週刊東洋経済の書評から

シリコンバレー流「未来のつくり方」

自由闊達に話すことで共通認識が育つ

(写真:MASA/PIXTA)

自由闊達に話すことで育つ未来社会の共通認識

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インテル、マイクロソフト、アップル、グーグル。米国西海岸では世界を変える企業が次々に誕生する。なぜ同じ地域から次々と生まれるのか。

これらの企業はバラバラに存在しているわけではなく、実は、共通の「物語」によって結ばれている。それが「自らが築き上げていく未来」についての物語だ。

いったい、それは何なのか。本書は、ビジネスの現場、政治、哲学などさまざまな角度から多面的に描いており、繁栄を謳歌し続ける米国西海岸を理解する視座を与えてくれる。

第1章の「ムーアの予言」は極めて重要だ。今年は半導体の集積度が18カ月で2倍になるという「ムーアの法則」発見から50年になるが、この幾何級数的な技術進化を前提に、「会社」の枠を超え、未来社会を議論し続けてきたのがシリコンバレーだ。

予言を現実のものにするために自律的に未来社会を築いてきた米国と、未来を受け身にとらえがちな日本は何が違うのだろうか。評者は著者の池田氏と話し込んだことがある。同氏が指摘したのは、「米国にはグーグルのエリック・シュミットさんのように、政治・経済分野にも幅広い知見を持ったビジネスリーダーが多い」ということだ。

日本にも、かつてはそんな経営者がたくさんいた。しかし、今はそうではない。多くの経営者は自分が所属している組織のことばかりを語る。広範な知見を持っているとしても発言をしない。

ビジネスリーダーたちが自由闊達に話すことから、共通の未来社会への認識が育っていく。そして、その実現に向け、立場は違えども協力し合う文化ができていくのだ。そこでメディアが重要な役割を果たすことは言うまでもない。

著者
池田純一(いけだ・じゅんいち)
コンサルタント、デザインシンカー。メディアコミュニケーションを専門とするFERMAT代表。1965年生まれ。米コロンビア大学大学院公共政策・経営学修了(MPA〈行政修士〉取得)。早稲田大学大学院理工学研究科修了(情報数理工学)。電通総研、電通を経て独立。

 

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