須藤)くそっ。
その直前もう一つの脱出ルートであるB階段へと向かっていたグループがあった
(男性)子供と一緒にあした行ってきたらいい。
あけみを含むホステスたちだ
普段から使っていたB階段で地上を目指そうとしていた
だが彼女たちは知らなかった
すでにそこは熱と煙が充満した…
(あけみ)止まって!
地獄と化していることを
ホステスたちが目指すB階段
そのすぐ近くには煙があふれだすエレベーターホールがあった
だが…
彼女たちは知らなかった
すでにそこは熱と煙が充満した…
(あけみ)止まって!
地獄と化していることを
(あけみ)みんな戻って!
クロークにたどりつけなかったボーイ同様充満する煙に阻まれB階段へと避難することができず…
彼女たちは慌てて近くのトイレへ逃げ込むしかなかった
作業員が火災を発見してからわずか15分程度
エレベーターホールに充満した煙によって2つのエレベーターA階段とB階段
店内にいた人たちはこれらの脱出ルートを失っていた
仲間のバンドマンらを控室に移動させ様子を見に行っていた高平さん
彼はこのとき事務所前の通路に向かっていた
なぜならその先には煙が噴き出すエレベーターホールから最も離れたC階段が存在したからだ
もしその階段が使えるのであれば仲間たちと避難できる
高平さんはそう考えていた
行く手を阻むように換気ダクトから黒煙が猛烈に噴き出していた
それだけではない
ダクトからすさまじい熱があふれだしていたのだ
これは現場検証の際に撮られた実際の写真
換気ダクトのすぐ近くに置いてあったビール瓶が高熱で溶けているのが分かる
襲い掛かる熱気や煙から逃れるため高平さんは…
すると…
当時プレイタウンの隣では劇場を改装してボウリング場を造る工事が行われていた
そのため両者がベニヤ板で仕切られている箇所があったのだ
板を破ればボウリング場側に避難することができるかもしれない
ボーイはそう考えたのである
(従業員)こっちです。
(一同)おう。
はい。
ところが…
(高平)これは…。
ベニヤ板だったはずの仕切りがいつの間にか工事が進み…
この状態ではどんなにあがいても…
だが…
(男性)ああ。
割るぞ!
すでに冷静な判断力を失っていた人々は壁をたたき始めた
(高平)おい。
やめろって。
落ち着け!
こうして4つあった階段のうち3つがふさがれた
そのころホール内に残っていた支配人や客ホステスらは残る1つの脱出ルートから逃げようとしていた
そう。
ステージ裏手にある最後の脱出ルートD階段である
らせん状のD階段はプレイタウンのフロアを突き抜けるように1階から屋上へとつながっていた
そのため観覧車を利用する家族連れが誤って入ってこられないよう普段は…
(須藤)早く。
早く。
(男性)よっしゃ。
支配人は客と一緒にこのシャッターを力任せに開けようとした
(従業員)支配人!
(従業員)はい。
(従業員)はい!
(女性)よかった。
こうして最後の脱出ルートD階段への扉が開かれようとしたそのとき…
(悲鳴)
最後の脱出ルートD階段への扉が開かれようとしたそのとき…
(悲鳴)
シャッターの隙間から…
煙は上へ上へと上っていく
火災により3階に充満した黒煙はエレベーターの隙間や換気ダクトだけでなく店内を通る階段を伝ってすさまじい勢いで…
(須藤)早く!
容赦なく流れ込む黒煙
その場にいた人々は一目散に逃げ出した
キャバレープレイタウンは一瞬にして…
エレベーターそして4つの階段が使えない今7階からの脱出は不可能だと思われた
さらに…
(悲鳴)
3階での火災発見から19分後の…
プレイタウン停電
店内はさらなる地獄絵図と化した
(男性)くそっ。
どこ行けばいいんだ?
だがそれも長くは続かなかった
大声を上げて息を吸い込んだ瞬間一酸化炭素の魔の手が彼らを襲い皆その場で倒れていったのである
そんな絶体絶命の状況の中希望を捨てず生還した者たちがいた
いったい彼らはどうやってこの過酷な状況を脱したのか?
そしてこの大惨事をもたらしたそもそもの原因は何だったのか?
さらにいったいなぜ?
最初は小さな炎だったにもかかわらず…
わずか数分で大量の煙が7階を襲う結果となったのか?
そこで起こった恐るべき現象とは?
この後千日デパート火災
衝撃の真実が明らかとなる
(剛力)どこでまたいったいなぜ火災が起きたのかも分からないまま多くの方々が犠牲になってしまいましたが。
(剛力・設楽)ねえ。
(日村)これは怖いっすね。
(設楽・あき)怖いね。
(設楽)恐ろしいねこれは。
(日村)うん。
(北川)いや。
何か映像ね再現Vって分かってるんですけど。
胸がもう苦しいというか。
(北川)走っていけばいいのにと思っちゃうけどすごい熱かったんですよね。
きっと煙とかで。
(剛力)そしてここからは防災危機管理アドバイザーの山村武彦さんにもお付き合いいただきたいと思います。
(一同)よろしくお願いします。
(剛力)山村さん。
今回のこの千日デパートのケースはその後の日本に大きな影響を与えたんですよね?
(山村)そうですね。
高度経済成長に沸いていた日本列島を震撼させたんですけれども。
数えられないほどの問題点。
(山村)これが浮き彫りになった災害ですね。
(剛力)それではここで皆さんに停電までの経緯を時系列でまとめましたのでご覧いただきたいと思います。
(設楽)10時27分に出火した。
(剛力)3階で出火。
こうして見ると10時30分に作業員の方が火に気付いてからわずか15分で2つの階段が使用できなくなっています。
(日村)15分か。
(紺野)あっという間に燃え広がっちゃったってこと…。
(日村)相当燃えたんすね。
(剛力)この後に残りの2つの階段も使用できなくなり火災発生から20分ほどでプレイタウンは停電。
(日村)早いよね。
(紺野)でも消防車すごい早く着いてますよね。
(あき)そうなの。
早く着いてんだけどね。
(山村)そうですね。
非常に早かったですね。
(設楽)ですよね。
(山村)大阪消防は最大限の消防態勢で臨んだんですね。
(設楽)でもこの犠牲者ですよね。
(山村)そうですね。
(北川)何だかホントに不運が重なってるなっていうのとまたねお子さんもたくさんいらっしゃった方々ばっかりだと。
(設楽)ホステスさんね。
(日村)そうなんだよね。
(設楽)お母さんがって言ってましたもんね。
ビル火災として国内史上最大の犠牲者を出した千日デパート火災
この大惨事をもたらした原因は実は今もって定かではないが…
事故当日3階で電気工事をしていた作業員らのたばこの不始末ではないかといわれている
だが消火後に行われた大掛かりな現場検証でもそのことを決定づける証拠は見つからず
結局未曽有の火災事故の出火原因はいまだ不明のままである
しかし原因が解明できなかったにしてもこれほどの大きな被害を出した背景には…
火災が起きるまで明るみに出なかった幾つもの衝撃の事実があった
千日デパートの各階には火災があった際フロアを幾つかに仕切って延焼や煙の流出を防ぐ防火区画シャッターが備え付けられていた
その数1階から4階までで57枚
しかし火災当日はもちろんのこと毎日の開閉の手間を省くためシャッターのほとんどは閉められることなくいつも開放状態だった
結果3階で発生した火災はあっという間に2階4階へと燃え広がっていったのである
しかも火災が広がるスピードは尋常ではないくらい速かった
事実作業員が最初に火災を発見したときには炎は幅40cm高さ70cmくらいのものだった
しかし発見からわずか3〜4分
保安係が駆け付けたときには炎はフロア全体に燃え広がっていたのだ
いったいなぜか?
そこにはある恐るべき現象があった
いったいなぜ作業員が発見してからわずか数分で炎はフロア全体に燃え広がったのか?
実はそこにはある恐るべき理由があった
あのとき千日デパートの3階ではフラッシュオーバー現象が起きていたといわれている
フラッシュオーバーとは室内で発生した小さな火災がある瞬間一気に部屋全体へと燃え広がる現象のこと
これはそれを実験で再現した映像
ソファに着火
すると徐々に火は大きくなり…
およそ3分後
突然…
原因はソファが燃えたときに出る…
それが少しずつたまっていき…
そして…
部屋の中に…
突然炎が大きくなったのだ
これがフラッシュオーバー現象である
千日デパートの場合火元の3階には化学繊維でできた服が大量にあった
結果わずかな時間で…
大爆発を引き起こしたのだ
だが実際に炎が燃え広がったのは最終的に出火元の3階をはじめ2階と4階である
火は7階までは到達していなかった
プレイタウンを地獄絵図へと変えたのは炎ではなく多量の一酸化炭素を含む煙だった
火災によって発生した煙はエレベーターの昇降路や換気ダクトなどを通って…
一気にプレイタウンのある7階まで押し寄せた
これによりわずか数分で…
しかしそんな万が一の事態に備えプレイタウンにはある防火対策が施されていた
ステージのすぐ脇にある窓
ここに避難器具である救助袋が備え付けられていた
救助袋は長い袋状になった避難器具
袋に潜り込むとそのまま滑り台のように中を滑り地上に到達できる仕組みになっていた
停電が起き真っ暗になった店内ではホステスや客が煙から逃れるように…
(男性)こっちも。
しかし…
窓から投げ出された救助袋はなぜか地上まで届くことなく2階のネオンサインに引っ掛かったのだ
(従業員)くそ!
実は救助袋の先端部分には通常砂袋がくくりつけられている
だがこのとき救助袋から…
点検をしていなかったがために起きた重大なミスだった
これでは避難することは不可能に思われた
しかし地上では必死の努力が繰り広げられた
2階に引っ掛かっていた救助袋を見つけた消防隊員がとっさに行動。
地上に放り投げた
すると…
群衆が救助袋を固定すべく皆で先端部分を引っ張ったのである
これがそのときの実際の写真である
皆の協力によってようやく7階の人を助けだすことができるはずだった
ところが…
救助袋の入り口を開く手順をボーイが知らなかったのだ
そのため誰一人中に潜り込むことさえできなかった
これではせっかくの救助袋もただの布である
しかし…
(従業員)おい。
それでも煙に巻かれている人々にとってはこれが…
(一同)ちょっと。
やめろって。
救助袋をつかみ下りていく男性客
しかし体の重みでずるずると滑り落ち…
両手と布の摩擦で手の皮はめくれ激痛が走る
そして…
(悲鳴)
試みた人のほとんどが数m下ったところで力尽き落下
命を落とした
一方そのころ高平さんの指示に従いバンドマンたちは控室でじっと待機していた
(高平)うん。
(滝川)ハァー。
(滝川)あっ!?
(一同)はい。
そうだな。
タオルタオル。
扉の隙間にタオルなどを挟み煙を食い止める
しかしこれも時間の問題
(一同)はい。
まずい。
開かない。
控室には窓が備え付けられていたが7階にある他の窓同様皮肉にも安全のために開閉できない仕組みになっていた
しかし命の危機が迫っている今この窓を打ち破る以外方法はなかった
(一同)ああ…。
(高平)うわーっ!・割れた。
(高平)これで…。
これで…。
実は高平さんらバンドマンたちは大の野球好き
仕事が休みのときはプレイタウンのボーイたちと楽しむために…
窓から顔を出すとすでに多くの消防車や救急車が駆け付けていた
また周囲を見渡すと窓から助けを求める人がいた
彼らも高平さんらと同様椅子などを使って窓をたたき割っていたのだ
(須藤)こっちだ!助けてくれ!
中には停電になったフロアから辛うじて逃げ出した支配人や…
(女性)みさこ!みさこ!みさこ!
必死に自分の子供の名前を叫ぶホステスの姿も
何とか生き残り窓際まで避難してきた人たち
全員がわれ先にと助けを求めていた
はしご車が配置され一番近い窓から救助が行われていく
しかしそれを待ちきれず熱さと煙から逃れるために…
ここは地上から25mの7階
地面に衝突すれば助かる確率は皆無に等しい
迫り来る煙。
呼吸が苦しくなる
一刻も早く逃れたい衝動
その思いが実際の高さを狂わせ…
あり得ない期待が窓枠を乗り越えさせようとした
だが…
高平さんが控室に戻ってきてからおよそ10分
迫り来る煙と熱気の恐怖から救い出されたのだ
高平さんらバンドマンたち以外にもはしご車によって男性客やホステス従業員ら50名の人たちが救出された
さらに煙や熱気に耐え切れず窓から飛び降りた人たちの中にも偶然電線に引っ掛かって軽傷で済んだ者や…
(女性)みさこ!みさこ!
住民らが協力し合い広げたシートに墜落して助かった者などもいた
あの大惨事の中…
しかし犠牲になったのはその2倍近い118名にも及んだ
これは後に作成された調査報告書である
そこには生存者からの聞き取り調査により次のような事実が記されている
実際に…
しかし犠牲者の死因で最も多かったのは煙による一酸化炭素中毒
その数は実に93名にも上った
調査報告書では発見された遺体の状況から亡くなった方々の最期の瞬間を以下のように推定している
あのときコンクリートを蹴り続けた人々は…
(あけみ)みんな戻って!
あのとき必死の思いで避難したホステスたちは…
また…
あの日辛うじて生還した高平さん
キーボード担当の滝川さんは当時の様子を次のように語る
(高平)そうすると下を見てますとね…。
(滝川)近くなって感じるのよね。
(高平)だから「あれ?ひょっとしたら足を折ってでも助かるんじゃなかろうか?」という錯覚に一瞬陥ったことは事実なんです。
(高平)われわれは火事といえば燃えてる火が怖いと思います。
ところが私この千日デパートの火災でつくづく思ったのは…。
水をかぶれば助かる。
ところが…。
だから火事は火より煙が怖いということをホントに痛感しました。
今回多くの犠牲者を生む原因となった煙
しかしあなたはお気付きだろうか?
この事件に隠された2つの衝撃の真実に
1つ目は最初プレイタウンを襲った煙
それはエレベーターの昇降路から伝わったものだった
そしてこの煙が瞬く間にホール内に広がり多くの人の命を奪う原因となった
がしかし…
このエレベーターは本来地下1階と7階を結ぶプレイタウン専用の直通エレベーターであり炎が広がった2階から4階の煙が入りこむ隙間はないはずなのだ
にもかかわらずいったいなぜ煙は昇降路を通じて7階へと伝わったのか?
実はここにこそ今回の大惨事を招いた大きな要因が隠されていた
それは…
プレイタウン専用のエレベーターが通る昇降路
その2階3階部分の壁に隙間があったのだ
これは千日ビルが建設された当初の手抜き工事によって生じ放置されたものだった
結果火災発生時大量に噴き出した煙はその隙間へと進入
一気に7階へと伝わったのだ
こうして思わぬ形で煙が充満したプレイタウン
全ての脱出ルートは奪われ店内にいた人は皆パニックに陥った
だが実はこのとき最悪の状況から脱出できたかもしれないルートがただ一つ存在していたのである
それが2つ目の衝撃の真実
B階段だけは2階から6階の店内と接することなく唯一地上へと下りられる直通の階段だった
あのときホステスたちは煙が充満していたためクロークの先にあるB階段へたどりつくことはできなかった
しかしもしあの先に行くことができたなら彼女たちの命が助かったかもしれないのだ
実際救助に駆け付けた消防隊員は現場に到着するとすぐにB階段を駆け上がった
すると火元となった3階にも煙はまったくなかったのだ
しかし5階に到着したとき状況は一変する
大量の煙が上から下りてきて行く手を阻んだ
それでも危険を冒して6階まで行ってみたがそこが限界だった
エレベーターの隙間から漏れだす煙はその勢いを増し7階にあるB階段の出入り口から下へと大量に噴き出していたのだ
だがこの状況を考えると出入り口に充満する煙さえかいくぐればそのままB階段を使って…
実際多くのホステスが煙を避けるためにトイレに逃げ込む中…
身をかがめ決死の覚悟で煙を吸わないようB階段を下りる女性がいた
このとき4階も3階にもまだ煙は立ち込めていなかった
女性は最終的に命からがら…
後に行われた裁判でもプレイタウンから地上に避難するにはB階段が唯一の階段であると結論づけられた
火災後責任を問われたのは千日デパートビルのオーナー会社で管理課長を務める人物
キャバレープレイタウンを経営していた会社の代表取締役
そしてあの火災の中生存した支配人の3名
彼らは防火区画…
救助袋の取り換え補修を放置していたこと
6階以下の出火を想定した避難訓練をしていなかったことなどの過失を問われ業務上過失致死罪で有罪となった
またこの火災はそれまでの消防法を改善する大きなきっかけともなった
(鈴木)例えばスプリンクラー設備を設置しなければならないとなりました。
(鈴木)それ以降にできる建物についてはその基準どおりスプリンクラー設備を設置しなければならないのは当然なんですが。
すでにある建物。
その時点ではスプリンクラー設備が必要なかった建物についてもスプリンクラー設備を設置する必要が発生すると。
あの事故から43年
高平さんにはどうしても忘れられない光景があるという
ご主人と別れた方。
あるいはご主人が仕事がないという方でね。
窓際で折り重なるように倒れていた女性
亡くなったホステスは65名に及んだ
ロッカーで力尽きた女性もいた
その大半は子を持つ母親だったという
それでトイレで…。
苦しさのあまりからトイレの便器に顔を突っ込み亡くなっていた女性
彼女の手にはしっかりと映画のチケットが2枚握られていたという
くしくも母の日の前日に起こった悲劇
翌日の新聞には残された子供が母の棺にカーネーションを捧げる様子が報じられていた
一度に118名の命を奪った火災
われわれはこの悲劇を教訓として生かさなければならない
(剛力)43年という長い月日が流れましたがこれは決して忘れてはいけない事故ですよね。
(紺野)この火災の当時は小学生だったので大変な火事があったんだなくらいしか思わなかったんですけど。
今は人の親になって子供のために一生懸命働いてたお母さんが亡くなって残された子供たちがどんな思いだったかというと何かもうホントやりきれない思いですね。
(北川)これを教訓にして今があるというふうにすっと思えないというか。
何ともホントに切ない気持ちですね。
(鹿沼)やっぱ自分も経験したことがないとちょっとその分甘く見ちゃうというか。
そういう火災器具が壊れてても。
例えば消火器とかも使えない状態だとしてもあまりそこに注意がいかなかったり。
(設楽)絶対パニクります。
僕昔火事出したことあるんです。
たばこの火の不始末で火が付いちゃったんですけど。
で連絡しなきゃと思って家から離れて電話してんのに電話つながんないんですけど。
小機なんです。
持ってんの。
で家から出てんのに。
親機から離れてるから使えないのにそれ分かんないんですよ。
(北川)「何でだ?何でだ?」
(設楽)後で思ったけど。
その悲劇は今から41年前。
東京郊外の住宅地で起こった
東京都と神奈川県を分ける多摩川で起こった未曽有の水害は日本中を釘付けにした
危険とは無縁と信じていた住民たち
しかしなぜとんでもない事態へと巻き込まれたのか?
災害が人々から奪い取った掛け替えのないものとは?
41年前。
多摩川沿いに並ぶ住宅の1軒。
横山家で最初に異変に気付いたのは部活の合宿で地方に出掛けようとしていた大学生の長女だった
(娘)お母さん。
(理子)うん?
(理子)あら。
そう?
(娘)うん。
(十四男)四国の方に台風が来てるからな。
でもこの辺は大丈夫だろう。
この日は日曜日
大学で日本史を教えている一家のあるじの十四男さん
高校に通う次女も家にいた
横山さんの家は東京都狛江市の多摩川沿いに建てられていた
ちょうど川に背を向けるように玄関があり家の背後には本堤防と呼ばれる高さ3mほどの土でできた堤防があった
そしてテニスコートなどが広がる河川敷を挟んで内堤防が設けられておりその先に多摩川があった
川沿いの家はこの本堤防と内堤防2つの堤防によって洪水から守られていた
普段多摩川はこの宿河原堰である程度水の流れをせき止められている
これにより用水路に水を導き農業用水や工業用水として利用するのだ
だがこの日は…
せきを乗り越える水の量がいつもより多かった
しかし台風の季節などにはよくあることであり特に珍しいことではなかった
一家がこの地に住むようになって18年
土手の向こう側には河川敷が広がり公園やテニスコートがある
子供を育てるならこんなところがいいと…
(娘)それじゃあ行ってくるね。
(十四男)気を付けてな。
そんな中で子供たちはすくすくと成長
(理子)いってらっしゃい。
あるじの十四男さんも…
(理子)あらあら。
(十四男)失敬だな。
静かな環境の中自らの足で20年以上にわたって膨大な資料を集め…
だがこのときすでに最悪の事態は刻一刻と迫っていたのである
その日夫婦が近隣の集まりから帰ってくると…
(理子)あら。
(理子)あっ。
そこには驚きの光景が広がっていた
横山夫妻が堤防の上に上ってみると…
そこには驚きの光景が広がっていた
川と河川敷の間に設けられた内堤防の一部が壊れて水が公園やテニスコートのある河川敷に流れ込んでいたのだ
実は台風の影響で関東の…
大量の雨水が上流にある小河内ダムに一気に流れ込みそこからあふれた水が多摩川を増水させていたのである
そして横山さんの家近くにある宿河原堰で止められた水が左右に分離
内堤防を直撃して破壊したのだ
しかも水量はこれからますます増していくものと思われた
多摩川の監視警戒班が異変に気付き消防署に連絡
現場に駆け付けた消防署員はすぐさま木流し工法と呼ばれる作業に着手した
木流し工法とは伐採した木に土のうをくくりつけそれをくいとロープで岸に固定
氾濫する河川に流すという方法
急流を緩やかにし岸が崩れるのを防ぐ効果がある
幾つもの水害で実績があったため消防はこれで食い止められると確信していた
だが…
(理子)ねえ。
あなた。
ねえ。
あなた。
(十四男)うん?
市の広報車による避難指示だった
実は木流し工法では濁流に対抗できず河川敷の浸食を食い止められずにいたのである
(娘)ねえ。
(娘)でも…。
実は10年ほど前にも増水した…
しかしそのときはいったんは避難したが被害が出ることもなく家に帰ることができた
今回もその程度で済むと思っていたのだ
そして横山さん一家は避難所へと向かった
(理子)待っててね。
ごめんね。
同じころ横山家の近くの辰巳さんの家でもペットに関する騒動が起こっていた
(娘)嫌だよ。
かわいそうだもん。
連れてく。
(辰巳)もう。
(娘)行こう。
娘たちが避難所に犬を連れていくと聞かなかったのだ
もう置いてあるわよ。
音楽関係の会社に勤めていた辰巳さんは娘たちにも音楽の楽しさを知ってもらおうとバイオリンを習わせていた
・
(演奏)
(娘)あっ。
パパ。
父の思いは確実に娘たちに伝わっていた
何よりうれしかったのはバイオリンを弾くとき娘たちが一番の笑顔を見せてくれることだった
こうして辰巳さん一家も避難所に向かった
横山さん一家が避難したのは近くの小学校だった
避難所には比較的和やかな空気が漂っていた
だがそのとき…
実はこのとき本堤防では想像を絶する事態が発生していたのである
住民たちの知らないところで実は想像を絶する事態が発生していた
消防は木流し工法で堤防の決壊を食い止める作業を続けていたのだがこれまでの常識は通用しなかった
濁流がかつてない勢いで河川敷を直撃
木を固定していたロープを次々と引きちぎったのだ
これにより浸食がどんどん広がりついに安全だと思われていた本堤防を土台から崩した
そして避難所で待機していた横山さん一家に耳を疑う情報がもたらされる
警官が声を掛けたのは横山さんの2軒隣の住民だった
(男性)お前はここにいろ。
いいな?
(女性)あなた…。
(剛力)マイホームが流されてしまうかもしれない。
この後想像を超える事態が住民の方々を襲うことになりますが。
(設楽)そんなつもりじゃなくてみんな避難したんだもんね。
(剛力)そうですね。
(設楽)それが何かどんどんどんどん事態がね。
(剛力)そのきっかけとなったのが内堤防が決壊して大量の水が河川敷に浸入したことでしたが。
(北川)これっていうのは結局水位が下がっても時間の問題でいつかこちら側まで水が来るというわけじゃないですか。
(北川)だからもっと早くね教えてあげることはできないのかとか。
意外に土なんだっていうのもちょっと驚きでした。
(日村)そうですね。
(北川)コンクリートじゃないんだっていうのも少し驚きでしたね。
(剛力)実は当時紺野さんは多摩川の近くに住んでらっしゃったんですよね?
(紺野)当時このぐらいのところに住んでました。
(設楽)この模型でいうと?
(紺野)このぐらいのところに住んでました。
この災害があった日は日曜日で。
今思い出したんですけど成城学園前にある学習塾に行って夜遅い時間に帰ったら何か騒ぎになってるんですよ。
それはニュースを見て心配した親類縁者から「大丈夫か?大丈夫か?」っていつになく電話で。
はい。
宿河原堰に遮られ内堤防を破壊した濁流は住宅地も襲い始めた
それは今や本堤防を崩し…
住宅が流されるのももはや時間の問題だった
警察に声を掛けられた男性は横山さん一家の2軒隣
(十四男)お前ここにいてくれ。
だが家の近くまで行ってみると…
住宅地は立ち入り禁止になっていた
見捨てるわけにはいかないんですよ。
横山さん親子にとって猫もあの家で一緒に暮らしてきた家族だった
(男性)はい。
(娘)ありがとうございます。
(十四男)よし。
行こう。
付近の住宅は全て停電していた
(十四男)ちょっと2階行ってくる。
(娘)うん。
チーラ?ドーラ?
(娘)チーラ?ドーラ?
(十四男)チーラ?
(娘)ドーラ?
(娘)うん。
(十四男)うん。
あっ。
ちょっとだけ。
このとき十四男さんが持ち出そうとしていたのは…
(理子)朝からあんまり散らかさないでくださいよ。
20年以上にわたって自分の足で集めた資料
日本史研究者としての人生が詰まっていた
だが…
(十四男)よし。
持ち出せたのはほんの一部
迫る濁流を前にそのほとんどを諦めるしかなかった
家の土台を削り始めた濁流を抑えようと現場の消防は最後の手段に打って出る
木流しに変えて1つ4t以上もあるテトラポッドを投入。
水の勢いを止めようとしたのだ
しかし凶暴なまでに流れ狂う濁流は…
そして迎えた2日目
日付が変わって間もなくのこと
最悪の事態が現実となった
ついに濁流は苦労して手に入れたマイホームをのみ込み始めたのだ
最悪の事態が現実となった
濁流はついに苦労して手に入れたマイホームを奪い始めた
激しい流れに地盤を削り取られ自らを支えきれなくなった家は崩落
押し流された
これは夜が明けてその日の昼実際に撮影された映像である
住宅が次々と濁流にのみ込まれる
前代未聞の水害は家族の歴史が刻まれた家を思い出が詰まった大切な品々もろとも永遠に奪い去った
それから間もなく…
(男性)横山さんですね?
(理子)はい。
ついにそのときがきた
横山さんが家を買ったのは結婚してすぐのこと
以来18年家族の思い出の全てがあの家に詰まっていた
2日目の朝。
狛江市役所の会議室では狛江市警視庁消防庁自衛隊建設省の現場代表が顔を揃え対策会議が開かれた
(男性)危険過ぎます。
せきを爆破するなんて。
市や建設省が提案したのは…
内堤防が壊れた後問題となったのはせきが濁流を住宅地に導いてしまっていること
爆破することによって流れを変えようとしたのだ
しかし付近の川沿いには住宅が密集し私鉄の鉄橋も近くを通っていた
ヘリで宿河原堰に降り立った自衛隊員たちは破壊力のあるTNT火薬を仕掛けた
万一のことを考え近くを走る私鉄も止められた
そんな緊張が高まる中一人の住民が自宅に戻った
(娘)やだよ。
かわいそうだもん。
連れてく。
横山家の近くに住む辰巳さんだった
彼の目的は…
娘が子供のころから練習してきた…
たとえ家が流されても娘たちには少しでも早く…
だからこそこれだけはどうしても持ち出したかった
せきの上では…
そして…
だが一度では流れが変わるほどせきを破壊することはできなかった
その後…
2日間にわたって爆破を繰り返す間にも家の流出は続き…
そして洪水が始まってから4日目
実に13回の爆破によってようやく水の流れが変わった
こうして首都東京で起きた…
だがこの洪水によって結局19軒の家が無残にも流されていった
流されたのは家だけではない
家族のアルバムや思い出の品々
それぞれの家に暮らした人たちの生きた証しが濁流によって葬り去られたのだ
かつてない被害をもたらした多摩川水害
いったいなぜ被害はこんなにも拡大したのか?
最大の問題は最初に破壊された内堤防
実は内堤防は10年ほど前今回よりも小規模な洪水で破損をしたことがあった
そのときは大事には至らなかったが内堤防の強度は十分ではなかったのだ
にもかかわらず多摩川を管理する…
家を流された被災者たちは国を相手取って裁判を起こしその結果全面勝訴。
賠償金が支払われた
一方宿河原堰は多摩川の増水に柔軟に対応できる構造に生まれ変わった
水害を引き起こしたときは固定式だったが…
そして実は家を流されたほとんどの家族はその後多摩川沿いの同じ場所に新しく家を建て戻っていた
横山さん一家もそうだった
現在あるじの十四男さんは90歳
奥さんの理子さんは27年前に亡くなったが十四男さんは今も元気だ
(十四男)ああ。
雑草が生い茂ったな。
当時のことを聞いてみた
(十四男)意外でしたね。
未曽有の大洪水によって家を奪われた人々
その姿を思い出すと今も胸が痛むという
横山さん自身雑誌のインタビューで次のように語っている
実は自宅が流される直前家族の間でこんな会話が交わされていた
(理子)私ねさっき…。
(十四男)えっ?
(理子)でも…。
ねっ?
このときから家族は前を向いていたのだ
さらに1カ月後。
うれしいことがあった
多摩川のほとりでいなくなった猫の1匹が見つかったのだ
家に連れて帰り生涯面倒を見た
日本中を震え上がらせた…
われわれは知らなければならない
災害が奪うのは家や財産だけではない
それは掛け替えのない思い出までも奪い去ってしまうということを
(剛力)最終的に19軒もの家が流されてしまいましたが。
あらためて自然の恐ろしさを思い知らされる出来事でしたけど。
(北川)私も小さいときに阪神・淡路大震災の被災をしていて避難をした経験があるんですけど。
でも自然災害なので泣いても怒っても仕方ないですしどこにぶつけていいかっていうのも難しいですし。
でもその後復興してまた同じ場所に…。
歩いて1分ぐらいのところに私も戻って住みましたので同じところにまた帰ってきたっていうのも何かすごく分かるなと思って見てました。
(紺野)どんなことでも自分だけは大丈夫じゃないかなってつい思っちゃうんですけど。
(鹿沼)思っちゃいますね。
(設楽)思ってます。
(山村)正常性バイアスっていうんですけど。
自分だけは大丈夫。
(山村)隣の家は危ないけどうちは大丈夫だろう。
何の根拠もなくですね自分をこう…。
これはある意味心の安全装置ではあるんですね。
(山村)小さな出来事でびくびくしていたら心が持たないので。
ところがそれは見たくないものを見ないようにしてそういうふうにしようとするんですね。
だから見たくないものも一応しっかり見た上でそして対策を取った上で安心してもらうといいと思いますね。
(剛力)さてここで突然ですが北川さんが出演されるドラマが始まるんですよね?
(設楽)突然です。
ものすごい突然です。
(北川)とっても突然なんですが実はこの番組の後。
この後すぐ。
(設楽)この後すぐ?そうなんです。
私が出演しておりますドラマ『探偵の探偵』が放送になります。
(設楽)『探偵の探偵』?
(剛力)どんなドラマなんですか?私は普通の探偵ではなく探偵を対象に。
いわゆる同業者を対象に探偵をするという職業に勤めてる女性で。
アクションなどにも挑戦しておりますので。
(剛力)ドラマ『探偵の探偵』は今夜10時からです。
皆さんぜひご覧ください。
(北川)はい。
お願いします。
日本を揺るがした2つの…。
それは体験した方々の胸に深い爪痕を残しました。
あれから40年余り。
43年前の忌まわしい大火災から生還した高平さん
彼は今でもミナミの街を訪れるたびに千日デパート跡のある場所にやって来る
(スタッフ)これは何ですか?
そして水害に見舞われた横山さんの妻理子さんは生前こう語っていた
そして横山さん自身も…
(十四男)そういう気持ちの方がむしろ強かったですね。
常識では考えられない出来事アンビリバボー。
あなたの身に起こるのはあしたかもしれません。
2015/07/09(木) 20:00〜21:54
関西テレビ1
奇跡体験!アンビリバボー国内災害2時間SP[字]
【実録!日本を襲った未曾有の大災害SP】
大阪で史上最悪デパート火災!!30分で118名の命が…炎と毒ガス恐怖の一夜!▽多摩川で大洪水…家19軒が流失…
詳細情報
番組内容
ある日、ビル火災史上最悪の大惨事といわれるその事故は大阪で起こった。そのビルは1階から5階までデパートで、6階はゲームセンター、屋上には観覧車があった。火災当日、デパートは午後9時に閉店したが最上階7階にあるキャバレー「プレイタウン」はまだ営業していた。この日は3階の婦人服売り場で電気の配管工事がおこなわれていた。そして午後10時30分に作業現場で炎が舞い上がった。現場監督に知らせると、すぐに
番組内容2
火災報知器のボタンを押し1階の保安室へと向かった。3分後保安係員が現場へ行くと、この時すでに炎はフロア全体へと燃え広がっていた。保安係は119番に通報、しかし「プレイタウン」への連絡を忘れてしまう。しかも、「プレイタウン」には火災報知器が設置されていなかった。火災が起こった時には、181人もの人々がいた!果たして彼らは脱出できるのか!?そして火事の本当の恐怖とは!?
番組内容3
東京郊外でその悲劇は起こった。多摩川沿いの住宅街の一角にあった横山家(仮名)の長女が2階から多摩川を見ると、明らかに普段より水量が多い事に気づいた。多摩川と河川敷の間には内堤防があり、さらに横山家の前には本堤防が設けられていた。これまでこの辺りが水害にあったことはなかった。その後水量はどんどん増し、内堤防が決壊、河川敷に水が流れ込んでしまう!この後、想像を超える事態が住民の人々を襲うことになる!
出演者
【ストーリーテラー】
ビートたけし
【スタジオメンバー】
剛力彩芽
設楽統(バナナマン)
日村勇紀(バナナマン)
【スタジオゲスト】
あき竹城
北川景子
紺野美沙子
鹿沼憂妃
山村武彦(防災危機管理アドバイザー)
スタッフ
【プロデューサー】
角井英之(イースト・エンタテインメント)
【演出】
藤村和憲(イースト・エンタテインメント)
【編成企画】
清水麻利子
【制作】
フジテレビ
【制作著作】
イースト・エンタテインメント
ジャンル :
バラエティ – その他
バラエティ – クイズ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 1/0モード(シングルモノ)
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