山に囲まれた…谷底を這うように流れる高野川。
梅雨どき山から集まった水は雨の匂いとともにさまざまな恵みをもたらす。
イギリスから日本に来て37年。
ベニシアさんは四季の移り変わりを楽しみながら暮らしている。
(ベニシア)わっすご〜い!すごい!見つけたのはきれいな水のそばで育つといわれる野生のクレソン。
今を盛りとばかりに群生している。
すごい大きいな。
宝の山にちょっと興奮。
摘み取らせてもらう事に。
このぐらいあったら毎日クレソンスープ作らないと…。
「オランダガラシ」とも呼ばれるクレソン。
明治時代食用として入ってきたものが今では日本各地で自生している。
13年前大原に移り住む時に手に入れた築100年を超す古民家。
家を囲むようにある40坪の庭はベニシアさんが7年がかりで造りあげた。
梅雨の晴れ間。
庭の花が次々と咲き実をつける。
日々丹念に世話をするベニシアさんにとって何よりのご褒美。
3か月前テラスの前に植えたホップ。
今では2階の窓に達するまでに成長した。
これからの季節ホップが強い日ざしを和らげてくれるこのテラスはベニシアさんのお気に入りの場所になる。
テラスの横。
玄関先にある花瓶に花を生ける。
これちょっと茂りすぎてる。
ものすごくきれいな白いアジサイが咲くんですけど…。
時には切り花を買う事もあるベニシアさん。
そんな時庭に咲く花を加えて一手間かける。
剪定を兼ねて今日はアジサイを選んだ。
日本に来て生け花を覚えたベニシアさん。
「花で人を迎える」。
その心に共感している。
生け花を外に飾ると日の光を浴びて一層華やかに見える。
こうやって家の玄関でみんなが見える瞬間…。
ここは日当たりいいし…だからここいい場所。
まあそんなもんかな。
切り花に庭の花を組み合わせると途端にベニシア流の生け花になった。
クレソンとジャガイモとリンゴのおいしいスープを作りますから。
まず皮むいて。
クレソンの中に抵抗力が高くなる力がありますから。
あと鉄分がいっぱい入ってるからストレスにもいいし。
はいじゃあこれを…。
今度はリンゴ。
リンゴの甘さとクレソンのちょっと苦いところがよく合う。
ジャガイモとリンゴは皮をむき薄切りにしておく。
バターと油をひいた鍋にジャガイモを入れしんなりするまで炒める。
それからダシ。
これはチキンダシ。
鍋にチキンスープを加え沸騰させる。
更にリンゴを加え…。
全部入れます。
大体15分。
どっちも軟らかくなるまでゆでます。
はい。
あっ軟らかくなりました。
そうしたらクレソン入れます。
結構たくさん。
150g。
大体3分ぐらいでいいと思います。
クレソンは硬い芯を除いてから加える。
煮上がった材料をそのままミキサーに移しスープ状になるまで細かくする。
じゃあきれいなグリーンの。
最後は塩と…。
コショウ。
最後に塩とコショウで味を調え生クリームを加えたら出来上がり。
ちょっと味見をしてみます。
ベニシア流クッキング。
最後に味を決めるのはやっぱり自分の舌。
もうちょっと塩。
おいしい。
すごいおいしい!うん大丈夫でしょう。
野生のクレソンスープ。
これからの季節は冷たくしてもおいしくいただける。
ベニシアさんが生け花に料理にと張り切っているのには訳がある。
今日は親しい友人が訪ねてくるのだ。
心を込めたおもてなしに欠かせないのが庭のハーブたち。
ナスタチウムは食べてもいいよね。
ハーブには「エディブルフラワー」という食べられる花がいくつもあり食卓に彩りを添えてくれる。
あっビオラ。
ビオラは食べられる。
200種類を超えるハーブの中から今日の料理に合ったものを摘む。
これもベニシアさんの楽しみの1つだ。
これも食べられるの。
ボリジ。
ボリジの葉っぱがちっちゃいと食べられる。
フェンネル。
今日は魚を出そうと思ってるから魚の飾り。
うん。
すごいいい匂い。
エディブルフラワーを混ぜたサラダはベニシアさんが子どもの頃地中海を旅した時に覚えたもの。
それ以来「地中海サラダ」と命名している。
そしてフェンネルは匂い消しとしてマヨネーズソーズがけの蒸したサーモンと合わせた。
友達の顔を思い浮かべながらのテーブルセッティング。
これがポイント。
これ1つの線。
お皿とナイフは手前のラインをそろえる。
これイギリス流のテーブルマナー。
大切にしているブルーの器。
この家にもともと残されていた和食器に合わせてベニシアさんがイギリスの食器をこつこつと集めたものだ。
これお母さんが教えてくれたけど面白い事はうちわでしょ。
それが日本のものですから何でお母さんこうやっていつもしてたんだろうね。
多分一番簡単。
いろいろ出来るよ。
でも一番簡単なのはこれ。
これで友人を迎える準備は整った。
(ウベ)こんにちは。
え〜久しぶり。
やって来たのはドイツ出身のミュージシャン…もうすぐごはん。
おなかすいてるかなと…。
ベニシアさんウベさんとは京都に住み始めた30年前からのつきあい。
ウベさんは先に山里暮らしを始めた先輩でもある。
(美都代)きれいねここ。
これが。
こっち夏は涼しい。
冬は無くなるから外の山が見えるんだけど。
ず〜っと根っこは残ってるものですか?秋の時切るのね。
それでまた出てくる。
(美都代)いいねこれ!クレソン川から採って。
クレソンのスープ。
リンゴとジャガイモスープ。
早速作ったばかりの自慢のクレソンスープを振る舞う。
夫の正さんも加わり気の置けない仲間で大人のランチパーティー。
おいしい。
なあ。
うん。
おいしいです。
(正)もともと日本に無いんじゃないの?うちのとたにもいっぱいあるのよ。
裏のねちっちゃな川にもいっぱい。
大原の川にも信じられないくらいたくさんあったよ。
ビックリした。
(ウベ)きれいな水の所ね。
あ〜最高!手作りのもてなしで一段と話が盛り上がる。
ここでウベさんが取り出したのはなんと尺八。
実はウベさんはプロの尺八奏者。
その音色に魅せられてはるかドイツから日本にやって来た。
(尺八)日本の文化や自然を愛し日本人のパートナーと山里で暮らす。
共通点の多い2人はお互いを理解する良き親友。
(尺八)大原から北西におよそ50km。
今もかやぶき屋根が残る山里がある。
ウベさんはここで古民家を借り奥さんの美都代さんと共に自給自足の暮らしを目指している。
「自分で食べるものは自分で作りたい」と家の前にある畑で季節に合わせて野菜を育てているウベさん。
春に植えたホウレンソウやタマネギがようやく収穫の時期を迎えていた。
美山に暮らして20年余り。
今では野菜を買う事はほとんど無くなった。
今日はちょっと遅い田植え。
近所の若い友達が助っととしてやって来てくれた。
この田んぼもご近所さんから借りたもの。
田植えをすると聞いて皆心配そうに見に来ている。
いつもお世話になってるんです。
最初は教えてもらったんです。
さすがおばあさんたち慣れてる。
まっすぐ。
僕らはこんな…。
自分の食べたいもの自分で作りたいんですよ。
昔から思ってたんですけど。
畑しながら田植えすると自分が低くなるというか腰が痛いんだけど…。
何ていうかな…。
職業みたいなものですな。
よし!米作りは今年で4年目。
およそ120kgの米が収穫できるという。
泥の中にはだしで入り素手で泥に触れる。
でもその姿はまだ少しぎこちない。
(ウベ)美都代速いな。
奥さんの美都代さんは奈良の農家育ち。
さすが手際がいい。
ウベさんにとって土に触れる暮らしは「尺八の音を理解するためにも必要な事だった」と言う。
(ウベ)おお出来た!ハハハ。
まだうまく出来ないけどまっすぐにならないけどあと10年ぐらいでなんとかなると…。
「ウベ」というのはゲルマン語で「土」なんですよ。
まあもともとの言葉から現代語になった土なんですよ。
私は本当に土が好きなんですよ。
どこへ行っても土を拾って土の匂い…。
一番最初に聴いた音はこの匂いしてた。
尺八…こんな長い竹の。
この匂いしてたんですよ。
ドイツで聴いた音。
「何だ?これどこの音?」と聞いたら日本の音。
えっ!?日本にそんな音あるの?「忙しいのに日本人」ってそんなイメージあったんですよ。
この匂いしてたんですね。
泥が付いた音。
ドイツで聴いた尺八の音。
その音色に土の匂いを感じ日本にやって来た。
来日後独学で尺八を習得。
曲を作り各地でコンサートを開くまでになった。
そして30歳の時美都代さんと結婚。
36歳の時この美山町に家族で移り住み3人の子どもを育て上げた。
泥の音を理解するためこの山里で暮らす事が必要だったウベさん。
体じゅうでその匂いに触れて生活している。
それを支えているのは奥さんの美都代さんだ。
ドイツ人でありながら尺八奏者として生きる夫を優しく見守ってきた。
じゃあ美都代これでいこう。
はい。
いただきます。
いただきます。
いいのが出来た。
(美都代)はいありがとう。
取れたてばっかりやもんね。
さっき取った分ばっかり。
でも田植え終わって良かったね。
こんなに早く出来ると思わなかった。
何でそんなに速いの?田植え。
機械が無い時は手植えだったの。
随分昔の話やな。
私は田舎生まれだから田舎の生活は別に抵抗ないんだけれども田舎がいかに大変かが知ってるんですよね。
やっぱりいろんな事があるし。
特にこんな奥…結構奥だったでしょ。
一番最初車で京都から来た時「えっ!まだ着かない。
まだ着かない」とか思って…。
結構遠くて…。
それがちょっと遠いから大変やなとか思ったけれども。
でも慣れたらね静かでいい所ですよ。
楽しいですね。
まああの…ぜいたくと思うんですね。
なぜ尺八の音色は泥の匂いがするのか。
(尺八)ここでの暮らしがウベさんにその答えを教えてくれた。
畳の匂い草の匂い藁の匂いですね。
正座で座るんです。
まっすぐ。
地面に近い生活するんですよ。
日本人の考え方は地面に近い考え方ですよ。
日本の文化の得意なところは自然中心の文化じゃないですか。
地面から湧いてくる。
その土の所は日本で見つけたんですね。
(尺八)日本で生きていく。
ウベさんの尺八が奏でる音色はちょっと切なく不思議に力強い。
(尺八)イギリスで貴族の家に生まれたベニシアさんもまた自分の生き方を探し求めて日本にやって来た。
(尺八)今では他のどの場所よりもくつろぐわが家。
けれども部屋じゅうにバラの香りを漂わせながら作るポプリはイギリス流。
ベニシアさんの故郷は心の中にある。
2015/07/08(水) 12:25〜12:55
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手「もてなしの心」[字][再]
京都、大原でスローライフを送るベニシアさん。山里暮らしの先輩でドイツ人のウベさんを家に招き、ベニシア流のおもてなし。近くの小川で摘んだクレソンでスープを作ります
詳細情報
番組内容
京都・大原で築100年をこえる古民家を改修し、スローライフを送るベニシアさん。その心地よい手づくりの家には、いつも客が絶えない。古くからの友人で山里暮らしの先輩のウベ・ワルタさんを家へ招き、ホームパーティーを開く。久しぶりの再会に腕を振るって作るハーブ料理は、旧友へのおもてなしの心と一緒にテーブルを華やかに彩る。
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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