スキューバダイビングは、神秘な海の中の世界をのぞき見ることができる個人の趣味活動だが、時として旅客船「セウォル号」沈没事故のような危機に直面した人たちを救助するために応用されることもある。ところが、人命救助に役立つスキューバダイビングが、かえって救助を求める状況になっている。韓国国会で今年5月に可決されたものの、施行日が6月1日から8月1日、10月1日へとたびたび延期されている「沿岸事故防止法」のためだ。
同法によると、スキューバダイビングに参加する人は、14日前までに申告書を提出しなければならない。5人以上の場合は安全管理要員が同行しなければならない。参加者全員が乗ることのできる非常用救難艇も確保しなければならない。ダイビングショップの運営者たちから見れば、机上の空論的な法律の典型としかいいようがない。スキューバダイビングはレジャーであるため、参加当日まで人数が変わり得る。それにもかかわらず、14日前までに申告書を提出せよというのは、全く現実性がない。ダイビングに同行するインストラクターやガイドこそが最も専門的であり、救助の能力も有しているが、そこにあえて、スキューバダイビングの能力がない別の安全管理要員を同行させるというのは、不必要な人件費の負担を増やすだけだ。
非常用救難艇を確保せよというのも問題がある。スキューバダイビングは参加者全員が船に乗って沖合に移動して行うものであり、その船が救命艇の役割を果たしているにもかかわらず、不必要な救命艇を確保せよというのは、どのような理由があるのか。専門的なダイバーにまで法律を適用するというのも理解に苦しむ。ダイビングショップを運営するダイバーたちは、危険に直面した経験も豊富なため、水中で活動した経験のない一般の安全管理要員が手助けする必要はない。
ダイビングショップを運営するためにこのようなことを言っているのではない。法律があまりにも形式的かつ不必要な規制だらけなため、苦言を呈しているのだ。毎回加入を強制する保険も問題だ。費用がかさむだけでなく、休日には保険会社が営業していないため、加入は事実上不可能だ。
スキューバダイビングは誰もがやりたいと言ってすぐにできるものではない。専門的なインストラクターから30時間以上の基礎的な講習を受け、科学的な装備を身に付けなければならない。ライセンスも段階ごとに取得する必要がある。ダイバーたちは自らが安全管理要因になれるだけのレベルだ。法律の適用は1日だけの観光客がボートに乗る際だけに限定すべきだ。