光州ユニバーシアード組織委員会はこのような心配の声を払拭(ふっしょく)しようと真剣に対策を考えた。まず大会組織委員長の尹壮鉉(ユン・ジャンヒョン)光州広域市長は「環境に優しい」「低コスト」「高い効率性」という三つの点を開催に当たっての大きな方向性として定めた。尹市長が常に電気自動車のソウルEVに乗って移動しているのもそのためだ。その一環としてまず全競技会場の95.7%を従来からあった施設をそのまま活用した。選手控室などは一部でモンゴル式のテントを使った。組織委員会事務局長のキム・ユンソク氏は「FISUと20回以上にわたり協議を行い、施設に求められる基準を引き下げることができた。それで今回のような対応が可能になった」と語る。その結果、施設に掛かる費用は当初政府から承認を受けた額よりも1345億ウォン(約144億円)も節約できた。さらに授賞式で使われる表彰台は仁川アジア大会で使用されたものを無償で借り受けるなど、施設以外でもありとあらゆる側面で節約に取り組んだ結果、654億ウォン(約70億円)もの追加の節約に成功した。これはこれまで前例のない大きな成果だ。
さらに光州市民には大きなプレゼントも残した。まずソウルまで1時間40分で行けるKTXが開通した。西区花亭洞にある選手村は、37年前に建設されたマンションをリフォームしたもので、大会終了後には住民の入居が開始される。
ちなみにユニバーシアードは大学生のためのスポーツイベントだが、競技レベルは決して低いわけではない。例えば2012年のロンドン・オリンピックにはかつてユニバーシアードでメダル獲得経験のある154人の選手が出場し、金メダル75個を含む174個のメダルを獲得した。世界新記録も次々と飛び出している。そのため韓国選手たちにとって今回のユニバーシアードは、来年のリオデジャネイロ・オリンピックに向けた格好のリハーサルになった。いずれにしても今回の大会は「事前にどれだけ多く検討を重ねて準備に取り組むか」が大会の成功を大きく左右するという当然の事実をあらためて示す典型的な大会となった。「光の里」という愛称で知られる光州で『ドイツ学生歌』を気分良く聞けたのも、おそらくそのためだろう。