〜
(通話中を知らせる音)〜
(早瀬咲子)駄目ってそんな。
だいたい何よ。
さっきだっていきなり切っちゃうし。
銀座で食事なんて東京に戻って初めてじゃない。
せっかく家族三人で。
どうしたの?何かあったの?ねぇ。
(通話が切れる音)あ透?今夜ねお父さん駄目なんだって。
だから二人でご飯食べよう。
お母さん懐かしい築地あたりも寄ってみたいし。
何よあんたまで。
わかったわよ。
じゃあ私一人でうんとおいしいものを。
何よ。
(サイレン)
(倉本雄二)課長行きましょう。
〜藤野裕恵:行くよ!えいっ!!
(チャイム)同じだ今も。
(染屋律子)咲子?
(律子)咲ちゃん?あ〜やっぱり咲だ!うわぁ久しぶり!りっちゃん?うん!うわ〜律子!!咲〜。
ありがとう!よく食べたよねこれ。
私なんか未だによ。
夫が銀行マンだから転勤転勤で。
2か月前ようやく戻ってこれたの。
そうは言っても千葉寄りの葛西ってとこ。
知り合いもいなくてね。
(律子)ふ〜んそうなんだ。
(律子)私はね店継いだの。
酒屋さんを?
(律子)うん。
あこんにちは〜。
(魚屋)よっ持ってくか?
(律子)うんまた今度ね。
(魚屋)うんわかった。
母はとっくに死んじゃって父は5年前に倒れて今は寝たきり。
私一人でなんとかやってるんだ。
そう。
嫌だそんな深刻な顔しないでよ。
あぁだけど27年。
27年よ。
うん。
裕恵:行くよ!えいっ!!裕恵どうしてるんだろうね?あぁそうだねぇ。
あそうそう!今度ね中学のクラス会を開くの。
私幹事なんだ。
クラス会?うん。
へぇ。
みんな中年のいいおっさんおばさんになってるんだろうね。
あ先に言っちゃうけどさ私まだ独身だから。
そうなの?そうなの〜。
(律子)ねぇ咲絶対来てよ!せっかくだから築地でおいしそうなお魚買ってきたのよ!
(早瀬幸雄)飯はいい。
そう。
風呂入ったらすぐ寝るからさ。
ねぇ何があったの?昼間の電話ずっと気になってたんだけど。
顧客がなうちのビルから飛び降りたんだ。
どうしてそんな。
お前が心配することじゃないさ。
(ドアの閉まる音)またそんな。
お行儀悪いわよ。
あんた昨夜随分遅かったでしょう?夕飯どうするのよ?
(早瀬透)バイトだって言っただろ。
今日も遅いの?夕飯は?毎日毎日同じことを聞くな。
外に出りゃ何があるかわからないんだ。
そんな言い方って。
私だって。
(ドアの閉まる音)
(木部雅也)築地中学3年5組の再会を祝しまして乾杯!
(一同)乾杯!
(拍手)相変わらず話長いよね。
あれじゃ魚が腐っちゃうよ。
裕子!お料理すっごいおいしそうよ!
(物音)
(清水篤志)いい加減にしろよ!
(律子)さぁさぁ私たちも乾杯しましょうよ!咲咲。
あれ裕恵じゃない?うわ〜裕恵!
(下坂裕恵)久しぶり。
しばらく。
急にごめんなさいね。
このホテルで打ち合わせがあったからそしたら「築地中学3年5組クラス会」って。
まさかと思って。
(律子)でもよかった。
(律子)突然転校しちゃって連絡取れなくなっちゃうしね。
(律子)会いたかったよ。
あこっちこっち!
(裕恵)元気だった?うん。
私も卒業以来なの。
こんな偶然で仲よかった三人が揃うなんて嬉しい。
ねぇねぇそれでどうしてるの?あぁ青山で輸入雑貨の店をね。
家具とかアクセサリーとか。
すごいじゃない。
だけど東京にいたのに水くさいよね。
家もねお店を直してきれいにしたから一度遊びにきて。
うん。
で咲子はお仕事を?ううん。
サラリーマンと結婚して子供はもう大学生。
そうだろうと思った。
じゃあ絵なんか描いてるの?美術部だったでしょ?時間はあるけどなかなか。
でも幸せそう。
若々しいってことは苦労がないってことね。
羨ましいわ。
(清水)おい藤野!こっちにも付き合えよ!あぁちょっと行ってくる。
裕恵かっこいいよね。
私たちと生活のレベルが違うって感じ。
うん。
お料理取ってこよう。
こんなとこめったに来ないからしっかり味わっとかなくちゃ!しばらく〜。
立派になったねぇ。
(待井信樹)何だか鼻につくけどな。
え?藤野。
覚えてる?もちろん。
待井君でしょ?サッカー部だった。
へぇ光栄だな。
俺もクラスの中でいちばんよく覚えてるよ。
笑った顔が昔のままだ。
待井君こそ若い。
独身だからじゃないの?へぇ。
(律子)何よ二人して。
咲子もう人妻なのよ。
おまけに子持ち。
待井君一緒に飲もうよ。
(一同)乾杯!ねぇ!私絶対誰にも言わないから。
裕恵
(木部)え〜二次会はカラオケです。
(木部)全員参加ですよ。
じゃあ。
まだ仕事があるから。
楽しかった。
(清水)じゃあな裕恵ちゃん!あ裕恵!
(待井)どうしたの?二次会も出ないで。
あぁ。
ほら主人がうるさいから。
27年ぶりだよ?まだちょっと時間早いしさ一軒だけ付き合えよ。
こっちなんだ。
行こう。
やださっきから家のことばっかり言ってる。
(待井)そんなことないよ。
自分のやってることが楽しいのがいちばんさ。
でも待井君イラストレーターなんてすごい。
笑えるよな。
ろくに勉強もせずにさ毎日サッカー漬けだった俺がさ。
ううん。
何だか羨ましい。
嫉妬?あ違うか。
君のほうが絵は得意だったんだもんな。
しょせん素人の趣味よ。
自己流だし。
天才はみんな自己流さ。
(店員)いらっしゃいませ。
そうだ。
もしその気があるんだったら挿絵の仕事なんかしてみないか?私が!?別に驚かなくたっていいじゃない。
だって。
大丈夫。
でも下手の横好きだけど私の絵メールででも送っちゃおうかな。
よし決まり。
バンバン送ってよ。
やっぱりちっとも変わってないな。
無邪気っていうかさ素直っていうかさ。
やだ。
来月の2日さ俺の誕生日なんだ。
今さら祝うって年でもないんだけどさ。
(店員)こちらへどうぞ。
(待井)君に一緒に食事でも付き合ってもらえると嬉しいかなって。
その時うちの仕事場にもおいでよ。
俺の仕事も見てほしいしさ。
いいの?うん。
(ため息)〜
(下坂光一郎)今ブームだからさこういうものを|!もう少し入れたほうがいいかもしれない。
(裕恵)ただいま。
(夏実)お帰りなさい。
おう頼まれてたポスター持ってきといた。
ありがとう。
ディスプレイにしちゃ随分高くついたぞ。
そう。
なっちゃん遅くまでごめん。
もう帰っていいわよ。
(夏実)はい。
あなたも先に帰って。
私今晩中に見積もり出さなきゃいけないから。
そうか。
あぁドッグフードがきれてるの。
お願いできる?忙しくて買いそびれちゃった。
わかった。
いつものやつな?えぇ。
待井:来月の2日さ俺の誕生日なんだ。
(待井)君に一緒に食事でも付き合ってもらえると嬉しいかなってねぇ今度の2日なんだけど私。
ん?あぁその日は大阪に出張だ。
泊まりになる。
え?また!?いつも急なんだから。
今夜も遅くなるから。
飯はいいぞ。
(ドアの閉まる音)〜じゃあこれお願いします。
(店員)かしこまりました。
おリボンかけますか?はい。
〜
(チャイム)
(チャイム)
(物音)
(ノック)待井君!咲子です。
勝手に入って来ちゃったけど…。
〜待井君…待井君!!待井君!待井君!!〜
(留守番電話の応答メッセージ)
(近藤)もしもし?ソウブン出版の近藤です。
(近藤)今近くに来てるんですがこれからお伺いしてもよろしいでしょうか?また電話します。
〜〜
(TVアナウンサー)次は新宿で起きたイラストレーター殺人です。
殺害されたのはイラストレーターの待井信樹さん42歳で昨日午後7時事務所を訪ねた編集者によって発見されました。
待井さんは腹部に刃渡り…。
なんだ声かけたのに。
おかえりなさい。
昨夜出かけてたのか?え?電話したんだ。
あぁ買い物に…。
コーヒー入れるわね。
何か用事でも?あぁ。
宿泊先のホテル変わったもんだからさ。
そう。
それね…殺されたの私の同級生なの。
えっ!?クラス会にも出て来た人なのよ。
ねぇあのね…。
私実はあの…。
はい。
…あぁさっき戻った。
…これから?わかった。
すぐに行く。
誰?まったく仕事だよ。
だって今日休みじゃない。
ねぇお昼ぐらい食べて行ったら?しかたないだろ。
俺たちには風当たり強いんだからさ。
行ってくる。
あ咲子。
お前も面倒なこと起こすなよ。
〜誰かいた…。
〜はい早瀬です。
(律子)あ咲?私…律子。
あぁ…。
(律子)ねぇ待井君のこと知ってるでしょ?
(律子)相談したいことがあるの。
(木部)あいつ格好つけてたけど結構借金かさんでたらしいぜ。
えぇっ待井君が?あぁ。
俺なんか財布は女房に握られてるけどお前なんかなぁ。
(清水)いいよその話は。
清水:いいかげんにしろよ!ふふっ…なんで俺を見るんだよ?そりゃ腹が立つこともあったけどそれより結構女に貢がせてたって話もあるしな。
まあまあ死人に鞭打つような話はやめとくか。
そうね。
あ葬儀には俺は参列するわ。
一応幹事だったしさ。
香典の取りまとめは頼んでいいか?うん。
わかった。
咲子さクラス会のあと待井に誘われなかった?ううん…どうして?いやクラス会の間中待井がずっと咲子のほう見てた気がしたからさ。
二次会にも来なかったし。
やだ…まさか…。
あのさ同窓会名簿だけど警察に提出しなくていいのかな?ほら一応関係者っていうか交友関係あったわけじゃん。
馬鹿へたに疑われたらどうすんだよ?でも遅かれ早かれ訊きに来るかもしれないわね。
そうだよなやっぱなんか仲間を疑ってるみたいで気持よくはないわな。
私もそう思う。
悪いんだけど俺そろそろ行くわ。
ねぇどうしたのそれ?あぁ火傷。
ほら単身赴任で自炊してっから。
じゃあ。
おう。
(清水)あぁここでいいよ。
(律子)そう?気をつけてね。
あいつ待井に相当踏み倒されたんだろうなぁ。
銀行に泣きついてもさローンも組めないってぼやいてたからさぁ。
(木部)またあとで連絡するわ。
(律子)うん。
そうして。
いやぁしかしすげえな。
これ全部改装したんだもんな。
(律子)うん。
思い切ってね。
だけどおかげで結婚資金なくなっちゃったわよ。
へぇ…じゃあ私たちの生まれた年のも?うん。
もちろんよ。
どんな年代のもね。
そこら辺のスーパーやコンビニに負けてらんないもの必死よ。
(木部)それじゃあな!あはい。
「ヒロエフジノ」…裕恵?「4月2日はわざわざ私の家に来てくれてありがとう。
楽しかった」何これ?
(裕恵の声)「5時の約束なのに几帳面なあなたは15分も前に来るんだもん。
ホントはまだお掃除の途中で慌てちゃった。
でもあっという間の二時間学生時代にかえった気分で久々にはしゃいでしまいました。
いくらダンナ様が大事だからって7時に帰るなんて言い出してまるで中学生の時とおんなじ。
そんなところもかわいい咲子らしくなつかしかったわ…」どういうこと?なんでこんな…。
久しぶり!じゃあまだ仕事があるから。
楽しかった4月2日…5時から7時って…。
〜
(裕恵の声)「私が選んだイタリアの家具やリビングの床暖房まで褒めてくれたけど気に入ったなら今度はぜひ泊まっていってね。
つのる話もたくさんあるし。
ああなたが喜んだ中国の花茶次はおみやげ用にたくさん仕入れとくわ。
じゃ楽しみにしています」
(裕恵の声)「念のためもう一度私の住所と電話番号記しておきます。
お店にも寄ってね」
(チャイム)〜はい。
(佐竹京介)警視庁捜査一課の佐竹といいます。
こちらは羽田署の草田刑事。
早速なんですが…4月2日夕方5時から7時の間どこにおられましたか?4月2日5時から7時ですか?あの…どういうことでしょうか?殺人事件がありましてね。
4月2日の夕方5時頃です。
(佐竹)で奥さんにもちょっとお話を伺いたいと思いまして。
(お湯の吹き出し音)あの…今お茶を…。
あぁおかまいなく。
下坂裕恵さんご存じですよね?えっ!?旧姓藤野裕恵さんです。
えぇ…。
その下坂さんがですね4月2日の夕方あなたと一緒にいたと言ってます。
間違いありませんか?えっ!?裕恵さんが事件に…そのどういった…?
(草田)羽田のほうであった殺人事件で何人かの方に話を訊いてます。
そのなかに下坂さんがおられまして…。
でどうなんです?4月2日夕方奥さん下坂さんとご一緒だったんですか?あの…その日は…。
彼女の思い違いってことだってあるかもしれません。
(草田)あっ奥さん絵を描かれるんですか?えっ!?いやスケッチブックが…。
あぁ…時々暇つぶしに。
(草田)あぁ。
ほう…いい趣味ですね。
いえ…。
例えば誰かと絵を描いていたとか彼女以外の。
まあそういうことなんです。
どうですか?違います。
違うって?私…私…下坂さんのご自宅におじゃましてたんです。
白金の。
夕方の5時ぐらいからたぶん2時間ほど。
なるほど。
でどんなお宅でしたか?たしかあの日は寒かったですね?あぁ床暖房が入ってましたので。
素敵なリビングでした。
イタリア製の家具も揃っているしおいしい中国の花茶もいただきました。
すばらしいお宅でついつい長居してしまって。
(塚本良平)殺ってないって!何回も言わせるなよ。
(佐竹)いいか塚本?羽田でOLが殺されたのが4月2日の夕方5時から7時の間。
その間お前がどこにいたのか証明できないから言ってるんだ。
だから渋谷のホテル街にいたの!そこで下坂裕恵に会ったって。
彼女はお前に会ってないって言ってるぞ。
その日は自宅にいた。
しかも一緒にいた友達もちゃんと証明してくれたんだ。
(裕恵)またすぐに来てくれるなんて嬉しいわ。
電話もらってすぐにあの時の花茶用意したのよ。
どうしたの?どうぞ座って。
好きでしょ?裕恵さん私ここに来たの今日が初めて。
そのお茶だって飲んだことない。
やだどうしたの?あなたこそどうしてあんなメールを送ってよこしたの?私には何のことだか…。
いやだなほんとに。
第一その裕恵さんっていうのやめてよ。
昔のように裕恵って呼び捨てでいいのよ。
だって違う人みたいで…私の知らない…。
あなたは私の知ってる咲ちゃん。
もう27年よ。
変わらないことがそんなにいいことかしら?変わったほうがいいことだってある。
とにかくなんであなたがありもしないことを言うのかがわからないのよ。
待井君が殺されたこと知ってる?えぇ。
だってあなたがここに来た日じゃない?あなたとあんなに楽しく話してたときに待井君殺されてたのね。
だからなんでなの!?なんで同じ日同じ時間なのよ!なに苛立ってるの?あなたその日待井君と一緒にいたとでも言いたいの?あほらお茶冷めちゃうから。
はいどうぞ。
警察が来たわ。
羽田の事件がどうのこうのって…。
あなたが私といたって言ってるって。
私には何がなんだかわからなくって…!で…あなた警察に何て答えたの?え?言ったんでしょ?ここにいたって。
ね?あなたここにいたじゃない。
私何か間違ったことをした?ねぇ私絶対誰にも言わないから。
裕恵…〜ありがとうございました。
まいど!律子!
(律子)あら!いらっしゃい。
なんだかまた顔見たくなっちゃって。
どうしたの?元気ないじゃない。
ううんそんなことないわよ。
また近所でも散歩する?私も店番飽きちゃったしさ。
福ちゃん!お店ちょっと頼むわね。
出かけてくるから。
行こう!ねぇ…今さらだけど裕恵って中3の時急に転校したでしょう?そのことで何か知ってることない?
(律子)実はね…あの後だいぶ経ってから店のお客さんが話してるのを聞いたんだけど裕恵のおかあさんって自殺したらしいんだよね。
それも実家に帰って。
え?彼女の両親って仙台の人だったらしいんだけどそんなこともあって向こうに帰ったんじゃないのかな?だけどさもとを正せばきっと例の噂よ…裕恵のおかあさんがスーパーで万引きしたっていう。
でも…いくらなんでも自殺なんて。
そりゃあスーパーで売ってるものなんてたかが知れてるわよ。
お金払って頭下げればそれで済んだかもしれない。
でもほら!裕恵の家ってお医者さんだったじゃない。
おとうさんも裕恵に厳しかったらしいし信用もあるしね。
〜裕恵の母:裕恵…。
(店員)どうもありがとう。
裕恵!
(日高)大城さん!目撃者が出ました。
(日高)向かいのビルでバイトしてる学生です。
事件当時現場から逃げるように出てきた女を見たって言ってます。
ブルーのワンピースを着た40歳ぐらいの女だったそうです。
おかあさんが亡くなられたの私知らなかった。
やっぱりあのことが原因なの?だったら私…。
でも私は誰にも言ってない。
だってあなたと約束したもの。
そう?もうどうだっていいことよ。
だから…。
だから?だから…あんなメールを私によこしたわけが知りたいの。
まだそんなこと言ってるの。
だって…あなた私を恨んでるでしょ?私のせいでおかあさんが!あのメールで都合がよくなったのはあなたじゃないの?あれが嘘ならあなたいったいどこにいたの?私ねあの日あの時間たしかに別の所にいたわ。
渋谷のホテル。
そこを出るときに知り合いの男に見られちゃったの。
羽田の殺人事件で捕まってる塚本って男。
その男はね羽田で事件があったとき私と渋谷で会ったって言ってるわけよ。
無実だって。
彼ね外車のセールスマンをしてた頃にうちに何度も来たことがあるの。
たしかに顔見知りよ。
もちろん私が渋谷のホテルでいたのは夫じゃなかったわ。
だからそんなこと認めるつもりはなかった。
それで私といたことに?あなたと比べたらたいしたことないわ。
だってあなた待井君の部屋にいたんですものね。
〜なんでそれを?どうして!?あなた…待井君の所にいたのね?渋谷のホテルにいたなんて嘘!まさか…あなたが!?真実なんてどうでもいいのよ。
あなただってもう警察に言っちゃったんだし。
私は殺してない!黙っててあげるわよ。
あなたが母の万引きのことを黙っててくれたのなら尚さら。
今度は私が…ね。
(争う声)やめろ!やめろって!!あなた!?こんなことやったってどうにも…うっ!あなた!大丈夫?警察に…!いい!ほっとけ。
だって…あっ!すぐ手当てしないと。
誰!?それより咲子…同級生と会うのはもうよせ。
え?同級生?びっくりしたよ急に!何話って?どうしたの…座れば?私の夫のこと知ってる?銀行に勤めてるわ。
ふ〜んそうだっけ?ねぇ…私には正直に言って。
同級生なんだし何があっても気にしないから。
何が言いたいんだよ。
昨夜襲われたの…誰かに。
夫ははっきりとは言わないんだけど私の同級生と関係があるような。
それが俺だってのかよ。
待井君とお金のことでもめてたでしょう?もしそのせいで銀行に借金するはめになって夫があなたに恨まれるようなことしたんじゃないかって…。
考えすぎだよ!だいいち俺咲子の旦那の顔知らないもん。
じゃあ4月2日夕方何してた?なんだよ…結局俺が待井を殺したって疑ってるわけ?いいかげんにしてくれよ!こんなとこでそんな話。
大体なんで待井の事件にそんなにこだわってるんだよ。
(キャスター)男は被害者と同じこのアパートに住む35歳の会社員でこれにより4月2日に起きた羽田のOL殺害事件は急展開の結末を迎えました。
事件直後から重要参考人として身柄を拘束されていた元外車ディーラーの男性はアリバイを証言する人物が現れたこともあって釈放され…。
裕恵の声:彼ね外車のセールスマンをしてた頃にうちに何度も来たことがあるの。
たしかに顔見知りよ。
(裕恵の声)真実なんてどうでもいいのよ。
あなただってもう警察に言っちゃったんだし奥さんには参りました。
奥さん…ご存じかもしれませんが羽田での事件真犯人が逮捕されましてね。
容疑者とおぼしき男のアリバイも証人が現れまして。
まぁこっちとしちゃとんだ失態です。
証人…。
下坂裕恵さんです…奥さんと一緒にいたと言ってた。
それは!いくらホテルにいたからって嘘つかれたおかげで無実の人間を犯罪者にするところだったんですから…。
奥さんに頼まれたからって言ってるんですよ下坂さんは。
そんな嘘です!だって彼女のほうからメールを!!まだ残してあります家に。
そのメールですがそれもあなたに頼まれて書き送ったと言ってるんです。
なんで?なんでそんなでたらめを!!どんな事情があったんです?なんでそんな嘘を…。
裕恵の声:黙っててあげる。
今度は私が…ね私は羽田の事件なんて知らなかった。
関係ないんです!だから…だからもう帰ってください。
(ノック)何しに来たの?裕恵さん…あなた勝手にメールを送ってきといてそれを私から頼まれたからだなんてどういうつもりなの?警察に証言したんでしょう?渋谷のホテルにいたって。
私を助けるふりをして本当は困らせるのが目的だったのね。
じゃああなた…なぜ警察に初めからそう言わなかったの?でも私があなたに頼んだなんて嘘じゃない!なんでそんなこと…。
私が待井君の所に行ったのを知ってること自体あなたのほうが怪しいわよ!あの部屋にいたって証拠じゃない。
まだそんなこと言ってる。
じゃあなんで待井君の所に?子供みたいに絵でも習いに行っただけなんて言うつもり!?何か期待してたんじゃないの?相変わらず自分に甘いのね…自分だけには。
これ…どう説明する?〜これがあれば…私は犯人にならないのよ。
よかったわね戻ってきて。
あぁ…ご苦労だったわね。
やっぱり私は…あなたを守ってあげてるのかもしれないね。
このアロマ評判いいのよ。
よかったら使ってみて。
はい!塚本君にはずいぶん借り作っちゃったかな。
たまらないですよ…。
警察なんてもううんざり。
もうちょっと色つけてくれない?晩かったんだな。
ごめんなさい。
ちょっと友達のところへ。
〜ただいま。
あなたお食事は?お前は済ませたのか?うん晩くなったから。
俺も済ませた。
あぁ…。
ねぇ…なっちゃんから聞いたんだけど今度広尾でお店出すんですって?うん。
どうして私に先に相談してくれなかったの?あいつを店長にしようと思ってさ。
よくやってくれてるし。
あなたたちがそうだってことは知ってたけど私がどれだけあなたを後押ししてるか忘れてないよね?だから…お前は俺より俺の事業のほうが好きなんだなと思ってたよ。
あの店はお前にやるよ。
何その言い方!子供ができたんだ。
(大城石実)生活環境条例違反!過料2,000円。
まずいんじゃないですか?こんなとこで。
ついな…。
いや〜大ヘマでもう少しで不当逮捕だよ!じゃ自分は先に。
あぁ。
例の羽田の?
(佐竹)あぁ同級生だっていう女二人にまんまと騙されて。
(佐竹)そっちはどうだ?イラストレーター殺し新宿の。
(大城)まぁこっちも女絡みってとこかな。
被害者ねあんまりいい噂なくて。
葬式寂しいもんでした。
仕事関係と築地の中学校の同級生がちらほら…。
築地の中学?はぁ…。
いくつだそいつ?待井ですか…42歳。
42歳…。
何すか?どうしたんすか?あっ…香典のリストあったな。
(佐竹)早瀬咲子。
同級生か…。
被害者が殺された時間は?17時から19時の2時間ってとこですね。
5時から7時…。
あぁそれってあれだ。
下坂裕恵と早瀬咲子が口裏を合わせて嘘の証言をした時間だ!
(佐竹)奥さん…待井さんご存じですよね?えぇ。
中学のときの同級生ですから。
4月2日夕方5時から7時の間本当のところどこにいらしてたんですか?えっ?なぜ下坂裕恵さんに嘘の証言なんか頼んだんですか?頼んでなんかいません!だからそれは…。
待井さんとあなた…。
奥さん単に同級生の間柄だったんですか?クラス会があって27年ぶりに会ったんです。
それだけです。
奥さん…絵が趣味だとおっしゃってましたよね?待井さんもまさにそういう仕事なんです。
待井さんが亡くなった時間にね部屋から女性が出ていくのが目撃されているんですブルーのワンピースを着た…。
奥さんじゃないんですか?私そんなの持ってません。
私…。
あなた行ったんでしょ?待井さんの所に。
正直に答えてくれないと署のほうで話を伺うことになりますよ。
その日はずっと家にいました。
あいにく証人は誰もいません。
私は主婦です。
納得していただけなくてもそれが私の生活です。
ここは条例違反じゃねえよな?どうぞ。
あっ…。
これ差し上げます。
死ぬほどどうぞ。
いたの…。
なんで嘘つくんだよ?えっ?同級生が殺された日出かけたじゃねえかチャラチャラした格好して!どうして…!?行ったんだろそいつのとこ。
まさか殺したり…。
馬鹿言わないで!自分が何やってんのかわかってんのかよ!親父のことや俺の…。
あなたたちだって私に何も…。
透!〜
(律子)どうしたのよ?お家で何かあったの?自業自得よ。
それに裕恵のことも。
裕恵のことって?この前彼女のお母さんのこと聞いたでしょ?自殺したって。
うん。
ほんと言うと…私が余計なことしたからなの。
万引きしてるの見つけたら誰だって店の人に言うわよ。
しようがないじゃない。
私が見つけたって…どうして?えっ…だって私咲から聞いたよ。
私が!?びっくりして…裕恵のお母さんだったのよ。
私絶対誰にも言わない私約束したのに…。
裕恵にあれほど誰にも言わないって。
私だから言ったのよきっと。
〜何?あら!もう咲ったら…。
はい。
あっあなた息子さん?それが咲これ忘れてっちゃって…。
えっ!?〜はい早瀬です。
透?お父さんが…!?
(医師)心筋梗塞です。
(医師)運び込まれたのが早かったのでなんとか…。
しばらくはこんな状態ですがもう大丈夫でしょう。
じゃあお大事に。
ありがとうございました。
倉本さんいろいろご迷惑をおかけしました。
本当にありがとう。
いいえ。
かかりつけのこの病院が受け入れてくれて助かりました。
かかりつけ?ご存じなかったんですか?
(倉本)課長は少し前からときどき半休をとられて…。
融資の査定で断ったり打ち切ったり…辛い立場でしたからね。
心労がたまってたんだと思います。
じゃあ職場に戻りますので。
〜〜私…あなたの何?何か言ってよ…。
あなたを追い込んだのは…。
(ドアの開く音)透…。
あなたに言われたこと…お母さん今ごろ…。
親父の銀行で飛び降り自殺があった日俺見たんだ。
(透)みんなで晩飯食うからって言われて映画でも観て時間つぶそうとしてた。
親父の銀行が近いんでちょっと覗いてやれって思って。
(ざわめき)さがってください!おい救急車!すみませんさがってさがって!なんで…。
なんでこんなことを…。
仕事じゃないか!俺だって仕事なんだよ!課長!死ぬな!死なないで!死なないでください!死なないでください!お願いします…死なないでください!〜
(透)あんな親父の姿…初めて見た。
(透)そばに行ってやりたいって思ったけど足が動かなかった。
あなた…何にも知らなくて…ごめんなさい。
〜〜裕恵…〜
(チャイム)
(チャイム)
(犬の吠え声)
(裕恵)ロッキー危ないわよ。
夫が倒れたわ。
せっかくだけど返す。
夫のも。
ねぇどういうつもりなの?これ以上何をしようっていうの?そんなに憎い?恨んでる?私が悪いんでしょ?母のこと言ってるの?万引きはあの人が悪い。
自殺だってうちの家族の問題よ。
あなたを恨むなんて筋違いだわ。
嘘!あなたは私がきっかけで大切な家族を…お家をなくした。
私もやっとそれが…。
恨むなんてそういう決めつけがやっぱりあなたらしいわ。
そんなことのためだけに私が27年間生きてきたって?やることもいっぱいあったわ。
もっと有意義なこと。
私…律子に言われて初めて気づいたの。
彼女にお母さんのことを話してしまったのを…。
あれだけ約束したのに…それを破ってた。
そう…無意識にね。
そうじゃない無神経なのよ。
あなたはそのことには気づかない。
あなたはいつも安全な所にいて人の心配をする。
いいことしてると思ってる。
得ね気楽でそういう人は。
ねぇ私絶対誰にも言わないから…裕恵…
(裕恵)ことさら私を慰めておいてケロリと忘れる…。
大好きだった親友がそういう馬鹿だっていうことが許せなかった。
そのあなたはちっとも変わってなかった。
だから余計に腹立たしかった。
そのとおりね。
だからあんなメールを?あなたは待井のところに行くべきじゃなかった。
クラス会のあとあなたをバーへ連れ込んだでしょ。
女と見るとそう…いつもの手口。
あなた…。
じゃあやっぱり待井君を…。
あんなやつ死んで当然なのよ。
裕恵…。
ご主人とは何でもないのよ。
融資の相談をしてただけ。
このロゴね私がデザインしたの。
気に入ってたんだけどもう関係ないや。
ねぇ…これって…。
また昔と一緒。
駄目だよお前は連れていけないんだから。
ロッキーよしよし。
いい子にしててね。
いちばん会いたかったはずなのに…いちばん大切だったのに…私…。
〜律子:いい天気!こんな日は屋上にかぎるね!
(裕恵)それも授業中の!
(律子)それも体育の!なんで体育嫌いなんだろ私たち。
(律子)授業はつまんない。
(裕恵)まぬけに見える。
あっ律子また食べてる。
(律子)ん?
(律子)ほれ!サンキュー。
咲…私も!
(律子)裕恵残しといてよ!
(チャイム)〜
(律子)いいよねあの子。
彼?
(裕恵)あ〜彼だって!呼び捨てにしてたくせに!やだ…咲あの子じゃん。
あんたつき合ってんの?まさか!どれどれ?何?私がその思いを叶えてあげよう!裕恵だって好きなくせに。
〜
(裕恵)いくよ!えいっ!!〜
(3人)あっ…!〜私たち…もっと違うところでつながってたはずなのにね。
飲む?飲もう!これ…私たちが生まれた年のワイン。
これ飲んだら私もここを出ていくから。
(ボトルの割れる音)まさか…裕恵これって!!〜へぇ…じゃ私たちの生まれた年のも?
(律子)もちろんよ!どんな年代のもねまさか…裕恵これって!!
(律子)お腹空いた?今晩ご飯してあげられないかもしれないな…。
でもお父さんの好きな白身の刺身買ってあるから。
福ちゃんにちゃんと頼んであるからね。
〜これでお願いします。
律子は!?
(福原満)ちょっと急用だとかで…。
いないんですか!?…はい。
あの…!私…お宅のご主人を…すみませんっ!ケガさせるつもりなかったんです。
やめろって!!あなた…!?あなたが…!?俺…親父さんの頃からこの店で世話になってて律子さんが融資断られて苦しんでるのを見てられなかったんです…。
律子が…夫のことを…!?〜律子…!夫は!?あなた夫を…!…殺そうと思った。
思ったけど…。
ごめん…。
でも憎かった…。
せっぱ詰まってたの…。
借金して…お店きれいにして…父の代わりに必死で守ってきたお店が潰れるなんて…!律子…。
ご主人…大丈夫よ。
さっき先生たちが来て…。
息子さんも一緒に…。
そう…。
夫のことであなたが苦しんでたなんてちっとも知らなくて…。
おあいこよ…。
私もあなたに知らん顔してた…。
正直…あなたが待井君のところに来たのは辛かったわ…。
でも…あの人殺した時ほんとはもう終わりだってわかってた…。
律子…。
(佐竹)どうも…。
(大城)我々にもお話を聞かせていただけませんか?
(律子)1年近く前…クラス会の話が持ち上がって住所を確認するなかで連絡を取った待井君が誘ってきた…。
デートなんてすっかり縁のない暮らしだった私は簡単にその気になったわ。
古いったって持ち家じゃん。
おまけに経営者なわけだし…今度一度手伝いに行ってやろうか?馬鹿ね!重いもんなんか持ったこともないくせに!
(律子)あの人がうちで仕事をして私が店をやる…そんなことが現実になってほしくて店も改装したの…。
でも寝たきりの父親のことはなかなか言えなかった…。
こういう暮らしもいいもんだよなぁ!あっ…!
(待井)懐かしいなぁ…!でも俺の仕事場って言ってもな…
(律子)それ以来なんとなくよそよそしくなった彼は平気で私からお金をせびるようになった…。
私もそれは我慢してたわ…。
これね…お誕生日のプレゼント!それから…このワイン私たちが生まれた年に出来たのよ!ほんとはお式でも挙げたら一緒に飲もうかなって思ってたんだけど…。
式?笑わせんなよいい年こいて。
だいたいあの家で暮らせっていうならさあの親父どうにかしろよ。
それにさ…これから咲子が来ることになってんだ。
あなた…咲子にまで…。
こんなものもらえないよ…持って帰って!何よ…。
(律子)お金なら…喜んでもらうくせに!〜うっ…!〜
(チャイム)
(チャイム)
(律子)クラス会で再会してから何度か裕恵と会ってた…。
(律子)彼女は私がする話をいちいち理解してくれた…。
あなたのご主人に融資を断られたことや待井君のことまで…。
あなたが黙っててほしいなら私誰にも言わない。
警察に行くか行かないかはあなたが決めなさい。
私は…
(律子)咲子…許して…。
(透)おふくろ!!親父に意識が戻った!早く!!あなた…!お前たちの顔が見れて…よかった…。
よかった…!ほんとに…!全部話したよ…。
咲子のご主人も意識戻ったって…。
下坂さん…どうして話してくれなかったんですか?咲子と律子が話し合うのがいちばんいいと思いまして…。
正直我々も迷ってました。
あなたや早瀬さんに容疑が絞れない…。
(大城)怪しいようで怪しくない…。
咲子…!〜じゃ…。
私も行く…!とりあえず両親のいたところに戻ってみようと思うの。
何が始められるか考えてみる。
なんでもやるつもり。
私は…見慣れた人のいる見慣れた場所に…。
それがやっぱり私には大事だって…。
〜待ってる…!〜じゃ…。
〜2015/07/08(水) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
午後のサスペンス「二つの嘘 同窓会殺人事件」[字]
一つの嘘が、もう一つの嘘を呼び、次第に追い詰められていく…。
詳細情報
番組内容
主婦・咲子は、27年ぶりに中学校の同窓会に参加する。そこで再会した初恋の男・待井の誘いを受け、彼を訪ねると待井は殺されていた・・・。警察に追い詰められた時、同級生の親友・裕恵から謎のメールが届く。メールの通りに、警察に嘘の証言をする咲子だが、裕恵は咲子を裏切る言動を・・・。裕恵の企みは何なのか!?男を殺したのは誰なのか!?
出演者
早瀬咲子…田中好子
染屋律子…黒田福美
早瀬幸雄…大杉漣
早瀬透…古畑勝隆
待井信樹…小木茂光
清水篤志…大高洋夫
木部雅也…井之上隆志
佐竹京介…本田博太郎
大城石実…木下ほうか
藤野裕恵…池上季実子
原作脚本
【原作】新津 きよみ『二重証言』
【脚本】広井由美子、当摩寿史
監督・演出
【監督】当摩寿史
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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