3ハートネットTV「耐えて なぐさめて 生きる〜能楽師ワキ方 宝生閑〜」 2015.07.08


・「タンティアウグーリア閑さん」・「タンティアウグーリアッテ」
(拍手)この日よわい81になった一人の男。
(拍手)いきま〜す。
能を大成した世阿弥はこう言った。
「年老いた木に咲く花こそ美しい」と。
はいいきま〜す。
はい。
(宝生)おはようございます。
(一同)おはようございます。
人間国宝宝生閑。
能楽師の中でワキ方と呼ばれる役者である。
能の主役はシテ方と呼ばれる役者が勤める。
シテ方は生涯シテ方。
その相手役であるワキ方もまた生涯ワキ方であり続けるのがしきたり。
こうして能は600年以上続いてきた。
閑も81歳の今日までワキ方一筋である。
すごい声ですしやっぱりすごい包容力ですしなまはんかな力でぶつかっていくとこうはね返されてしまうような。
50年ぐらいのこの半世紀能を支えたのはワキの宝生閑さんじゃないかなと極論的に言ってもいいんじゃないかと。
閑は2年前がんの手術で食道と胃の一部を摘出。
役者の命とも言うべき声が出づらくなりながらも舞台に立ち続けている。
ワキ方一筋に生きる宿命。
伝統の重みに耐えシテ方をそして観客をなぐさめる。
ワキ方を究めた宝生閑。
その人生に迫る。
いらっしゃいませ。
いらっしゃいませ。
宝生閑が出演する舞台は多くのファンが心待ちにしている。
(取材者)おはようございます。
別の舞台を終えて駆けつけてきた閑。
どうも。
(取材者)おはようございます。
おはようございます。
(取材者)よろしくお願い致します。
1,200人を超す能楽師の中でワキ方は僅か55人。
舞台を掛け持ちする事も多い。
出演するのは…中国の聖なる山に獅子が現れるという物語。
閑は獅子に遭遇する日本の僧侶を演じる。
よろしくお願い致します。
先生よろしくお願いします。
悠久の時を遡るはるか昔の物語。
(笛)ワキ方はシテより前に登場する。
(笛)その静かな歩みで観客をいにしえの世界へ導いていく。
(笛)最初に名を名乗りこれから始まる物語を説明する。
目の前の舞台がいつの時代のどんな場所であるのかを伝えいざなっていく。
舞台が整うと獅子を演じる主役のシテが登場する。
きらびやかな装束に身を包んだシテの舞。
能は今も昔も変わらない喜怒哀楽を語り継ぐ。
ワキはひたすら不動の姿勢でシテの演技を受け止める。
微動だにせず引き立て役に徹する事で物語に緊張感と深みを与えるのがワキ方。
(取材者)先生今日一日終えられていかがでした?いかがでしたって?うん。
閑は…江戸時代から続くワキ方の家に生を受けた。
初舞台は7歳。
宮中に仕える大臣の役。
ワキ方とは何か。
祖父と父から厳しい稽古を受け続けた。
10代後半で既に頭角を現しその才能を認められた閑。
時空を超えた人間ドラマを織り成す能の面白さを追求していく。
ワキの極意は耐えてなぐさめる。
絶妙の間合いでシテの演技を受け止める。
閑さんが出た時にはその舞台の空気というかお客さんとの舞台の空気がやっぱりピッとスイッチ入れたみたいに緊張しますね。
いい意味の。
そしてそこへ導き出されるのが我々シテですから。
このまあ50年ぐらいのこの半世紀能を支えたのはワキの宝生閑さんじゃないかなと極論的に言ってもいいんじゃないかと。
そのくらい大きな存在ですね。
生涯シテ方はシテをワキ方はワキを勤めるのがおきて。
その宿命を受け入れる事が能の伝承だと閑は言う。
600年の時を超え親から子へ脈々と受け継がれてきた芸の道。
閑の長男欣哉48歳。
偉大な父の背中を追い続ける。
閑の孫尚哉11歳。
ただひたすら父欣哉の教えを体にしみ込ませる日々。
欣哉の長男朝哉17歳。
ワキ方の一人として祖父や父と共に舞台に立つ機会が増えてきた。
花は時を超えて伝わる。
よわい81の祖父と同じ舞台に立つ。
孫たちはひとときも無駄にしない覚悟である。
そのよくは見ませんけど…閑は2年前にがんの手術を受けた。
食道と胃の一部を摘出。
思うように声が出ない事が何よりつらい。
しかし求められている限り舞台を降りる事はない。
月に3度閑が欠かさず楽しみにしてきた事がある。
能の愛好家に謡の稽古をつける。
そこは伸ばすんじゃないの。
うらはずうらはずなんだから。
うらはずに閑が一人の人間に戻れる時間。
あわれさよワキも泣くんだからねそこで。
やっぱり泣いた気持ちで謡わないと謡いきれないかもしれない。
うん。
稽古のあと弟子たちと杯を酌み交わす。
先生ありがとうございました。
(一同)ありがとうございました。
気が置けない者たちとのひととき。
もう40年以上ですよね。
50年。
だって大学の時からだから。
私は55年ですから。
先生のお父さんから習ってる。
いやだけどさ謡だけじゃないんですよ。
人生の楽しみ方とかっていうのこれを50年間教えられている。
この季節にはこれを食わなきゃ駄目だとかね。
酒はこう飲むんだとか。
教わってる時は…。
喜怒哀楽。
なぐさめ合う人のつながりがいとおしい。
5月の半ば。
(取材者)おはようございます。
こんにちは。
おはよう。
閑が最も得意とする大曲への出演が迫っていた。
しかしこのところ体調が思わしくない日々が続いている。
これが最後。
毎回その覚悟で閑は舞台に上がる。
室町時代に作られた能の大曲…
(笛)我が子を失った母の悲しみがテーマ。
(笛)シテは我が子を人買いに連れ去られた女。
ワキはその女を偶然舟に乗せた渡守。
女の悲しみに寄り添いなぐさめる役である。
いつの時代も変わる事のない親子の情。
閑はこの演目をこよなく愛し数百回演じてきた。
見る者を感動させる役者の技を花に例えてきた能の世界。
宝生閑81歳。
老いたる身に精魂込めて咲かせた花である。
観客をなぐさめ自分もまた観客になぐさめられる。
それが役者として理想の生き方だと閑は言う。
耐えてなぐさめて生きる。
それがワキ方宝生閑が81年かけて究めた道。
2015/07/08(水) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV「耐えて なぐさめて 生きる〜能楽師ワキ方 宝生閑〜」[解][字][再]

人間国宝の能楽師・宝生閑、81歳。能の世界で、主役の相手役である「ワキ方」一筋に生きてきた。宿命を受け入れて修行に耐え、観客をなぐさめてきた人生に迫る。

詳細情報
番組内容
人間国宝の能楽師・宝生閑、81歳。彼は、主役の相手役である「ワキ方」ひとすじに生きてきた。能の世界には、ワキ方は生涯、ワキ方を勤めるしきたりがある。主役の演技を受け止め、感情を導き出すワキ方なくして、能は成立しない。そんなワキ方の仕事の本質を、「自らの宿命を受け入れて修行に耐え、観客をなぐさめる事だ」と彼は語る。現代最高峰のワキ方が語る言葉の真意を見つめ、芸の道を極めた人生80年に迫る。
出演者
【出演】能楽師ワキ方(人間国宝)…宝生閑,【語り】佐野史郎

ジャンル :
福祉 – 障害者
福祉 – 高齢者
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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