安全保障関連法案が衆院特別委員会で与党単独で可決された。与党、民主党、維新の党が国会運営の主導権を握ろうと三つどもえの綱引きを展開したが、どの党も相手の出方を読み切れず、思惑通りの結果を出せなかった。政治の合意形成力の低下を印象付けた。
与党は間を置かずに衆院本会議で法案採決に踏み切る方針だ。週内に衆院を通過させれば9月27日の会期末まで70日あまり。参院審議が進捗しない場合に否決したとみなして衆院再議決で法案を成立させる「60日ルール」があることを考えれば、安保法案は成立に向け、大きく前進したといえる。
与党は当初、維新を自陣に取り込み、最低でも採決の場にいさせることで「円満採決」を演出しようとした。安倍晋三首相は維新の橋下徹大阪市長と良好な関係をアピールし、維新が対案を出すと「敬意を表する」と持ち上げた。
取り込み失敗は大いに不本意だろう。首相本人が「国民の理解が進んでいる状況ではない」と語る世論の逆風にも向き合わなくてはならない。
キャスチングボートを握ったはずの維新は足並みの乱れが響き、存在感を示せなかった。
対案を提出した際も民主党出身の松野頼久代表は熟議に軸足があり、大阪系の議員は与党との接点づくりを重視していた。大阪系が対案の修正案を独自に作成して与党に打診する場面もあった。
民主党は維新をつなぎ留めようと領域警備法案の共同提出はしたが、安保法案そのものへの対案はつくらなかった。外交・安保政策を巡り党内にはさまざまな意見がある。食い違いを見せないために対案づくりをあえて見送ったとみられても仕方あるまい。
何でも抵抗で支持が広がると思うのは世論の読み違いである。
安保は国の将来を左右する重要課題だ。だから活発な論戦が必要なのに、116時間に及ぶ審議時間の大半が合憲か違憲かの押し問答だった。与野党とも国会の役割をよく考え直してほしい。
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